本編補足
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朽ちる大樹の影

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C1 引き合わせ

C2 乖離

C3 一輪の花

C4 下処理

C5 挽肉

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C1 引き合わせ

 

ユランシア大陸テウシンの地。ヂョルガロン王国首都ブザのダンレン宮殿。モング国テウシン領総督の金絲猴獣人ポッパンの死体を加工して作られた玉座に座るヂョルガロン王国国王のギュウキュウ。両脇には屈強な兵士達が並ぶ。

 

モング国との戦争の功労者であるシルパラ、後ろに続くテウシン王の血を引く美少女スヒィンと侍女のスリョクが現れる。シルパラとスヒィン、スリョクはギュウキュウの前に歩み寄り、跪く。ギュウキュウはポッパンの死体の手の部分を加工した肘当てを稼働させる。ポッパンの死体の手の部分が開く、握るの動作を繰り返す。笑みを浮かべるギュウキュウ。

 

ギュウキュウ『ほっほう。無骨なシルパラ殿が女を献上するとは珍しい。』

 

ギュウキュウは顎に手を当て、スヒィンを見つめる。

 

ギュウキュウ『中々、上玉だな。しかし、女等…。』

 

眉を顰めるシルパラ。ギュウキュウは頬杖を付く。ペンダントを握りしめギュウキュウを睨みつけるスヒィン。スヒィンの方を見るスリョク。

 

ギュウキュウ『わざわざシンノパクラの献上する女を後回しにしたのだが…。』

 

ギュウキュウは上体を起こし、彼らの後ろを見る。

 

ギュウキュウ『して、テウシン王の血を引く者とやらはどこか?』

 

立ち上がるシルパラ。

 

シルパラ『王!』

 

シルパラの方を向くギュウキュウ。シルパラは手でスヒィンの方を指す。

 

シルパラ『この方こそ、まごうことなきテウシン王の血を引く御方!』

 

眼を見開くギュウキュウ。

 

ギュウキュウ『何!』

 

ギュウキュウはスヒィンの顔を見つめ、眉を顰める。

 

ギュウキュウ『女だと…。』

 

一礼するスヒィン。

 

スヒィン『この度、古典王国復古の為、我が所領を取り戻したく…。』

 

ギュウキュウは溜息を付く。

 

ギュウキュウ『ならん!』

 

顔を上げるスヒィン。

 

ギュウキュウ『テウシン王国は代々長男相続を伝統としている。女人が王となる事、これはその古の伝統に反す!』

 

眼を見開くスヒィン。ギュウキュウは顎に手を当て、上を向く。

 

ギュウキュウ『しかし、折角見つかった王の血縁…。』

 

ギュウキュウは頷いてスヒィンの方を向く。

 

ギュウキュウ『…数日後、宴を用意しておる。その時に結論を出すとしよう。』

 

頭を下げるシルパラとスリョク。ギュウキュウを睨むスヒィン。

 

ギュウキュウ『下がってよいぞ。』

 

立ち上がり、去って行くスヒィンとシルパラとスリョク。

 

ギュウキュウ『気が強そうな女だな。気に入った。次!』

 

ユ王国国王の容姿端麗なユガとその息子で容姿端麗なユーリが現れる。ユーリは去って行くスヒィンの方を見つめる。一礼するユガ。ユガの瞳はユーリを捉える。

 

ユガ『これ、ユーリ!王の御前だぞ!』

 

ユーリは振り返る。

 

ユーリ『はっ、はい。』

 

一礼するユーリ。ギュウキュウは笑みを浮かべる。

 

ギュウキュウ『ミゼのユヅルハ女王といい、ユ王国の血縁は美男美女が多いの。』

 

跪くユガとユーリ。

 

ギュウキュウ『わしから見てもほれぼれするくらいにな。』

ユガ『はっ、はあ。』

 

ギュウキュウはユガの方を見つめる。

 

ギュウキュウ『しかし、お前達の容姿なら女達が寄りついて仕方のない事だろう?』

 

ギュウキュウは首をかしげる。

 

ギュウキュウ『なんでシンノパクラみたいなしなびた爺さんの方が女の献上数が多いのだ?』

 

ギュウキュウはユーリの方を向く。

 

ギュウキュウ『テクかの?』

ユーリ『えっ?』

 

ユーリは首をかしげる。

 

ユーリ『は、はい。』

 

笑いだすギュウキュウ。

 

ギュウキュウ『くっくっく。うぶいの。』

 

ユガの方を向くユーリ。

 

ユガ『王、息子をからかうのはおよし下さい。この度、王の下へ預けるのですから。』

 

ユガはユーリに目配せする。ユーリは一礼する。ギュウキュウの方を向くユガ。

 

ユガ『不束者ですが、何とぞよろしくお願い致します。』

 

一礼するユガとユーリ。頷くギュウキュウ。

 

C1 引き合わせ END

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C2 乖離

 

ユランシア大陸テウシンの地。ヂョルガロン王国首都ブザのダンレン宮殿。奥の間にはモング国テウシン領総督の金絲猴獣人ポッパンの死体を加工して作られた玉座に座るヂョルガロン王国国王のギュウキュウ。

 

右にはそれぞれミゼ王国の美しい女王ユヅルハ、カヤン王国のラクガヤにユ国のユガ、クド王国のタグに左パノパス王国の女王ファボス、バカイ王国のダンジョン、ツァ王国のツァラツァラが並んで座っている。

 

音楽が奏でられ妖艶な女達が正面の舞台で舞う。豪華な食事が食卓に並べられ、7王国の王子や重臣達が並び、その後ろに其々の配下達が並ぶ。

 

ギュウキュウは酒の注がれた杯を掲げる。音楽が止まり、舞う女達は舞台の両脇に整列し、頭を下げる。

 

ギュウキュウ『この度、我々はモングの手からようやくこのテウシンの地を取り戻す事が出来た。ツァ王国の息子の尽力で貴族連合とも好を通じる事ができた。まことにめでたい!』

 

ギュウキュウは周りを見回す。

 

ギュウキュウ『これは諸君らの努力の賜である。そして、この戦の最大の功労者を讃えようと思う。』

 

頷く7王国の王子や重臣達とそれぞれの配下達。ギュウキュウはシルパラとリマ教の僧侶でモング国との戦争の功労者のホクガの方を向く。

 

ギュウキュウ『シルパラにホクガよ。前へ。』

 

立ち上がってギュウキュウの下まで歩み寄るシルパラにホクガ。ギュウキュウは周りを見回す。ギュウキュウがボタンを押し、玉座の背もたれのポッパンの死体の頭部の眼が光り出す。

 

ギュウキュウ『皆も知っている通り、シルパラの祖父は各国に散らばった各王国の遺児たちを集め、モングに反旗を翻した。一連のモングとの戦いにより、一族がほとんど死んでしまったが決して諦めなかった。その不屈の闘志!そして、ホクガの智略がなければ、今日の勝利は無かったであろう。』

 

跪くシルパラ。ギュウキュウを見つめるホクガ。首をかしげるギュウキュウ。シンノパクラがホクガを見る。

 

シンノパクラ『ホクガ殿、王の御前でございますぞ。』

 

ホクガはシンノパクラの方を向き、溜息を付いて奥の席を見回す。

 

ホクガ『まっこと!良い時代になったものですな。農奴の子ですら王になれる。』

 

眉を顰め、眼を見開くギュウキュウ。唖然とする一同。

 

ホクガ『王。忠告しておきますが、古典王国復古等という下らぬ戯言をこのまま推し進めるのであれば…。』

 

ホクガは眼を細め、瞳を左右に動かした後、ギュウキュウに向ける。

 

ホクガ『必ず足を引っ張られることでしょう。』

 

ホクガを睨みつけ、机を叩くファボス。ファボスに掌を向けるギュウキュウ。眉を顰めるファボス。

 

ホクガ『古の古王国がなぜ、モングからの侵攻と支配を許したのかお忘れか?下らん派閥争いと内輪揉めを絶えず起していたからだ!それをこの様な格好で復活させるとは正に愚の骨頂!ヂョルガロン王政による統一支配こそが…。』

 

眼を見開き、顔を見合わせる一同。ホクガを見上げるシルパラ。

 

ギュウキュウ『もう良い!その話は聞きあきた。』

 

頭に手を当てるギュウキュウ。

 

ギュウキュウ『せっかくの酒と料理が不味くなってしまうではないか!』

ホクガ『では、拙僧はこれにて!もはやこの地に思い残すことは無い!』

 

ホクガがギュウキュウに背を向けて歩く。立ち上がる7王国の国王とその配下達。ゆっくりと進むホクガ。武官の何人かが動く。

 

ギュウキュウ『やめい!』

 

一斉にギュウキュウの方を向く一同。ファボスがギュウキュウの方を向く。

 

ファボス『しかし、やらなければ、もし奴の智略がギサン国やダクト国、ゴーチュラやホブサピューの手に渡れば…。』

 

首を横に振るギュウキュウ。

 

ギュウキュウ『今日はモング軍を追い払った目出度い宴。この席を台無しにする事は許さん!』

 

ギュウキュウは杯の酒を飲む。

 

ギュウキュウ『座れえぇい!』

 

座る一同。ギュウキュウはホクガの背を見つめる。

 

ギュウキュウ『ホクガ。』

 

立ち止まるホクガ。ギュウキュウがホクガに向けて杯を高く上げる。

 

ギュウキュウ『別れの盃ぞ!』

 

ホクガ退場。ギュウキュウは杯の酒を飲み干す。

 

C2 乖離 END

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C3 一輪の花

 

ユランシア大陸テウシンの地。ヂョルガロン王国首都ブザのダンレン宮殿。奥の間にはモング国テウシン領総督の金絲猴獣人ポッパンの死体を加工して作られた玉座に座るヂョルガロン王国国王のギュウキュウ。

 

右にはそれぞれミゼ王国の美しい女王ユヅルハ、カヤン王国のラクガヤにユ国のユガ、クド王国のタグに左パノパス王国の女王ファボス、バカイ王国のダンジョン、ツァ王国のツァラツァラが並んで座っている。

 

豪華な食事が食卓に並べられ、7王国の王子や重臣達が並び、その後ろに其々の配下達が並ぶ。

 

ギュウキュウは空の杯を女官Aの前に差し出す。

 

ギュウキュウ『まったくホクガの奴め。折角の宴が台無しだ。』

 

ギュウキュウの杯に酒を入れる女官A。ギュウキュウは正面を向く。

 

ギュウキュウ『仕切り直しだ。』

 

ギュウキュウは杯の酒を一気に飲み干して、机の上に置いて手を3回叩く。テウシンの音楽が奏でられ、舞台の上の踊り子達は左右に分かれ、一礼して去って行く。

 

ユガ『これは…テウシン王国の音楽。』

 

頷くギュウキュウ。正面よりスヒィンがゆっくりと舞台へ上がって行く。ギュウキュウは傍らの女官Aに目配せする。女官Aは一礼して奥の間から出ていく。奥の間の一段下に並ぶ7王国の王子達。ヂョルガロン王国の王子ギュウジュウがユーリの方を向く。

 

ギュウジュウ『おい、ユーリ。どうかしたのか?』

 

スヒィンの方を見つめるユーリ。ギュウジュウは肘でユーリの腕を小突く。ギュウジュウの方を向くユーリ。

 

ユーリ『…な、何か?』

ギュウジュウ『どうかしたのか?』

 

ユーリは首を横に振る。

 

ユーリ『いえ、別に…。』

ギュウジュウ『そうか?顔があからんでいるようだが…。』

ユーリ『えっ!?』

 

ユーリは眼を見開いて、両手で頬を触る。

 

ギュウジュウ『熱でもあるのかと思ってな。』

 

ユーリは瞳を上に向け、額を触る。

 

ユーリ『な、なんともありませんよう。』

 

ユーリの顔を覗き込むギュウジュウ。

 

ギュウジュウ『そうか?』

 

頷くユーリ。感嘆の声が上がる。舞台の方を向く二人。舞台の中心で舞うスヒィンを見つめるユーリ。スヒィンがテウシンの舞を舞う。ギュウジュウが上体を前に出す。

 

ギュウジュウ『ほっほう。あの女、テウシンの舞を舞えるのか。』

 

顎に手を当てるギュウジュウ。

 

ギュウジュウ『しかし、中々の上玉だな。』

 

女官達が鍋を持ち、奥の間へと歩いて行く。王子の席に座るツァグトラの鼻が動く。ツァグトラの方を向き、鼻を動かすギュウジュウ。

 

ギュウジュウ『とてもいい匂いですな。』

 

頷くツァグトラ。女官達が奥の間の前で跪く。女官達は立ち上がり、鍋を各国王たちの前に並べていく。

 

ギュウジュウ『な、ユーリ。』

 

首をかしげユーリの方を向くギュウジュウ。

 

ギュウジュウ『ユウリ!!』

 

ユーリは眼を丸くしてギュウジュウの方を向く。

 

ユーリ『は、はい!』

 

ギュウジュウはユーリに詰め寄る。

 

ギュウジュウ『おかしいぞ。先程からぼ〜っとして…。』

 

ユーリの額に手を当てるギュウジュウ。

 

ユーリ『あっ…。』

ギュウキュウ『熱はなさそうだ。』

 

ユーリの額から手を離すギュウジュウ。ユーリは姿勢を正す。

 

ユーリ『だ、大丈夫です。』

 

ギュウジュウは2、3回頷いて酒を飲む。

 

ギュウジュウ『それならばいいのだが…。具合が悪いなら遠慮なく言えばいいさ。』

 

ユーリは一礼する。

 

ユーリ『は、はい。ありがとうございます。』

 

笑うギュウジュウ。

 

ギュウジュウ『堅苦しいなユーリは。』

 

ユーリはスヒィンの方を見つめて、右手を胸に添える。奥の間から女官達が退場していく。ギュウキュウは笑みを浮かべ、手を1回叩く。音楽が止む。舞台の中央からギュウキュウを見上げるスヒィン。

 

ギュウキュウ『今日は我々がモングの総督ポッパンを倒し、モングを追い払った古代王国復古の記念すべき第一歩の日。』

 

周りを見回すギュウキュウ。

 

ギュウキュウ『この記念すべき日に各国の王に特別な料理をわし自らが作った。』

 

顔を見合わせる奥の間の一同。

 

ラクガヤが一礼し、ギュウキュウの方を向く。

 

ラクガヤ『陛下はユランシアでは一流の肉屋を営んでいたとか。』

 

頬杖を付き、頷くギュウキュウ。ユヅルハがギュウキュウの方を向く。

 

ユヅルハ『肉料理の腕も一流と聞き及びます。』

 

ギュウキュウは手を前に出す。

 

ギュウキュウ『さ、食せ。』

ファボス『では、遠慮なく。』

 

蓋を開ける各国の王達。ユヅルハは口に手を当てて、後ろを向く。ユヅルハを見て鼻で笑うファボス。鍋の中には猿の脳みそのスープが入っている。鍋を覗きこむダンジョン。

 

ダンジョン『これは?』

 

ラクガヤが眼を閉じて鍋からの湯気をかぐ。

 

ラクガヤ『いい匂いです。』

 

ラクガヤは眼を開き、ギュウキュウの方を向く。

 

ラクガヤ『猿の脳みそですな。』

 

腕組みをするファボス。

 

ファボス『しかし、7等分できる脳みその猿など…。』

 

ギュウキュウの座る玉座の方を向くタグ。奥の間の一同は眼を見開いて、ギュウキュウの座る玉座を見つめる。膝を叩いて笑いだすギュウキュウ。

 

ギュウキュウ『はっはっは。そうだ。そのわし特製の料理は…。』

 

ギュウキュウは親指で玉座を指す。

 

ギュウキュウ『この憎きモングの総督ポッパンの脳みそだ。これを食すことで我らの血の結束とする。』

 

ユヅルハは鍋の中のポッパンの脳みそを見つめる。ラクガヤが杯の酒を少し飲む。

 

ラクガヤ『いやはや精がつきそうなものですな。』

ツァラツァラ『この場にテウシン王がいないのが残念です。』

 

舞台を降り、奥の間へ進むスヒィン。文官と武官の何人かが立ち上がる。

 

文官A『これ、失礼であろう!ここより先は…。』

 

スヒィンは文官Aを睨みつける。

 

スヒィン『黙れ!私は王族!由緒あるテウシン王の直系であるぞ!』

 

文官Aは後ずさりする。

 

文官A『何!?』

 

ざわめきが巻き起こる。ギュウキュウは首を左右に振り、スヒィンの方を見る。

 

ギュウキュウ『よい!この場に来させよ。』

 

ファボスが眉を顰める。

 

ファボス『よろしいので?』

 

頷くギュウキュウ。

 

ギュウキュウ『もとよりこの場に呼ぶつもりだったのだがな。』

 

スヒィンを手招きするギュウキュウ。ギュウキュウの方を向き、奥の間へ続く階段を登って行くスヒィン。ユーリはスヒィンの方を向く。スヒィンは奥の間の手前で跪く。スヒィンの方を向く一同。

 

スヒィン『今宵、この場にて…我がテウシン王国も血の結束に加わりたく…。』

 

顔を上げ、ギュウキュウを見つめるスヒィン。

 

スヒィン『そのポッパンの脳みそを頂きたとうございます。』

 

眉を顰めるファボス。ギュウキュウは溜息を付く。

 

ギュウキュウ『…ならん。』

 

眉を顰めるスヒィン。

 

スヒィン『…なら、ヂョルガロン王はテウシン王の座を奪ったままのつもりか!』

 

腕組みするギュウキュウ。

 

ギュウキュウ『テウシン王国は長男相続を伝統としている。男でなければならぬ。』

 

握り拳を震わすスヒィン。

 

スヒィン『ユヅルハ殿もファボス殿も女ではないか!』

 

スヒィンを見つめるユヅルハ。鼻で笑うファボス。

 

ファボス『いきがるなよ小娘。血縁というだけの天から湧いた幸運にすがる愚か者。我が国は文と武に秀でた一族の者が王となる伝統だ。男であろうが女であろうが関係ない。だから私が立っている。』

 

ファボスを睨みつけるスヒィン。

 

ユヅルハ『まあまあ。お二人とも、しかし、これで8王国そろった訳でありますし…。』

ファボス『そういうミゼ国は女系でしか王位を継げぬ伝統。』

 

スヒィンを睨みつけるファボス。

 

ファボス『我々はしっかりと伝統に則って即位しておるわ!』

 

握り拳を震わせ、歯を食いしばるスヒィン。

 

ファボス『しかも、礼儀を欠いた先程の振る舞い。とてもテウシン王の直系とは思えぬな。』

 

立ち上がるスヒィン。ギュウキュウの杯が机の上に叩きつけられる。

 

ギュウキュウ『止めい!みっともない!』

 

眼を細め、口をへの字に曲げてギュウキュウを見つめるスヒィン。ギュキュウは杯を持ち、酒を飲み干す。

 

ギュウキュウ『テウシン王国は長男相続…。』

 

ギュウキュウはスヒィンを見つめる。ユーリは上体を前に出して奥の間の方を向く。

 

ギュウキュウ『悔しければ男児を孕めぇい!』

 

握り拳を震わすスヒィン。

 

ユヅルハ『へ、陛下!飲みすぎですよ!年頃の女の子に孕めだなんて…。』

 

ギュウキュウはユヅルハの方を向く。

 

ギュウキュウ『年頃の女の子か…。』

 

ギュウキュウは周りを見回す。

 

ギュウキュウ『わしはこのテウシン王の血を引く娘スヒィンを正妻に迎えるつもりだ。』

 

ざわめきが巻き起こる。眉を顰めるギュウジュウ。

 

ギュウキュウ『そして、生まれた子が男であればテウシン王国は復活させる。』

 

スヒィンは眼を見開いて跪く。

 

スヒィン『ならば、今夜に初夜を…。』

 

笑うギュウキュウ。

 

ギュウキュウ『ははは。気が早いな。しかし、式すら上げてないのだぞ。』

 

ユーリは顔を真っ赤にして俯く。笑い声が響く。

 

C3 一輪の花 END

-6ページ-

C4 下処理

 

ユランシア大陸テウシンの地。ヂョルガロン王国首都ブザのダンレン宮殿。玉座の間にはモング国テウシン領総督の金絲猴獣人ポッパンの死体を加工して作られた玉座に座るヂョルガロン王国国王のギュウキュウ。シンノパクラが駆けこんでくる。

 

ギュウキュウ『おお、来たか。シンノパクラ!』

 

ギュウキュウの前で跪くシンノパクラ。

 

シンノパクラ『おお、陛下!お呼びでございますか!』

 

玉座から立ち上がるギュウキュウ。

 

ギュウキュウ『スヒィンとの婚礼の儀を控え、少し趣向をこらそうと思ってな。』

 

シンノパクラはギュウキュウの顔を覗きこむ。

 

シンノパクラ『と、いいますと?』

ギュウキュウ『お前は臣下でありながら献上品は他王国より多い。これは善政をしている証拠だ。』

 

頭を下げるシンノパクラ。

 

シンノパクラ『は、ははぁ。』

ギュウキュウ『お前の収めるエラバの地は質のいい豚の産地。』

 

頷くシンノパクラ。

 

シンノパクラ『は、まことに。』

ギュウキュウ『それで、ひき肉を手配しようと。』

 

シンノパクラが笑みを浮かべて一礼する。

 

シンノパクラ『では、産地直送で質のいい肉を送りましょう。』

 

首を横に振るギュウキュウ。首をかしげるシンノパクラ。

 

ギュウキュウ『いや、わし自ら行く。』

 

眉を顰めるシンノパクラ。

 

ギュウキュウ『古代王国復古による民の様子を見てみたい。』

 

頷くシンノパクラ。

 

シンノパクラ『して、日取りは?』

ギュウキュウ『今からだ。』

 

眼を見開くシンノパクラ。

 

シンノパクラ『何も今日でなくとも…まだ式には日数がございますし。』

ギュウキュウ『ただ、民を見、豚の目利きをするだけだぞ?』

シンノパクラ『いえ、しかし、こちらにもお迎えするという準備が…。』

 

眉を顰めるギュウキュウ。

 

ギュウキュウ『視察も兼ねておるが、善政を施しているお前の領地ならばいつ行っても問題はなかろう。』

 

シンノパクラの顔を覗き込むギュウキュウ。床を見つめるシンノパクラ。

 

シンノパクラ『分かりました。』

 

シンノパクラは立ち上がり、顔を袖で隠して一礼する。

 

シンノパクラ『…では、私は王をお迎えする為に一足先にエラバの地へ。』

 

頷くギュウキュウ。去って行くシンノパクラ。

 

C4 下処理 END

-7ページ-

C5 挽肉

 

ヂョルガロン王国霜降りの森。山道を行く騎乗するギュウキュウとシンノパクラ直臣のシルとダン・ユー。彼らは木々を抜け、エラバとヂョルガロンとの境界、ミンチ丘陵地に張られる天幕へ駆け寄る。馬から降りるダン・ユー。

 

ダン・ユー『ヂョルガロン国王!ギュウキュウ様の御成り〜!』

 

天幕の布が揺れ、シンノパクラとその配下達が現れ一礼する。

 

シンノパクラ『いやいや、ようこそエラバの地へ。』

 

眉を顰めるギュウキュウ。

 

ギュウキュウ『…ヂョルガロンとエラバの接点。こんなところでは…。』

 

シンノパクラは首を横に振る。

 

シンノパクラ『いえ、ここで小休止ということです。お疲れになったでしょう。』

 

ギュウキュウ達は頷く。

 

ギュウキュウ『そうだな。』

 

馬から降りるギュウキュウ。シルとダン・ユーがギュウキュウの馬と自分達の馬を持っていく。一礼するシンノパクラ。

 

シンノパクラ『どうぞ。』

 

天幕の中へ入って行くギュウキュウ。シンノパクラは周りを見回し、ギュウキュウの後ろを付いて行く。天幕の中には机と椅子が置いてある。

 

ギュウキュウ『…机と椅子だけか。』

 

溜息を付くギュウキュウ。手を擦り合わせながらギュウキュウの前に跪くシンノパクラ。

 

シンノパクラ『え、ええ。』

 

ギュウキュウは椅子に座り頬杖を付く。

 

ギュウキュウ『お主の事だ。もっと趣向を凝らしたもてなしかと思ったが…。』

 

シンノパクラは満面の笑みを浮かべる。

 

シンノパクラ『ここは小休止の場。流石に今日中にというのは時間がございません。』

 

袖で顔を隠して一礼するシンノパクラの細められた眼がギュウキュウを捉える。

 

シンノパクラ『エラバの我が居城ではきっとお楽しみ頂ける筈。酒も女も取りそろえておりますので。』

 

笑みを浮かべ、頷くギュウキュウ。

 

ギュウキュウ『ほっほぅ。それは楽しみだな。』

 

シンノパクラは一礼する。

 

シンノパクラ『長旅、お疲れでしょう。水などは…。』

 

首を横に振るギュウキュウ。

 

ギュウキュウ『いや、それには及ばん。お前の城に行くのが楽しみになった。』

 

喉を鳴らすシンノパクラ。

 

シンノパクラ『…そうですか。実は霜降りの森の搾りたての雫があるのですが。』

 

ギュウキュウは眼を見開く。

 

ギュウキュウ『おお、あの強壮剤として有名な。』

シンノパクラ『時間がたてば悪くなってしまいます。新鮮な内にと思ったのですが…。』

ギュウキュウ『いや、もらおう。』

 

一礼するシンノパクラ。

 

シンノパクラ『は、では持ってまいります。』

 

天幕の入り口で立ち止まるシンノパクラは眼を細めてギュウキュウを見、右を向いた後、左を向いて左側へと去って行く。天幕を見回すギュウキュウ。

 

ギュウキュウ『…肉挽きから身を立て、シルパラからヂョルガロンの王族と告げられて…。』

 

天井を見上げるギュウキュウ。

 

ギュウキュウ『人生とは分からんものだ。モングを打倒して、今ここに王としてわしが居るのだからな。』

 

立ち上がるギュウキュウ。

 

ギュウキュウ『民はわしをどう思う?古典王国復古による古代王国の復活。伝統の復古。テウシンの地に住まう民族の誇りを取り戻したのだ!民はわしを讃えるであろうな。善政を施した名君として…。』

 

ギュウキュウの脇腹に槍が刺さる。眼を見開くギュウキュウ。重武装した農民兵Aがギュウキュウの血で、顔を染め、血走った眼で睨みつける。

 

重武装した農民兵A『この暴君め!』

 

ギュウキュウの背中に槍が刺さる。天幕が破れ、現れる重武装した農民兵達。口から血を流し、倒れこむギュウキュウ。

 

重武装した農民兵B『かかあを返せ!妹を返せ!!』

 

ギュウキュウの体に次々と槍が刺される。

 

重武装した農民兵C『おらの孫を返せ!このロリコンが!ロリコンが!ロリコンがぁ!!』

 

罵声を浴びせられ、肉片へと化していくギュウキュウの体。血飛沫が重武装した農民兵達の具足を染める。

 

C5 挽肉 END

 

END

 

説明
・必要事項のみ記載。
・グロテスクな描写がございますので18歳未満の方、もしくはそういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。
・心理的嫌悪感を現す描写が多々含まれておりますのでそれういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。
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