EXCITORS エキサイターズ エピソード001「少年・ミーツ・少女」 #004
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EXCITORS エキサイターズ

エピソード001「少年・ミーツ・少女」 #004

TEXT/ILLUST by:尾岸 元(OXY_GEN)

LOGO by:Dr.N

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 ……で。

「結局ついてくとかストーカーかよオレたち」

 力はセルフツッコミにも余念がなかった。

 雛の家は、それはそれは大きかった。まさに豪邸という言葉がぴったりと当てはまる。学校の校庭ほどもある広さの、美しい庭の向こうに、まるで宮殿のような建物がどっしりとそびえ立っていた。

「すげえ……」

 呆然とその威容を見つめる力たち3人。彼らは、雛が、自分たちとは違う世界に住んでいる人間であることを、思い知らされたような気がした。

 雛は、大理石造りの門柱に備え付けられた、インターホンのボタンを押した。少しして、小さなTV画面に、お手伝いさんらしき人物が映し出される。

「お嬢様、お帰りなさいませ」

「ただいま。お友達を連れてきたの。お家にお招きしてもいいでしょう?」

「はい! もちろんです! 門をお開けしますね!」

 数秒後、ガシャンという音と共に、門が自動的に開いていく。

「ほへー……」

「行きましょう」

 雛は力たち3人を伴って屋敷の方へ歩き出した。見事に刈り込まれた庭木が立ち並び、季節の花が咲き乱れる庭を横切るだけでも数分かかる。

 そして、たどり着いた屋敷の建物は、近くで見るとその大きさがさらに際立った。おそらくは力たちの学校の校舎とほぼ同じ大きさだろう。もはや全てのスケールが違う。

「何部屋あるんだろう……」

 力はつぶやいた。

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 力たち3人は、大広間のような部屋に通された。豪華な家具や調度品が並んでいる。その中に、学生服とセーラー服の中学生が立ち尽くす図というのは、なんともちぐはぐなものだ。

 しばらくして、私服に着替えた雛が現れた。品のよいワンピースを着こなしている。

「お待たせしました」

「わあ……雛さん、ビーティフォー……」

 こころが思わずうっとりとした声を上げる。彼女もやはり女の子なのだ。

 と、雛に続いて、高級そうな背広を油断なく着込んだ、ウサギの男性が部屋に入ってきた。厳格そうな顔立ちだ。場の空気が張り詰める。

「彼らかね? お前を不良どもから助けたのは」

 よく響く低い声で、男性は雛に尋ねた。

「は、はい……」

 雛は消え入りそうな声で答える。

 男性は、今度は力たちに向き直った。

「娘を救っていただき、感謝する。私は花月園 善治郎[ぜんじろう]。雛の父親だ」

「花月園 善治郎!? ひょっとして、あの世界的大企業グループ、花月園グループのCEO!? 資産総額が小さな国のGDPをさえ超えるという、あの花月園グループの!?」

 幸之進がまたもや説明的セリフで驚く。

「え、えーと……どういたしまして」

 力とこころはぎこちなく頭を下げた。

「さて、私は仕事があるから失礼する。君たち、よければ雛と仲良くしてやってほしい」

「は、はい」

 善治郎はそのまま部屋を立ち去った。

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 しばらく、沈黙が辺りを支配した。テーブルに載っている紅茶や菓子にも、誰も手を伸ばそうとしない。

 5分ほど、その沈黙は続いた。

「……あの……」

 口を開いたのは、雛だった。

「あなたたち……すごい力を持ってますよね……どうして?」

「あー、オレたちにもわかんねえんだ。気がついたら使えるようになってた」

 力がぽりぽりと頭をかきながら答える。

「理屈ではないよ。考えるな、感じるのだ」

 幸之進が往年のカンフースターの名言を引用する。

「ワットにしても、雛さんを助けられたんだからそれでグッドじゃない!」

 こころがにっこりと笑いながら言う。

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 力たちが花月園邸を出ようとする時には、日が傾いていた。

「あの……とても楽しかったです。また……遊んでいただけますか……?」

 見送る雛の言葉に、力たちはうなずいた。

「今度はオレたちん家にも遊びに来いよ」

「おやぁ? それってプロポーズかな?」

「うっせーよノシン」

「See you again! また遊ぼうね!」

 大きな夕日がゆっくり沈んでいく。

 この日を境に、彼ら4人の運命は、大きく動いていくことになる。

 

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コメント
>>ペディ スペアさん 鋭意執筆中ですのでしばらくお待ちください(尾岸 元)
楽しみ楽しみ(´∀`)(ネオペディ)
>>Dr.Nさん その辺もろもろは続編をお待ちくださいwww(尾岸 元)
乙です!一気に読ませて頂きました!3人じゃなくて4人の運命なのな。雛お嬢様も能力者ってことか…?あと嫁の活躍をもっとw(Ν)
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