ゆりおん!3 ムギ×菖 |
ゆりおん!(ムギ&菖)
「やぁムギちゃ〜ん」
「いらっしゃい〜、菖ちゃん」
私の部屋に嬉しそうな表情を浮かべてあがってくる菖ちゃん。
大学に入ってからすぐに仲良くなった、明るくて小さくて可愛いイメージ。
私は事前に遊びに来ることを約束していたのでおやつを用意して
待っていた。
そのおやつを嬉しそうに食べながら、あるファッション雑誌を開いて
二人で覗くように見る。
「これ可愛いよね〜」
「そうね」
可愛い服装を見てあれ着たいこれ着たいって言っている姿を
横目で見ていて可愛いなって思った。目もすごい輝いてるし。
私はそこまで夢中になれるのって少ないから少し羨ましい。
私は少し笑ってしまうと、菖ちゃんは気づいたのか、下に広げていて
見ていた雑誌から視線が私の方へと移る。
「どったの?」
「え、ううん。私はこっちの服が可愛いかなって思う」
「おお、ムギちゃんのセンスかわいい!」
唯ちゃんたちとも遊ぶのは新鮮で楽しいけれど、こうやって自分たちの想像の中で
服装を楽しむのも良いものだ。
「ねぇ、ムギちゃん」
「うん?」
「今度の休みにさ。ちょっとお店いかない?」
「え・・・」
私の場合大体こういうのは詳しいお付きの人が買ってきてしまう場合が多いから
自分から買いにいったり見にいくのは珍しいことだ。
だから一瞬は意味を把握するのに時間はかかったが次第に楽しそうな気持ちが
強くなってきて目を輝かせながら私は二つ返事でOKを出した。
それからしばらく最近のお互いのグループの様子を話しあって面白いことを
言って楽しい時間を過ごした。
それから当日の朝。
私は菖ちゃんのお部屋の前で待機していると、少し時間に遅れて
出てきた。
「遅れてごめん、ムギちゃん」
「せっかくだから目的地とかで待ち合わせでもよかったかも」
「え、せっかくお互い近くに住んでるのに?」
「一度やってみたかったのよね〜」
「よし、じゃあ次の機会にやってみようか!」
「うん」
次の約束をしてから、二人で手を繋いで歩き出した。
少し歩いたところでバスに乗り換えて目的地に向かって走り出す。
その間も菖ちゃんは気を利かせて楽しいお話をいっぱいしてくれた。
「で、晶がね〜」
「あ、私も唯ちゃんから聞いた」
「あの二人ちょっと距離感近すぎるよね〜」
「え、そう?」
唯ちゃんはみんなに対して距離をほとんど取らないから
そんなものかと思ってたけど、菖ちゃんは少し怪しくないとか
薄い笑みを浮かべながら言っていた。
「え、唯ちゃんってみんなに対してそんな感じなの?」
「そうね〜」
「ほぇ〜、すごいなぁ」
「あ、着いたかも」
「ほんとだ。下りなきゃ!」
話をしているとあっという間に目的地近くにたどり着いた。
菖ちゃんは私の手を握りながら引っ張るようにして案内をしてくれる。
「あ、ここだ」
菖ちゃんが立ち止まってお店の名前を確認すると、そう呟いていた。
そして嬉しそうな笑顔で私の顔を見てると私まで嬉しい気持ちになってくる。
二人で手を繋いだまま来店してマニュアルの挨拶の声がかかった後、
私の顔を見た店長と思われる人が驚いた顔をするとすぐに表情を笑顔に戻した。
それから私達に近づこうとするのを私は菖ちゃんに気づかれないように
手で制止する形を取ると、店長さんはビクッという動きをしてから
恐る恐る店内スタッフルームに戻っていった。
「ほっ」
「どうしたの、ムギちゃん」
「ううん、何でもないの」
せっかく楽しい時間にお嬢様としての私は要らない。
そう今まで思ってきてるから相手には悪いけど特別な扱いは遠慮させて
もらっていたりする。
お店の中で並ぶ商品を眺めながら、お互いのデザインの違いがわかったり。
普段着ないようなものを着ているうちに時間があっという間に経っていた。
さすがに試着だけじゃ悪いかと思って店内を見回してどうしようか
迷っていると視界に悩んでいる様子の菖ちゃんの姿が見えた。
「どうしたの?」
「こういうの可愛いなぁって思うんだけど、スタイル的にも値段的にも厳しくて」
言われると私はその服と菖ちゃんを交互に見やる。
スタイルは悪くないけど、似合わせるには少し身長が低い気がした。
その時、私のことをジッとみる菖ちゃんは目を輝かせて私に声をかけた。
「ムギちゃんなら似合いそう!ちょっといい?」
「うん、いいよ」
そう言うと「一緒に」二人で試着室の中に入って私は服を脱ぐと
感嘆とした溜息が耳に聞こえてきた。
「ムギちゃん、肌綺麗〜」
「ありがとう」
「みんないいなぁ。ムギちゃんみたいな可愛い子独占できて」
みんなとは唯ちゃんたちのことだと思う。
これだけ褒めてもらえると嬉しいのと戸惑いが混じってしまう。
二人で小さな空間で一緒にいて、少し暑さと初めての近い距離に少しドキドキ
していた。服装関係でドキドキしたのはさわちゃん先生の時以来だろうか。
「何だか楽しいなぁ」
「私も…」
そんな気持ちのまま着替え終わると試着室から出て菖ちゃんから少し離れて
着た姿をちゃんと見せるときゃーっていう声が上がり両手を頬に当てて喜んでいた。
その上、少し顔が火照ったように赤らめている。私も少し暑く感じていた。
それは店内の気温の調整とかじゃなくて、菖ちゃんとのあの時間で
体温が上昇しているのだろう。
「私、これ買うわ」
「え?」
「菖ちゃんの好みのだし、私も気に入ったし」
「あ、でも値段が」
「私あまりお金使わない方だからけっこう溜まってるのよ」
半分本当で半分嘘。
私は趣味で使うことはあまりなく、みんなで楽しむためのお茶とかお菓子は
惜しむことなく遣っている。
…質とかは関係なくね。
とか思ってハマってる駄菓子について自分の中でごまかしていた。
「そっか、それだったらいいか」
「・・・」
「うん、どうしたの?」
「なんでもないわ〜」
菖ちゃんの笑顔が輝いててドキッとした、なんて言えない。
彼女は友達として私と接しているのに。さっきまでこんな気持ちわかなかったのに。
どうしたというのだろう…。
帰り道、そろそろ寮に着こうかという時にこれまで手を引いてくれていた
菖ちゃんの足が止まり、苦笑いしながら呟いていた。
その言葉が聞こえてしまい、私はつい反応をしてしまう。
『やっぱりムギちゃんには伝わらなかったかな…』
「え?」
「え?」
二人間の抜けた声を出してキョトンとしてお互いを見詰め合っていた。
「もしかして私の声聞こえてた?」
「え、ええ・・・」
私の返事に菖ちゃんは顔を真っ赤にして手を横に振って否定した。
「な、なんでもないよ!ほ、ほんとに」
急にこんな元気がなくなっている彼女が心配で私に気をつかってるんじゃないかと
思いもう一度確かめた。本当に?って。すると…。
「う…」
「菖ちゃん?」
「あはは…恋ってさ。理屈じゃないなぁって思ってさ…」
何のことだろうと思ったけれど、直後にすごく熱い視線を向けられて気づいた。
私は離れそうになった手をぎゅっと握って微笑んで返した。
「私も・・・かな」
「えっ?」
あまりに愛おしい表情をする彼女に私は思い切り抱きついた。
小さくて柔らかくて暖かい。
「ムギちゃん・・・?」
「私も今同じ気持ちかも・・・」
「え?」
「菖ちゃんのこと好きかも…」
言うと力強く離されて私と目を合わせると、すごく顔を赤くしていた。
そしてちょっと寂しげだった顔が晴れやかな笑顔に戻った。
「ちょっと、嬉しすぎて言葉にならないんだけど」
「私も…」
好きな子は何人かいたけど実際に口にしたのは初めてかもしれない。
こんな短い期間でこんな些細なことでこの気持ちに気づくとは思わなかった。
そして気づいてよかった。こんな幸せな気持ちになれるなんて。
「でもどうすればいいのかわかんないな〜」
嬉しそうに言って私の胸元に頭を当てる菖ちゃんに私は。
「慌てることじゃないわ。少しずつ今まで通りの中で気持ちを育んでいこう」
「そうだね」
私達はお互いを見やって「ふふっ」と笑うと手を再び繋いで寮の中へと
入っていった。
いきなり私たちが急接近したのを唯ちゃん達が逃すはずなく、
私達は良い意味でからかわれたりしたけれど。
とても幸せに過ごした。
「これからもよろしくね」
私は二人きりになったときに菖ちゃんに言うと、当たり前のように
菖ちゃんはにこやかにこう言った。
「こちらこそっ。幸せになろうね」
頼もしいほどはっきりとした彼女を見て私は安心した。
そして最近するようになったキスを軽くしてから、菖ちゃんは自分の部屋に戻る。
玄関まで見送って私は静かに鳴る胸の鼓動に浸って。
「あぁ、恋ってこんなにも幸せで切ないんだなぁ」
言ってからさらに秘めた気持ちはこの幸せを手放さないことだった。
私達はお互いを信じていればどこまでも一緒にいられる、そう思う私なのだった。
お終い
説明 | ||
あんまり熟読してないから菖どんな感じだろうとかちょっと不安だったり。あんまりない組み合わせを色々試したくなりますね。こういうのも割りとアリだと思います。はい |
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