Star Breakers -3rd.key-
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  アリミナルは、元々罪人だった者が集まってできた国である。

 罪人と言っても殺人や放火といった重犯罪ではなく、家計の苦しさから金品や食物を盗んだ

 等という内容の、言ってみればやむにやまれぬ事情を持った罪人達である。

  そのやむにやまれぬ盗みを働いたものの中には、貴重な古書などを換金しようとした者もいた。

 国に住むあるシミラ族の青年がその一人である。

  彼が盗みだした一冊の本には、「魔術」という伝説上の力を彷彿とさせる内容が書かれていた。

 おおよそ現代では不可能としか言いようがない技術。

 瞬く間に炎を消したり、触れもしない相手を吹きとばしたり。

 しかしこれらは、現象を起こす方法こそ謎だが、原理そのものは科学的に証明できる事象なのだ。

  その本の題は「『導術』〜空気を操る力〜」。

 マティルは、この技術『導術』を使いこなす、まれな素質を持った少年である―――。

 

 

 

     3rd.key「剣術と導術」

 

 

 

  「よし、俺から突っ込む。まずは「補助系」で頼むぞ」

 カービィは緊張した声音でマティルに指示を出した。大剣の柄を握りしめた両手からは、

 手汗が絶え間なく噴き出している。

  魔女の眼には先ほどとは打って変わって攻撃的な色が浮かんでいる。

 このままじっとしていてもいなくても、すぐに仕掛けてくるだろう。ならば、ダメージを

 与えたことでペースを掴んでいる今の内に、速攻をかけるのが最善の策といえる。

 あとはマティの後押し次第、一撃目がカギになる…あとのことなんて考えていられるか!

  「マティーーーーーーーーーッ!」

 最も信頼している友の名を叫び、魔女の元へ跳び込んだ。攻撃を当てられなくてもいい、

 まずは自分の動きを奴の眼に追わせる―――。

  カービィは、魔女の周囲を体に負担がかからない程度の速さで駆け回った。

 時には剣を掠めるようにしながら、魔女の反応を伺う。

 「何を企んでいるかは知らないけれど、自分の身体を使って追う気はないわ、よ!」

 魔女はカービィの軌道を先回りするようにして氷の球を打ち出した。

 剣で弾き返しつつ魔女の方を見ると、視線はこちらに向いていない、それではダメだ。

 勝機を見いだせないまま終わってしまう。こうなったら―――。

  今度は少し魔女に近い位置で、攻撃の回数を増やした立ち回りを行う。

 すると、刃先を向けるたび鬱陶しそうに身を引いた。しめた、これなら自分の姿は

 魔女の視界に入っている!今の速さが焼き付いているはずだ…!

 「あんたの眼に、俺の姿は、入っているかいっ!?」

 剣を振りかぶりながら尋ねると、

 「私の眼は節穴だって言いたいのかしら―――しっかり焼き付いているわよ、殲滅対象の姿が!」

 と正直な返事が帰って来た。どうやら挑発と思ってくれたようだ。今だ!

  カービィはバックステップでマティルの正面へと戻った。これが「合図」だ。

 「カービィ!…『凝酸(ぎょうさん)の平(ひら)』→(から)『押(おう)』!」

 マティルは叫びながら、その赤く長い舌を伸ばした。

 その舌はステップの反動を利用して前進する友の背に一直線に向かっていき―――

 魔女の元へと跳ぶカービィのスピードを、飛躍的に上昇させた。

 

  魔女は仰天した、少年二人の策士ぶりに。確かに、やけに自己主張の激しい攻撃をしてくる

 とは思っていた。

  だがその攻撃は全て攻撃で無いかのように空を斬っていたので、拍子抜け気味だったのだが…

 よもやそれすらもが、剣を持った彼の作戦だったとは。

  魔女は今更ながらに、彼らの思惑を悟ったのだ。遅すぎるほど今更に。

  自分の動く様を私の視界に入れようとしてきたのは、彼の「標準の」スピードを私の眼に

 焼きつけさせ、覚えさせるため。今現在のスピードを嫌というほど頭に叩き込んでおけば、

 突然のスピードの変化にどうあっても脳は対処しきれない。

  攻撃を全て当てないようにしていたのは、「当たるかも知れない」という緊張と警戒を

 最小限に縮めるため。これもスピードの変化と同じく、自然と脳に生じている油断が

 「動かないでいても当たらないだろう」と思わせている。

  全て、全てあの少年の作戦。そして二人の「絶対に成功する」という信頼の結果だったのだ。

 最初はレベルを見るだけだったが、こうなったら一撃くらいお見舞いしたいものだ―――

  直後、そんなことも叶わないかもしれない、と、不覚にも思ってしまった。

 「どおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

  叫び声に伴い、黒玉の少年と、彼の持つ横倒しになった大剣が眼前まで迫っていたのだから。

 

  手応えは、あった。くの字に折れ曲がる魔女の胴体。腹の真横にある耳に届く、

 メリメリという骨のひしゃげるような音を聴く限りは、思ったより深めに入ったようだ。

 今度は衝撃波がくるより前にマティルの元へ戻る。

 すかさず、合わせた舌と掌が弾けるような音を 立てた。

 「ナイスサポートだ、マティ!もうひと踏ん張りで帰れるぞ。…たぶん」

 「まさかホントに上手くいくとはね…空気中の酸素を固めて質量を大きくする『凝酸』。

  前に作戦としてあげてはいたけど、平べったくしてカービィの

  背中を押すなんて考えつかないよ」

  のどかに言葉を交わしていた二人の背後に、ゆらり、と。

 起き上った魔女のローブの両袖から、真空刃が飛び出した。カービィの元に向かって。

  弾かれるように後ろを向いたカービィは、咄嗟に剣で受け止めた。が、両横に分散した

 刃のかけらが頬を斬り裂いた。真黒い身体から体色によく似た色の赤黒い血が噴き出す。

  「ぐぅぅっ!!」

 初めて見えた魔女の口は―――両端がつりあがり、三日月形に裂けていた。

  「まさかここまでできるとは思わなかったわ…もう手は抜かない。気を緩めたら、

   殺してあげる」

 虹のような色を散りばめたローブから、今までより更に、重く冷たい空気が流れだした。

 これは…本当に、やばい。あと何秒この場に立っていられるかわからないが、

 どう動けばいいかもわからない。

  戸惑うカービィに向かって、マティルが口を開いた。

  「カービィ…サポートは任せて。炎、氷、真空刃、この辺りなら多分一通り防げる。

   今度は僕が、僕の考えでカービィを助けるんだ」

  怯えの色はみじんもなかった。自分が力を尽くせば、彼もそれに応えて力を尽くしてくれる。

 頭脳明晰で少し臆病、けれど自分と同じくらい強くてとても優しい。

 今隣にいるのは、そんな強くて頼もしい、最高の親友だった。

  マティルが指示を出し、俺が動き、マティルがそれをサポート。

 それが俺たちの本当の戦闘スタイル。どちらかが欠ければできない戦い。

  ここからが、俺達二人の真骨頂だ―――。

 

 

 

     4th.key「本領発揮」

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  どうも、義之です

 剣術と導術、という割には剣術があまり出ていません(汗

  筆者個人としては、もうちょっと一話での進行スピードを速めたいですねー…

 といっても素人に文章量の調節なんて細かいことができるかはわかりませんが

 思いつき主体で無く、もうちょい構成の試行錯誤にも時間を割きたいな、と思っています

  導術の名前は当て字ばっかりだからルビ振るのが大変だなあ…

それでは、次は4th.keyのあとがきでお会いしましょう〜

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