真・恋姫無双 〜乱世に吹く疾風 平和の切り札〜 幕間その1 |
後漢末期182年
この時期は既に漢王朝の力は全盛期より見る影もないほど脆弱化しており、その様は老いて骨肉を腐らせ始めた巨龍のよう。
この頃から既に、漢の政治には賄賂が蔓延っていた。
都や各州で官僚が出世をするために最も手っ取り早かった手段が、その賄賂であった。
例えどんなに政治力が無かろうと、世の情勢を変えるという思いが無かろうと、金銭を持って上に媚びれば容易く上官になり上がることが出来たのだ。
そしてその賄賂の出処は、農民たちであった。
強い権力を求めた凡愚は、昇進に必要な賄賂を集めるために民たちに重税を課し、軍事力を増やそうと徴兵制度を更に増強する。
民の思いを一切汲み取らない、非情な政策の数々は改善の方向を見せぬまま時を経た。
その結果、世には匪賊が跋扈(ばっこ)し、群れを成して己より弱い人々から略奪の限りを尽くすようになった。
食糧、衣服、金品、建物。
価値のあるものは、揃って賊たちのターゲットとなった。
盗賊は狂喜し、笑いを零す。
民は剥奪され、血と涙を流す。
大規模な反乱を起こすのも、そう遠くない未来に始まる事となるだろう。
月浮かぶ夜間。
とある州の片隅に存在する、人目のつかない山奥の洞穴にて。
「ふむ…結界に揺れが生じている。となると、奴らの誰かがこの世界に入り込んで来たかしら」
高めの声色が、暗い洞窟内に深々と反響する。
洞窟の中には小さな影が一つ。
「結界の震源ポイントは………幽州の?郡?これはまた、随分都から離れた所へ侵入したじゃない。一体誰がやって来たのかしら?気の短い左慈や効率主義の于吉が来たとは思えないけど……」
かつての同類の名をあげつつ、影は思慮を巡らせ始める。
「あの二人でないとしたら誰になるのか……貂蝉、卑弥呼、帥升、マルクス……慎重なあいつらなら可能性は他より高そうだけど、まだまだ不鮮明ね」
影はため息を一つつくと、ごそりとその場から動きだし、光が差し込む入口へと歩む。
そして月光が身体に差しかかる場所まで歩いてくると、影はその足を止め、天に浮かぶ月を仰ぎ見る。
月は蒼く儚い光を大地へ包むように照らし、周囲の木々を幻想的に映し出す。
「けど、誰が来ようと関係ない。ここから私の世界が始まるの。『管理者』なんてくだらない使命に囚われる事の無い、何処の誰かも分からない奴らが生み出した外史に囚われる事の無い、私の世界が……」
空遠くに浮かぶ月に向かい、手を差し伸ばす小さな影。
表情こそは見えないが、その動作はまるで欲しい物を望む子のようだった。
「時代もそろそろ戦乱の幕開け。クフフ……はてさて、これが世に現れた時、この世界はどんな風に混乱するのかしら?」
月に伸びた手を引っ込め、影は自らの懐を探り出すと、影の手には一本のガイアメモリが握りしめられていた。
「さて……まずは侵入者が誰なのかを知っておかなくちゃね」
【あとがき】
というわけで幕間その1、終了です。
別に次回の第4話の冒頭に組み込んでも問題ないのですが、
やたらとリアルが忙しくなったりして更新が遅れるのもアレでしたし、
いっそ今回のように視点がガラッと変わったら、回を分けるのも良いかなと思いまして。
今回の幕間は【管理放棄者(イレギュラー)】が侵入者の存在に気付き、何かしらの対策をとると言ったところでしょうか。まぁ、別に対策というほど大それたものでもないんですけどね。
そしてさりげに一刀がやって来た時の年号も、今回で表記。
時は182年。黄巾の乱の2年前にして、劉備が関羽や張飛と会う前の時代です。
まあ前回で劉備が母親と暮らしているところで何となく察した人もいるかもしれませんが…
ちなみになぜわざわざ2年前にしたのかというのには、一応理由があります。
別に1年前でも問題ないんですけどね。一応2年という風にしました。
まぁこの辺りは深く詮索はしなくても大丈夫です、あくまで準備期間のようなものですから。
それでは今回登場した影…【管理放棄者(イレギュラー)】の紹介です。
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○人物紹介○
【管理放棄者(イレギュラー)】
今回、一刀がガイアメモリの存在する恋姫の世界に行くことになった原因。
外史の管理という己の使命に嫌気がさし、外史世界に住む人間の命と名を奪い、そのまま世界に閉じ籠った。
口調や影の大きさから判断すると女性のようだが、果たして…?
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以上です。
それでは、次回もよろしくお願いします!
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幕間です。 夏休みを利用して旅行に行こうかと考え中です。 なんか温泉とかリラックスできる施設に行きたいなぁ… |
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