IS.B 馬神 弾という名の操縦者 2nd break 第一章 黒煌編 〜ep.10 荒れる黒き捕食者? |
勝斗が喰われた…
それを物語る様に左手がアルバトリオンの口から、はみ出ている。
その周りにも、鮮血が飛び散っている。
【俺の遊びとも知らずに本気で挑むとな、愚かだな…】
全てはアルバトリオンが作った虚像にしか過ぎない。
勝斗が見えたのは偽りの実体だった。
そしてアルバトリオンは、獲物を狙うかのように旅館に目を向ける。
旅館 大広間前の中庭
「勝斗、大丈夫かな…」
「あいつは私のワイヤーブレードを逆手にとった奴なんだ、言うまでもない」
シャルロットが勝斗の心配をするが、ラウラが分かりきった様に言う。
「安心しろ、勝斗はまず一度も負けた所が無いからな」
千冬がみんなの心配を和らげるように言い出す。
「そうですわ、あの方が敗れるなんて予想もしませんわ」
セシリアも千冬の言動に頷く。
鈴とまゐも勝斗が勝つ事を信じていた。
だが、一番アルバトリオンに恐れていたのは、弾だった。
しかし、弾は否定出来ない。
出来る事は襲われる覚悟を決めるだけ。
【ぐおおぉぉぉぉぉおお!!!!!】
「「「「「「!!!」」」」」」
聞こえたのはアルバトリオンの咆哮。
弾以外は終止符をうったと思い込んだ。
「終わっ………え…?」
「…なっ?」
「そんな……」
「馬鹿なっ……」
「なんで?」
「あり得ないよ………こんなの…」
「…………!!!」
弾の予想通りだった。
千冬、セシリア、まゐ、ラウラ、鈴、シャルロットはこの事態には予想していない處か、予想も出来なかった。
上空にはアルバトリオンがこちらを睨んでいた。
「ちょっ、弾?」
「待て!!! また二の舞になるぞっ!!!」
弾は咄嗟にISを展開し、確実にアルバトリオンを誘導させる。
【またか、お前とはもう飽きたんだよ!!!】
「みんなを喰わせない!!! 」
【そんな事言っても、ただの耳鳴にしか過ぎないんだよ!!!! ふんっ!!!!】
「ぐあぁっ!!!!」
弾はアルバトリオンの頭に攻撃しようとしたが、下に突き落とされた。
「ぐっ!!!!」
さっきの戦闘時の負傷が再び痛む。
むやみに動くと、徐々に痛む。
故に、動き辛くなる。
【ぐおぉぉぉぉぉぉぉおおお!!!!】
アルバトリオンは大広間の前にいる6人に口を大きく開けて襲いかかる。
「みんなっ…!! 逃げろっ……」
弾は守りに向かおうとしたが、既に体は動かないでいた。
彼女らは、信じられなかったのか、反応が遅れてしまい、思わず目を瞑って腕で顔を覆う。
「やめろっ!! やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉおお!!!!」
弾が絶叫したその時、ISが突然光出し、風が弾を包んだ。
【っ? む?】
アルバトリオンは空中で静止、五人が喰われる寸前だった。
【ぐっ? ぬぉぉっ!!!】
アルバトリオンはいくら力をいれても、ピクリとも動かない。
「……………え? 何があったの?」
「む?…………」
よく見ると、アルバトリオンの周りには、雫のように輝いている小さな塊が無数にある。
それが、アルバトリオンの動きを押さえていたのだ。
【ぐぬぬっ!! この力……アマツマガツチかっ!!!】
『その通りです。気がつかなかった様で?』
呆然としている弾のISから、小さくアマツマガツチが出てきた。
【やはりか…、貴様っ…最初の戦いに変に違和感がした、何故[貴様の力]を発揮しなかった!!!】
『あれが戦い? あらゆる生命を我武者羅に喰いつくした貴方は、強さ何て関係無い筈です』
アルバトリオンは図星だった。
[ただただ喰う]だけは、例え真剣に戦った様に見えても、戦いの一文字もない。
【語るな!! 弱い奴は全て、俺の餌食だ!!!】
『では、急激な成長を成し遂げる者ならどうでしょう』
【はっ?】
アルバトリオンはアマツマガツチの言っている事が理解出来なかった。
『さ、弾さん』
「ああ、今度こそ倒す!!」
【弱い奴はやっても喰われるだけなんだよ!!! 俺とやり合うほどではないわあぁぁぁぁぁ!!!!!!】
ーその頃、廊下の影からその出来事を見ている者がいた。
ーーその人は箒、強い意志を持った目で真っ直ぐ見つめている。
ーーー箒の首に掛けているものは、蒼い勾玉だった。
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