とある傭兵と戦闘機の物語〜(SW編第六話前編)エースの在り方
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 「あーあ・・・やっちゃったな〜・・・」

 

結局あの後、あの写真を中佐に見られた瞬間に私は死を覚悟した

 

すると中佐は顔色変えずに私にこんな命令を下した

 

 

 

 ”フェイリールド大尉、あなたは今日より四日間基地内待機を言い渡します”

 

 ”フィアちゃんも一緒にです。手の届く範囲に置いてしっかり守りなさい”

 

 

 

そうして、私は中佐の命令に従って今は自室のベットに寝っ転がっていた

 

 「本当に怒らせちゃったなぁ・・・」

 

本当に怖かったよ。あの時の中佐

 

これは本格的にマズイ方向に向かってるのかもしれない

 

 「お母さんお母さんっ」

 

と、窓から外を見ていたフィアが私を呼んだ

 

 「ごめんねフィア、私のせいで外に出られなくなって・・・」

 

 「いえっ、私はお母さんと一緒に居られればそれでいいですっ」

 

あ〜・・・フィアがいい子すぎて逆に辛いよ・・・

 

 「それよりあれっ」

 

 「んー?・・・あ、ミーナ中佐帰ってきたんだね」

 

輸送機が一機、基地の滑走路に降り立つのが見えた

 

でも、それだけの事だ

 

私達には関係ない

 

 

 

 

 

 

 

 「率直に聞くぞミーナ」

 

 「何かしら?」

 

輸送機の中で、マルタ作戦の為に501に派遣されたウィッチ・・・ハンナ・マルセイユ大尉

 

別名ーーーアフリカの星

 

容姿端麗で、世界中にファンをもちながら、サインを嫌う

 

第31飛行隊・・・ストームウィッチーズのスーパーエース

 

一応、私達と同じJG52所属だったけど・・・

 

 「この基地に ”蒼の霞” は居るか?」

 

 「何の事かしらね。そんなウィッチはうちには居ないわ」

 

 「そうか」

 

案の定、フィリアさんを牽制しておいてよかった

 

また下らない事で頭痛の種を作りたくないわ

 

 「それより、こちらに転属になった整備兵さんは?」

 

 「ああ、そうだったな。おーいスズネー・・・って眠ってるのか」

 

と、向かい合ってる座席でコクコク寝入っている少女に目を向ける

 

 「扶桑人?」

 

 「ああ、とんでもない腕の持ち主だぞ。この作戦が無事に終わればスズネは正式にこっちに配属される」

 

 「彼女の原隊は?」

 

 「ーーー民兵だよ。ただのな」

 

 

 

 

 

 

夢を見ていた

 

懐かしい、本当に懐かしい夢を

 

食堂で当時の仲間と皆で簡単なパーティーを催していた時の話だ

 

航空学校を卒業して、その同期生皆でバカ笑いしながら楽しんでいた

 

そして、正面に座るのは新しい寮機ーーー

 

自分の名前を知らないって言っていた

 

青い髪を長く伸ばした私と同い歳の女の子だった

 

傍から見ればすっごい美人だけど、何でかは知らないけど男口調

 

 「ーーーー」

 

何を言っていたかは覚えていないけど

 

これだけは覚えている

 

その寮機以外の同期のパイロットは皆ーーー死んだという事

 

そして私自身も・・・

 

 「ーーーーい、大丈夫か?」

 

外から聞こえる声に耳を傾ける

 

そうして私は今という現実に戻った

 

 「どうしたんだ?何で泣いてるんだ?」

 

 「え・・・」

 

知らぬ間に、私の頬を涙が濡らしていた

 

何で・・・今更・・・

 

 「何でもないよ・・・ちょっと昔を思い出してただけ」

 

 「お前の過去って言うと・・・」

 

 「うん、向こう側の事」

 

 「・・・そうか」

 

そうしてタラップから降り立った場所

 

海沿いに存在する遺跡を基に作られた基地

 

時折聞こえるさざ波の音と潮風が、乾燥した灼熱大地で生活を送っていた私を

 

歓迎してくれているかのように染み渡る

 

さて・・・ここが501統合戦闘航空団

 

私の・・・新しい居場所か

 

 

 

 

 遡る事数時間前ーーー

 

 

 

 「なんとか大和は到着したようだな」

 

 「あれが無事だっただけでも501は再度創設した甲斐があったと言うものだな」

 

ここは連合軍総司令部

 

ミーナがブリタニアからわざわざここに出向いた理由は一つ

 

とある場所を占拠しているネウロイの攻略作戦の承諾を戴きに来たのである

 

しかし待っていたのは思わせぶりな上層部からの通達とアフリカのエース

 

そして・・・

 

 「願わくば、蒼の霞様の姿の一つくらい拝みたいものだな」

 

総司令部幹部四人のうち一人が、そう呟いた

 

あたたかも、501にそのウィッチが存在するかのように

 

 「さて?何の事か理解しかねます」

 

 「ただの老人の独り言だよ。気にしなくていい」

 

そうして、お互いの探りあいはまた不確定な結果に終わったと言える

 

でも、無能な上層部でももう気がついているはず

 

蒼の霞という存在が、501に少なからず関係しているという事に

 

だからこそ、上層部は二重の意味を持つ援軍を501によこしたのだ

 

援助とーーーそして監視を

 

 

 

 

 

 「・・・・」

 

基地を案内されていた一人の整備服を着た少女は鋭く感覚を張り巡らせる

 

 「(蒼の霞の情報収集か〜・・・でも何でまた私なんだろう・・・)」

 

この基地にに来る前、連合軍総司令部で見た写真

 

そこに写るのは、ウィッチとは思えないようなウィッチの姿

 

通常、ウィッチはストライカーを使わなければ空を飛ぶ事はできない

 

しかし写真の後姿・・・その濃い色をした長髪の娘は、明らかにストライカーを装備していなかった

 

素足を大空に預けるようにしていた。代わりに、背中に大きな翼をはためかせているだけ

 

 「(蒼の霞・・・一年前の決戦の空に現れた、たった一人のウィッチ

 

   その際鋼鉄の翼を持つ戦闘機を引き連れていたと言う・・・)」

 

圧倒的な、見る者全てを飲み込む程の飛び方は

 

その場に居合わせた全ての兵士の記憶に焼きつく程、鋭く速かったという

 

でも・・・そんな英雄のウィッチの後姿に、私はふと懐かしさと何か判らない違和感を感じた

 

私は・・・この娘を知ってる・・・?

 

 

 

 

 「あーあ、暇すぎて眠い」

 

 「だらけてるらそうなるんだ」

 

 「そーいやー嬢ちゃんどうしたんだ?」

 

 「今日は見てませんね」

 

 「体調でも崩したとかか?」

 

最後に、私が配属された整備班の休憩所にて

 

 「嬢ちゃん?」

 

 「ああ、俺達がよくお世話になってる女の子だよ」

 

 「この酒も、嬢さんからの差し入れだもんな」

 

 「つまみもだぜ。全く頭が上がらないってのはこの事だろう」

 

はははっと笑いながら、皆に言われた

 

どんな人だろう・・・そのお嬢さんって

 

 

 

 

 

 

 「っくシュン・・・誰か噂でもしてるのかな」

 

部屋で本を読んでいた私はなんとなくそんな気がして窓の外を見る

 

 「んーーーっ」

 

背筋をのばして、ちょっと深呼吸してリラックス

 

気分転換をしてもう一度本に手を伸ばす

 

 「おかーさん」

 

 「どうかしたの?」

 

 「・・・・・」

 

もじもじと、フィアが何か恥ずかしげに俯く

 

 「・・・といれ・・・」

 

あ、なるほど

 

 「フィア、一緒に行こっか」

 

 「・・・はい・・・」

 

かわいいな〜も〜

 

もう戦闘機だって事完全に頭から消失しちゃってるもん

 

と、言うわけでフィアの付き添いでトイレに行く事にした

 

ついでにハンガーにも行っておかないと

 

 

 

 

 

 

 「もう大丈夫ですっ」

 

 「うん、えらいえらい」

 

トイレから出てきたフィアの頭を撫でてあげながら、にっこり笑う

 

ーーーーーー

 

誰か・・・見ている?

 

ふと、そんな気がした私は周りを探るように見回す

 

でも、もちろん人影はない

 

 「どうしたの?」

 

 「いや、何でもないよ。それじゃハンガー行こっか」

 

 「はいっ」

 

そうして、私はハンガーに向かった

 

 

 

 

 

 

適当に基地を散策してて、何かちょっともよおした私はトイレを探して迷宮を彷徨っていた

 

べ・・・別に方向音痴とかじゃないもん・・・道忘れただけだもん

 

 「はぁ・・・何でこんなに無駄に広いんだろう?」

 

アフリカが恋しいよ・・・ここ何でこんなに複雑な造りになってるんだろう?

 

そうして歩いているとふと、人の声がしてその方向に向かう

 

 「やっと人と会える・・・」

 

曲がり角付近で、次第に声が鮮明に聞こえてきた

 

そして・・・私は歩みを止めた。止めてしまった

 

 「もう大丈夫ですっ」

 

 「うん、えらいえらい」

 

聞こえる会話だけなら、姉妹か親子・・・なんだけど

 

その声に、私は思わず反応してしまった

 

あまりにもーーー似ていたから

 

曲がり角から様子を窺う

 

そして、隠れて思わず口を塞いだ

 

何でーーーここに居るの?

 

どうして・・・ここに居るの?

 

私は、現実を受け止め切れなかった

 

 「(サイファー・・・なの?)」

 

いや、違う

 

口調も雰囲気も、私が知る彼女のそれではなかった

 

それにーーー

 

 「おかあさん、今日のごはんって誰がつくるの?」

 

 「んー、確かーーー」

 

・・・子持ちじゃなかったし

 

若すぎるから養子かなって思ったけど、似すぎてない?あの二人

 

 「それにしても彼女は一体・・・」

 

私が紹介された人員に彼女のような人物は存在しない

 

 「・・・うん、他人の空似・・・関係ない人だよね」

 

少し揺らいだ心に区切りを付けて、目の前にあるトイレに駆け込んだ

 

・・・あっ、脱出方法聞きそびれた

 

 

 

 

 

 「おはようございます」

 

 「おう嬢ちゃん、おはようさん」

 

 「「「おはようございます」」」

 

な、なんか日に日に連携がうまくなってる気がするこの人たち

 

まあ、いつも通りハンガーで整備兵の皆で話してるんだけどね

 

 「おーアンタか。零戦の修理完了したからなー」

 

 「ありがとうございますロリポートさん」

 

 「おじさん〜」

 

ひしっとフィアがダウェンポートさんに抱きつく

 

なんかフィアのお気に入りみたいだねこの人が

 

 「ヘリポートみたいに言うんじゃねーよ」

 

と、言いつつ頭を撫でるあたりに優しさがにじみ出てる

 

 「ロwwwリwwwポートwww」

 

 「ハミルトンてめぇ後で大気圏までぶっ飛ばしてやるから覚悟してろ」

 

そしてこの流れである

 

 「所で新入りどうした?」

 

と、整備班長さんが辺りを見回して聞いてきた

 

新人りって事は誰か新しく入ってきたのかな

 

 「さっきトイレに行くって基地内に行きましたよ」

 

 「・・・なあ、あいつこの基地の構造しってんのか?」

 

 「・・・・・・さぁ?」

 

あっ・・・これは遭難の予感

 

この基地ってどこかの遺跡に作ってあるって言ったよね?

 

その際に基地とその遺跡を行き来できるように建造したらしい

 

お陰様で基地自体の構造が複雑化するという事態が発生

 

地図とか無いから迷ったら中佐の固有魔法に頼るハメになる

 

運がよければ抜け出せるかもだけどね

 

 「嬢ちゃんすまねぇ、中佐に遭難者の報告をしてくれ」

 

 「了解〜」

 

私も遭難したからね〜最初

 

と、言うわけで執務室に行かなきゃ

 

 「フィア〜行くよ〜」

 

 「はいっ」

 

 

 

それから数分後、中佐がため息混じりに魔法力を発動

 

無事、新入り整備兵さんは見つかったらしいです

 

それにしても新入り整備兵さん、どんな人なんだろう?

 

 

 

 

そんな訳で昼食のお時間〜・・・なんだけどさ

 

 「おい、お前」

 

 「・・・・」

 

 「お前が蒼の霞か?」

 

 「人違いです」

 

 「そうか。食事中済まない」

 

いきなり何を聞いてくるんだかこの目の前の銀髪長髪さんは

 

明らかに探る視線送ってきてるんですけど

 

 「あぁ、フィリアはコイツ知らないのか」

 

 「知らない」

 

 「アフリカの星って言って、その名の通りアフリカの部隊のエースって事だよ」

 

 「ふーん」

 

 「相変わらずお前反応軽いなー」

 

 「エースなんかよりご飯」

 

エース<飯

 

相変わらず自分でもわかりやすい単純思考である

 

 「馬鹿な!!私が昼食に負けただと!?」

 

 「何言ってるのこの人!?」

 

アフリカの星が色々おかしい人だという事がわかった

 

 

 

 「(考えたら、アフリカの星と蒼の霞が揃うってこれまたすげー事態だよな〜)」

 

シャーリーはそう思いながら昼食を摂っていた

 

ちなみに、501のメンバーはフィリアを”普通のお手伝い”として接するようにという指示をミーナから

 

受けている

 

もちろん、フィリアの存在が上層部に露呈しない為の措置であるのだが

 

 「(案の定、噂に聞く勝負大好きな性格だったな・・・

 

   まあ沸点がおかしいぐらい高いフィリアなら受け流すだろうけどな〜)」

 

もぐもぐと、食事を続ける

 

 

 

 

 「ハァ・・・二時間くらい迷路彷徨ってましたよ」

 

 「すまん新入り、説明しておくのをすっかり忘れてた」

 

あれから放浪する事数分後

 

やっと救助隊こと敷設班の人が来てくれて迷宮を抜け出す事ができた

 

 「聞いたところによると、アンタもウィッチなんだってな?」

 

 「はい、一応は」

 

 「何で飛ばないんだ?」

 

整備班長はそう私に聞いてきた

 

 「・・・飛べないんです」

 

 「・・・何かあったのか?」

 

私が飛べない理由、それは唯一つ

 

ーーー怖いから

 

 「私は怖いんです。墜ちるという事が」

 

過去に・・・成す術もなく地上に落下する恐怖が私の体に空の恐怖を植えつけていた

 

以来、私はストライカーは装備できるものの、地面から離れられない

 

航空機のパイロットとして、私は致命的なトラウマを抱えてしまっている

 

 「・・・おまえさんが何抱えて生きてるかは知らんが、整備兵っていう肩書きなら

 

  その仕事はきっちりやってもらう。だがーーー」

 

 「?」

 

 「飛びたくなったらいつでも言え。飛ぶ為の翼を用意するのが俺達の仕事だからな。

 

  よし、お前等!!新人の自己紹介やっから集まれ!!」

 

一応、まだ自己紹介を皆に済ませてない状態だから

 

全員が集まった所で、私は自己紹介を始めた

 

 「本日付でこの501統合戦闘航空団専属整備兵に配属されました。篠原 鈴音と申します

 

  以後至らぬ点が多いかと思いますが、どうぞよろしくお願いします」

 

 「と、言うわけでお前等!!しっかり面倒みてやれよ!!」

 

 「「「了解!!」」」

 

そうして、自己紹介は何の問題も無く終わった

 

でも整備班長のあの言葉に、私は緊張より少し安心を覚えた

 

 

 

 

 

 「〜〜〜♪」

 

相変わらず、フィアは飽きもしないで窓から空を見上げていた

 

やっぱり恋しいのかな・・・でもそうだよね

 

元々フィアの居場所は、間違いなく際限なく広がる大空だったんだから

 

こんなハンガーより狭い場所なんか息苦しいよね・・・

 

 「・・・フィア?」

 

 「はい、なんですか?」

 

 「ここの・・・居心地、悪くない?」

 

私は思わず聞いてしまった

 

そして、フィアから返ってきた返事は

 

 「あそこより、こっちの方が温かいです・・・」

 

フィアが私に抱きつく

 

それだけで、私はその質問が野暮だったという事に気がついた

 

 「それじゃあ屋上に行こっか」

 

そうして、私はお気に入りの場所に行く事にした

 

 

 

 

 

 

 「あー・・・ミーナ怒ってるんだろうな〜」

 

 「ハルトマン、後で話がある」

 

 「そんな事どーでもいーよー」

 

あーもー・・・ハンナのせいでミーナ怒らしちゃった

 

基地に戻りたくないよ〜

 

 「ん?誰か居る・・・」

 

なんか基地のてっぺんに人影があった

 

あそこはストライカーでもない限り行けない場所なんだけど・・・あ、フィリアかな

 

 「何だ?・・・ッ!?」

 

と、小さい影が一つと、それを追うようにもう一つ影が落下を始めるのが遠目で見えた

 

 「クソッ!!間に合えーーーー」

 

ハンナがそれを見て急加速、多分助けようとしてるんだろうけど・・・

 

追うようにして落ちた人影は、先に落下した少女を強く抱きしめ、そして地面付近で落下が止まった

 

大きな翼が、こちらから確認できる程に大きく広がっていた

 

そして・・・加速を止めたハンナが、ただ呆然と空中に停止したままこっちを見ていた

 

 

 

 

 

 

 「よいしょっと・・・・うん、今日も景色がきれいだ」

 

私のお気に入りの場所はというと、基地の一番高い所

 

所謂、この基地の特徴である大きな女神の石像の足元だ

 

 「うわぁ〜っ」

 

フィアが驚くように、空を見上げたり端っこギリギリまで行って景色を眺めたりしていた

 

 「フィア、あまり忙しなくしてると落ちるよ〜」

 

 「は〜い」

 

返事をして、フィアが端っこで立った瞬間、

 

 ゴゥッ

 

 「あっ・・・」

 

ちょっと強めの風が吹き、そのせいでフィアがバランスを崩して足場の無い向こう側に傾いた

 

 「ーーーフィア!!」

 

私もその足場の無い場所に飛び込む

 

そして自由落下、何とかフィアに追いついてしっかり離さないように抱きしめる

 

 「魔法力ーーー開放!!」

 

翼を展開して大きく広げる

 

 「間に合えッ!!」

 

そして、ひと羽ばたき。

 

 バサッ!!

 

地面に叩きつけられるまであと1mの所で間一髪、停止する事に成功した

 

 「大丈夫!?」

 

ゆっくり地面に降りてフィアに確認するが

 

 「・・・・・・・っ!!」

 

怯えていた

 

本当に、硬く目を閉じて私の服を力いっぱい握っていた

 

 「大丈夫、大丈夫だから・・・」

 

必死に私は励ました

 

でも、フィアはずっとそのまま私にしがみ付いたままだった

 

 「とにかく基地に戻ろう」

 

と、私はハンガーに向かった

 

 

 

 

 「おーいロード、19番スパナこっちよこせー」

 

 「うい〜」

 

空中にスパナが舞う

 

 「サンキュー」

 

パシッとキャッチ、そのまま使い始める呼ばれる先輩整備兵

 

 「誰かオイルボトル持ってないかー?」

 

 「ほいー」

 

今度はボトルが放られる

 

そんな感じに、工具の交換やら運搬を投げて渡す

 

何でかって?

 

一番の時間短縮方法はこれだかららしい

 

私に聞かないで下さいよ・・・私もびっくりしたんですから

 

 「おい篠原、そこのバイスくれ」

 

 「はいよっと」

 

私も工具をポーンと投げる

 

うん、楽だしいいねこの方法

 

良い子は真似しちゃ駄目だよ〜?

 

 「ん、おい!?どうしたんだ嬢ちゃん!?」

 

と、整備班長が慌ててハンガーの通路に走っていく

 

何かあったんだろうか? 

 

 「すみません、濡れたタオルもらえませんか?」

 

 「お、おう。篠原!!タオルに水浸けて持って来い!!」

 

 「は、はいっ!!」

 

私は命令された通りに、洗濯された綺麗なタオルに水を浸して持って行く

 

嬢ちゃんと呼ばれるその人は、先日見かけたあの人だった

 

抱える少女はずっと蹲ったままだ

 

 「はい、どうぞ」

 

 「ほら嬢ちゃん」

 

 「ありがとうございまーーーー」

 

と、その人と目が合った

 

そして、その人は視線を外さない

 

 「ーーーー鈴音・・・なの?」

 

 「ーーーーえ・・・」

 

自己紹介した覚えはない

 

そして、その人は似ていたのではなくーーー一緒だった

 

 「サイファー・・・なの?」

 

そうして、私は再会した

 

かつての・・・私が残した・・・一番機と

 

 

 

 

 

 「鈴音・・・なの?」

 

私は・・・思わず口に出した名前を確認するように見つめた

 

二年前、私だけが生き残ったあの作戦

 

その時最後に失った同期のパイロット

 

明るめの茶髪を両サイドに分け、髪留めで留める形の髪型

 

雰囲気は明るめでいつも私は引っ張られる側だった

 

そんな、私のかつての二番機は整備服を着て目の前に居た

 

確実にーーー生きている

 

 「何だ?二人共どうした?」

 

 「い、いえ。何でもないです」

 

 「す、すみません班長」

 

鈴音からおしぼりを受け取り、そのままフィアの額に吹き出る汗を拭う

 

 「本当にサイファーなの?」

 

フィアを介抱する私に、鈴音は聞いて来た

 

 「そっちこそ、本当に鈴音なの?」

 

互いに、真実を探りにかかりあう

 

 「・・・・・・」

 

 「・・・・・・」

 

無言と沈黙の応酬

 

でも、答えが出てくるはずもなく

 

 「・・・おかあさん」

 

 「フィア、大丈夫?」

 

 「・・・怖かったです・・・墜ちるのが、あんなにも速くて怖いものだったなんて・・・」

 

フィアがしゃがんでいた私に抱きつく

 

私は優しく頭を撫でながら抱きしめた

 

 「そうだね・・・だからーーー」

 

 「それが嫌だから、皆必死に強く在ろうとする」

 

鈴音が、私の言葉の先を紡ぐ

 

私の考えた事を一瞬で理解できる人は、多分彼女ともう一人しか居ない

 

 「それが怖いから、自分がそうなるのを防ぐ為に相手を墜とそうとする」

 

 「そんな矛盾を生み出すのがーーー」

 

私は一呼吸置いて、口にする

 

 「「戦争という、ただ消耗するだけの憎み合い」」

 

いつか話し合った、自分達が戦う理由

 

その答えを知っているのもまた、彼女しか居ない

 

 「鈴音・・・」

 

 「サイファー・・・」

 

私は遂に再会を果たした

 

かつて失った二番機と

 

 「久しぶり・・・」

 

 「そうだね・・・」

 

互いに言葉を詰まらせる

 

私は必死に心から溢れる気持ちを押さえ込んでいた

 

髪留めとして常に身に付けていたタグを外す

 

 「・・・はい、忘れ物」

 

 「もしかして・・・ずっと持ってたの?」

 

 「返す人間が居なくなったのに・・・捨てるわけにも・・・いかないじゃん・・・」

 

堪らず、堪え切れず、枯れていたハズの涙が零れる

 

 「ほーら泣かない泣かない、やっぱり男口調よりそっちのが似合ってるじゃん」

 

そうして抱きしめられる

 

 「おかあさん・・・泣かないで」

 

 「うん・・・二人で同じ事言わないでよ・・・」

 

 

 

 

 「今あそこに割って入るのは男じゃないな」

 

完全に置き去りを食らった班長は他の整備の連中に休憩を言い渡した

 

 「ま、結局は蒼の霞も一人の少女だったって訳だ」

 

 「そうですね〜。どこかしら自分達は他のウィッチとは違うって認識してたんでしょうね。

 

  ま、お嬢さんはお嬢さんで変わりないですけどね」

 

うんうんと頷きながら作業を続ける

 

 「お、訓練に出てた面子が帰ってきたな」

 

ハンガー前方滑走路より回転音が聞こえてくる

 

 「お疲れ様です、ストライカーの格納及び整備をお願いします」

 

中佐がメンバーに指示を出す

 

次々に格納が進むストライカー達を眺めながら、俺は一人の少女に目を向けた

 

名をハンナ・マルセイユ。通称ーーーアフリカの星

 

俺からしたらただのやかましい娘っ子だが、実力は確かだ

 

アフリカのエースにして撃墜数が200を越すエース

 

しかも世界中にファンを持つ一端のアイドルときた

 

 「何だかな〜・・・超有名人を前にして幸運とも光栄とも何とも思えないんだよな」

 

そう思う原因はアレだ

 

世界の英雄として名だけが広がる”蒼の霞”

 

その力を目前で拝んでしまっちゃ・・・アフリカの星なんて普通のウィッチと同じにしか見えないんだよ

 

本当に・・・格ってモンが違いすぎる

 

しかも嬢ちゃんも引くほど美人だからな。写真出回ったら本格的にアフリカの星と同じ道を歩む事になりそうだな

 

 「あーなんか感覚ズレてきてんな、お前等はどう思うよ?」

 

休憩がてらに酒を飲む仲間に聞いた

 

 「どうなんでしょうね・・・少なくとも、俺はお嬢の方が気が合います」

 

 「俺もだ。なんだかな・・・よくわからんな」

 

そんな感じだ

 

馴染む感じって言えばいいのか?

 

 「ま、それが嬢ちゃんの優しさって事だ」

 

酒のボトルを指差して言う

 

 「そうですね」

 

ボトルをコップに傾けながら、俺達はその優しさの形を味わっていた

 

 

 

 

蒼の霞はーーー501に存在していた

 

目の前でズズネと話してるのが蒼の霞だ

 

さっきその片鱗をこの目で見た・・・見てしまった

 

一瞬の魔法力展開、その際に放出される圧縮された魔法力はとてつもなく大胆に、精密に制御されたものだった

 

それだけで、私は自分との差を理解した

 

その気になればネウロイの巣を消滅させる程の力の持ち主

 

上層部が危惧する理由も今なら理解できる

 

この力の矛先が・・・自分達に向けられるのを恐れているんだろう

 

だからこそ、私はーーー

 

 「お前をーーー殺さなくてはならない」

 

手に持つMG42の銃口を少女に向ける

 

それがーーーアフリカの基地を守るために出された提示だから

 

でも、私の引き金にかける指の震えが止まらない

 

 「先に言っておくけど、人を殺めるのはそれだけ勇気が要る事だよ。

 

  復讐が怖い仇討ちを恐れる・・・そんな事じゃあなたの心はその一発の銃弾で潰れるからね」

 

そうして考えた時には、蒼の霞が目の前に立っていた

 

 「でもね、ここでその銃口を私達に向けようものならばーーー」

 

正面で魔法力が膨れ上がるものを感じるが・・・動けない

 

 「私がーーー貴女を殺すから」

 

銀色に輝く刃を首筋にそっと当てられ、冷や汗と恐怖が私の背筋を這う

 

あと数ミリ柄に力が入れば刃は私の首に切れ込みを入れるだろう

 

 「な・・・ぜ・・・」

 

なぜ、そんな目で人を視れるんだ?

 

なぜ・・・人の命を奪う心構えを持っているんだ?

 

問おうとしても、口が、喉が、頭が、体が、私自身が言う事を聞かない

 

まるでその場の空気が、そのままコンクリートのように固まってしまったかのように

 

 「何でそんなに躊躇いがないかって?貴女には一生理解できないから説明しない」

 

と、蒼の霞が刃を収めると共に体の自由が戻る

 

肺に溜まった空気を強制的に排出しながら、私は膝を付いた

 

 「はあっ・・・はあっ・・・」

 

 「貴女は真っ当な英雄だよ。恨まれるような事も何一つない。だからこそ、私と貴女は違う」

 

 「・・・・・」

 

 「話す事も無いし、早くストライカーと武器を格納して休んだ方がいいですよ」

 

そうして言う少女は先程の蒼の霞とは思えないほど優しかった

 

優しい笑みを浮かべながら、心からそう告げてきた

 

 

 

 

 

 

 

 「サイファー・・・」

 

銃口を向けたハンナに威嚇するサイファーは、私が知っているサイファーとは違うように見えた

 

心の底から威嚇して、人に銃口を向ける事を絶対にさせないように

 

そりゃそうだよ

 

この世界で、そんな事する必要ないもん

 

 「篠原、そーいやお前嬢ちゃんと知り合いなのか?」

 

 「え、あ、はい。」

 

 「F−15・F−22・F−14・・・この中に知ってる戦闘機はあるか?」

 

 「!?」

 

 「それに驚く反応を見る限り、新入りも向こうの人間か」

 

 「という事は先輩も・・・」

 

 「ハミルトンもだぞ。それにしても何でこう鬼神が来てからここには同じような人間が集まるんだ?」

 

 「鬼神?」

 

私はその単語にふと反応してしまった

 

 「嬢ちゃんの事だよ篠原、こっちに来た時最後に確認した時間覚えてるか?」

 

こっちに来た時・・・

 

 「1993年4月19日・・・」

 

 「ならベルカ戦争が勃発する前だな・・・待てよ?」

 

 「?」

 

 「篠原。まさかお前嬢ちゃんの言ってた最初の・・・」

 

 「はい、航空学校同期卒業で同じ部隊に配属されてロッテを組んでました」

 

 「・・・つー事は篠原が円卓の鬼神の初代相棒って事か」

 

鬼神鬼神って・・・

 

 「さっきから何の事ですか?その鬼神って」

 

 「篠原、お前が墜ちた二年後に起きた戦争がある。ベルカ戦争だ」

 

 「・・・」

 

 「その戦争の・・・戦況をことごとく変えていった二機の戦闘機があるんだ」

 

それから聞いたーーー私が墜ちた後に何が起きたのかを

 

そしてーーーサイファーの空の航空記録を聞いた

 

 「・・・その相棒さんは?」

 

 「片羽の妖精の事か?さあな。生きてるのは生きてるんだろうけどどうなったんだかさっぱりだ」

 

 「そこは当の本人居るから聞いてみたらどうだ?」

 

そうして、私は友人のもとへ歩み寄った

 

 「サイファー・・・」

 

 「ん?どうかしたの鈴音」

 

 「まさかその娘って・・・サイファーの相棒の・・・」

 

 「フィアの事?うん、そうだけど・・・」

 

よしよしと、サイファーは少女の頭を撫でていた

 

もちろん少女の方も嫌がる事もなくにっこり笑顔でそれに応じている

 

 「嘘って言ってよぉぉぉぉ!!」

 

私からしたら否定の言葉が欲しかった

 

その相棒さんとの子供だなんて・・・!!

 

 「どこの馬の骨よぉぉぉぉ!?」

 

 「いきなり何喚いてるの!?」

 

 「そしてちびサイファーかわいい!!」

 

そのままちっちゃくなったサイファーに抱きつく

 

 「むきゅ・・・おねえちゃん・・・苦しいよぅ」

 

もう頬ずりしたくなるくらいかわいいっ!!

 

しかも、あのサイファーにもこんな時期があったと思うと余計可愛く見える!!

 

 「こらっ鈴音」

 

ゴッと、私の脳天に拳が炸裂する

 

 「おごっ!?」

 

その細い腕から繰り出されたものとは思えない程重い一撃だった

 

 「フィアが苦しがってるでしょ?」

 

と、私の腕から逃れたちびサイファーがサイファーの胸に飛び込む

 

 「よしよし」

 

にっこり、優しい笑顔が眩しい

 

私が知ってるサイファーはそんなに表情豊かじゃなかったハズなのに

 

今目の前に居る同期のパイロットは・・・ただの一人の女の子だった

 

 

 

 

 

 

なんか凄い誤解を招いた気がしたのは気のせい?

 

鈴音がフィアに抱きついて頬ずりする

 

 「こらっ鈴音」

 

グーを思いっきり頭に落とす

 

フィアが苦しがってるし困って半泣きになってた

 

 「それより何なの、いきなり嘘だとかどうとか・・・」

 

 「だって・・・その子って・・・」

 

 「うん、私の娘」

 

 「・・・え?」

 

鈴音が飲み込めてないような顔をする・・・だって”今は”娘だもん、フィアって

 

よしよしと、フィアの頭を撫でながら鈴音に告げる

 

 「よしフィア、おじさんの所に行っておいで〜」

 

 「はいっ」

 

フィアがトテトテとダウェンポートさんの所に走っていく

 

 「まあ積もる話もあるし・・そうだ、ヘイトも呼んで色々話し会おうよ」

 

こっちの事も、向こうの事も

 

 

 

 

 

 「あーだりぃよ・・・面倒くせぇよ・・・」

 

結局残業だよ。サービス残業

 

仕事が片付かないってのも俺の性格故かもしれねーな

 

俺以外の人間が居なくなった事務所で、一人とある資料を眺める

 

 「サイファー・・・お前は・・・何を抱えてあの空に居たんだ?」

 

資料に書かれているとある一族の名簿とーーー記録

 

その名簿の中に刻まれていた名前と皇族の複数の写真

 

資料にクリップで留められている一枚の写真

 

母親と父親に手を引かれる一人の少女

 

本当のーーーアイツの姿

 

何で判るのか?何でそう言い切れるのか?

 

その資料を見て、納得してしまった自分が居るからだ

 

何故かと聞かれても理由の答えようがない

 

ただ、その写真とアイツは同一人物であると直感的に悟った。ただそれだけだ

 

 「知らない方が気が楽だったのかもな・・・本当に」

 

ギシッとイスの背もたれにもたれ掛かる

 

するとふと、天井から白い羽が落ちてきた

 

 「ーーーーーー」

 

半ば反射的に手を伸ばした瞬間、俺の意識は真っ白な光の中に飲み込まれた

 

 

 

 

 ーーーとある空にてーーー

 

 

スタジアム上空を飛行する、漆黒に塗り潰された航空機の部隊が空を旋回していた

 

今では完全に民間所有のそれは戦時中、オーシア副大統領が演説をした事で知られる記念すべき場所

 

そしてーーー命を賭して市民を守った勇敢なパイロットの墓標でもある

 

 「チョッパー・・・」

 

その部隊の隊長と部隊機は、彼を失った空を飛んでいた

 

一年前とーーー同じ日に

 

以来、謎の航空部隊を演じて表の部隊と敵対した部隊

 

御伽噺の悪魔が辿る同じ道を歩んだ戦闘機隊

 

ーーー”ラーズグリーズ”

 

そして、その醜い、暗い、亡霊との戦いをはるか昔のように思うラーズグリーズ隊

 

しかし・・・仲間を失ったのは数秒前の出来事のように感じていた

 

 「チョッパー・・・あなたの守った空はこんなにも平和よ・・・」

 

 「忘れませんよ・・・チョッパーの意思は今も生き続けてますから」

 

 「ダウェンポート・・・やっぱりお前じゃねーと隊長の三番機は勤まらないぞ・・・」

 

ミサイルなんて積んでいない

 

開閉式多目的ポッドに搭載されているのは・・・

 

 「各機、ハッチオープン・・・この空に・・・この空で散った勇敢なパイロットに敬意を示します」

 

 「「「ウィルコ、FOX3」」」

  

機体胴体に吊るされた箱から空に舞うのは爆弾ではなく、

 

あの戦いで共に戦った仲間から贈られた、花束という思いが空を舞う

 

広い空だが、先頭を飛ぶ隊長機はこの空だけ区切られたような感じに捉えていた

 

 「さて、私達も戻りましょう」

 

 「そうね、ブレイズ」

 

 「今度は陸路でここに来ましょう」

 

 「アイツの好きなバンドのディスク持ってな」

 

そうして、操縦桿を倒して基地の方へ向かう一行・・・だが

 

 「前方視界悪化、各機注意して飛べ」

 

 「了解ーーーザザッ・・・」

 

雲に入った途端、突如通信が乱れ始めた

 

 「何?ECMーーー」

 

突如、無線が途切れて視界が真っ白に輝く

 

 

 

 

 

そして、隊列が雲から抜け出した頃には一番機が居なくなっていた

 

 「ブレイズが消えたぞ!?何処に消えたんだ!?」

 

 「ブレイズ、応答して!!ブレイズ!!」

 

 「まさか・・・墜ちたんですか!?」

 

だが、地上にはそれらしきものは見当たらない

 

一番機をロストした隊列は、ただただ茜色に染まり行く空を探した

 

しかし、一番機がラーズグリーズ隊の前に現れる事は二度と無かった

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・・」

 

私は、ただただ姿を変えた自分の愛機と向き合っていた

 

 「・・・・・・」

 

幾多もの戦いを一緒に戦い抜いた相棒は、また戦闘の道具として本来の存在意義を示そうとしている

 

・・・本当に、それでいいの?

 

私があの空に居た理由は・・・何なの?

 

自問自答を繰り返すが、いつまで経っても答えが出てくる事は無い

 

勿論、機体からも返事が返ってくる事もない

 

 「・・・やっぱり、私は・・・」

 

ただの・・・死神なんだろうね・・・

 

 ”・・・違うよ・・・”

 

 「ーーーーえ?」

 

何か、声が聞こえた気がした

 

 ”・・・死神は・・・あなたのようにやさしくないです・・・”

 

幼い声が、私の心の中に響くよう続く

 

 「だったら・・・私は何なの?」

 

その声の主に質問する

 

 ”・・・あなたは・・・私・・・”

 

 「・・・”私”って誰?」

 

ただただ、質問する

 

 ”私はーーーあなたの翼ーーー”

 

そうして、私の心の中で何か膨らんだ

 

 

 

 

 「お、おい・・・あれって・・・」

 

 「総員、さっさと退避しろ」

 

 「「「らじゃ」」」

 

今回は落ち着いて対処できる

 

何でかってか?前回嬢ちゃんのアレで経験を積んでるからな

 

 「うっしゃ、俺も逃げねーと」

 

スタコラサッサ、工具箱持って作った避難室に入る

 

前回嬢ちゃんの試射で消し飛んだ的と同じ素材の二層蜂の巣構造で造ったシェルターだ

 

単層で360mmの直撃耐えたんだ、ちっとは粘ってくれるだろうよ

 

 

 

 

 

 「あ、ヘイトが・・・」

 

 「嬢ちゃんなにやってんだ!!早く退避しろ!!」

 

 「私は大丈夫ですからーーー魔法力展開!!」

 

ハンガーに満たすように魔法力と空気を開放する

 

ヘイトの力が大きなものだったら・・・基地が壊れかねない

 

防護目的、圧縮空気の壁を作り出す

 

そうして、ハンガー内部のヘイト周辺に魔法力で密室を作り出す

 

すると強力な魔法力が、私の作った檻を壊さんばかりに膨れ上がる

 

 「そう・・・ならーーー」

 

私は一言、深呼吸して呟いた

 

 ”固有魔法、開放ーーー”

 

今まで私が塞き止めていた魔法力のリミッターを解除する

 

背中から、大きな翼が具現化するのを感じると同時に魔法力が私の体から止め処なく溢れ出す

 

その際限ない力の流れを、私は全てを保護にあてる

 

そして、そのハンガーという一つの区切りである空間を、高圧縮された私の力が支配する

 

  固有魔法発動  絶対領域ーーー”零ノ空域”

 

ふと、その領域内の道具類が空中に浮かんだのが判った

 

それがかなりの力でヘイトを中心点として回転運動を始めるーーーマズイ!!

 

 「空域操作ーーー”半固定”」

 

その道具が浮かぶ領域の空気を完全にではなくクッションのように柔らかさを持たせる

 

瞬間ーーー周りに浮かんでいた金属の道具類が一気に周囲に拡散する

 

 「うわぁぁぁっ!?」

 

と、逃げ遅れた整備員さんの方向に工具が一つ飛んでいく

 

でも、問題は無い

 

その飛んで行った工具が空中で停止して落ちた

 

私が作った空気の緩衝材にぶち当たっただけだ

 

 カランカラン・・・

 

ハンガーに響く音は工具が落ちた音だけになっていた

 

 「さて、ヘイトは・・・」

 

と、工具が散らばる中心点に倒れたヘイトが目に入る

 

そして、横で私に向かって威嚇する子供も

 

 「お母さんに・・・近づかないで・・・けほっ・・・けほっ・・・」

 

ヘイトによく似た少女は咳き込みながら私を睨んでいた

 

 「心配しないで・・・フィア、出ておいで〜」

 

と、フィアがシェルターから出てきた

 

 「大丈夫だった?」

 

 「はいっ・・・その子は?」

 

と、フィアがヘイトに似た少女に歩み寄った

 

 「ひっ・・・あっあなたはあの時の・・・」

 

 「もしかして・・・覚えててくれたの?」

 

あ、初めて戦った時の話でもしてるのかな

 

うん、フィアと同い年だね。見た目的に確実に

 

 「ヘイト〜起きて〜」

 

ぺしぺしとヘイトの肩を叩いてみるも反応なし

 

仕方ない、医務室かどこかで休ませないと

 

 「えっと・・・ラプちゃん?」

 

ラプターからもじっただけだけどね・・・なんか”猛食”って言葉がすっごい可愛らしい名前になったね

 

 「へ・・・あ、はい・・・」

 

 「パイロットをちょっと休ませてあげたいから、目が覚めるまでフィアとお話してて」

 

 「わかりました・・・」

 

よし、とにかくヘイトが起きるまで現状留置でいないといけないね

 

 

 

 

 

 

白い羽を手に取った瞬間、俺は良くわからない場所で寝ていた

 

砂浜、しかも火傷しそうなくらいに熱々に熱せられた灼熱砂漠のようなーーー

 

 「あっちいッ!?」

 

感想述べる前に熱さのせいでガバッと起き上がった

 

案の定、俺は真夏のような海岸で寝そべっていたようだ

 

青い海が小さく波打ち、そして目が焼ける程眩しい太陽が俺に照りつける

 

 「・・・まさか、またあの世界に来たのか?俺」

 

以前サイファーを追って迷い込んだ世界と、匂いが何となく同じだと感じて俺は確信した

 

 「・・・で、お前は何で俺に銃を付き付けてんだ?」

 

 「・・・・・・」

 

目の前の、パイロットスーツを着た黒髪の少女に拳銃を突きつけられている真っ最中だ

 

 「両手を上げてください」

 

渋々頭の上に両手をあげる

 

正面を向いて、パイロットスーツの所属を見る

 

塗りつぶされた所属章・・・そして黒い色彩の部隊章

 

それは俺の知る限り、とある英雄の部隊の証明でもあった

 

 「断る。俺は友人の部下に銃口を向けられるような事はしてねぇ」

 

 「何を言ってーーー」

 

確か、十五年前の俺の階級は・・・

 

 「元オーシア航空師団長補佐、ラリーフォルク空軍中佐だ”ラーズグリーズ一番機”」

 

 「ーーーーー!?」

 

 「とにかく現状を説明しよう。まずーーーー」

 

それからこの少女に説明をしていく

 

サイファーと同じ、”英雄と謳われた悪魔”に

 

 

 

 

 「信じられませんね。第一その年齢で中佐?ありえませんね」

 

 「五十で中佐ってのはまぁ確かにな」

 

 「五十?あなたが?ふざけるのも大概にしてください」

 

 「悪かったな老け顔で」

 

 「老け顔?それで老け顔なら他の青年はどうなるんですか」

 

 「青年?何の事だ?」

 

 「あなた、どう見ても私と同い年かちょっと年上にしか見えないですよ」

 

 「ハァ?何言ってんだお前はーーー」

 

と、手鏡を渡されて自分の顔を確認する

 

そして、ポトッと手鏡が俺の手から滑り落ちた

 

 「若返ってやがるぅぅぅ!?」

 

グローブを外してみると手や肌からシワやら軋みうやらが完璧に消えていた

 

体も、歳をくった怠惰感もなく軽い

 

 「こりゃ信じてもらえんわな・・・、この服装って事は十八歳の航空大学卒業した時のか」

 

今のの俺の服装はパイロットスーツだ

 

まだ新品のように汚れなく、これから空に飛びたたんとする若い鳥の格好だった

 

 「スーツよりは俺向きだな」

 

 「さっきから何を言ってるんですか・・・」

 

 「ラーズグリーズ、お前の隊の話は聞いている。戦闘犬から悪魔に生まれ変わった英雄の部隊」

 

 「一体誰からその話を?」

 

 「そうだな・・・”雷頭”って言えば判るか?」

 

 「!?」

 

 「俺の友人だ。丁度今の俺の姿の時の同期だな、そーいやーお前等の隊はアイツ泣かせてたみたいだな」

 

 「うっ・・・」

 

 「”俺の指揮下の四人がいう事聞いてくれん”だとよ。いつも飲みに行く度に愚痴ってたぜ」

 

ハハハっと、俺は昔を思い出して一人笑った

 

 

 

 

目の前の男は、自分をオーシアの中佐だと言った

 

この若さで中佐?ありえない

 

私は引き金に指をかけた

 

それから色々あってこの人が自分の姿を確認した所で私は驚きを隠せない事実を知ってしまった

 

 「サンダーヘッドの・・・同期?」

 

 「おう、寮も同じだったしな」

 

見た目どうこうじゃない・・・目の前の人間は真実や虚実より”事実”を知りすぎている

 

それだけで、あの戦争に少なからず関係していた人間だという事が理解できる

 

だからこそ・・・私はこの、顔も知らない元上官を撃たなくてはならない

 

 「あの時・・・あの防空任務の際に増援部隊送ったのは俺だった・・・

 

  もう少し俺の判断が早ければウォードック隊の三番は生きていたかもしれない」

 

ーーーーー!!

 

私は銃口を向けたまま続きを聞いた

 

 「だから隊長機・・・貴官に俺は謝らなくてはならない。一人の上官として

 

  貴官の隊列のパイロット死の責任は俺にある・・・済まない・・・」

 

正面から、頭を下げてくるその姿には偽りを感じなかった

 

 「撃たれる覚悟はできている。上官としての責任は負う。撃て」

 

その言葉を聞いて、私は銃口を下げた

 

この人はーーーあの無能高官達とは根本的に違う

 

 「フォルク中佐、あなたはあの腐った政府高官達とは違い”兵士”としての心構えをお持ちです

 

  あなたの覚悟は確かなものです。だから私はあなたを許します」

 

そうして、私は手を差し伸べる

 

 「だから、指示を下さい。中佐」

 

 

 

 

握手を交わして、木陰に座り込んで俺は少しばかり彼女に昔話をして立ち上がった

 

 「さて、昔話なんて時間が空けばいくらでもできる。まずはここから移動しねーとな」

 

 「・・・・・・」

 

 「・・・どうした?」

 

 「いえ、私の戦闘機が・・・」

 

ああ、そーいやーこっちに来る時ってのは戦闘機に乗ってるときだよな

 

 「どこにあるんだ?」

 

 「あの森林を少し行った所に破棄されたと思われる飛行場があります。そこに」

 

 「よし、お前さんの機体は何だ?」

 

 「F−14Dですが・・・」

 

よし、複座だな。俺置いてけぼりくらわんでよさそうだ

 

さて、俺も空にただいまを言う時が来たのかね?

 

 

 

 

森の中を進みながら、俺は拳銃を構えながら話を聞いていた

 

 「もう一機あった?」

 

 「はい・・・恐らくはまだこの世界に来た人間が居るみたいです」

 

 「判った・・・見つけた場合は敵か味方かを判断した後、敵だった場合は排除する」

 

 「了解・・・そろそろ件の廃飛行場に出ます」

 

と、一気に視界が開けると共に飛行場らしき長い道が姿を現した

 

そして、漆黒に染められた機体ともう一機・・・見慣れた機体の姿がそこにあった

 

 「こっちが私の機体で、そのF−15がーーー」

 

ラーズグリーズが何か言おうとして、そして静かになる

 

そこに存在するのは、見慣れたどころの問題ではない

 

片羽を紅色に染められ、尾翼の地獄の番犬をイメージしたエンブレム

 

見まごう事はない

 

 「俺の・・・片羽のイーグル・・・」

 

俺が・・・あの戦いで共に空を駆けた”相棒”が、そこに鎮座していた

 

 「そういう事かよ・・・」

 

この姿、そして目の前の愛機

 

 ”戦え”と

 

運命が、そう俺に呼びかけているらしい

 

 

 

 

 

-2ページ-

 

 

 

 更新遅れ・・・申し訳ありません

 

 色々考え付くものの纏められなかった作者の無能さ故です

 

 そしてブレイズ登場・・・正直”ウォードック隊全員でラーズグリーズ”なので皆出したかったんですが

 

 そんな人数出したら作者の脳ミソがイジェクトしそうになるので・・・申し訳ありません

 

 最初はナガセ出すのも面白いと思ったんですが・・・それはまた後ほどの機会にという事で(遠目

 

 意見感想募集中・・・これからもよろしくお願いします

 

 

 

説明
新たな翼と仲間を手に入れた主人公は、軍上層部から守るためにミーナから基地待機を命ぜられる
しかし、上層部から送られてきた刺客とも呼べる増援に苦労する羽目に
そして、もう一人の世界の漂流者も覚醒を始めるーーー
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コメント
次回のエスコンがAH路線じゃないことを切に願う俺・・・トレイラーの最後が地球だったけど・・・(okaka)
英雄大集合だな・・・(銀ユリヤ)
なんだか世界が亡びそうな編隊ができましたねw(クラックス)
新しいエスコン出るのですか!(駿河)
面白いですね。さてさて、いよいよ、大きな戦端が開いて来ましたね。これからどうなるかなと楽しみにしています。(駿河)
デルタさん>最新作は何かしらナンバリングシリーズと関係ありな感じですね〜特にユリシーズが関係してそうな流れ・・・これを求めていたッ!!(雪下 夾矢)
そういえば、主はエスコン最新作買いますか?自分はもう予約する気満々ですが……(デルタ)
円卓の鬼神 片羽の妖精 死神 ラーズグリ−ズ …うん、勝てる気がしないな!! 勝つつもりなら最低でもX-02、ADFX-01、ADF-01のどれかじゃないと。 基地でハミルトン、ロリコンポート(←ゑ)との再開が楽しみです(ガルム)
最強メンバーがそろい踏みですねwww あとは『リボンの死神』と『凶星』と『大怪鳥』が加わればまさに向かうとこ敵なしの最強部隊の完成なんですが……(デルタ)
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