「恋愛エンドもいいけどさっ、やっぱグッドエンドが一番だよね〜。」

「そうですわねえ。」

「覇王エンドもなかなか刺激的だったわ。」

最近の私たち守護女神の共通の話題といったら、もっぱら例のゲームの話だ。

私もなんだかんだでもらった日からほぼ毎日やっている。

もうかれこれ数週間ということもあって、みんなクリアしてきた頃だ。

「ねーねー、ノワールもぉグッドエンドが一番いいと思うでしょ？」

「えっ？あっ、まだ見てないのよ。」

私にも話が振られてきたので正直に答える。

そうなのだ。まだ私はグッドエンドを見ていない。

この手のゲームは総じて横道、裏道に走りがちだが、

目的はあくまでも国家の運営を行い、自国のシェアをトップにすることだ。

つまりグッドエンドとは見事にその目標を達成したことをいう。

ゲーマーとしては正統派な私は、本来なら一直線にグッドエンドに進みたいところだが、

今回は私ことノワール限定の『声優ルート』へ進み、ベストエンドを目指すことにしたのだ。

適度にイベントをこなしつつ、パラメーターを上げていくことに励むスタイルでプレイした。

社交性は少し低めだったけど演技力、表現力、歌唱力、などは

いずれも８００を超えるところまで上げたはず。

それなのに迎えたエンディングは、

『個性派声優としてその筋で人気を集める』

というなんとも煮え切らない気持ちにさせられるものだった……

参考までにユニに、限定ルートのベストエンド時の最終パラメーターを教えてもらうと、

どの能力も平均よりはやや上といったところだった。

一体何がいけなかったのだろう？

ひょっとすると、重要なイベントを逃しているのかもしれない。

そう思い再度、『声優ルート』の攻略を目指すことにする。

すると、

『ヒトクセある声優としてマニアックな人気を博す』

というこれまたなんとも言えないエンディングが待ち受けていた……

こうなったら、何度も同じルートをプレイするのはウンザリだけど、

意地でもベストエンドを見てやらなきゃ気がすまないわ！

パラメーター不足だなんて言わせない。

とにかくレッスン！ひたすらレッスン！毎日レッスン！

お正月もお盆もクリスマスも自分の誕生日ですら、

他のことに目もくれないでひたすらレッスンに打ち込む。

他の女神からの誘いも惜しみながらもシャットアウト！

空いた時間はラステイションの運営に励み、

能力アップのためのアイテム開発と資金作りはかかさない。

単純作業の繰り返しにうんざりするが、

どんどん成長していくゲームの中の私を励みに頑張る！

……そしてパラメーターはMAXに達した……

あまりの単調な作業に、モウロウとした意識をなんとか保ちながら、ベストエンドを迎える。

そこには……ゲイムギョウ界最大の声優として君臨し、

果てはブドゥーカンでコンサートまで行う、輝かしい私の姿が映し出されていた！！！

アハハハハハハッ！！！やったわ！！！

そして……

クリア後に見ることができる３年間の思い出を収めたアルバムには、

レッスン場とラステイションの教会に、ポツンと独りでたたずむ私の姿が

これでもかというぐらいにならんでいた。

ア…アハッ……………このやりきれない気持ちはなんなんだろう……