ソードアート・オンライン 黒と紅の剣士 第十二話 もう一度会いたい |
明日菜視点
スリーピング・ナイツ&旧SAO攻略組と攻略ギルド連結部隊のボス争奪戦から2日後、わたしたちの学校は3学期に入っていた。
だけど、久しぶりに現実世界で((和人|キリト))くんたちと会ってもわたしの心はどこか沈んだままだった。
気がつくと、瞼の裏、鼓膜の奥に、ユウキの笑顔を甦らせてしまう。
明日菜〈ユウキ・・・あなたたちを友達だと思ったわたしの考えは間違っていたの?なぜあなたは別れ際に涙を零したの?わたしたちはもう会えないの?〉
心の中に浮かんでくる疑問に、答えてくれる人は当然いない。
でも、わたしは知りたい。
ユウキがわたしのことを“姉ちゃん”と呼び、それに気付いて彼女が零した涙の((理由|わけ))を。
すると、その日の昼休み、和人くんから[屋上で待ってる。]というメールが届いた。
わたしは早足で教室を出て、階段を上がり、屋上に出る。
冷たい北風が吹き抜けるコンクリート?き出しの校舎屋上では、和人くんが太い空気循環用パイプに寄りかかってわたしを待っていた。
ブレザーのボタンを開け、スラックスのポケットに両手を突っ込んで、風に長めの前髪を揺らしながら立つその姿は、装いと身長は違えど、かつて鋼鉄の浮遊城でわたしが好きになった黒衣の二刀流剣士と何ら変わらぬ佇まいだった。
わたしは吸い込まれるように駆け寄ると、顔を上げた和人くんの肩口にこつんと額をぶつけた。
胸にぐるぐると渦巻く感情をまるごと吐露してしまいたかったが、自分が何を感じているのかを言葉にできない。
瞼をきつく閉じ、込み上げそうになる嗚咽を堪えていると、和人くんの手がぽんぽんと優しく背中を叩いた。
同時に、耳許で声。
和人「どうしても、絶剣に会いたいか?」
その言葉にこくりと頷くと、和人くんは静かに続けた。
和人「もう会わない方がいい、と言われたんだろう?それでも?」
明日菜「うん、それでも。わたし、どうしてももう一度ユウキに会って話したい。そうしなきゃいけないの。」
和人「そうか・・・」
短く答え、和人くんはわたしの両肩に手を置いて少し体を離すと、ブレザーの内ポケットから取り出した小さなメモを差し出してきた。
和人「ここに行けば、会える。」
明日菜「え・・・?」
和人「ただし、そこにいるというだけで、面会できるかどうかはわからない。」
明日菜「ど・・・どうして、キリトくんが知ってるの?」
二つ折りにされた紙片を受け取りながら、わたしは呆然と訊ねる。
和人「((大地|デュオ))が調べてくれた。」
そう答えた和人くんの表情は暗く、何らかの真実を知っているのだろうということはすぐに理解できた。
明日菜「わかった。明日、行ってみる。ありがとうキリトくん。デュオくんにもよろしくね。」
和人くんの暗い顔をこれ以上見たくなかったわたしは、それだけ言い残すと早足で校舎の中に戻った。
通常視点
明日菜がいなくなった直後、校舎入口の近くに隠れていた大地が姿を現した。
大地「本当に良かったのか?」
和人「明日菜が自分で決めたことだ。」
大地の質問に、和人は空を見上げたまま答えた。
大地は和人の隣に立つと、遠くを見つめて言う。
大地「だが真実を知れば、明日菜は深く傷付くことになるぞ。」
和人「大丈夫。明日菜は強いから、きっと乗り越えられる。」
大地「本当にお前は明日菜を信じてるんだな。」
和人の答えに、大地は微笑して言うと、和人と同じように空を見上げて続けた。
大地「確かに明日菜は強い。だが、どんなに強いものでも支えるものがなければすぐに砕けてしまう。だからお前は明日菜の支えになってやれ。」
大地が言い終わった直後、予鈴が鳴り響く。
大地「さて、次は移動教室だったな。じゃあカズ、俺先に戻るな。」
大地はそう言って校舎内へ走って行った。
取り残された和人は、苦笑して呟いた。
和人「だったら((大地|お前))は俺たち全員の支えじゃなくて、((珪子|シリカ))の支えになってやれよ。」
そして、大地の後を追うようにして校舎内に入って行った
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大変遅くなりました。 | ||
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コメント | ||
本郷 刃さんへ 伊達にSAO時代から相棒だったわけではないですね。(やぎすけ) 最後の和人の呟き・・・さすがに和人も大地のことを良く分かっていますね(苦笑)(本郷 刃) |
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