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重要なことはいくらかしかないと思う。
地位や名誉、金、女。興味がないといえば嘘になるだろうが、隣の芝が気になる程度の興味でしかない。つまり自分には縁のないものであり、それらは重要なものたりえないのである。
では、なにが重要なのだろうか。
タバコの煙を死んだ魚のような目で見つめながら、考える。考えたところで答えはない。それは昔からの癖のようなものだった。時間をもてあますと、自然とそれを考えている。答えのない自問自答。それは単なる暇つぶしだった。
「自由……とかかね……?」
青空を見上げながら、死んだ魚はつぶやく。それは真実を含まないであろう答え。そして、真実を含む可能性を秘めた答え。
薄く水の張った灰皿に、燃えつきかけたタバコを投げ入れる。くしゅっ、という寂しげな音とともにそれはゆっくり沈んでいった。
青木雄介、二八歳。職業・教師。昼休みの屋上は彼にとっての聖地だった。孤独な空間は思考を空白にしてくれる。タバコが加わればなお良い。
キーンコーン。カーンコーン。
昼休みの終わりを告げる無機質な鐘の音が、青木を現実に連れ戻した。ここが学校であることを思い出させてくれる。そこは十数年前までは自分も友人たちと馬鹿騒ぎをしていた場所。そして現在の職場だ。
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屋上 死んだ魚 青春 | ||
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