わすれものをさがしに
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わすれものをさがしに

 

 忘れものをしてしまった

 どこかに大事なものを忘れて いつのまにかに忘れたことすら忘れていた

 だから探しにいこう

 

 この町には色がない

 黒いカベに黒いタイル 色のない雨 白の霧

 工場にきた お父さんのはたらく工場

 歯車を拾った

 違う これは ぼくの忘れたものじゃない

 学校にきた ぼくのいた学校

 教科書を拾った

 違う これは ぼくの忘れたものじゃない

 

 家にきた お母さんと暮らした家

 何もない

 何もない

 何も ない

 忘れたものはここにあった

 三人で暮らした思い出があふれていた

 これをかかえて 生きていける

 どこまでだって

 いつまでだって

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 わすれものを してしまった

 何かは わからない

 どこにあるのかも わからない

 だけど だいじなものを わすれてしまった

 いつしか わすれたことも わすれてしまって

 だけど それを 思い出した

 だから 探しに行こう

 色のない町

 カベは黒くて タイルも黒い

 毎日 色のない雨がふって

 白いきりが 立ちこめる

 色のない さびしい町

 ぼくは ここで生まれて

 ぼくは ここで育った

 工場にきた

 お父さんのはたらく 工場

 機械が がたがた がたがた

 機械が ぶー ぶー

 大きな音を立て はたらいている

 そこに歯車があった

 歯車をひろった

 だけど ちがう

 これは ぼくのわすれものじゃない

 学校にきた

 ぼくの通っていた 学校

 ろうかは 暗くて

 床は 抜けてしまいそう

 だれかの教科書があった

 教科書をひろった

 だけど ちがう

 これは ぼくのわすれものじゃない

 図書館にきた

 本が集まる 図書館

 たくさんの人と たくさんの本

 たくさんの心が 集められている

 いつかのだれかの日記があった

 日記をひろった

 だけど ちがう

 これは ぼくのわすれものじゃない

 家にきた

 ぼくとお母さんが暮らしていた 家

 なつかしい 匂い

 なつかしい 色

10

 だけど 何もない

 何もない

 何も ない

 ほこりが 積もるだけ

11

 ここには何もなかった

 形のあるものは

 だけど わすれものがあった

 ここに わすれていたんだ

12

 三人で暮らした 思い出が

 昔の日々の 思い出たちが

 いくらだって あふれていた

13

 なんて やさしいんだろう

 なんて なつかしいんだろう

 なんて かなしいんだろう

 なんて しあわせなのだろう

14

 これをかかえて 生きていける

 ぼくはもう 生きていける

 どこまでだって

 いつまでだって

 だれとだって

 ひとりでだって

15

 どこまでだって この思い出といっしょに

説明
自作絵本のあらすじと本文の下書きです
「自分探し」というものには懐疑的な自分ですが、このお話のテーマは「自分の欠けたピース探し」とでも言えるでしょうか
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