無表情と無邪気と無我夢中5-1 |
【無表情と無邪気と無我夢中5-1】
おうかです。
小学一年生になりました。
「ああ、ダメです!ダメダメ待って〜!」
「くく……わがままな娘やな」
「そんな……や、ちょっ……」
「こうか?こうされるのがええんやろ?」
「ふあああぁぁ!!」
え、何してるんだって?
言わなくてもわかるでしょう。
「往生際が悪いわよね〜おうかって」
「でも、見てて楽しいかも」
「……やられる姿を?」
「……全部」
後ろうるさい!
「そ、それ、やあああ!!」
「しまいや、イってまえぇ!!」
「あぁあ〜〜〜〜!!!」
FINISH!!!
はやてはセミロングの髪をかきあげ、こちらを向いてメガネクイッとさせます。
「今回も、ワタシの勝ちやね。おうかちゃん」
四つん這いになり頭を抱える私。
それなりに、家で練習しているはずなのに。
奇跡の一度も起きないとは。
「いい加減1対1は諦めたら?」
「ダメですあらし!こういう輩は一度正々堂々の戦いで敗北を覚えなければいけないのです!!」
「……アンタ、あそこにあるトロフィー見てもまだそんなこというの?」
八神姉妹の家。
初めて出会った頃には無かったモノがリビングに飾られています。
トロフィーに彫られている“優勝”の文字と“八神はやて”の名前。
この春に行われたスマッシュバトルゲームの全国大会に出場して、今までのTVゲーム全国大会で最年少かつ障害者としての優勝は各メディアを総ナメにしてましたね。
いつも見てる朝のおはようスタジオに姉妹そろって出演した時は、ビックリして飲んでいたコーンスープが変なとこに入ってむせてしまったほど。
そこに何故かいた久遠が焼きそば頭の司会者の焼きそば頭に終始乗っかっていましたね。
あとこの時点ではまだ先の話になるのですけど、あの一日丸々生放送でやる感動を呼ぶ番組にもはやては出演。
で、土管工事のおじさんが活躍するアクションゲームの最速クリアに挑戦をし、しかも世界記録を塗り替えた時は本当に感動しました。
「か、関係ありません!」
「んじゃ、今から翠屋行ってお茶しよか」
「賛成〜」
「くぅん」
「ちょっ……もう一回、もう一回!」
「おうかちゃん。ゲームは一日一時間やで」
「え……はやてがそれ言う?」
翠屋。
「で、どうですか二人共」
私は両腕を広げて二人に聞きます。
「やっぱ桃子さんのシュークリームは安定しておいしいな」
「同感〜」
「久遠も〜」
いや、そうではなく。
「せ、い、ふ、く、のことです!」
「そういえばなのはちゃんはどうしたん?」
「可愛いと思うわよ」
はやて、あなたって人は。
と、あらしがはやてにはたかれました。
「何普通に答えてんねん」というツッコミでしょうか。
「久遠〜はやてがいじめる〜」
「よしよしあらし、いい子いい子」
え?
あの子狐と同じ名前、久遠と呼ばれているこの少女は誰かですって?
金髪のロングヘアーに巫女服を纏った少女。
さっきも八神家にいました。
ええ、あらしと会話していたあの子です。
ふふふ、驚くことなかれ。
なんとこの少女・久遠はあの子狐・久遠なのです!
何言ってるかわからないって?
つまり、子狐・久遠=少女・久遠ということです。
え、それじゃ久遠は妖怪なのかって?
ごめんなさい、その辺は私もよくわからないのです。
だってまだ私は7歳にもなっていないのですから!
だから子狐・久遠=少女・久遠であり少女・久遠=子狐・久遠と納得してください。
「ワタシも可愛いと思うよ。羨ましいわ〜」
「今度着させてね」
「……久遠も着てみたい、かも」
「じゃあ今度私ん家でなのはと一緒に撮影会をしましょう」
「……アンタ今カメラマンをなのはで想像したでしょ?」
ギクリ。
なんかあらしは勘が鋭いんですよね。
気が抜けません。
「てかなのはちゃん。入学早々ケンカしたて……何がどうあってそうなったんや?」
「まず好んでそういうことはしないわよね、なのはって」
「おうかならわかる気がするけど」
「そうですね。お父さん達と鍛えているので腕試しに―――ってコラ」
久遠。
あなた言うようになりましたね。
まあ珍しいといえば珍しい出来事であるとは私も思いましたけど。
って、そこの姉妹はなんでドン引きしてるのでしょう?
「おうかちゃん。そのノリツッコミ冗談に聞こえづらいで」
「本当に腕試しでケンカしたらアタシ、アンタの友達止めるわ」
……なんかごめんなさい。
「泣いてる子を放っておけなくて、泣かした子と言い争っていたらいつの間にか揉み合いになったらしい、とのことです」
「……なるほど」
「アンタを姉に持った影響ってことね」
……なんかごめんなさい。
「小学校か〜楽しいんやろな〜」
「とっもだち100人何たらかん」
「……あれ、二人共風芽丘に通ってるのでは?」
私となのはが通い始めたのは私立の聖祥学園の初等部で。
八神姉妹はそこにいなかったのでてっきり市立の風芽丘小学校に行ってると思っていたのですが。
「あ……あ〜……」
「……はやての足の件があるからね。まだ、ね」
そういうことですか。
はやての足の状態に関しては私はほとんど知らないので深く追求は出来ませんが。
色々あるのでしょう、色々。
前世ではやてがどうだったか思い出せばいいのでは、と思う人もいると思います。
ですがそれは叶いません。
もう前世の記憶は思い出せなくなっているのです。
無理に思い出そうとすれば逆に苦しくなるだけ。
デジャヴとかもたまにありますが、それもごくたまにです。
まずなのはやはやてには双子の姉妹なんていなかったわけですし。
はやてに関してはもう外見からして変わってますからね。
確か前世で出会ったばっかのころはショートヘアーでバッテンのリボンを着けていたと記憶してますが、今目の前にいるはやてはリボンなんて着けていませんし髪型もセミロングで後ろを束ねたり束ねなかったり。
あとメガネなんてオプションはありませんでした。
あとは、私は高町おうかなので前世は関係ないと心に決めてますから。
ただ、今言えることは。
この姉妹。
時たま何か隠し事をしているように感じるのですよ。
本当に危険な臭いがしたらお父さんに相談するという考えはありますけどね。
「でも通う小学校が違ってもワタシら姉妹はおうかちゃん達とは絶対無二な永遠の親友やで!!」
「そうよ。無碍にしたら泣いちゃうんだから」
「あらしが……泣く?」
想像出来ませんね。
「…………」
どうしました?
「ふんっ!」
「わきゃっ!?」
って、そのヘッドロックは、こめかみを締め付けるヘッドロックいけません。
いたっ、痛い痛い痛い痛い!
ギブですギブギブギブ!!!!
謝るから許してください〜。
その日の夜。
顔に絆創膏を何枚か貼ったなのはは、ソファーの上で膝を抱えふてくされていました。
ううう、声を掛けづらいです。
でもここは勇気を出さなければ。
「なのは」
「何なの、おうかちゃん」
八つ当たりに近い態度が跳ね返ってきました。
心に針が刺さるような痛みが胸を打ちますが、負けません。
私は双子といえどお姉ちゃんなのですから。
「一体、何が気に食わないのです?」
「…………気に食わないことなんてないの」
「じゃあ、何に納得してないのですか?」
「…………」
なのは自身、答えが出てない何かにイライラしているのは明白です。
こんななのはを見るのは初めてですが、見続けていても私達がモヤモヤするだけです。
「どんな理由があっても、誰かを泣かしたら謝らなきゃダメだと思うの」
つまり、今日の一件はうやむやになってしまっていると推理します。
「じゃあそのことを伝えてみればいいのでは?」
「それで万事解決するとは到底思えないの」
……これ、もしかすると妹も重症なのではないでしょうか?
翌日。
またなのはがケンカしたみたいです。
相手は昨日と同じ子。
私がアドバイスしたことを実行したら相手が突っぱねて、そして感情論になってしまって、みたいです。
その日の夜も話を聞きます。
「結果的にすずかちゃんを泣かせてるのに、私は悪くないなんて、アリサちゃんは勝手過ぎるの!」
もうただ愚痴を聞くだけになってしまいました。
これは、作戦を立てないと仲直りは難しそうです。
また次の日。
またまたケンカをしてついにはなのはと“アリサ”という子は担任の先生に呼び出されてしまっていました。
私的にはチャンスです。
クラスが違うためどうしても当の本人である二人がいない時を狙うのが難しいので。
ケンカの重要参考人である“すずか”という子を呼び出してもらいます。
「あれ、なのはちゃん?」
「どうも初めまして。なのはの双子の姉の高町おうかです。気軽に“おうかちゃん”とお呼びください」
「え、あ、うん」
早速屋上で事情聴取です。
聞こえは悪いですが話を聞くだけですよ。
ちょうど昼休みなので一緒にお弁当を食べながらお話しましょう。
「単刀直入に聞きます。すずかはなのはとアリサという子に仲直りしてほしいですか?」
「えっと……うん。ある意味私が原因だし」
……この子もこの子で重症ですね。
本当はすずかに協力してもらい、すずかの家で遊んで遊んで何時の間にか打ち解けていてっていう作戦はちょっと使えませんね。
……よし。
「すずか。次の休日は暇ですか?」
「うん。暇だけど」
「では―――」
海鳴図書館。
「図書館って、ここだよね……」
「アンタがすずかちゃんやな?」
海鳴海岸公園。
「あなたがアリサ?」
「……あんた誰?」
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5話目! リリカルなのはで小学一年の時の事件と言ったらアレなんですけど、なんていうか、バタフライエフェクト…… |
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