無表情と無邪気と無我夢中5-2 |
【無表情と無邪気と無我夢中5-2】
八神家。
「第一回八神家スマッシュバトルゲーム大会。ここに開催を宣言するで!」
「ぱちぱちぱち」
「「「………………」」」
「おうか、説明してくれない?」
なのは達三人がキョトンとするのはわかりますが何故にあらしも?
もしかしてあらしは何も聞いてなかったりするのですか?
三人の距離を縮めるにはこれが一番だと思ったのです。
「まずは四人で戦ってもらうで!」
「……え、アタシもやるの?」
「ちょっと待ってよ!私こんなのやったことないわよ!」
「大丈夫や。やってけばわかるて」
「負けるに決まってるじゃない。やってられないわ」
アリサが渡されたコントローラーを放り投げ帰ろうとします。
「……逃げるの?」
な、なのは?!
なんであなたが挑発するのですか!
私の作戦、台無しにする気ですか!!
「……まさか」
あれ?
アリサが踵を返してコントローラーを拾いましたよ?
この子、天の邪鬼というやつですか?
「逃げてもいいの。どうせアリサちゃんは私には勝てないと思うの」
「やってみなきゃわからないじゃない!」
READY……
1Pなのは、2Pアリサ、3Pすずか、4Pあらしとなっています。
GO!!
始まりました。
手探り状態から始まるアリサとすずか。
中級者であるなのは。
加えて上級者のあらし。
どう考えても最初はなのはVSあらしから始まり、アリサとすずかは眼中になしといった所です。
かれこれ一時間が経ちました。
今が何戦目だか途中から数え忘れたので覚えてませんが、画面を見る限りすずかの電気ネズミの動きが様になってきています。
アリサは……未だにガチャプレイですね。
あ、アリサの超能力少年がハンマーを拾って。
「ふあっ!!」
起死回生の一撃でなのはの女戦士とすずかの電気ネズミをいっぺんに場外へと吹き飛ばしました。
「よっしゃあ!!」
なんとこの試合でアリサ、初勝利です。
「どうよなのは」
「い、今のはどう見てもマグレなの!」
「あとちょっとだったんだけどなぁ」
だいぶ打ち解けてますかね。
では作戦第二段階いきますか。
「じゃあ次は2対2のチーム戦しましょうか」
色々組み合わせを変えてプレイしていきさらに一時間経過。
最終作戦発動させましょう。
「では3対1の変則マッチいきましょう。チャンピオンお願いします」
「任せとき」
最後はなのはアリサすずかの三人VSチャンピオンはやて。
これが上手く行けば三人は仲良くなってる―――
「アリサちゃん邪魔邪魔!!」
「なのはこそ邪魔しないでよ!!」
「ふ、二人共そこにいないで〜!」
―――あれ?
「あれじゃはやてに勝てないわね絶対」
冷静にあらしが分析した直後、アリサがハンマーでなのはとすずかを吹き飛ばしてしまいました。
「ちょっ……!?」
「ああ……!?」
「あ、ごめん……」
「あらあらやってもうたなぁ」
今現在アリサとはやてが1対1になってます。
あぁあ、ハンマーの制限時間切れた瞬間にはやての操るピンクボールの超絶鬼コンボ炸裂してますね。
FINISH!
最後は少年が崖から直接叩き落とされて終了。
「アリサちゃん。今のひどいよ……」
「何やってるの!」
「ううう……うるさいうるさい!!」
READY!
ケンカする暇もなく二回戦、はやての操作により強制的に開始です。
「ケンカしてたらチャンピオンであるワタシには勝てんよ」
はやてがメガネをクイッとさせて挑発します。
それを見た三人。
「「「絶対負けない!!」」」
癪に障るそれがなのはとアリサの、さらにはおとなしかったすずかまでの闘志に火を付けたようですね。
結果、チャンピオンはやての全戦全勝で幕は閉じました。
「「「どうして勝てないの……?」」」
三人共声をそろえて、何気に息合ってますね。
「一朝一夕のチームワークでこのはやてちゃんに勝とうだなんて10年早いわ」
アリサが顔を上げます。
「なのは、すずか。明日から私の家で特訓よ……!」
「言われなくても……」
「そのつもりだよ……」
「このまま負けっぱなしでいられるかーーー!!」
作戦は、成功したのでしょうか、一応……?
「んで、おうかちゃん。結局作戦は成功したんか?」
「……だから作戦って?」
翌日の日曜日。
作戦に協力してもらった八神姉妹と久遠にお礼として翠屋に招待しています。
ただ未だにあらしだけキョトンとしていますけど、はやて……?
「まあ〜着地点は違うものの、一応成功と言えるでしょう。ありがとうございました」
「では遠慮なくいただきます」
「…………」
何だか。
私の知らない所で小さい事件が起きているような気が。
数日後。
涙声で電話を寄越してきたはやての様子から、やっぱり、と思ったのです。
神社。
「何をふてくされてるのですか、あらし」
「別に、なんも!」
子狐状態の久遠を撫でながらあらしはプンプンしています。
「あらしが家出してもうたぁ!」と聞いた時は何の冗談かと思いましたが、何があったのでしょう?
先週翠屋に招待してから様子がおかしかった気もします。
特に終始あらしが無言でシュークリームをパクついていたのが気になります。
そういえばあの時自分ははやてとしか喋ってませんでした。
「……愚痴だったら聞きますけど」
「……別に」
あらし……
「泣いているのですか?」
「は?!バッ……アタシが?」
「隠しても、なんとなくわかりますよ」
「…………」
あらしの久遠を撫でる仕草がピタリと止まりました。
「事の顛末ははやてから聞きました。あとはあらしの心だけです」
「……アタシはさ」
私はあらしの隣に座り込みます。
「アタシは……誰から嫌われようとも構わない」
「…………」
「悪戯されても、意地悪されても、嘘を吐かれても、無視されても……」
あらしの心の内。
「たとえアイツ等に存在を否定されても構わない。だけど……」
“アイツ等”とは誰のことでしょうか?
気になりましたけど今は聞きません。
「だけど、今言った全部……はやてにだけはされたくない」
それが、本音。
「はやてにだけは悪戯されたくない。意地悪されたくない。嘘を吐かれたくない。無視されたくない……」
私はハンカチで零れる涙を拭いてあげます。
「存在を、否定されたくない……」
一体あらしをこんな風に追い詰めた要因は何なんでしょう。
確かにあの三人を仲良くさせる作戦をあらしに教えなかったのは、はやてのちょっとした意地悪であると本人から聞きました。
それをした理由はまた追々話すとしまして。
また、意地悪をしたのは今回が初めてであったとも証言してもらいました。
にしても。
“存在を否定されたくない”なんて重すぎますよ、あらし。
でもそこまで思い詰めてしまう事柄があったことも事実でしょう。
「取り敢えず翠屋に行きましょう。はやてが待ってます」
はやてをここに連れてくることは不可能です。
車椅子的な意味で。
あらしをゆっくりと立ち上がらせて歩きます。
と、そうです。
「久遠も、来るなら変身しておいてください」
「くぅん」
久遠が少女の姿に変わりました。
「…………」
変わりましたが。
「久遠」
「くぅ?」
「……耳と尻尾」
「……!?」
たまにあるのですよこういうこと。
八神家で変身するときとかはしょっちゅう出したままだったりしてましたし。
翠屋は飲食店というのもありますが、人目に付くので慣れて欲しいです。
翠屋。
「本当にゴメンな、あらし……」
「…………」
「あらしが、ワタシに隠し事してるのが、どうしても納得出来なかったんよ……」
「……ごめん」
「唯一血の繋がった家族のワタシにも、言えないこと……?」
あらしがゆっくり、コクリと頷きます。
どうやらあらしがはやてにしていた隠し事が八神姉妹のケンカの発端みたいです。
誰にも言えないことは誰にだってあるものです。
かく言う私だって家族にも、さらにはなのはにだって言えないことはあります。
前世が高町なのはで生まれ変わりましたなんて言えますか。
「そんなに、信用出来ないんかなぁ」
「違う!」
何か言ってあげたいのですが、何を言えばいいのか。
そもそも口を挟んでいいのか。
「違うよはやて。信用出来ないんじゃなくて、上手く言えないだけ」
「…………」
「ちゃんと、言えるようになったら、必ず言う。約束する」
「約束……?」
「約束。隠し事は多分、これからまた幾つかしちゃうと思うけど」
私はそっと久遠を手招きします。
シュークリームを食べていた久遠はそのまま私と一緒に、八神姉妹から離れ空いているカウンター席に座ります。
「はやてとあらし、大丈夫?」
「大丈夫です。あの二人の絆は私達が思ってるほど強いみたいだから」
「約束した事だけは破らない。だって家族じゃん!」
「約束……うん、約束!」
「ねぇ……アタシはずっとはやてと一緒にいたい。これも約束、してくれる?」
「当たり前や。ワタシはずっとずっと、あらしと一緒!だからそんな悲しい顔せんといて」
なでなで。
はやてに撫でられて、あらし笑ってますね。
はやてが姉であらしが妹。
ようやくそれが見えました。
「おうか。その考え、失礼かも」
「心を読むとかじゃなくて、何で考えていることがわかるのです?」
「おうかは無表情だけど、そういうの分かりやすいわよ」
お母さんまで。
「あー、ここにいた!」
あれ、この声?
「あら、いらっしゃいアリサちゃんすずかちゃん」
「あ、お邪魔します」
「おかえりなさいなのは」
「ただいまなの」
入ってきたアリサは一直線に八神姉妹の所へ。
あ、なでなでを中断されたあらしが睨んでます。
「今日こそ勝つわよはやて!」
「えっと……」
「待った!」
おや、あらし?
「はやてと勝負したいなら……まずアタシに勝ってからよ」
「あんた何よ」
「アタシ?アタシはね―――」
少し間を空けて、ためを作り。
「―――幾多の辛苦を乗り越えて、数奇な運命に振り回されながら、何度命が果てようとも今この場に立つ!世界にたった一人しかいない八神はやての未来永劫の妹、八神あらしよ!!」
アリサに人差し指をスバッ!と向けてあらしが宣言します。
言ってることが壮大過ぎて何言ってるかわかりませんが。
ですが、いつものあらしです。
ちょっと尊大な態度で偉そうだけど姉想いで友達想いで。
「ふん!あんたが誰だろうと私達の必殺トリプルコンボかましてあげるわ」
「上等!」
「いくわよ、なのは、すずか」
「ここからなら私の家が近いの。私ん家で勝負なの!」
「うふふふふ」
出て行ってしまいましたね。
「はやては行かないのですか?」
「あらしも全国大会5位やで。今日はあらしの全勝やろ」
どうやら全国大会の準々決勝で運悪くはやてと当たって賞状止まりだったみたいです。
よくよく考えてみたらチャンピオンと毎日対戦してたんですから準優勝レベルの強さであってもおかしくない。
あのおはようスタジオでもはやてと互角勝負繰り広げてましたし。
「だからワタシは今日用無しなんや。買い物でもしていこっかな」
「手伝いますよはやて」
「久遠も手伝う」
「ありがとな。やっぱ持つべきは友達や」
このまま私達三人は商店街へ。
今日はあらしの意外な一面を見ました。
初めて会った時はあらしに支えられたので強い子であると勝手に思ってましたが。
ああいう弱々しい姿を見たのは初めてだとはやてと話します。
するとはやてがあらしについて語ってくれました。
よく昔は毎日一緒に寝ていて朝起きたら抱きつかれていたこと。
本当はとてつもなく寂しがり屋であること。
はやて自身のことになると周りが見えなくなるほど行動的になること。
あらし。
今まであまり深く考えませんでしたが私の前世の記憶にはいなかった人物で。
ですが私自身が心許せて気楽に接せる友達でもあります。
「おうかちゃん、あらしのこと好きなんやな」
「はやてのことも大好きですよ」
「久遠もすき」
はやてはありがとうってしみじみ告げます。
優しいですね、はやては。
説明 | ||
5話目後編! 書いていくたびにこのあらしというキャラが好きになっていく。 |
||
総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
1031 | 1018 | 0 |
タグ | ||
逆行 無表情と無邪気と無我夢中 リリカルなのは | ||
グーハチミツさんの作品一覧 |
MY メニュー |
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。 |
(c)2018 - tinamini.com |