仮面ライダー Rainbow of the oblivion―忘却の虹― 25話 |
「透明な…おしゃぶり…!?」
ツナ達の目の前にいる赤ん坊…バミューダはおしゃぶりを付けている。
それはまるでリボーン達アルコバレーノのように。
ツナ達呆然とし、リボーン達は混乱ぎみだ。
「なぜ彼があれを…?」
「俺達のほかにもアルコバレーノがいたってことか!?」
「おい、テメェ…それをどこでてにいれた!?」
アルコバレーノの中でも特にリボーンが一番動揺している。
ツナは彼とは長い付き合いだがこれほど動揺するのを見たのは初めてだ。
「(リボーンがこんなに動揺するなんて…)」
「ふぅ…そうだね。話すのはもう少し別の場所にしようか」
バミューダはそう言って指を鳴らす。
するとどうだろうか。
いつのまにか場所が変わっていた。
さらに目の前に一人の少女が空中で張り付けにされている。
綿菓子のような髪…赤十字のような瞳…リトはまさかと思い少女に話しかける。
「お前…シモンを知ってるだろ!」
「どなた…ですか…?」
「俺はリト…シモンの仲間だ!」
「シモンの……お仲間…?」
リトは確信する。
この少女こそがシモンの探していた少女…ニアなのだと。
リトはニアを助けようと動こうとするがその目の前にバミューダが現れる。
「彼女を助ける前に人の話を聞いてからにしてくれないかな、リト君?」
「くっ…」
「さて、何から話そうか…そうだ、このおしゃぶりのことだね。このおしゃぶりはリボーン君達の物と同じだよ…ただ、属性が違うだけでね」
「属性…だと?」
「そう、大空の七属性…大空、雨、嵐、晴、雷、雲、霧の七つにシモンファミリーが灯す大地の七属性のどれでもない八つ目の属性……『夜』の炎さ」
「夜…だがそんな属性聞いたこともない。デタラメですね」
骸の言う通り、リト達の知っている炎は大空と大地の七属性…それにXANXUSの憤怒の炎しかない。
だがバミューダはククク、と笑っている。
「それは知らないだろうね。なぜなら夜の炎は数千年前に僕が産み出した炎なんだから」
「なんだと!?」
「炎を産み出した…?」
「数千年前なんて生きていられる訳がない…信じがたいな」
「ここは時の流れが狂っている。それを操作すればどうしたこともないんだよ……」
それに、とバミューダは付け足して言う。
「そもそもアルコバレーノの存在する意味を君たちは考えたことがあるかい?」
「アルコバレーノの……意味…?」
「どういうことだ!」
「知らないなら教えてあげるよ。アルコバレーノは簡単に言えば……人柱さ」
リト達……特にアルコバレーノ達は衝撃の事実に驚きを隠せなかった。
バミューダは彼らの様子を無視して話を続ける。
「アルコバレーノはその世代の最強の七人から選ばれる。その七人は後に人柱としての証であるおしゃぶりをつけられその体を赤ん坊に変えられる虹の呪いを受け、アルコバレーノになるんだ。だが時がたつにつれてアルコバレーノは呪いに耐えきれなくなる。その前に『奴』はアルコバレーノのおしゃぶりから炎を抜き取り、新たな七人を集めてアルコバレーノにさせるんだ。そしてその抜き取られたアルコバレーノは死ぬかゾンビのような酷い状態となる。僕もその一人…つまり元アルコバレーノさ」
「奴……まさか…」
「君たちもあったことがあるだろう…チェッカーフェイスという男さ」
「むぅ…チェッカーなんとかがどうであれなぜ貴様が夜の炎を産み出せたのだ?」
「僕は炎を抜き取られた後、生への執着により夜の炎を産み出したのさ……その炎をおしゃぶりの中に入れて僕は死を間逃れた」
「おしゃぶりとは一体なんなのでしょうか…?」
「おしゃぶりはこの宇宙を安定させるのに必要な存在……一つの星を支えるのにもね」
「随分と話がでかいな…」
「大きくて当然だよ。何せ僕の星の生命は均衡が崩れて既に滅んでいるからね」
リト達は再び驚いた。
バミューダの話だと既にバミューダの母星は滅んでいるという。
ではこの星は一体…?
「この星はこの認識が実体化する超螺旋宇宙で作られた星さ」
「超螺旋宇宙って…螺旋族に関係してるのか?」
「そうであってそうでない。螺旋力は危険な存在だからね。使う事は許されない」
「そうだ!何でお前はシモンの星を…俺達の星を襲ったんだ!それにシモン達に何をしたんだ」
「彼らには無限の宇宙の可能性の迷宮…多元宇宙迷宮に入っている。出られはしないよ。それに理由は………螺旋生命があったからだね。それ以外理由はない」
「螺旋…生命…?」
「君達は螺旋生命が螺旋の戦士達だけの存在だと思っていないかい?正解はNOだ。螺旋力は二重螺旋をの遺伝子をもち、進化の可能性をもつ生命にある力。つまり君たちも螺旋力があるということだ。まあ君たちの場合はリングを使って死ぬ気の炎として使っているがね」
「だけどそれだけで襲った理由にはならないだろう!?」
「ああ、そうだったね…理由としては二つある。一つは螺旋力は進化の力。進化を続けようとする生命はやがて最大級の螺旋…銀河となり体から突き出る。それが人間一人一人がぶつかるとどうなるかわかるね、ヴェルデ君?」
「…ブラックホールか…」
「そうブラックホールが発生する。僕はその現象をスパイラルネメシスと呼ぶ。さっき螺旋の戦士達に見せたのもそれさ」
ブラックホール…あまり身近ではないその名にリアクションを取りづらいがヤバイ事は確か。
バミューダはさらに話を続ける。
「この宇宙のなかで最も膨大な螺旋力を持つのが螺旋の戦士の星…だから彼女を連れ去り、彼らの弱点を探そうとした。…ここまでが一人目。そしてもう一つの理由が君さ、リト君」
「俺…が?」
急にバミューダに指を刺されたリト。
ツナ達は急なことで頭がついていけないのが多い。
「おっとすまないね。正確には君の付けている石さ」
「アマダムのことか…」
「君たちも知っての通り、ボンゴレT世の生きていた時代に一筋の流れ星が落ちた。その流れ星から出てきたのがアマダム……その正体は銀河そのものだ」
「なっ!?デタラメいってんじゃねぇぞ!銀河がこんなに小さいわけねぇだろうが!!」
「君は銀河とは広大なものだと思っているのかい?違うね。蟻から見て人間は巨人だが人間から見た人間は必ずしも巨人と言えるのかい?」
くっ、と獄寺は反論できずにいる。
バミューダの言っている事は大体合っている。
反論しようとしてもできないのだ。
「だが不思議だ…君たちが今までグロンギと戦ってきた力…仮面ライダーだったかな?どうしてボンゴレT世はそんな物を作れたのか…」
「?何をいって…」
「まあ君たちはここで死ぬのにはかわりないからどうでもいいね♪」
「「「!!」」」
突然バミューダから殺気が放たれ警戒するリト達。
さらにバミューダの周りに第八の炎…夜の炎が溢れると彼が付けていたおしゃぶりが外れる。
するとみるみるうちにバミューダの体が大きくなってくる。
上半身の服がとれ、顔に巻いてあった包帯が取れ、中性的な顔が露になる。
「んんー、久しぶりになったな。この姿は」
「なんだと!?」
「呪いを解いたのか、コラ!?」
「何を驚いているんだい?ここは認識が実体化する螺旋宇宙……ここを支配する僕が元の姿へ戻るのは簡単さ」
そう言って首をゴキゴキと鳴らしながら喋るバミューダ。
一方のリト達は戸惑う。
今までリト達が戦ってきた相手は怪人…少なくとも人間ではない。
仮面ライダーとしてではなく自分の武器と力で戦おう…そう決めた時だった。
「ブッ!?」
「グア!?」
「グッ!」
自分達の背後にバミューダが現れたのは。
「――――すまねぇすまなかった許してくれ!なっ!?ほら、この通りだ勘弁してくれ!俺達が悪かった!なっ、なっ!?頭下げろってんならいくらでも下げる!すまねぇすまねぇすまねぇ!だからなっ!?命だけは勘弁してくれよ!すまねぇすまねぇ許してくれ!すまねぇすまねぇ許してくれ!すまねぇ…」
シモンは見ていた。
自分の目の前で警官に許しを乞う『アニキ』を。
情けない、自分はこんな男と一緒にいたのか…そう言った気持ちはない。
ただ『なにか』が足りないのだ。
自分の後ろにある箱を開ける『なにか』が。
「どうしたシモン」
聞き覚えのある声が後ろから聞こえてくる。
だが絶対にあり得ない。
なぜならその声の主は今目の前にいるのだから。
だがシモンは振り替える…理由はない。
シモンは心のどこかで期待しながら振り向いた。
「無くしたのか、ドリル」
「アニキが……もう一人……?」
「馬鹿野郎!!ジーハ村に悪名轟くグレン団!!男の魂背中に背負い、不撓不屈の、あっ!鬼リーダー……カミナ様がそう何人も居てたまるかよ!」
赤いマントとサラシを巻き、刀を持つ男はカミナ……もう死んでしまったシモンの兄貴だ。
「あ、いや、でも、二人いるし……」
「その通り。好きな方を選べ」
「そんな無茶苦茶なぁ…!」
本当に無茶苦茶だ。
だがどこか懐かしい感じがする。
そう思っているうちにカミナの顔が目の前にやってくる。
「忘れたのか!俺の無茶に中身をくれたのはお前なんだ!俺の進めに中身をくれたのはお前なんだよ!お前のドリルはその辺の石っころとは違うはずだ!お前のドリルはココだ!いつまでもこんなとこでウジウジしてんじゃねぇ!お前のドリルはなんの為にある!」
「…兄貴…なのか?」
「――おい、お前も頭下げんだよ!」
カミナの話を聞いた後、『アニキ』がシモンの頭を下げようとする。
「頭下げて頭下げて、見ないふりして謝るふりしてこの場を乗りきれ!頭下げてりゃなんとかなる!」
「…俺の……」
「取り敢えず頭下げとけ…」
「俺の…ドリルは……」
「取り敢えず頭下げてりゃなんとか…」
「俺の…ドリルは…!」
シモンは頭を地面につける前に拳を握りしめる。
「天を突くっ!ドリルだぁぁぁぁ!!!」
そしてとなりにいた『アニキ』を殴り飛ばし、地面に叩きつける。
「ドリルは俺の…魂だ」
シモンはいつの間にか手に持っているコアドリルを箱の穴に差す。
箱はゆっくりと開き、中から光が溢れ出す。
それだけではない、地面からも光が出ているのだ。
その光は天に昇り、暗雲を払いのけた。
「行け、シモン。『もし』とか『たら』とか『れば』とか、そんな思いに惑わされんな。自分の選んだ一つのことが、お前の宇宙の真実だ!」
「ああ…そうだ…その通りだ」
「忘れんな、俺の宇宙もそこにある宇宙だ!」
「……兄貴」
「うん、ありがとう…兄貴」
「おっと俺を忘れてもらっちゃあ困るな!」
別の声が聞こえたので箱の方を振り向く。
シモンとカミナは彼をじっと見つめる。
「………………………誰だっけ?」
「黒の兄妹のキタン様だ!テメェまた忘れたのか!?」
「バーカ、忘れるわけねぇだろ?」
「そ、そうか?ならいいんだ…へへへ…」
カミナは彼…キタンと肩を組み、談笑する。
シモンは静かに笑い、空を見上げる。
「いつの間にか…逞しくなったな」
「そうかな?」
「「……ハハハ♪」」
短い…だが十分な会話をしたシモンはふぅ、と一呼吸してカミナに向き合う。
「行ってくるよ、兄貴」
「ああ、今度こそホントにあばよだ。行けよ、兄弟」
「あばよじゃないよ……一緒、だろ?」
「…おう!」
シモンはコアドリルを握りしめ、天にかざす。
そこを中心に光が螺旋状に集まり、螺旋の形を作る。
するとどうだろうか。
脚が、腕が、体が…シモンが段々とグレンラガンになっていくではないか。
「行くぜ、ダチ公!!!」
最後に顔がグレンラガンに変わるとシモン…いや、グレンラガンは大空に飛び立った。
「ありがとう先生!」
「「ヨマコ先生!」」
「ち、違…」
『貴方達の先生はもっと素敵なレディよ!』
ヨーコは後ろを振り向く。
テレビには様々な自分がいた。
射撃のコンテストで優勝…ミス・リットナー…花嫁…そこでヨーコはテレビを切った。
するといつの間にか場所が変わっている。
そこはヨーコが最後にカミナと二人っきりになった場所。
そしてテレビを持っているのは…他でもないカミナ自身。
「ありがとう…」
ヨーコは礼を言うがカミナはなにも言わず空を見る。
そこには空を飛ぶグレンラガンが。
「行ってくるね」
ヨーコはいつの間にか持っていたコアドリルを握りしめ、グレンラガンの元へ飛び立った。
パンを作る者…モデルをやる者…ニュースキャスター…アイドル…会社員…工事をする者…株の取引市場…保父…教師…大統領…
「はい、パパ!」
そしてココでは妻の見守るなか、娘と戯れるヴィラルがいた。
娘からもらった花飾りを着けたままヴィラルは娘を持ち上げる。
キャハハ、と笑う娘の顔を見ているヴィラルは幸せそうだ。
だが…ツーマは空を黙って見上げた。
「ん?」
気になりヴィラルも空を見上げる。
そこには憎き敵であった者であり今はかけがえのない仲間…グレンラガンがいた。
「そうか…俺も甘い夢を見たものだ」
ヴィラルはそういいコアドリルを握る。
妻と娘を一度見ると彼は再び戦士の顔に戻り、
「ふっ!はぁっ!」
グレンラガンへ飛び立った。
「やはりこの程度だったね」
バミューダの不意打ちから始まった戦いはあっという間だった。
バミューダは次々とリト達を攻撃し、戦闘不能寸前の状態まで叩き込まれた。
夜の炎の能力は空間移動…シンプルでいてかなり凶悪な能力だ。
「くっそ…!」
「不意打ち…とは……卑怯な…」
「皆さん!」
「なんとでも言うがいいさ。君たちには絶望を味あわせてから殺すよ。例えば…」
バミューダは腕だけをショートワープさせ、ニアの喉元に移動させる。
「この娘を目の前で殺すとかね」
「や…ヤメォォォォォ…!」
リトはなんとか行こうとするがダメージでうまく動けない。
ニアは目をぎゅっと瞑り、心の中で助けを呼ぶ。
「(シモン…!!!)」
ヴォン…
「「「!!?」」」
絶体絶命… そう思った矢先にニアのポケットから緑色の光が点滅する。
彼女はそれを知っている…かつてシモンに貰った綺麗な石だ。
光の点滅は段々と早くなり、そして……
ポケットを突き破り、グレンラガンが光る石から現れた。
「あれは……」
「グレン……ラガン…」
「シモン!!」
ニアが呼ぶ瞬間、頭部からシモンが現れる。
「ニア!助けにきたよ!!」
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