真恋姫†夢想 弓史に一生 第八章 第六話 |
〜聖side〜
「さぁ、着いたぞ。適当に座ってくれ。」
夏侯淵さんの言うとおり、奥の天幕には料理と酒が用意されてあった。
俺達は促されるまま席に座ると、夏侯淵さんは俺達が座るのを見て酒を片手に皆の前に立つ。
「皆、今日はご苦労だった。正直なところ私や典韋だけでは今日を生き残ることさえ出来なかったかもしれない。今こうして皆の前で話せるのもここに居る皆がいたからこそだ。改めて礼を言う、ありがとう。」
そう言って頭を下げる夏侯淵さん。
俺はそれを見てさらに感心する。
討伐隊長であり、曹操軍の将軍である自分の立場の方がこの場に居る誰よりも高いだろうに……素直に感謝するときは頭を下げる彼女の心粋が眩しく感じられた。
やはり、人の上に立つ者はこうでなくては……。
「そして、今日の戦を大勝出来たことは正に奇跡としか言いようがない。この奇跡は、今この場の皆が集まったからこそ起きたものだ。しかし、お互いにまだよく知らないものが多いのも事実。この機会に是非とも仲良くなって欲しい。それでは、今日の戦の勝利を祝って、乾杯!!!!!!」
「「「「「「乾杯!!!!!!!!」」」」」」
こうして、俺達と曹操軍の一部の人たちとの宴会はスタートしたのだった。
「さぁ、徳種。まずは一杯飲んでくれ。」
「おっ!! 良いのか? この中じゃあんたが一番偉いんだろ?」
「ふっ……なに、今日の功労者を一番に労おうとしてるだけさ。」
「そう言うことなら………一杯もらおうかね…。」
俺が杯を差し出すと、夏侯淵さんはお酒を注いでくれる。
なみなみと注がれた透明な液体を一気に飲み干せば、後からかっと火のついたように熱さがのど元を襲う。
どうやら、この酒はなかなかにアルコール度数が高そうだ。
「良い飲みっぷりだ。さぞ酒が上手く感じたであろう。」
「あぁ…。酒も美味いし、何よりお酌してくれる人が美人だからね…。」
「ほぉ………。自分の周りにいる女の子では飽き足らず、また他の女に手を出すのか?」
「ちょっ!!? 夏侯淵さん!!!」
そんなこと言ったら駄目だって!!!!!!
「「「「「「じ〜〜〜っ………………。」」」」」」
ほらっ!!!!!!! うちの皆の目が怖いじゃん!!!!!
変な誤解を生むのは止してくれよ………。
あ〜ぁ……これ、絶対後でお仕置きだよ………。
「冗談だ……。しかし、美人と言われるのもなかなか悪くないな………。ありがたくその言葉を受け取っておくとしよう。」
「…………そうしてくれ…。」
からかうぐらいなら初めから言わないでくれよ………。
俺の命がかかってんだぜ……??
そんな内心ひやひやのまま夏侯淵さんと酒を飲んでいると、麗紗がやってきて俺にお酌をしてくれた。
しかし、どこか顔が仄かに赤みがかっている気がするが………気のせいだろうか……。
「お疲れ様でした〜お兄ちゃん。一杯どうぞ〜!!」
「あぁ……。後で、ありがたくもらうよ…。」
俺がそう言うと一度俯く麗紗。そして次の瞬間、
「…………後で……なんでしゅか?」
「………えっ??」
「後でってなんでしゅか!!!! 今飲んでくだしゃい!!! そして感想を聞かせてくだしゃい!!!」
麗紗がいきなり怒り出した…。
「えっ!?ちょっ!!!!!」
麗紗ってこんな子じゃ無かったよね!?
いったい何があったのさ!!!!
あまりの麗紗の変わりぶりにあたふたしていると、後ろから蛍がひょこっと顔を出して説明してくれた。
「…………麗紗、お酒弱いのに飲んだ……。そしたら、こうなった……。」
うん、簡単で適格な説明ありがとう………。
「しかし、なんでまた飲めない酒なんか………。」
「………………鈍感……。」
「えっ?? 何か言った?」
「…………はぁ〜…………やけ酒らしい……。」
「良いから飲んでくだしゃい!!!! それとも………私のしゃけがのめないって言うんでしゅか!!!」
もう、絡み酒の度合いが半端ない……。
これから麗紗に酒飲ませちゃ駄目だな………。
ともあれ、やけ酒と言うなら今日は付き合うとして………。
「んぐっ……んぐっ……。ぷはぁ!!!」
「どうでしゅか……??」
「うん、美味しいよ。」
「さっきの夏侯淵しゃんのとどっちが美味しいれしゅか?」
「えっ……いや……どっちも美味しいけど……。」
「あぁ〜!!!!! 私って言わないんだ〜!!!! それじゃあ、私美人しゃんじゃないんだぁ〜!!!! お兄ちゃんひ〜ど〜い〜!!!!!!!!!!」
あぁ〜!!!!!!もうやめてくれ!!!!!! 麗紗のキャラが壊れる!!!!!!
とりあえず、麗紗を落ち着けないと………。
「大丈夫。麗紗は美人と言うよりは可愛いかな。女の子らしくて俺は好きだよ。」
かなり照れくさいが………まぁ、麗紗の為だ……。
「………本当れしゅか?」
「あぁ、勿論。」
「…………でへへっ〜…。お兄ちゃん、大好き〜!!!!!!!!!!!!」
満面の笑みで俺に抱きついてくる麗紗を受け止めてとりあえず一安心………のはずが………。
「………………なんで蛍までくっついてるのさ…??」
「………………なんとなく…??」
「………あっそ………。」
男はこういう時は何も言わずに受け止めるもんさ……。
「………………♪」
蛍もなんか嬉しそうだし、良かったんじゃないのかな………。
「ほぅ……。徳種、お前は私たちに自分たちのいちゃいちゃを見せつけたいと取って良いのだな?」
「いやっ………そう言うわけじゃないんですけどね…この子たちが離してくれないんですよ……。」
まぁ、そう言うことにしといてくださいよ………。
「お待たせしました!!! 料理の追加です!!!!!」
先ほどのやり取りからしばらくすると、典韋ちゃんがお皿に料理を持ってやってきた。
見れば美味しそうな見た目、匂い………。これは………絶対に美味い!!!!!
「美味そうだね……。頂いても良いかい?」
「はいどうぞ。元々お礼として皆さんに食べて頂くために作ったものですので、遠慮なさらずに!!」
笑顔で典韋ちゃんがそう言うので、お言葉に甘えてお皿の上の棒棒鶏に手を伸ばす。
「………もぐもぐ…。」
「どうですか?」
「うん!!美味しい!! こんな美味しい料理を陣で食べられるとは思ってなかったよ…。」
「良かった〜。喜んでもらえたなら私もうれしいです。」
「…うむ。やはり琉流の料理は美味しい。」
「ありがとうございます、秋蘭様。 あの……ところで……。」
「ん??どうした??」
「それは………一体………。」
「あぁ……コレ??」
典韋ちゃんが指さす先には、俺の膝で膝枕をする麗紗と蛍。
先ほどの後、なんやかんやしているうちに麗紗が俺の膝を枕にして寝てしまったのだ。
そして何故か蛍も俺の膝を枕にしている。
「気にしないで良いよ……。酔っぱらいだから。」
「よってりゃんからいれしゅよ〜!!!!!!」
「………はいはい。おとなしく寝てましょうね……。」
「………ははっ、大変そうですね…。」
若干引き気味の笑顔をする典韋ちゃんに俺も苦笑を返すしかなかった。
「…………良い匂い…。」
典韋ちゃんの料理の香りに誘われたのか、寝てたはずの蛍が目を覚まして料理に興味を寄せる。
「おっ、目が覚めた? 典韋ちゃんが作ってくれた棒棒鶏だけど食べるか?」
「…………食べる…!!」
若干興奮気味に答える蛍は、棒棒鶏を一口頬張ると蕩けた様な笑顔に変わった。
その顔を見れば美味しかったことは安易に読み取れる。
「美味しいか?」
「…………。(コクコク)」
「気に入ってもらえたみたいで良かったです。」
「………美味しい……。鶏肉を茹でる時……生姜…??…入れてる…? 鶏肉の臭みが取れて……いい感じ……。」
「はい!!そうすると、香りも移るし臭みも消えるので便利なんです。」
「…………うん………典韋将軍は………料理が上手い………。」
「そんなことないですよ!!!! それに、生姜の味が分かるってことはあなたも料理するんですよね?良かったらどんなのを作るのか教えてもらえませんか?」
「……………私も………いろいろ聞きたい……。」
おやっ?? 少し目を離しているうちに料理談義で典韋ちゃんと蛍が仲良くなってるぞ??
まぁ、他国の人と仲良くなっておくのも後々大事になってくるから悪いわけじゃないがな………。
「すいません。少しよろしいでしょうか? 少し頼みたいことがあるのですが……。」
蛍と典韋ちゃんの微笑ましい交流を見届けていると、その反対側から銀髪で活発そうな少女が声をかけた。
「おやっ……君は確か…。」
「はい。義勇軍の大将をさせて頂いていた、楽進でございます。」
「俺は徳種聖。よろしくな楽進。」
「よろしくお願いいたします、徳種様。」
「様付って………同じ義勇軍同士なんだから気にしなくて良いよ。」
「いえっ、徳種様は私たちを勝利に導いた言わば命の恩人。その様な方に対等な立場でお話など出来るはずが………。」
「いやっ、ほんとに気にしなくて良いから……。」
「しかし……!!」
「はぁ〜……まぁ〜た凪は相も変わらず………かたっ苦しいな〜……。」
「そうなの。頭カチコチなの。」
楽進が尚も頑なに遜ろうとすると、その後ろから李典と于禁が話に交わってくる。
「こらっ、二人とも!! 徳種様に失礼ではないか!!!」
「そんなことないって………なぁ、徳種はん?」
「そうなの。私たちは同じ義勇軍だから、仲良くすればいいと思うの!! だから、かたっ苦しいのはなしな〜し!! ね?徳種さん。」
二人の軽い口調に表情を曇らせる楽進。
このままだと喧嘩になりかねないので、一度この場は預かっておくか……。
「そうだな。俺と君たちは今は同じ義勇軍同士だ……。ならば、変に畏まったりする必要はないだろう。気楽に声をかけてくれればそれでいいさ…。」
俺がそう言うと、楽進は申し訳なさそうに眉をひそめ、李典と于禁はだよね〜と言いたげな表情でにかにか笑っていた。
そうだ、彼女たちは何か用事があってここに来たんじゃなかったかな……??
「ところで、何か用があったんじゃなかったかな?」
そう言うやいなや、楽進ははっと表情を改め、俺の正面に膝をついて座ると頭を下げながら、
「どうか、私に戦い方を教えてくれませんか!?」
と懇願してきた。
突然の事に吃驚する俺は、二、三秒不自然に間を開けてしまう。
その間が彼女には拒否の間に映ったのであろうか……彼女の表情がしゅんと暗くなった気がする。
何か答えてあげなくてはと思い、とにかく何故俺に戦い方を習いたいのかを聞くことにした。
「えっ〜……と………。それは、一体どうして……。」
「はい。徳種様の戦いぶりを見させて頂いてから、私の武が如何に稚拙であったかを痛感させられました。願わくば、私にその見事な近接戦闘術をご指導ください!!」
そう言って尚も頭を下げる楽進に困惑していると、傍に立つ二人が言葉を紡いだ。
「実は……凪は徳種はんが武器を使わずに敵をバッタバッタと倒しているのを見て感動したらしくて………どうにか教えてもらえないもんか悩んどってん……。」
「それで今日、会う機会があるだろうから直談判すれば?って言ったら………こうなったの……。」
何とも分かりやすい解説ありがとう二人とも。
ということは楽進は俺に弟子入りを申し込んでいるのだ…。
こんなことになるのなら素直に磁刀を使っておけばな……と後悔しながらも、一刀以来の弟子が出来ると言う事に少し嬉しくなった俺は、その申し入れを受けることにした。
「分かった。ただし、明日一日しか時間はないから教えれることは限られてる。そこから先は君が自分の手で見つけるんだ、それでも良いかい?」
その言葉を聞いた楽進が勢いよく顔を上げると、その眼は嬉しさと期待でキラキラと輝いている。
「はい、勿論です!!! よろしくお願いします!!!!!」
楽進と明日稽古する約束をしたところで、楽しい??宴会は幕を閉じて、俺たちは自分たちの陣へと帰ることになったのだった。
深夜
どこか寝苦しくて起きてみると、麗紗の右足が俺の腹の上に乗っていて重しになっていた。
「まったく………。酔っぱらいは寝相が悪い………。」
麗紗に蒲団がかかるようにした後、目が覚めてしまった俺は少しぶらぶらと歩くことにし、町中を歩き回ってみた。
深夜ということで物音はせず、静まり返った街はどこか不気味ではあったが、ここに住んでいる人たちを救えたからであろうか………どこか、気分は良かった。
それに、この街は昔の広陵に似ている。
今までは碌な太守でなく、発展する力を持っているのにそれを伸ばせない街……。
そんな街を見ていると、昔のことを思い出して涙が出そうだ………。
「ここまで………長かったな………。」
独り言が自然に口をついてでるあたりどうやら相当感傷に浸っているらしい。
しかし、それほどまで長く感じたのはしょうがないと思える。
この世界にやってきて早六年弱となるが、この六年間で初めてやったことがどれだけの数あるものか……。
それを一つ一つ思い出せば、やはりこの六年間は長かったと言う以外に他はない。
しかし、今後はどうなっていくのだろうか……。
やはり、経験を積んだだけ人生は早く過ぎ去ってしまうのか……。
それとも、まだまだ俺の知らないことが溢れていて、人生はずっと長く感じられるのか……。
どうせなら長く感じて、あいつらと一緒に居る思い出をたくさん作りたいものだが……。
「……そこの方、ちょっと待たれよ……。」
物思いに更けながら道を歩いていたところで急に、ローブを纏い、顔を隠した人物に呼び止められた。
「ん?? 俺のことか?」
「左様……。お主以外に誰がおる?」
言われて今が深夜であることを思い出す俺…。
俺ってばおっちょこちょい♪
ってそうじゃなくて!!!!!
「…………あんたは何者?」
さっと声の主から身を引くと、帯刀している磁刀の柄に手をかけたまま問いただす。
もし変な動きをすれば、その瞬間に………。
「…………私はただの占い師……。私はそなたに訪れる事についてお知らせしておこうと思いまして……。」
「…………占い……ね……。」
長めのローブを被っているせいで顔は見えないが、声からすると男であろう。
何とも怪しい井出達ではあるが……こいつから殺気の様なものは感じない。
正直占いとか呪いとか趣味じゃないんだが………。
「まぁ、良い。じゃあ、俺にはどんな未来が見えるって言うんだ??」
すると、俺の問いかけにローブの男は真剣な面持ちで話し始めた。
「あなたは近いうちに死を経験するでしょう。しかもそれはあなたに近しい人の……。あなたには二つの選択肢が現れる。一つは遺志を受け継ぐこと、そしてもう一つはその意思を汚すこと。しかし、どちらを選んでもあなたは過酷な状況下に陥る。そこからはあなたの考えが、行動が、感情がこの世界を変える………。何を選んでも後悔はせんようにな………。」
その男の言葉を理解しやすいように咀嚼する。
つまりは……だ。俺は近いうちに俺の仲間の誰かを失い、そして決断させられるのだ………。
どれも邪に繋がる道を……。
「………そうかよ、ありがとな。じゃあ、後悔しないように気をつけるわ………。」
そう言って男の前を去りながら手を振る俺。
そして、その後ろ姿を見つめながらローブの男は呟く。
「歴史の道を外れることはそれ即ちこの世界の存在を否定するようなものなのだ……。だから分かって欲しい、天の御使いよ………。彼女の死は避けられるものでは無かったということを………。そして立ち上がれ、お前自身の考えで………。そうすれば、世界はいずれ一つにまとまる……………………一人の犠牲の上に………な……。」
「あ??」
何か男が言ったような気がして振り返ってみるが、そこには誰の姿もない。
忽然とその男は俺の前から姿を消したのであった……。
弓史に一生 第八章 第六話 歓喜の宴、曇天の占い END
後書きです。
第八章第六話の投稿が終わりました。
物語において重要な人物の登場が今話にあたるわけですが、正直今後どうなっていくかはぼんやりとしか浮かんでいません。しかし、物語のキーパーソンになると思われますので、皆さん覚えておくことをお勧めします。
そして…………リア充爆発しろ!!!!!!!!!!!!!
書いてる私が書くのもおかしいかと思われますが、そう叫ばざるおえない!!!!!
そう、これは涙ではない!! 目から汗が出ているだけなんだこんちくしょー!!!!!!
さて、次話はまた日曜日に。
ではまた来週〜!!!!!!
説明 | ||
どうも、作者のkikkomanです。 今話は物語の重要な人物が出てきます。 果たしてあれは誰なのか……お楽しみに。 |
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