アニネプDD!第一話 【プラネテューヌの漫才師(ネプテューヌ)】 |
~ゲイムギョウ界 プラネテューヌ 市街~
(色んな意味で)先進都市、プラネテューヌ。聳え立つ象徴プラネタワーを中心に広がる紫の都市。張り巡らされたチューブ状の通路の一角。二人の少女がプラネタワーに向かって歩いていた。
「教会に行くのは式典ぶりかしら」
「です。ねぷねぷ達すごかったです」
二人の少女、青いコートを羽織り目を紅い布で覆った方をアイエフ、セーターの方をコンパと言う。
彼女達がいう【式典】とは、一週間ほど前に行われたゲイムギョウ界に存在する四国による友好条約締結の式典のこと。国を統べる四人の女神により結ばれた協定の内容は【武力による((信仰|シェア))争奪の禁止】。これにより、女神が信仰を得るためには為政を中心とすることになった。
その割を一番食ったのは、なんと締結を言い出したここ、プラネテューヌだった。
プラネテューヌの女神、パープルハート・ネプテューヌ及びパープルシスター・ネプギアの使用するプロセッサ・ユニット(女神化時の装甲)は対女神を想定して教祖イストワールによる設計、開発されている。
為政は教祖に任せ、女神は対女神戦闘によるシェアの獲得という手段を主にしていたプラネテューヌからの突如行われた優位性の放棄ともいえる協定提案。プラネテューヌを事実上抑え込めるとして他三国も是に同意した。
結果、プラネテューヌに残ったのは為政に四苦八苦する女神とそれを何とか支える教祖。リーンボックスとのワールドシェアランク最下位争いの日々となっている。
「ネプギアはともかくねぷ子は本当に戦闘以外からっきしだし、この国もどうなることかねぇ」
「ねぷねぷとぎあちゃんを信じることからですよあいちゃん。信じることが信仰です」
「そうね……っと、すいません」
アイエフがぶつかった女性は驚いた顔をすると「こ、これ、お願いします!」と頭を下げながらアイエフに一枚の紙を渡し即座に走り去っていってしまった。
なんなんだろう、と思いながらコンパに紙を渡すアイエフ。目を覆う布とこのことから彼女が目が見えないことがわかる。
渡された紙を見たコンパは険しい表情をすると、教会に向かって走り出した。
「ちょ、ちょっとコンパ!?」
「急ぐですあいちゃん、たいへんなことになってるかもしれないです!」
アイエフも器用に人を避けながら追いかけ、二人は教会に向かっていった。
〜プラネタワー内部 イストワールーム〜
まるで電脳世界のような部屋の中。この国の女神、ネプテューヌとネプギアは部屋の中心で正座させられていた。
目の前ににはUの字に上から棒を足したような図と、その横に浮かぶ教祖イストワール。
イストワールの表情は笑顔ながらも若干額に青筋が立っている。怒っていることは明白だ。
「ネプテューヌさん、ネプギアさん。本日何故呼ばれたか、わかりますか?」
「はい!わたしがいーすんの取っておいたプリンを勝手に食べてしまったからです!」
「そんなことしてたんだ」
てへぺろしながら懺悔するネプテューヌに対して容赦なく向けられる冷たいまなざし。
イストワールだけではなくネプギアからも睨まれ瞬間的に陥落した。姉は妹に勝てなかった。
「プリンに関しては後で罰を与えるとして…、現在プラネテューヌにおけるシェアが減少傾向にあります」
「式典の後からずっとそんなだよねー」
「最近はデスクワークしかしてないし、協定の所為でユニちゃんとの殺し愛もできなくなったもんね」
「さらっと言うことじゃないんだよネプギア……」
「ネプギアを肯定するわけじゃないけど、そのデスクワークもちゃんとやっているか怪しいわね」
突然二人の背後の空間が開く。そこからアイエフとコンパが部屋に入ってきた。
「申し訳ありませんイストワール様、火急の用事ができたようなので」
「まぁまだ本題に入ったばかりですし。それで、できた【よう】とは?」
「それについては……コンパ」
「ねぷねぷ、これを見るです」
コンパが見せたのは一枚のチラシ。
『NO!女神』
『女神なんていりません!』
『女神への依存から脱却を!』
などなど書かれたもの。つまりは【反女神】を掲げるものだ。
「これは………シェア減少の影響ははここまで及んでいましたか」
「今まで私達は他国の女神との戦争でシェアを獲得していました。それがなくなった今、為政は教祖がしており女神は穀潰し、と言えますね」
「これでもねぷ子さんそれなりに頑張ってるんだけどー!?」
「ねぷねぷ。ねぷねぷが頑張ってるのは知ってるです。でもまだ駄目だからもっと頑張らないといけないですよ?」
淡々と言う分威圧感が増しているコンパ。咄嗟にネプギアの影に隠れるネプテューヌだがあっさりイストワールによって引き剥がされ、元の位置に正座状態に戻った。
「何故、ねぷ子さんが何をしたの」という悲痛な叫びに答えたのはネプギアで「何もしてないからだよ」と痛烈なものだった。
「プラネテューヌ国庫も厳しい状況で対モンスター型ユニットの開発は難航しています。暫くは現状のユニットでのシェア稼ぎになります。打開策は………今のところありません」
「減少を抑えることが精一杯ですね……」
「あ、そうだ!」
唐突に立ち上がるネプテューヌ。何か提案があるのか、ということで全員の視線を一身に受けながらネプテューヌは大きく宣言した
「わたし、女神の心得を教わってくるよ!」
「女神の心得……って、誰にですか?」
「んー………ノワール!ラステイションの、ブラックハート・ノワール!!!」
ドヤ顔で宣言したネプテューヌを見て、イストワールは思った。
ああ、また何かロクでもないこと思いついたな、と。
〜黒き階層都市ラステイション 最上層教会〜
「で、突然ぞろぞろと押しかけてきて……」
ラステイションの最上層に位置するラステイション教会。の最上階のノワール私室。の窓の外にあるテラス。
ラステイションの女神、ブラックハート・ノワールはなんともいえない状況に遭遇していた。どちらかといえばなんともいえない状況から襲ってきたのだが。
「なんで隣の国の女神がいきなりうちのテラスで寝てるのよー!!」
「まぁいいじゃんノワールー。わたしとノワールの仲だしー、気にせずに仕事してー」
「私が気にするのよ!」
わざわざビーチチェアと枕まで持ち込んで昼寝するネプテューヌに対し割りと憤慨するノワール。心なしか背後に数本の剣が浮いている。
「申し訳ありませんノワールさん。お姉ちゃんが女神の心得を教わりたいと「嫌よ」でしょうね」
あっさりと断られたことに驚く素振りも見えないネプギアに対し、転がりながら「えー」と文句を言いたげなネプテューヌ。
気にする様子もなくノワールは続けた。
「私、敵に塩を送る趣味はないの」
「えー、友好条約でもう敵じゃないじゃーん。先々週フルボッコにしたのまだ気にしてるのー?」
「関係ないわよ!」
友好条約が結ばれる前で最後の女神同士の武力衝突の際、ノワールはネプテューヌに敗北した。それもユニット全損という恥を晒してまでだ。
ユニットは女神姿のとき身に待とう装甲のこと、それが全損、全てなくなったということは………。
思い出したのかノワールも若干顔を紅くしている。
「武力による争奪が禁じられただけでどちらにしろ信仰を奪い合う関係なのは変わらないわ。それだけよ」
「かったいなーノワールは。そんなだから友達できないんだよー」
「馬鹿にしないで頂戴。友達ぐらいいるわよ」
「「「「えっ!?」」」」
ノワールの一言に場の全員が驚いた。すっかり話の蚊帳の外にいるコンパとアイエフまで声を出すほどだ。
ブラックハート・ノワールといえば友達がいないことで有名だ。その有名さたるやラステイション国内で「女神は友達が少ない」という小説まで出回っているほどには有名なのだ。
そんなノワールからの友達がいる宣言。基本無表情のネプギアですら驚いた顔をしている。
「ノワールに友達いたの!?え、誰!?どこの誰さん!?あの鎖の名前の人実在したの!?」
「あ、え、その……」
ネプテューヌに問い詰められ急にどもるノワール。この時点で後ろのネプギアとアイエフは「あ、やっぱいないんだ」と察しているが口は出す気はないようだ。
「姉さん。この書類終わったよ」
「あ、ユニ、お疲れ様!そこ置いといて!」
エレベータの停止音とともに女神候補生、ブラックシスター・ユニが紙束を抱えて現れる。話を逸らす好機と見たかノワールは助かったと言いたげにユニを迎えた。
その思惑を知ってか知らずかユニは面白くなさそうな顔をしている。
「ね、姉さん!今回の書類、頑張って早めてみたつもりなんだけど……どうだった?」
「え?ん……まぁ、普通ね。Bランク」
この質問が予想外だったのか思わず素で返してしまうノワール。
直後はっと質問の意図に気付くも既に遅かったようだ。
「ちょいちょいノワ子さんや。まさか友達ってユニちゃんを換算してるんじゃあるまいなぁ?妹を友達に換算しちゃあ……いかんでしょぉ?」
「そ、そんなことしてないわよ!ゆ、ユニ……」
ネプテューヌに再度詰め寄られるノワール。ユニに助けを求めようと視線を向けたが既に書類が机の上に置かれ、ユニの姿はなかった。
「ほーらー、やっぱりボッチなんじゃないのかなノワールさんやぁあ」
「少なくとも、志向を共有できそうなのは友達にできる範囲にはいないでしょうね」
「ど、どういう意味よネプギア!」
まさかのネプギアからの援護射撃。ノワールはもとよりネプテューヌさえも意外な顔をしている。
真面目といえば真面目だから無表情で大して何かと関わろうとしないネプギアがこうまで興味を示すのは珍しい、とネプテューヌは思い、同時に喜んでいた。妹が話しに加われたことになによりも。
「友達とは共感、信頼の情を抱き合って互いを肯定し合う関係のことを言います。そして条件として近親者は例外とする。つまりユニちゃん及びケイさんを友達の枠に入れることはできません。ノワールさんの女神の誇りは美徳ですがそれに共感できるものは少なくとも人間にはいないと思いますよ。女神の誇りは人間のそれより遥か遠いところにありますから」
「な、何がいいたいのよ」
「では簡潔にいいます。ノワールさんに少なくとも人間の友達ができるわけありません。それはノワールさんにとって不敬ですから」
ぐさっ。
場の全員の耳に確かに言葉がノワールに刺さる音が聞こえた。意図が切れたかのようにノワールが崩れ落ち、「ふ、ふ……」と微かな息遣いのみが聞こえる。
「お姉ちゃん、私はユニちゃんを追います。ノワールさん任せました」
「え、ちょ!これ丸投げするのネプギアッー!」
二人の間を通ってエレベーターに乗るネプギア。
ネプテューヌはなんとかノワールのフォローをしようと「ほ、ほら!わたしっていう友達いるよね!」と慰めている。が、ネプギアは容赦がなかった。
「でもさっきノワールさん自身がお姉ちゃんのこと敵って」
「もうやめてネプギア!ノワールのライフポイントはゼロよ!!」
もはや土下座のような体勢になるほど崩れ落ちたノワール。必死に慰めるネプテューヌ
対女神特化の女神の妹も対女神特化。プラネテューヌの女神こえぇと密かに思いながら無干渉を貫くアイエフとコンパだった。
〜教会層 庭園〜
「…………」
ノワールの意向で作られた庭園。緑と水色に染まった癒される空間の一角にユニはいた。
何をするでもなく空を見上げ、愛用の黒いマグナム銃を天に向けている。
「……何の用?」
ユニが視線に向けた先には、ネプギアが紅紫色に光る剣を持ち、佇んでいた。
表情は相変わらずの無表情。剣を持っていることは殺りあいたいのか、と思いユニももう一丁紫色のマグナム銃を出し、銃口を向ける。
「いえ……。珍しく落ち込んでいるようですし、少し相談に乗ろうかと」
「相談ってのは剣持って申し込むものだったかしら」
「いわば私達なりの相談ですね。これは信仰争奪のためのものではなく、ただのストレス解消目的の組み手です。遠慮はいりませんよ?」
「……上等じゃない」
飛び起きると同時にネプギアに向かって数発発砲。
ユニの個人的趣味によりオーダーメイドされた二挺拳銃【ヴィオラカオス&ノワールロウ】。対大型向けに造られた.50口径の拳銃は本来ユニの体格には余るもの。だが女神は女神化できなくとも人間より多少は頑丈。故に無理やり使いこなしている。
瞬間的に到着しネプギアの体に風穴を空けるはずだった銃弾はジュッ、という蒸発音とともに姿を消した。
赤紫の剣を逆手に持ち小さく振り回して次々と迫る銃弾を切り落とし、蒸発させる。
本来相当の事のはずなのに涼しい顔でやりながらネプギアは呟いた。
「ユニちゃんらしくなく、随分落ち込んでいますね」
「うるさい……あんたみたいな優等生とは違うのよ」
「戦闘以外に関しては劣等生だといーすんさんからは言われましたが」
「あんたなんかにはわかんないわよ……なんであんただけ女神化ができるのよ!!」
「やってみたらできたんだから仕方ないじゃないですか」
数秒後、弾切れを起こし引き金を引いてもガチガチという音しかならなくなり、ユニは銃を下げた。それを見たネプギアも剣をしまう。その表情はどちらも不満げなものだった。
「弾切れ……ユニちゃんらしくないですね。予備どうしました?」
「持ってないわよ……ケース部屋だし」
「それで……折角お姉ちゃんの目が届かないところで始められると思っていたのに」
「あんたのバトルマニアにはついていけないわ」
はぁ、とため息をついて二人そろって近くの椅子に腰掛けた。
どうしたものか、と会話慣れしていないネプギアが悩み始めた直後、ユニが口を開いた。
「……やっぱり、姉さんは遠かったわ」
「書類処理速度でそこまで優劣を感じられるユニちゃんはすごいと思います」
「あんた、慰めにじゃなくて貶しに来たんじゃないの?」
何でそんなことを?と言いたげな表情をするネプギアを見てユニは察した。こいつ、素で言ってやがると。
自分どころか姉すらも超えるコミュ症を発揮する目の前の【最優】を見て再度ため息。
「ほんと、なんであんたみたいなのが最優の女神候補生なんて言われてるのよ…」
「女神化できるからじゃないですか?事実戦闘しか能のない私達は有効条約締結までワールドシェアトップ争いしていましたがいまや見る影もありませんし」
「他人事ね……」
「似たようなものですし、それにその書類整理でいえばユニちゃんが最優です。最優の女神候補生が何を以て最優かは知りませんが、現在の女神に必要な事項なら私よりユニちゃんのほうが優れていると思いますよ」
「………」
貶しているようにもただの自虐にも聞こえる慰め。だが、それがネプギアの精一杯なのだとユニは感じ取った。
と同時に、悩むのが馬鹿らしく思えた。ある種天然の気があるネプギアは一種の保護欲を駆り立てるものがあり、なんとなくほっとけなくなったからだ。
「はぁ。なーんかあほらし」
「そのあほらしいことに銃弾何発使ったんでしょうね」
「うっさい。……でも、ありがと」
「お礼を言われることはしていませんよ。ただ……」
「ただ?」
「これ以上手のかかる妹のような存在は勘弁してほしいだけです」
「誰が妹分か!てかあんた地味に自分の姉まで入れなかった!?」
「他に誰がいるんですか?」「せめて否定しなさいよ!」
ネプギアの天然ボケにつき合わされてたまには考えるのをやめてもいいかな、と密かに思うユニ。
対してネプギアは「ユニちゃんがケース持ってたらもう少し続けられた」と別方向の考えを始めていた。どこまでも僅かにズレた二人の漫才は二人の姉がやってくるまで続いていた。
〜ラステイション寮 西 とある街道〜
森に伸びる一本の道中。ノワール、ユニ、ネプテューヌ、ネプギアの四人はこの道を西に向かって歩いていた。突然ノワールが「興が乗ったわ。女神の心得教えてあげる」といいネプギアとユニを連れてここまできたのだ。元々ネプテューヌに巻き込まれた立場のアイエフとコンパは適当に観光して帰る、ということでここにはいない。ネプテューヌは残念そうだったが。
「と、いうわけでこれよりラスーネ高原及びトゥルーネ洞窟のモンスターの退治ということであんたらプラネテューヌの女神に女神の心得というものを「姉さん…」何よ」
「二人とも聞いてない…っぽい」
「ネプギアネプギア!これが噂のKAN=BAN!?切っても歌で直るって奴!」
「うん、普通の看板だね。というか多分楽器がないと無理だと思うよ」
生真面目な雰囲気を保とうとしていたノワールだがプラネテューヌ姉妹のあまりのフリーダムさに凍結した。
そう、ネプテューヌとネプギア、この問題児二人に真面目な態度を期待するだけ間違いだったのである。ある意味ノワールのミスだった。
「………あんたら…」
「ねぇノワール!楽器持ってない?オカリナとか!」
「なんなら指揮棒でも出来ると思いますけど」
「あんたらって奴等はあああああああ!」
「うお、ノワールがキレた」
ついに堪忍袋の緒がキレたノワール。
突如二人の周囲に二人に向かって宙に浮く剣の山が現れる。どれもこれもその筋に出せば高値で売れそうなものばかり。切れ味も申し分なさそうだ。
「そろそろ怒るわよネプテューヌ……いきなり人んち押しかけといて随分フリーダムにやってくれたじゃない?」
「あー…書類バラまいちったのは反省してるよ、流石に」
「何で私まで巻き込まれてるんでしょうか」
剣に囲まれているというのに相変わらず緊張感の欠片も存在しないこの姉妹。余裕とは別もので常に平常を保とうとしているのだろう、とノワールは推測した。対女神には慣れきっている二人だから、これは危機でもなんでもないと感じているのだろうと。
「……もうすぐ着くわ。行くわよ」
不機嫌なまま振り返り、歩き出すノワール。
「姉さんも姉さんね」と呟き着いて行くユニ。
そして目を見合わせ首を傾げるネプテューヌとネプギア。どうやら結局何故怒られたのかよくわかっていないようだ。特にネプギアが。
少しトラブルがあったものの、依頼のあった場所に一行は到着した。
「っと、いけないいけない。アクセス!」
その直後、ノワールが思い出したかのようにポージング。突然ノワールの体を黒い光が包み込んだ。
数秒後、ノワールを包み込んだ黒い球体が割れ、中から生まれ出でるように姿を変えたノワールが現れた。
身に纏う服が一部のみに張り付いた装甲に変わり、髪の色も黒から白に変わっている。
「いきなり女神化?てか今の演出過剰じゃない?」
「黙れネプテューヌ。神とは常に最高の演出を用意しておくことだ」
ネプテューヌの突っ込みに透かさず突っ込みを入れるノワール。若干テンションが高めになっていることに加え、右腕で顔を押さえ若干前かがみになりつつ左手で左後ろにいるネプテューヌに指差すというかなり痛変わったポーズをとっている。
その落差にユニは目を逸らし、ネプギアは冷めた目で見つめている。がノワールは気にする様子も無く
「女神の心得その1.国民には威厳を持って接するべし。我が国民よ!うぬらが神ブラックハートが貴様らを願いを聞き届けるべく今降臨した!((我|アタシ))に述べることを許す!」
大きく豊満(Cカップ)な胸を張りながら声高々と言い出し飛ぶノワール。それに走って追いかけるユニとネプギア。
一人残されたネプテューヌは呆れたように呟いた。
「いや……目の前で変身したら威厳もなにもなくね……?」
〜プラネテューヌ~ラステイション国境近郊 ラスーネ高原〜
村人に案内されついた高原。緑が遠く続き遠くにはゲイムギョウ界中央山脈が聳え立っている。すぐ近くには先ほど通ってきた森も見えるほどに見通しがいい場所だった。
「ここ最近スライヌが大量発生して困っているんです」
案内した村人の一人が申し訳なさそうにいった。
スライヌといえば最弱級モンスター。それの対処に女神を呼んだことを恐れ多いと考えているのだろう。
ソレに対しフン、と鼻を鳴らしノワールは面白そうに言い放った。
「なに、庶民の願いを聞くことこそ神の役目だ。といっても流石に((我|アタシ))では役不足が過ぎる……ここは一つ隣の国プラネテューヌの女神、ネプテューヌとネプギアにやらせようか」
「ねぷっ!?」
「……ああ、私達をつれてきたのはそういうことですか」
ノワールから振りに納得したようにネプギアが頷く。
ネプテューヌも「しかたないなー」とか言いながら数歩前に出た。
「女神の心得その2、自らの活躍をアピールするべし。譲ってやろう。ありがたく思えよ」
「広報のために撮影もしておくわ」
ユニがカメラを取り出したのを見て、ネプテューヌが坂を側転、バク宙二回と大きく捻りながら飛び、着地。
群がるスライヌに向けてドヤ顔を向ける。
「全員纏めて、ねっぷねぷにしてやんよ!ネプギア!」
両腕に篭手、両脚に具足を召喚して装着。
一見唯の保護用に見えるそれは対女神用に作られたネプテューヌ専用武装。その名も【ギルガメシア】。命名イストワール。
対女神用だが一応対モンスターにも使える。が、やっぱり本領は対女神で発揮するとはイストワールと本人の談。
「死狂………とまでは往きませんが……楽しませてくださいね!」
ネプギアも飛び出し、右手に赤紫色に輝く剣を召喚する。
ネプギア自作の内の自称最高傑作、【デス・ギア】。本人曰く「最も私を表している」。その評価は伊達では無いばかりに飛び掛るスライヌを撫でるように切りつけ、一瞬の内に消滅させた。
「さすがネプギア!ふぁい、おー!ふぁい、お「お姉ちゃんも戦ってよ数多いんだから!」ねぷっ!?いきなり押し付けるのは酷いんじゃないかなぁ!」
応援を始めたネプテューヌ目がけ、ネプギアによって幾発も飛んで行くスライヌ弾。飛び掛るスライヌを斬り潰し斬り飛ばしを当然のように行い、いまだその身には飛び散るスライヌ液一つかかっていない。
対してネプテューヌのほうは獲物の影響か飛んでくるスライヌを殴り潰し蹴り潰す度に腕に脚に全身にスライヌのヌルヌルした体液が飛び散って行く。
「うえーネプギアー!これお姉ちゃんむりー!終わるころには全身スライヌのネプスライヌになっちゃうよー!」
「じゃあそうしたら私が介錯ケフン、斬り潰してあげるね」
「悪化してるー!?ねぷ子さん流石に妹に介錯されるのは勘弁してほしいなー!」
まるで漫才のような姉妹のやり取りだが、いまだネプギアからスライヌ弾は飛び続けネプテューヌはソレ含めたスライヌ達の相手をしている真っ最中だ。
最弱級モンスターとはいえここまで余裕綽綽なのか、と見ているユニと依頼者の人々は感じ取った。
「………ネプギア」
二人の戦う様を写真に撮りながら、ユニは親友の名を呟いた。
親友と思っているのは自分だけで、相手からすれば他国の女神候補生としか感じていないかもしれないけど、ユニにとってはかけがえの無い親友なのだ。
だが、気付けばその友人は自らのはるか遠く。最優の女神候補生とも謳われて一人抜きん出た処に行ってしまっている。
自分は、届くのか。姉の背中に、友人の背中に。そう思いながら、ユニはカメラを手に、かわりばえのない写真を撮り続けていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
十数分後。ネプテューヌが最後の一匹を殴り潰し、スライヌの殲滅は終了した。
高原を埋め尽くさんばかりのスライヌが一匹残らず殲滅されたことに村人達の困惑の声があがりっぱなしである。
その中心でネプギアとネプテューヌが背中合わせで座り込み、同時に大きく息を吐いた。
「はぁー……暫くゼリーとか肉まんとか見たくなーい……」
「暫くお姉ちゃんのおやつは肉まん型ゼリーにするね……」
「ネプギア、それちょっとシャレになんないよぉ……」
「貴様ら、何故女神化をしなかった。さすればあのような雑種なぞ造作もなかったであろうに」
二人の傍に佇み、ブラックハートは言い放った。「揃って女神化すればもっと早く簡単に終わったはずだ」と。
ソレに対しネプテューヌはてへへ、と笑って濁す。ネプギアも言いたくなさそうに顔を背けた。
明らかに何か隠している二人を睨みつけるとビクッ、としてネプテューヌが話し始めた。
「いやぁね。女神化って疲れるじゃん?だからネプギアに任せてちゃっちゃと終わらせようとしたらネプギアがあんなこと始めちゃったし思ったより数多かったしで、てへ☆」
「むしゃくしゃしてやった、だれでもよかった」
「貴様ららしい言い訳だな。後は((我|アタシ))がやろう。トゥルーネ洞窟へ案内するがよい!」
村人に一声かけ、移動を始めた。
そこにユニが一声上げる。
「姉さん!」
「……なんだ、ユニ」
「あ……気をつけて、ね」
「誰に向かってモノを言っている。貴様は待っているだけでいい」
村人に案内され高原を去って行くノワールの背中を、伸ばしかけた腕を引っ込めて見守るユニ。
その眼差しには羨望より、心配の色のほうが濃くでていた。
「あーあー。ベクトルは変わってもやっぱりノワールだねー。主にツンデレ的な意味で」
「ただの横暴者に見えますが」
「違う違う。あれ単にユニちゃんに心配かけたくないだけなんだよ、でも女神化するとあんな感じに無駄に尊大になるからねぇ。あれでも言葉を選んでるんだと思いますよ」
「毎度思いますが女神化のあの無駄な性格変転はどうにかならないんでしょうかね。私は多少マシですが」
「あれネプギア。それは女神化しててもお姉ちゃんにはっちゃけ「それは嫌です」デスヨネー」
「……あんたたちは、心配じゃないの?」
口を開けば漫才が始まるプラネテューヌ姉妹に暗く呟く。
一人ノワールが行った方向を見ながらユ二が聞いた。問いの意味がわかっていないのか二人は首を傾げる。
「まぁノワールだし。なんだかんだで戻ってくると思うよー」
「ノワールさん、ブランさん、ベールさんの強さはお姉ちゃんが一番わかってると思いますよ。幾度となく実際に戦ってきたわけですし」
「勿論勝率はねぷ子さんが一番高いけどねー!」
「損耗率もお姉ちゃんが一番高かったけどね。帰ってくるたびドラゴン○ールみたいにユニット剥がれてましたし」
「だって毎度毎度わたし狙われるんだもーん。腕の一本とかなくなってないだけマシだよー」
「まぁそうですけどね」
ノワールをまるで心配する様子のない二人。所詮別国の女神かと思った瞬間、ネプテューヌが立ち上がった。
「さーって。スライヌじゃあねぷ子さん物足りないしノワールの様子見てこようっかなー。か、かんちがいしねいでねぷ!別にノワールが心配じゃないねぷ!」
「テンプレそのままが嫌だからって妙な語尾つけなくても……」
顔を申し訳程度に赤らめてノワールが去っていった方向に走っていった。置いていかれたユニとネプギアは呆れたようにその方向を見つめ、ため息を吐いた。
「なんなの、あれ……」
「本物のツンデレから見たらよくわかりませんか」
「ツンデレ言うな!」
「黒の女神にはツンデレしかいませんね」
「うっさい!」
〜ラステイション~プラネテューヌ間国境付近 トゥルーネ洞窟〜
そのころのブラックハート。
高原のスライヌとは別にキノコ型のモンスターや猫型モンスターが跋扈しており、数では減っていても一人では辛いものに見える量だった。
だが、ブラックハートには量だけのものなぞ無いに等しいものだった。
「ふん、所詮雑魚、雑種ばかり。神たる((我|アタシ))に届くものなぞいないか」
ブラックハートは何をするでもなく歩き続ける。
女神化した際の装甲を見にまとうだけで一見して武器を持っていないブラックハートをカモと見たか大きなキノコ型のモンスターが飛び掛る。
「……フン」
ブラックハートに接触する直前、モンスターの周囲から周りを埋め尽くす数の剣が切先を向け現れ、直後そのすべてが放たれた。
当然空中の回避なんてできるわけもなく、モンスターは串刺しどころかハリネズミと化し、消滅。それを確認したかのように剣も全て消え去った。
詰まらなげに再度鼻を鳴らすブラックハート。
スライヌほどとはいえないものの下級のモンスター相手には傷一つ付けられる訳が無い、と慢心ではなく自信を持って思っていた。
其の時、洞窟の奥から方向が鳴り響いた。
下級モンスターでは出しようの無い大声にブラックハートは歪んだ笑顔をその方向に向け、背後に剣を待機させる。
のしのしと暗がりから歩いてきた茶色の巨体。二足歩行しながら大きな翼を持つモンスター。
異常種ドラゴン型【エンシェントドラゴン】の姿がそこにあった。
「なるほど。確かに人間の手には余る代物。だが異常種とはいえその中でも最下級のエンシェント風情が神たる((我|アタシ))に挑もうとは。身の程を知れよ雑種」
ノワールの挑発を浮け怒り狂うように爪を振るうドラゴン。
さっと反対側に飛び待機させていた剣を飛ばしながらブラックハート自身も一本の剣を手にする。
雑魚モンスターを一瞬でハリネズミにした剣の雨がドラゴンを襲い次々と刺さるもその図体は伊達ではないのかへでもないとばかりに吼えた。
『グオオオオオオオオ!!!』
「落ち着きの無い奴だ。少し黙らせてやろう。我が友プルルートよ」
ブラックハートが腕を振った瞬間。ドラゴンの周囲から銀色に輝く鎖が現れ次々とドラゴンの体を締め上げる。
すぐに頭を残し鎖のミイラのような姿になったドラゴンを見てブラックハートも非常ににやける。
「無様な姿だな雑種。ではトドメと行こうか」
ゆっくりと近づき、脳天目がけ長剣を振りかぶる。
その瞬間、ドラゴンの額に小さな猫型のモンスターが現れ、ブラックハートに突進する。
「ッ…!?」
突発的な出来事に反応しきれず、ノワールの体が吹き飛ばされる。背中の羽からスラスターのように光が噴出すも勢いを殺しきれず、羽が消失し背中から着地することになった。
「チィッ、雑魚の分際で((我|アタシ))に傷をつけるだと……この罪、万死に値……『なっ!?』」
突然、自らの声が二重に聞こえた。それどころか自らの腕、体が二重にブレている。
どういうことだ、と声を出そうとした時。ノワールの体が光りだした。
女神化のときと同じ、黒い光に包まれ、割れる。すると元のノワールへと姿が戻っていた。
「女神化の強制解除……ウイルス!?でも……!」
負けじと腕を振り剣を出そうとするノワール。だが反応がなく、ただブン、と腕を振る音がなるだけ。
無力化したと思ったのかドラゴンはのしのしとノワールに近づき、ノワールは立ち上がることも出来ず後ろに下がっていく。
「そんな、なんで……!」
ノワールの背に洞窟の壁がぶつかる。既に逃げ場はなくなった。
ドラゴンもソレを理解しているようで『グルルル』と喉を鳴らしている。ユニットの装甲があるならともかく元の体では、ドラゴン種、それどころか異常種の攻撃は一撃で致命傷になる。
こんなところで、とノワールがドラゴンを睨んだ瞬間―――
「バーニング一匹狼キィ――――――ック!!」
横から妙な台詞とともに薄紫色の流星がドラゴンの頭部を蹴り飛ばした。
流星ははじかれるように跳びあがりノワールの傍に着地。ドラゴンも頭の鱗が砕け散り、脳が揺さぶられたかあっちこっちを探すように向きまわしている。
「ネプテューヌ!?」
「おハローノワール。あれ、なんで変身解けてるの?」
「わかんないわよ!ウイルスだと思ったけど剣も出ないし、力が溶け出て行くような……」
「ふーん。まぁ話はあとあと!ここはプリキュアジャスティス一番星のねぷ子さんにお任せ!」
「プリキュアジャスティス一番星って何よ!?」
ノワールの突っ込みと同時にドラゴンの巨大な爪がネプテューヌに襲い掛かる。ネプテューヌの身の丈ほどもありそうなその掌の一撃を、ネプテューヌは――――――
「お、肉弾戦!?ここは、わたしの距離だぁ!」
真っ向から殴りつけた。
金属のようなもので出来ている手甲と金属並に硬いドラゴンの爪がぶつかり合い、押し合いを続け火花を散らしている。
ネプテューヌは余裕そうな表情で後ろのノワールに向かって言い放った。
「ノワール!女神化とかそういう自己強化はね、ボスに使ってこそ意味があるんだよ!」
左腕でドラゴンの手首を殴って弾く。
その隙を突きネプテューヌは高々と宣言した。
「集え紫の眷属!我、パープルハートの名と力の下に!」
直後ネプテューヌの体が紫色の光に包まれる。ノワールのものと同じ女神化の光だ。
紫色の光が割れ、姿を変えたネプテューヌが現れる。あまり変わらないノワールと違い、元の姿よりかなり身長も伸び、長くなった髪を二房のみつあみに纏めている。
そして両腕に付けられた手甲と両足についた具足にはリボルバーのような回転式弾倉が付けられていた。
ネプテューヌの真の姿、【パープルハート】。友好条約締結の時まで【最強】の名をほしいままにしていた女神の名。
「さて、お片づけの時間といきましょうか」
「何かっこつけてんのよバカ!」
パープルハートの背後でザシュッ、と何かが刺さる音が聞こえた。
振り向くと、小さなモンスターが爪を振りかぶったところを一本の剣に刺され止まっていた。すぐにモンスターは消滅し、奥のノワールが腕を伸ばしパープルハートを指差していた。
「ありがとう、ノワール」
「かっこつけたんなら締まらないことしないでよね……」
「わかっているわ。そっちに余波は行かせない」
ドラゴンに向きなおし、パープルハートが飛び出す。対応して爪を振るう。
ソレに対して小さく跳びあがり、巨大な腕を踏み台にしてさらに跳びあがった。
「ギルガメス、ドライヴAct.1……カートリッジロード」
パープルハートの呟きにあわせ、右腕の手甲に装着された弾倉が回転し、撃鉄を打つ音が三回響く。
音が響くたびに手甲から蒸気が噴出し、手甲そのものが赤熱していく。
ドラゴンの懐まで跳んだパープルハートは一瞬身を屈め、赤熱した手甲に力を込め――――――
「((Take this.|喰らいなさい)) 『((Rising Dragon|昇竜拳))』!」
大きく拳を振り上げ、ドラゴンの顎を打ち貫いた。
強靭な鱗に覆われた顎を砕き、頭蓋骨を貫き、脳を潰し、貫通した。
一瞬で絶命したドラゴンはそのまま膨張し、光となり破裂した。
周りにはパラパラと光の残骸である六角形の欠片が漂い、地面に落下した直後に消滅していく。
終わったのを確認し、パープルハートがノワールに笑みを向ける。それに気付き恥ずかしくなったのかノワールは顔を仄かに紅くしながらパープルハートから背けた。
「べ、別に助けてもらわなくても一人でなんとかなったわよ!」
「わかってるわ。譲ってくれてありがとうノワール。ここを場に選んだことも含めて、ね」
「な、なんのことかしら?」
視線を合わせようとしないノワールに悪戯心が湧いたか、パープルハートがノワールの肩に顎を乗せる。すぐ近くに顔があるだけあって声どころか息遣いまでよくわかる距離になった。
そのことに先ほどから紅くなっているノワールの顔がさらに紅潮した。
「モンスター退治の依頼ならここだけではなくルウィー方面にもあったはず。わざわざプラネテューヌ国境に近いここを選んでくれて、ね」
「それは!……あんたらを、さっさと帰そうとして…」
「プラネテューヌも今や落ち目。戦いしか能がない私やネプギアには貴女達に対するアドバンテージは最早無い。後は堕ちていくだけ……それを哀れんだのでしょう?ここで私やネプギアが活躍すれば、国境越しにプラネテューヌに伝わり私達のシェアが回復するだろう、と」
「ぅ………」
「無言は肯定と受け取るわ」
パープルハートが光り始め。姿を変える。
数秒後、姿を戻したネプテューヌが現れ、ノワールの肩にぽんぽんと手を乗せた。
「勿論、報告には異常種に返り討ちに遭いかけた黒い神様のこともいれなきゃいけないよね!」
「はぁ!?ちょ、それは黙っててよ!女神化するとなんかテンション上がっちゃうんだからぁ!」
「なぁにぃー聞こえんなー!おーい皆ー!神たるノワールさまがー!」
「ちょっとネプテューヌー!待ちなさいよー!!!」
壁や天井を平然と走るネプテューヌを追いかけ、ノワールも走り出す。
その直前、背後から何か異質なものを感じたが、気にすることもないと思い、捨て置くことにしたのだ。
二人が走り去った後、赤黒いマントを見に纏った人影が壁から這い出るように現れる。
人影はきょろきょろと辺りを見渡し、誰もいないことを確認して地面に落ちた紅い宝石のようなものを手に採った。
「これで、二つ目………次は……」
ネプテューヌより幼い声色の人影は呟き、また壁に向かって歩き出し、飲み込まれるように消えた。
すべてが終わった洞窟の中は、生物のない静かな場所になっていた。
〜ラスーネ高原〜
「ブラックハート様とパープルハート様が!」「ハイパー合体魔法でモンスターを蹴散らしてくださったわ!」
戻ってきたネプテューヌとノワールを待っていたのは村人達の(若干ズレた)歓声だった。
ばんざーい、ばんざーいと村人達が喜びを全身で表す中、当の二人は困惑していた。
「なんか、話作られちゃってね?てか魔法はルウィーの文化っしょ?わたしプラネテューヌの女神なんだけど……」
「人智を超えた出来事は物語となって語り継がれる。それが神話と呼ばれるもの、なんじゃないのかな」
「いや、そんなスケールのでかい仕事じゃなかったって」
呆れるネプテューヌに(天然)ボケるネプギア、突っ込むユニ。
平常運転の三人を余所にノワールは一人思案に耽っていた。
(……結局、強制解除されたのは何故…?ウイルスだとすれば、解除されるだけであれほどまでの脱力感はないはず…何か女神にとって悪いものが存在するってこと…?)
「ほーらノワール!何時までも陰気臭くしてない!国民の前では威厳出すんでしょ!」
「……ハッ、そ、そうだったわね。じゃあ、解決したってことで私達は帰らせてもらうわ。また何かあったら、依頼して頂戴」
『『『はい!』』』
村人達の大声援を受け、一向は高原を後にした。
それを見届ける者達に気付かぬまま。
「ワレチュー。間違いない?」
「間違いないッチュ。これこそ正しく二つ目ッチュ」
「そう、なら次はルウィーに行こう。白く美しき純潔の国、ルウィーへ」
「……チビっ子、未練があるッチュか?」
「ないといえば嘘になるけれど、これは私が選んだ選択。英雄譚には、敵が必要だから」
「皮肉なものッチュ」
「じゃ、いこっか」
「了解ッチュ」
〜プラネテューヌ プラネタワー イストワールーム〜
ネプテューヌが帰還した後。
最初に顔を出した時に二人を迎えたのは感激という言葉がよくにあう表情をしたイストワールだった。
「まさか、本当にシェアが回復するとは……!」
「へっへー!たまにはわたしもやれば出来る子ってことを「ノワールさんの手腕を見込んでよかったです」ねぷーん……」
「まぁ、そういう評価になるとは思っていました」
盛大にずっこけるネプテューヌとは打って変わって予想通りのネプギア。姉の信用のなさは妹が一番よくしっている、ということなのだろうか。
その表情を見てイストワールも笑みを零した
「冗談ですよ。ですがやっと、プラネテューヌの日の出が見えてきましたから」
「その日は既に食われているかもしれませんけど、ね……」
「ネプギアー物騒なこといわないでよー」
『で、結局ねぷ子は何して帰ってきたわけ?』
昨日と同じようにアイエフとコンパが入ってきた。
また何かあったのか、とイストワールが聞くとコンパが気まずそうに答えた。
「ねぷねぷの写真が出回ってるです」
「あんた、モンスター退治行ったんじゃなかったの?」
コンパが出した端末にはスライヌ討伐の時のネプテューヌの姿が写っている。
しかし、『スライヌ塗れになって何故かポーズも煽情的な』写真だが。
「ねぷぁー!?ちょ、なにこれ!?これじゃあわたしがスライヌプレイしてるみたいじゃん!」
「ユニちゃんの仕業でしょう。ユニちゃんお姉ちゃんを目の敵にしてますから」
「わーん!親友の妹が妹を狙って嫌がらせしてくるー!」
「でも、人気はあるみたいです…」
コンパが指し示したのは、写真に対するコメント欄。
その中には『やっぱりねぷ子様ってそういうポジションだったんだ(歓喜)』
『プラネテューヌ始まったな』
『寧ろ終わってない、ずっと続いてる』
等などと好評なものばかり。それが【スライヌ塗れのネプテューヌの写真】でなければ、もう少し感動的だったのだが。
「……まさか、回復したシェアって…」
「お姉ちゃん、まるでグラビアアイド「言わないで!お姉ちゃんも一瞬それ脳裏を過っちゃったの!だからやめて!」」
「ねぷねぷ。頑張らないといけないとは言ったけどこんなこと頑張ってなんて「わたしだってそんなつもりなかったよ!これでもかっこいい変身ヒロインのつもりでやってたよ!」」
どうしてこうなったー!!と諸手を上げて嘆くネプテューヌに、写真を見ることが出来ないアイエフだけが場の空気になじめず困惑していたのだった。
〜次回予告〜
「おねえちゃんは、意地悪だから」
『アククク、我輩マジ天才』
「姉妹のアリスは不思議なウサギに首斬られ、頭はそろえてコレクションに…」
「とめられなかったのはアタシ達!ならあたし達で後始末をつけるのが筋よ!」
「幼女を助けることこそ我が人生!我が祈り!」
「何故その女神を生かして人質にするのか、我には理解できん」
「何にしたって女神に喧嘩を売ったのよ。高く買い付けるのが私の流儀」
「ロムとラムはオレの妹だ!誰だろうがそれだけは否定させねぇ!!」
次回、マジェコンヌの((兇刃|カニバリスト))
〜原作との相違点を交えたキャラ紹介(一話時点)〜
ネプテューヌ(パープルハート)
紫の国【プラネテューヌ】の守護女神。メタっぷりは鳴りを潜めているが適当さと女神化時の真面目さのギャップは健在。
愛用の刀を折ってしまい仕方なくイストワールに手甲を作ってもらったところこれが大当たり。女神化時にまで参照されるほどのメイン武器となった。
対女神特化のユニット設計を受けており、1対1の女神同士での戦いなら事実上無敗を誇る最強の女神だったが、今となってはただの不真面女神に成り下がっている。
現在使っている手甲はイストワールとネプギアに作ってもらった【ギルガメス】。シェアを一時的に込めた弾丸を弾倉に入れることで瞬間出力を上げることができる。だがその間は無茶苦茶熱いらしい。
ネプギア(パープルシスター)
プラネテューヌの女神候補生。女神候補生ながら唯一女神化ができることから【最優】とうたわれている。が、イストワールから見れば姉と同じ戦闘しか能がない二流女神。
それでも書類仕事に関しては姉よりはマシという評価なのでネプテューヌの書類仕事の苦手さが伺える。
重度の中二病を患っている(と思われており)、何かと思わせぶりな発言や暗い言葉を発しているが大半は何も考えていないノリでの発言。それゆえにたまに姉すらも振り回すレベルの天然ボケに認定されている。だが稀に本当に暗い表情を見せることもあり何かを隠していると思われている
実は姉を超えるバトルマニアであり友好条約締結に唯一乗り気ではなかった。
愛用の武器は片手で扱えるビームソードで自作の中で最高傑作と言われている【デス・ギア】。命名もネプギアだがその理由は「血塗られた女神を宿命付けられた私に相応しい名です。そう、((DEATH GEAR|死の歯車))。」ということで、恐らく本人しか理解できない理由になっている。
アイエフ
プラネテューヌ教会の元諜報部員でありネプテューヌの親友その1。任務の途中に両目を負傷、そのまま失明+ということになり現在は負傷退職して現在はフリーの賞金稼ぎをしている。が、未練はやはりあるのかしょっちゅう教会に通いつめている。女神二人はもとよりイストワールも迎え入れてくれているのでそのたびに結構癒されているとか。
失明しているため戦闘は避けているが本人は【風の流れを読み、空気の囁きを聞くのよ】と言い張っており実際それである程度の戦闘が行えるだけあって実力者のようだ。
両腕に隠されたカタールと腰に携帯されたハンドガン【サムライ・エッジ】が主な武装になる。
コンパ
プラネテューヌ中央病院の看護婦でありネプテューヌの親友その2。元々はドがつくほどの天然だったのだがアイエフの失明を期にヤンデレに目覚めてしまった。
現在もアイエフの介護をしており(アイエフ本人は付きっ切りでやるもんじゃないと遠慮気味)、現在視覚障害者の介護を猛勉強中であり、そういった目的への執着心はネプテューヌですら若干引くレベルになっている。
基本的には戦闘ではなく後方での回復要員だが、いざとなれば巨大な注射器で謎の液体をモンスターに注入して戦う。モンスターは死ぬ。
ノワール(ブラックハート)
黒の国のツンデレ女神。
生真面目でツンデレで努力家な性格は変わらないが、女神化すると異常なほどに性格が尊大になり、一人称が((我|アタシ))というどこぞの英雄王を彷彿とさせるものになっている。
だが根はあまり変わらないのか結構優しい。特に子供には優しい。が妹には厳しい。
友達がいないといううわさが立っているが本人は「い、いるわよ!一人や二人ぐらい!」と反論している。しかしその友人を誰も見たことがないのでやっぱり友達がいないんだ、というのが周囲の見解。
主な武器は剣。なのだが自ら握るのは稀でシェアエネルギーを剣状に実体化させ飛ばしている。色々試した結果これに落ち着いたらしい。
それとは別にシェアエネルギーにより実体化する銀色の鎖【プルルート】が存在する。どこからとも無く現れ敵を拘束するノワールの奥の手なのだが、何故か女神に対してだけは効果が無い。なのでネプテューヌに対しては成す術なく負けていた。
余談だが【プルルート】の名はノワールが親友から付けたといっているがその親友を誰もみたことがない。やはり友達がいないのだろう。
ユニ(ブラックシスター)
黒の国のツンデレ女神候補生。
姉を超えるツンデレと姉を超える隠れ努力家が特徴の女神候補生第二位(といっても争う相手がネプギアしかいないようなものだが)。
完全な神を自称する姉に育てられ、それを目指し挫折を繰り返し、すぐ横にいた親友さえも気付けば遠くにいて心が折れかけている。が、その親友本人に励まされ復活した。姉であり絶対の目標のノワールと親友であり永遠の好敵手のネプギアを尊敬しているが何故かネプギアの姉のネプテューヌは眼中に無い様子。
姉とは別に【かっこよさ】を重視する傾向があり【倒すのは当然、なら如何にかっこよく倒すか】を現在の目標にしている。事実実力もそれなりにあり女神化できるネプギアとも互角に渡り合っている。
愛用の武器は紫と黒のマグナム拳銃【ヴィオラカオス&ノワールロウ】。ヴィオラカオス(紫の混沌)はネプギアを、ノワールロウ(黒の秩序)はノワールを差し、弾を放つ=一瞬で遠くへ行ってしまうとして永遠の目標を自覚するようにとユニが命名した。
説明 | ||
アニネプをみてよし、ウチのノリでやろう!と思った結果こうなった。 ごめんなさい、反省してます。後悔もしてます。 多分続きません。 |
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コメント | ||
一つ聞きたいです。mk2はどうしてネプギアをあそこまで変えたんですか!?ネプギアはお姉ちゃん大好きのあの性格を変えてどうするですか!?しかも過去の女神とかマジック・ザ・ハードが過去のプラネテューヌ女神とか意味わかりません。ネプギアは捕まって過去に行ってしまったし。ネプテューヌの怒り爆発が早く見たい??(ジーク) >HZH御中 ネプアニメは本当に面白いですよね!……プルルート、出番あるのかなぁ(リアルではおぜうタイプ@復帰) >ジーク氏 (………Vのほうもネプギア色々酷くなってるってかmk2より悪化してるんだけど言わないでおこう)(リアルではおぜうタイプ@復帰) byZ ネプテューヌのアニメは最高に面白いです、一話でゲームのネタが使われていた事に思わず喜びの舞をしちゃいました。( Z ハデス) あなたの作品、Vの方が好きです。mk2の方はあまりにもネプギアが変わりすぎてあまり好きではありません。Vの続きを希望します。(ジーク) |
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