IS?インフィニット・ストラトス?黒獅子と駆ける者? |
episode198 現実逃避
「・・・・」
アーロンは腕を組んで窓の向こうを見つめていた。
その視線の先には隼人がネェル・アーガマの主砲のハッチを開けて中の回路を整備していた。
一応手伝いぐらいはすると言って作業に没頭している。
「あそこまで失意のどん底に陥った隼人を見たのは初めてだな」
「そうだね。昨日までは近づく事すら出来ないほど重々しい空気を放っていたんだから」
「そうか。だが、なぜあいつはここにもネェル・アーガマの秘密ドッグの場所を知っていたんだ?」
「それが分からないんだよね。ここを知っているのは私と・・・ユニコーンぐらいかな」
「なぜユニコーンが知っている」
「ユニコーンとは情報の共有はしているの。こっちと向こうと連絡が出来るようにね」
「普通千冬に教える所じゃないのか?」
「まぁそうなんだけど、情報面だとちーちゃんちょっと苦手な面があるから」
「・・・・」
「でも、本当にはっくん・・・どうしちゃったんだろう。本当に見た事が無いよ、あんなはっくん・・・」
束は少し悲しい表情で隼人を見る。
「さぁな。俺的にはなぜあそこまで落ち込んでいるのかが気になるがな」
「確かに・・・それもあるけど・・・」
「・・・あいつは仲間達には一切自分が居る場所を言うなって言ったのか」
「うん。そもそもはっくんが仲間を遠ざけようとする事自体が信じ難いよ。いつも仲間の事を誰よりも大切にしているはっくんが」
「・・・・」
「どうする?」
「どうするも何も、このまま追い出すわけにもいかんだろう。今はあいつの気が済むまで居らせるのがいい」
「・・・そうだね。でも、今なら話せそうかな」
「・・・気をつけろよ。今の隼人は何をするか分からないのだからな」
「分かってる。後、ちょっと過度なスキンシップを取るかもしれないから、何も手を出さないでね」
「・・・程々にな」
「はいはい♪」
束は軽く頷くと、モニタールームより出て隼人の元に向かう。
「・・・・」
隼人は主砲の近くに座って主砲の回路の修復作業を黙々としていた。
(俺は・・・どうすればいいんだろうな)
作業の手を止めずに頭の中で色々と考える。
(・・・謝るべき何だろうけど、帰りづらい。・・・それに、顔も合わせづらい)
考える内にどんどん表情が暗くなってくる。
(さすがに・・・リインフォースだって許すはずがない。颯だって・・・)
故意でなくても、言ってしまったものは言ってしまった。そしてやってしまったものはやってしまった。
もう取り返しはつかない。
「・・・・」
それからは余計な事は考えず、作業に没頭する。
「はっくん」
と、束が隼人の元にやってくる。
「・・・・」
隼人は振り向きもしない。
「もう。せめて返事ぐらいしてよ」
少し膨れっ面をして、隼人の後ろの近くまで来ると、その場に座り込む。
「本当に、どうしちゃったのかな?」
「・・・・」
「今までそこまで落ち込んだ事なんか無いのに」
「・・・・」
「何があったのかな?出来れば束さんに教えてくれないかな?」
「・・・・」
しかし隼人は答えようとはしない。
「・・・みんなと、何かあったのかな?」
「・・・・」
隼人は少し反応する。
「ふふっ♪はっくんって時々本当に分かりやすい時があるね」
「・・・・」
「話してみたら?そうしたら少しは楽になると思うよ?」
「楽になる、か」
隼人は作業の手を一旦止め、腕を下ろす。
「それで楽になれば、こうして仲間と距離を置いたりなんかしませんよ」
「・・・・」
「・・・どうしようも無い事をして、取り返しの付かない事をして、簡単に仲間と顔合わせが出来ると思うんですか?」
身体ごと後ろを振り向き、未だに光が灯ってない瞳で束を見る。
「そりゃ、まぁはっくんの言う通り簡単には顔合わせは出来ないかもね」
「・・・・」
「私もちーちゃんとちょっとだけ喧嘩したりして顔を合わせづらい時はあったよ。その時は時間を掛けて関係を戻したよ」
「・・・・」
「でもね、はっくん。はっくんが今やってる事って、現実を受け入れたくないだけの、ただの現実逃避じゃない?」
「・・・・」
「仲間達から嫌われ、孤立してしまうのが恐ろしいから、そうなる前に自分から一人になろうとした」
「・・・・」
「それで全部が解決すると思ってるの?」
「・・・・」
隼人は何も答えない。
「はっくんだけが逃げて、それで残された仲間達の気持ちは考えないの?」
「・・・それは――――」
「・・・ハッキリ言うと、ただの思い込みだよね。まだみんながはっくんの事を嫌いになったって言うのが分かって無いのに、最初から決め付けて」
「・・・・」
「本当に変わっちゃったのかな。ヴィヴィオちゃんが誘拐されてから・・・」
「・・・・」
「私は今のはっくんより、少し前のはっくんの方が好きだよ」
「・・・・」
「だから―――――」
と、束は隼人の両肩を掴むと、そのまま引き寄せて抱き締める。
「・・・元のはっくんに戻ってよ。そうじゃないと、嫌だよ」
悲しい声で束は呟く。
「・・・・」
―――――その頃・・・日本近海上空―――――
「・・・・」
ユニコーンはベースジャバーに乗って、周囲を見渡す。
その近くを同じくジェスタ・キャノンを纏うシノンもベースジャバーに乗って周囲を見渡していた。
「それで、行く当てはあるのか?ゼロが行きそうな場所の」
「大丈夫。隼人君が行きそうな場所は絞ってる。と言っても行きそうな場所は三つしかないけど」
「して、そこは?」
「一つは近くて隼人君の家か叔父の家。もしくは・・・・・・ネェル・アーガマの秘密ドッグ」
「だが、ドッグは以前亡国機業に襲撃されて破棄したんじゃないのか?」
「もちろんそうだけど、秘密ドッグは一つだけじゃない。その所在も束さんから聞いているからね」
「そうか」
「ねぇ、シノン」
「何だ?」
しばらくしてからユニコーンはシノンに話し掛け、シノンは周囲を見ながら耳だけを傾ける。
「シノン的には、隼人君の失踪についてどう思う?」
「どうと言っても・・・敵前逃亡の以外何がある?」
「それは・・・まぁ確かにシノンの言う通りだけど・・・」
「・・・まぁ、言い方を変えれば、現実逃避だろうな」
「・・・・」
「何らかの理由で仲間達と顔合わせが出来づらくなり、そこに居づらくもなって家出をした・・・と言った所だろう」
「・・・私も、同じ事を考えていたよ」
「そうか・・・。昔の私ならただ敵前逃亡をした臆病者としか思えないのだろうが、今は違う」
と、顔を上げて空を見る。
「今なら、分かる。ゼロの気持ちがな」
「シノン・・・」
「仲間を大切に想う者が故の悩み、と言った所だろう」
「仲間を想うが故の悩み・・・」
「だが、ゼロを必ず連れて帰らないと、バインドの秘密前線基地攻略が困難になるだけだ」
「・・・まぁ、その通りなんだけど、他に言う事無いの?」
「無い」
「・・・・」
即答されてユニコーンは苦笑いする。
「だが、ゼロも不在の事を考えて新戦力を二つも残していると言うのも、明らかに長期間の不在を意味しているな」
「そうかな?」
「私的には、そう思っている」
「・・・・」
別に間違っているわけではない・・・はず。
「織斑の『白式・雪風』。更識の『フォビドゥン・アクア』か。お前的にはこの戦力で攻略は可能と思うか?」
「数じゃ圧倒的にこちらが不利だけど、不可能じゃない」
「・・・・」
「確かに両機の性能は折り紙付きだけど、性能が高くても物量では圧倒される。
中継ポイントを兼ねた前線基地となれば、恐らく今まで以上の戦力を有していると思う」
「だろうな」
「そうなれば、基地の制圧には隼人君とリインフォースのエクセリオン・ゼロの運用が必要になる。もしくはインフィニティーがあったら何とかなったんだけど・・・」
ユニコーンは少し顔を下げる。
「無いものをねだっても仕方無い。どの道今のゼロの身体ではエクセリオン・ゼロを長時間維持する事すら難しい。
結局の所我々だけで攻略しなければならない」
「それはそうだけど・・・」
「それに、抜けている戦力が戻ってくれば、何とかなるかもしれんな」
「・・・・」
「とにかく、今はゼロを連れて帰る事だけを考えろ」
と、シノンはベースジャバーのブースターの出力を上げて速度を上げる。
「・・・・」
若干呆れ半分になり、ユニコーンはその後を追う。
――――――――――――――――――――
「・・・・」
その二人の様子を、姿が見えない何かが見ていた。
しかし直後に何もない宙が歪むと、そこから一体の機体が出現する。
全身黒色系のカラーリングに包み込み、各所にオレンジなどのカラーがワンポイントに施され、角の様な形状の頭部の顔にはオレンジのバイザーがあった。全身にマントを羽織るように背中の翼で身体を包み込んでいた。
(仲間を大切に想う、か。昔の俺もそうだったな)
黒い機体は内心で呟く。
(だが、気持ちだけでは仲間を守れない。力があっても、それをうまく使えなければ意味が無い)
(・・・面白い)
「ふっ」と鼻で笑うと、黒い機体は景色に溶け込むように姿を消していく。
説明 | ||
トラックに轢かれそうになった女の子を助けて俺はお陀仏になった・・・。・・・って!それが本来の死じゃなくて、神様のミスで!?呆れている俺に、その神様がお詫びとして他の世界に転生させてくれると言うことらしい・・・。そして俺は『インフィニットストラトス』の世界に転生し、黒獅子と呼ばれるISと共にその世界で戦うぜ! |
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