超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 リーンボックス編
[全1ページ]

「あんたは……」

 

朝日が照り始めた時刻にアイエフは、森林の中で見つけた目の前の人物に目を開く。

紅夜のお蔭で教会から脱出できたアイエフ達は、紅夜の派手な行動の数々のおかげで追っ手のほとんど振り払えることが出来たが、彼女達も光が所持している携帯のみという暗黒の牢屋室に閉じ込められていたのだ。

精神的にも、隠せないほどの疲労が溜まりそして、どこに国内に逃げ場はほぼない状況で途方もなく逃げていると運よくジャッドという青年が何も考えたのか家に匿ってくれた。

理由を聞けば、善意らしく。紅夜以外この大陸で信じられしそうな人がいないと思っていたアイエフとコンパたちは怪しむが、ネプテューヌの毒の解毒方法を必死で探してくれたので、とりあえず信じることにした。

しかし、ジャッドが言うには、毒は100年以上前に使われている物らしく、解毒に必要な薬草はどこの店でも扱っていないと言う事だった。

アイエフとコンパはどちらかが残って、ネプテューヌを看病する番を言い争ったが、ジャッドが診てくれると言うことで二人とも、街の隠し通路から外に出た。

しかし、問題が発生した。彼女たちは武器を没収されていることに。場所までの距離はそれなりに遠く、モンスターも当然ながら居る。しかも、目的地はかなりレベルの高いモンスターが闊歩しているということで、成人にも満たしていない少女二人が街から出ること自殺行為に近く、一度ジャッドの元に戻り、武器を用意してもらうように考えた時に、それは二人を待っていたように現れた。

 

「えっと…えっと……夜天さん…?」

 

夜天 空。

紅夜とネプテューヌの記憶を知って、ラステイションでは、ロボットとモンスターに囲まれた時に助けてもらい、アヴニールの最高傑作のロボットを圧倒していた謎の人物だ。

その彼がどうしてここに?アイエフとコンパに謎が浮かぶが、空は腕を組み木に背中を預けた状態から、彼女たちを確認すると立ち上がり、ゆっくりとアイエフ達の方に歩き出した。

思わず警戒する二人に、空の手にはスーパーなどに使われていそうなビニール袋に千切れそうなほどの薬草を詰め込んだ袋を彼女たちの前に出した。不機嫌そうに

 

「ん」

 

それだけ言った。

 

「……なにそれ?薬…草ーー!?」

 

「あいちゃん、これ私たちが探している物です!」

 

仰天吃驚、空の手から渡されたビニール袋には確かに解毒するために薬草7種類が均等な量で入れられていた。

まさかの事態、アイエフとコンパは目を合わせて空に背を向けた。

 

「感謝するわ。今私達何も持っていなーー」

 

「ありがとうございます。これでねぷねぷをーー」

 

駆けだした二人の襟首を掴んで、強制的に停止させた。

 

「げほ、げほ!一体、なにするのよ!」

 

「忘れ物」

 

それだけ空は言い放ち、空間から取り出したのは教会側に接収された武器だ。

ここにはいないネプテューヌの分もきちんと用意されていた。

 

「……これ、どうやって……なんでこんなことを」

 

驚きのあまり、いいこと尽くしのあまり、現実を疑ってしまう。アイエフとコンパは、自分の装備を手に取り、空を見つめる。空は無表情ながら、一言呟いた。

 

「紅夜に頼まれた」

 

「「!?」」

 

二人に脳裏に雷撃が落ちた。アイエフ達を命がけで脱出してくれた人。

恐らく、この大陸の中で一番信用できる人物。脳裏に浮かぶのは体のいたるところに銃痕があり、血だらけの紅夜の姿だった。

 

「こぅさんは!…こぅさんは大丈夫なんですか!?」

 

「あんた紅夜がどこにいるのか知っているの!?教えて!」

 

今にでも掴みかかっても可笑しくないほどの表情でアイエフとコンパは空に迫る。

それに、眉を細めて、仕方なそうに空は口を開いた。

 

「顔に1発、胸に7発、右手に2発、両足含めて5発。右肩と腰に槍が掠った裂傷という人間なら死んでも可笑しくない怪我をしている。安全な所で処置して眠っている。意識はないけど時期に回復する」

 

機械のように空は、紅夜の負った怪我について明白にアイエフ達を伝える。

アイエフ達の貌が酷く歪む、自分たちを助けるために紅夜は命を懸けたのだ。

空は、ため息を吐いて足を進ませ二人の間を過ぎる。そして、足を動かさない二人を振り向いた。

 

「今の君たちは、ネプテューヌを助ける為に動け。ーーー紅夜の決死の行動を無駄にするつもり?」

 

その声は、はっきりと怒っている様に聞こえた。

空の言葉にアイエフは正気を取り戻すように頭を何度か振って、コンパは今にも落ちそうな涙を袖で拭いて足を進め始めた。

辛そうに、だが力強く歩み始めた二人のその背中を静かに空は見守っていた。

 

 

 

 

 

 

 

あれから数日が過ぎた。

紅夜は時々瞼を動かしたり、指を動かしているけど目覚めない。

かなり空元気をした影響なんだろうね。

名誉か仲間かを選択され仲間を選んだことにより国の裏切り者とされて、実は貴方は偽物でした、自分の居場所を燃やされて精神的にかなり来ているんだろう。

本当に死んでいるように寝ている。

 

「…………」

 

暇なので合体させれば巨大な手裏剣になり、いつも小剣の四つの中の一つ『オスカルト』を砥いだりしている。

もし、紅夜とグリーンハート戦で紅夜が勝っていれば、大衆の前で負けたグリーンハートのシェアは底にいき、今頃僕は冥獄界で大急ぎ、落ちたグリーンハートのシェアをどうやって回復するか、それとも見捨てようかと考えているだろうね。

 

「んー………これからの展開は……」

 

昔を思い出しながら、僕は考える。

確か、この国の現状を聞くんだよね?

女神を重んじる教会側、誇りを重んじる貴族側は昔から仲が悪かった。

確か数十年前に教会の国政院が女神が留守のをいいことに権威と役目を独占して後にギルドと呼ばれるようになる異教徒たちを集めて教会襲撃を計画した。

それにボロボロになった教院派は、貴族派に救援を頼んで結果的に異教徒たちを逃がしたが、その実績は女神に勲章が遅れる程の大活躍だった。

しかし、今の教院長にとっては自分の領域を荒らされた気分なんだろうね。事件に関する関係書類を燃やして、公言を禁止させて、勲章を取り上げようとした。本当の所はちょっと違うけど……まぁ、人殺しが人に喜ばれ、女神に喜ばれた事件でした。全く、女神がなんでその場にいないの?って大いに突っ込みたい。

 

「今の女神は……本当に目の前しか見てない」

 

ブラックハートは、下らないプライドで僕を探して放置気味になった部下が暴走して、怪我人は出来るだけ最低限にしたけど街を巻き込む大惨事に。

グリーンハートは、自分の世界に閉じこもって好きなことをするから、自分の意思は女神の意思だと勘違いする輩が増えて、どうもいいことで粛清だ!なんてことが起きる。

ホワイトハートは、異教徒たちが住める場所を提供したところまで良しとしても、それだけで統一しようとしなかった。

パープルハート?論外。

 

「これならまだディープハート……マジェコンヌが統一していたゲイムギョウ界の方がマシだったよ……」

 

どうしてこうなった。

いや、女神だからと言っても決して失敗しないとか、人間と同じ扱いかもしれないけどある程度は仕方ないと飲み込むよ?けど酷い、とにかく酷い。

僕が一般人だったら、女神の癖に女神を否定したメガネ女と同じように女神反対を掲げるよ?女神はモンスターだけを退治するだけの簡単なお仕事じゃないんだよ?

 

「あー……愚痴っても、しかたないよね」

 

折れたものは、更に硬く打ち直す。

それは、人間と同じように辛いことを乗り越えて強くなる様に。

 

「よっと……」

 

手の力だけで立ち上がってコートについた雪を掃う。

あと、もうちょっとで、紅夜が目覚めるかな?

マジェコンヌがどのように動くか、あいつ僕の存在に気づいているのか中々隠密な行動するんだよね。絶対に尻尾掴んでやるけど。

 

「そうと決まれば、コンベルサシオンでも監視に行きますか」

 

 

僕が内心吐いた愚痴を僕はこの後、後悔するだろう。

僕も同じだったと、思うだろう。

紅夜の口から、透明な液体ーーー僕が監視用に?ませたナノマシンが出ていることを知っておけば、もう少し展開は違っていたかもしれない。

 

 

 

 

 

ある日、ネプテューヌ達はジャッドの義父である貴族長テュルコワーズの依頼を受けて、雪の降る森のダンジョンに来ていた。

貴族側は教会の特に教院側に向けて武装蜂起を予定している。

それに協力してくれと頼まれたが、人を相手にしたくないネプテューヌ達は断った。

しかし、テュルコワーズ郷はせめてモンスター退治をしてくれないかという頼みで、教会とは直接的な関わりをとらないことを条件にネプテューヌ達は間接的に強力することにした。

最初は、一時的にこの大陸を出ることを考えたが、紅夜を残していけないということとネプテューヌ達は指名手配されている身であり、到底他の大陸移動は出来そうにない状況だ。

ラステイションと比べて、更に大きな事件に巻き込まれたことに気分が落ち気味になる。

更に、いつもならネプテューヌを中心に明るいパーティーに影があった。

 

「……こぅちゃん……本当に大丈夫かな」

 

「教会側はよっぽど、紅夜のことを嫌っていたみたいね」

 

「あんなの酷過ぎるです……」

 

数日前にゲームをして紅茶を楽しんだ紅夜の家は全焼だった。

名も分からない放火魔が犯人と世界に広まっているが、ジャッド曰く零崎 紅夜という戸籍が抹消される直前に燃やされたことであり、なんかの理由で教会を裏切った紅夜を隠すためだと言われている。

風の噂では、紅夜はグリーンハートとプライベートの関係で仲が良かったと言われる。故にそれで紅夜を妬んだ誰かが、こんなことをしたと今の教院派を考えれば予想が出来る。

更に、リーンボックスで明るく報じられているニュース。

グリーンハートが教会を襲ったモンスターを直々に葬った。誰もがグリーンハートの華麗な姿に称賛した。

しかし、それは、ネプテューヌ達が何度も見た鎧を装着した紅夜に間違いなかった。

そこで分かった。紅夜は空の言った通り、命を懸けてそれも仲の良かったグリーンハートまで敵に回してまで助けてくれたのだと

 

「……………」

 

誰も口を開こうとしなかった。

彼女たちの心には、空の言葉を信じて早く元気な姿で、いつもと変わらない姿で紅夜と会う事が出来る望みだけだった。

 

「−−−フッハハハッハハ」

 

そんな切なる願いを嘲笑うがごとく、空から古臭い笑い声が響いた。

ネプテューヌ達は思わず憂鬱にため息を吐いた。

 

 

「私、これまで以上に空気を読んで思ったことないよ」

 

ネプテューヌの言葉に二人が頷く。

視線を空に上げれば、黒い薔薇の枝を纏う様な服装に、魔女のような三角帽子をした妖しい空気を醸し出す女性が舞い降りてきた。

プラネテューヌが初めての出会い。それから度々襲ってくる謎の人物。

思わず目を細めた。可笑しい、前に会った時は意味不明な言葉を吐いていたが、今度は様子が更に可笑しかった。

体の半分が黒かった。まるで浸食されているように、思わず恐怖を抱いてしまう様な禍々しい妖気は魔女の様な女性の体を喰らっている様に見えた。

 

「再戦する相手って大体パワーアップするけど、これはちょっと変じゃない?」

 

「前より、ものすごくヤバイ感じね……みんな、気を付けて!」

 

「はいです!」

 

本能的に、三人は構えた。半分闇に染まり餓えた獰猛な紅い目をした彼女ーーーマジェコンヌは、獣の様な雄叫びを上げて、先端に四つの刃がある杖を顕現させた。

同時に、彼女を中心に幾つもの魔法陣が展開され、殺意と敵意をごちゃ混ぜにした混沌の気を放ちながら、ネプテューヌ達に襲い掛かった。

説明
その17
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