超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 リーンボックス編
[全1ページ]

………あ…れ…?

 

「あは■はは■はっは!!」

 

「貴様ァァァァ!!!!」

 

どうして、また俺は…倒れているんだ?

 

「しっかりしなさいよ!」

 

「血が……血が…止まらないです…」

 

頬に、何かが、落ちる。……これは…涙?

体が、誰かの手で押し付けられる。

……コンパ?…アイエフ?。

どうして、お前らが泣いているんだ……?

 

「よくも…よくも、仲間を!!」

 

ネプテューヌが魔女と戦っている。

鬼のような形相で。

……冷たい。体が動かない。

この感覚は知っている。

 

 

ーーーチッ、化物め。まだ生きている。

 

 

体中を撃たれ、指一本も動かすこと出来ない状況で初めて『死』を意識した瞬間。

闇と血で染まった世界で、頭に突きつけられた銃口の硬い感覚。

 

 

ーーー異端者は粛清あるのみだ

 

 

あの時の様に、体を形成している物が外か垂れ流れていく。

後は、瞳を閉じれば、また眠って、何事も無かったように起きる。

 

「−−−!−−!!」

 

「−ぅーーん!!ーーーーー!!」

 

また頬に涙が落ちる。

アイエフが、コンパが泣いている。

ネプテューヌも、激怒の表情ながら泣いている。

知っている。あの時と同じだ。

 

 

ーーー………紅夜、どうして……

 

 

ベールが泣いている。

原因は、俺だ。

ネプテューヌを助けるためにベールを、リーンボックスを敵にしたからだ。

 

 

ーーー私は、私はーーー………紅夜の((敵|・))なんですか…

 

 

ネプテューヌを殺して名誉を得るより、ネプテューヌの仲間である方が価値があった。

そして、仲間を選んだ結果が、これだ。

助けたいと思って、助けたのに、泣かせた。

犠牲を払って、恩人に刃を向けて、泣かせた。

本当に、なんでだよ。

頑張ったのに、頑張ったのに、命を懸ける覚悟で今までの信念を変えて、ネプテューヌ達だけでも!と手を伸ばしたのに、掴めたのは何もない。

瞼が重くなってきた。このままでネプテューヌ達は魔女を倒せるんだろうか、逃げれるんだろうか……。

 

 

<ドクンッ>

 

 

ーーー力が欲しい。

((なんでもいい|・・・・・・))。

力が欲しい!絶対的な力が!何かを掴むことが出来る力が!

 

 

『紅夜!?ダメだ!それ以上((入るな|・・・))!!!!』

 

 

((渇望する|・・・・))。

求める者は、どんな敵だろうと粉砕する。どんな敵だろうと抹殺する。どんな敵だろうと滅殺する。

この世の全てを変えるほどの力が、欲しい!!

 

無慈悲/悲道徳/理論的=邪悪

怒り/憎しみ/悲しみ=自身嫌悪

望み/願い/祈り=渇望

 

『((罪遺物封印術式|アンリミデッドリバース・コード))・一番限定解除』

『((多重旧神証|エルダーサイン・デュアルコード))一番、二番解除』

『((死界魔境法|ネクロノミコン・ディザスター))起動』

『術者』『思想』『解読』

『エラー』<ザザザザザ……>

『再度』『接続』『クリア』『解除』

『アザトースの種子』『起動』

『術者』『渇望』『把握』

『肉体組織』『再構築』

 

 

ーーー((介入|アクセス))

 

 

『うっ!?』

 

『感情』『限定排除』『魔力』『燃焼』

『魔龍』『起動』『同時』『((武霊天成|アームズ・コネクト))』『展開』

 

 

 

 

 

霊崎 紅夜の身に何かが起きた。

それは、咲こうとしている。

この世界の全てを糧に今まさに咲かんとしている。

 

「夢から覚める」

 

遥か遠く、山の山頂から異常なほどの視力でナイアーラトホテップはそれを見つめる。

彼には聞こえる。

この世界の泣き叫ぶ、その本来ならあり得ない存在に。

この世界の始終の円環に置いて、決して触れることがない禁忌の種。

この世界は悲鳴を上げる。生まれたばかりの赤子のように、躓いて足から流れる血を怖がり無く子供のように、大事な人を失い無力に押しつぶされる大人の様に。

 

それは、生命。

時空の流れの中で、刹那に輝く閃光。

 

「邪悪に染まる」

 

それは最初から静寂と暗黒の中で眠っていた魂。

物語を描き、運命/因果/定めを決める創造者。

しかし、今ある現実に憎悪抱き、彼は目覚める。

変換/逆転/変化をして、彼は破壊者として瞳を空ける。

 

それは、終焉。

今を憎み、変えようとせず、全てを破壊することで造り変えようとする狂気者。

 

「煮え滾る混沌の中心から聞こえますか、我らが王」

 

空を見上げる。

灰色の雲が晴天の空を無限に広がる世界から、この世界を孤立させる。

世界の果て、宇宙の根源に封印されし、王であり父である存在に向けてナイアーラトホテップは告げる。

 

 

「−−−神話が生まれますよ」

 

全ては再構築される。

因果、運命、物語を欠片残らず壊され、世界の記憶に永遠に刻まれる記憶として、今ここに不完全ながら、((邪神|・・))が覚醒する。

 

 

 

 

 

 

その場にいた。

アイエフとコンパが口を呆然と空ける。

胸から爆発物を爆破されたように全身至る所から出血して、体の原型はあるもの、その中身はスクラップとなっている筈の紅夜が生々しい血を流しながら立ち上がった。

人間であるならば、既に死んでいるその体は逞しく空を見上げる。

しかし、紅夜の体からは一片も生気がない。しかし、口は動く。その口からデペアと二重の無機質な声が世界に響き渡る。

 

 

『我、目覚めるは

《空は暗黒、地は煉獄》』

 

 

『万象を深淵へと塗り替える邪悪龍なり

《今宵は、星すら照らすことなき無窮の夜》』

 

 

『希望を砕き、聖教を嘲笑う者

《深淵の鳴動は、冒涜的な咆哮を高々に》』

 

 

『邪悪を想い、絶望を詠う

《世界を呪う、暴虐な意思は絶叫を響かせ》』

 

 

『我、地獄を治める魔龍と成りて

《死してなお、生きる思念は憎悪となりて怨嗟を歌う》』

 

 

『汝を鮮血の大海へと沈ませよう

《呼び起こされる原初の地獄》』

 

 

紅夜から放たれた今までにない禍々しいオーラにその一体にある全てが吹き飛ばされた。

ネプテューヌ、コンパ、アイエフは受け身も取れず木々の間に消える。

マジェコンヌだけは、その身を守る魔法陣を展開しながら戦っていたおかげで、吹き飛ばされていなかった。

しかし、その一撃で魔法陣が一瞬にして砕け散ってしまった。

 

 

 

『((Genocide drive|ジェノサイド・ドライブ))

《我らは混沌より、来る者なり》』

 

 

 

ゲイムギョウ界そのものを飲み込まんとするほどの膨大な魔力が放出され、紅夜の身に集まっていき彼を変える。

胸には巨大な宝玉が浮かびそれを中心に光を反射することがない漆黒の闇を連想させる装甲が浸食するように広がる。より生々しく、荒々しく、ドラゴンに近づく形へと変貌していく。

兜には九つの目が開く。マスク部分が大きく前に飛び出し、そこから凶悪な牙を見せる。

全身の至る所にあった宝玉の部分も、翠色の眼球と小さな血管が張り巡らされた『目』が全てに意思があるように周囲を見つめなおす。腰から太く長い尻尾が軽く地面に落ちただけで小さなクレーターが形成される。

何より、恐るべきはその二対の翼、粘着性がある液体を滴り落させる((触手で構成された翼|・・・・・・・・・))。それは、魔に墜ちた龍の成れの果ての姿だった。

 

「−−−ウルオォォ」

 

小さく唸る。全身の目は一斉にマジェコンヌを映す。

そこには敵意も殺意もない。無の感情がある体中の二十五個の瞳が虚ろな目でマジェコンヌを理解しようとしている。

 

「■はあ■はっは!!」

 

狂気の笑い声をして、眼前の実力を測れない理性の獣は、魔法陣を展開して極太のレーザーを放つ。

今までの戦いで発射してきた光弾が、虫に見えるほどの巨大な光柱は紅夜だったものに直撃する寸前……片腕を上げて、蠅でも追い払うように腕を振った。それだけでマジェコンヌの放った光柱は無様に拡散した。

 

「……!?」

 

驚愕を現して、怯んだ瞬間。

魔龍が霞んだ瞬間、マジェコンヌのステッキを持っていた腕は持ち主を離れ空に舞う。

いつの間にか、魔龍はマジェコンヌの背後に立っていた。

直ぐにその場を離れようとするマジェコンヌの無防備な胸に魔龍の爪が貫通する。

 

「!?!?!?」

 

「−−−−−」

 

血で濡れた手を抜き取る。マジェコンヌが横に姿勢が傾き、落ちていく時、魔龍の翼が分解され、触手となりマジェコンヌの体を暴食するように縛る/突き刺す/傷に入り込む。

 

『((Deain|ドレイン))』『((Deain|ドレイン))』『((Deain|ドレイン))』『((Deain|ドレイン))』『((Deain|ドレイン))』『((Deain|ドレイン))』『((Deain|ドレイン))』『((Deain|ドレイン))』『((Deain|ドレイン))』『((Deain|ドレイン))』『((Deain|ドレイン))』

 

単調なリズムを刻むように吸収されていき、マジェコンヌの体は跡形もなく完全に消えた。

 

「……ア、ア、ア…アザァアァトゥォス……」

 

不気味は咆哮。地面に突き刺さった触手を上げると、ボロボロ姿のネプテューヌ、アイエフ、コンパが片足を縛られた体制で持ち上げられる。更に触手を伸ばして彼女たちの体を縛る動けぬように。

 

「ゥ……こ、紅夜……?な、なにこれ…!」

 

体に走る痛みに思わずネプテューヌは目を覚ますと信じられない光景が目に映る。

先ほど紅夜を傷つけて感情のまま戦っていたマジェコンヌの姿が無かった。あるのはステッキを握りしめたままの腕だけだ。

何故、触手で拘束されているのだろうか、コンパとアイエフは強く頭を打ったのか意識が目覚めそうにない。

紅夜が危機的な時に見せた鎧の面影がある何かが自分たちを見ているだけ。……まさか、あれが紅夜?と結論が出たネプテューヌは、震えながら声を発した。

 

「紅夜……あなた、こうーー!?」

 

もう一度、紅夜の名前を口に出そうとしたとき、首に触手が回り一気に力を込められる。

息が出来ない、この触手を外そうと手を伸ばそうとするが、手に纏わりついている触手が力強く首を縛る触手から手を離していく。足にも、腰にも、肩にも、無理やり引き延ばすように力が込められる。このままだとーーー体が引き千切られる。

必死で抵抗しながら、ネプテューヌは見る。

笑っていた。それは見上げて、抵抗するネプテューヌの無様な姿を演劇として見ている様に愉しそうに笑っていた。

 

「あ、い…ちゃん!…コン…パ…!」

 

彼女達も同じように体が引き千切られる為に触手に力が込められている。必死でネプテューヌは紅夜だった者を見て苦しみながら声を上げる

 

「こ、…う……や…。こう……や…!」

 

止まらない完全に十字架状態にされたネプテューヌは絶望に染まりながら、それでも懸命に紅夜に蚊が飛ぶような小さい声を発す。要約、一緒になれた。要約、肩を並べた仲間に向かって。

 

「…………」

 

しかし、紅夜だった者には、それが耳障りなのだろう。

触手の先端から鋭い刃を出す。それをネプテューヌの額に当て、ゆっくりと押し込み作業にーーー

 

 

「−−−焼き断て『煉獄ヲ裁断スル切ッ先』!!!」

 

白金の閃光から放たれた炎熱の斬撃が彼女たちを縛る触手を全て切り裂いた。

重力に従い落ちる体を、彼はーーー夜天 空は、全て受け止めて三人を地面に下ろす。

 

「……はぁ」

 

そして、もう何度目になるか分からないため息。意識が薄れていたネプテューヌの前には、世界から孤立していると錯覚を覚える程の純白のコート、腰まで伸びた純粋な黄金色を放つ髪が目に映る。

それは、神々しかった。その角度によって微笑んでいるかのような顔を、独特の光を放ち吸い込まれそうになる銀眼に、思わず意識を奪わそうになった。

空は、魔龍となってしまった紅夜を見つめる。ただの魔龍ならどうにかなっていたかもしれないが、最悪の事態『アザトースの種子』が稼働している。

 

「見る限り、紅夜の意思はほぼ皆無と言ってもいいだろうね」

 

初めて魔龍の瞳に感情が浮き出る。

憎しみ/怒り/楽しみ/悲しみが。

空は結論を出した。あれは紅夜を媒体にしたアザトースの意思を執行する者だと。

 

「今が嫌いだから、だから全てを壊して、自分が好きになれる世界を創る……はっ、笑える」

 

煉獄の火炎を迸る長太刀を構える。

邪神の考え、世界からの外れの者。夢見る理想者の想いは、間違っていないと空はいつも思っている。

いや、むしろ旧神なんぞに無理やり隷属にさせられていなかったなら、空は間違いなく邪神側に入っていただろう。

 

「ダメだね。この世界だけはダメだ」

 

それは、旧神の意思じゃない。

間違いなく心から出た空の意思。

彼女が愛おしく眺めたこの世界だけは絶対にさせない。故にーーー……

 

 

 

「来いよ混沌。まずはーーーその醜悪な願いを木端微塵に『破壊』してやる」

 

本来の形ならあり得ない存在。

魔龍と破壊神がここに対峙した。

 

 

 

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