IS?インフィニット・ストラトス?黒獅子と駆ける者? |
episode199 幻の名を持つ者
それから二日後―――――
ユニコーンとシノンはネェル・アーガマの秘密ドッグに到着するも―――――
「そう、なんですか」
「・・・・」
二人が到着した時には、既に隼人の姿はなかった。
「昨日の夜にはっくんはここから出て行ったんだよね。何の前触れも無くね」
「・・・・」
「まるで何かから逃れるようだったよ」
「・・・・」
「・・・・」
「三日前にはっくんと話し合って理由を聞いたんだけど、やっぱり心の傷は予想以上に大きかったみたいだね」
「・・・そうですか」
「・・・・」
「やはりゼロの失踪には、仲間の事が関わっていたのだな」
「そういうこと」
「・・・・」
「まぁ、あの時のゼロの状態では、ありえない話でもないな」
「・・・・」
「かもね」
「所で、ネェル・アーガマの状態はどうなの?」
「前回の戦闘で受けたダメージはほとんど修復できたんだけど、左甲板は資材不足で修復できなかった」
見ればネェル・アーガマの左側の甲板が損失したままだった。
「まぁ、それ以外なら問題は特にないよ」
「そうですか」
「前線基地の攻略には、やっぱりはっくん無しで行わないといけないのかな」
「今の所そうなるな」
「特に今は厳しい状況ですからね。隼人君が抜けてしまったのはかなり痛い」
「しかも専用機持ちの大半が抜けている今となれば、かなり厳しい状態だ」
「・・・・」
「向こうの事情もあるから、出来ればすぐにでも出撃しないと厳しさが増えるだけ」
「・・・そうだね。こっちも急いで準備に取り掛かるよ」
「頼みます。私達は引き続き隼人君の捜索に当たるよ」
シノンも軽く頷くと、二人は外へと向かう。
――――――――――――――――――――
「・・・・」
その頃隼人は秘密ドッグより大きく離れた場所にある山の上にバンシィ・ノルンの姿のまま立っていた。
大粒の雨が大量に降り注ぎ、雨粒がバンシィ・ノルンの装甲を叩き付けて濡らす。
(俺は・・・いつまでもこうして逃げているんだろうな・・・)
顔を上げて空を見つめる。
雨によって濡れ、マスクを伝って流れる水筋はまるで涙を流しているように見える。
(逃げてはいけないって・・・頭の中で思っても、身体がみんなと会うのを拒絶してしまう・・・)
今やっている事が自分の為ではないと分かっていても、本能的に仲間と会うのを拒絶する。
(どうすればいいんだ。このまま俺は・・・逃げ続けるのか・・・)
「悩みがあるようだな、黒獅子」
「っ!?」
すると何所からともなく声がして隼人はハッとし、とっさに臨戦態勢を取る。
「そりゃ人には悩みの一つや二つは存在する。悩みの無い人間など居ない。
まぁお前は正確には人間じゃないがな」
「だ、誰だ!?」
声の方向が特定できず、隼人は慌てふためいて周囲を見回す。
「そう慌てるな。俺はここに居る」
と、隼人の目の前の景色が歪む。
「っ!」
するとそこから黒い何かが現れ出す。
「な、何者だ!!」
隼人はとっさに右腕のアームドアーマーBSを展開して黒い機体に向ける。
「そうカッカするな。別に俺はお前と戦う気は無い」
「・・・・」
「って、言っても警戒を解くわけない、か。まぁ当然だな」
「・・・・」
「しかし、お前も相当大きな悩みを持っているようだな」
「・・・・」
「そういう悩みは俺もかつて持っていたさ。仲間を大切に想っているのなら尚更だ」
「・・・そっちの事情は知らないが、同情なんか―――――」
「まぁ、そう言うな」
「・・・・」
「あぁそうだ。一つだけお前にいい事を教えてやろう。
バインドの秘密前線基地がある場所。知りたくないか?」
「・・・なに?」
隼人は自分の耳を疑った。
バインドの秘密基地の場所を知っている?
「嘘偽りの無いモノホンの情報だ」
「・・・・」
「・・・まぁそう簡単に正体の分からないやつの事を信じられないよな」
「・・・・」
「だが、お前には前線基地の場所を知らなければならない。
そこに捕らえられている子が居て救いたいんだろ?だったら素直に聞いた方が得だと思うがな」
「・・・・」
「後悔する前に決めた方が良いぞ。何かがあってからじゃ遅い」
「・・・・」
「どうだ?話に乗ってみるか?」
「・・・・」
隼人はしばらく考えると、アームドアーマーBSを収納位置に戻し、腕を下ろす。
「話の分かるやつでよかったぜ」
と、黒い機体は身に纏うマントを広げて大きな翼の様にすると、腕を組む。
翼が無くなると、両足には足首が無く、宙に浮いたままの状態を前提にした作りになっている。
「・・・本当に知っているのだな?」
「あぁ。それも今は連中の戦力も一番少ない時だ。攻めるのなら今の内だと思うぜ」
「・・・なぜそこまで詳しく知っている。お前は一体―――――」
「おっと。俺の事は知らない方がいいぞ。あんまりろくな事にならんぞ」
「・・・・」
「まぁ強いて言える事は・・・俺の名が『ファントム』と言う名ぐらいだ」
「ファントム・・・幻か」
「あぁ。さっきの幽霊みたいに現れた光景を見れば納得が行く名前だろ?」
「・・・・」
「心配するな。俺の情報はミクロ単位のズレも一切無いぐらいの正確さだ。俺を信じれば必ず得するのはお前だ」
「・・・・」
「今なら、お前が救おうとしている子だって無事だ。と、言ってもそんなに時間は残ってないようだがな」
「・・・・」
「どうする?もっと詳しく聞いても良いんだぞ」
「見返りが要るんだろ。その先の事は」
「見返りはいらねぇさ。俺はそういうものに興味など無い」
「・・・・」
「ただ俺が望むのは、来るべき戦いの時にお前の状態が完全であって欲しいぐらいだ。今の状態では面白くも無いからな」
「来るべき戦いの時、だと?」
「あぁ」
「なぜだ?それに面白くも無いって・・・」
「悪いな。それも今は言えない事だ。言えるのはバインドの秘密前線基地の情報についてだ」
「・・・・」
「どうする?」
「・・・もっと詳しく聞かせろ」
隼人は悩むも、情報を求める事にした。
「あぁいいぜ。お前は話が分かっていいぜ」
と、ファントムと呼ばれる黒い機体は隼人に秘密前線基地について詳しい情報を提供する。
現在の駐留部隊の詳細や、基地の内部構造などのデータを―――――
「以上で全部だ」
「・・・・」
隼人はファントムよりデータを受け取る。
「無事に助けられればいいな」
「・・・・」
「そんじゃぁ、健闘を祈る」
ファントムは背中の翼を閉じてマントの様に身に纏うと、後ろへと飛んで景色に溶け込むように姿を消す。
まるで幻の様に・・・
「・・・・」
隼人はファントムより受け取ったデータを見ながら、後ろを振り向いてスラスターを噴射し、一気に飛び出す。
(それでいい。目的を達せれば、気持ちが晴れる事だろう)
姿を消しても、ファントムはそこから一歩も動かずに飛んでいく隼人を見つめる。
(完全な状態となれば、手応えのある相手になりそうだからな。ガッカリさせるなよ、黒獅子―――――
―――――いや、神風隼人)
そうして姿が見えないままファントムはその空域を離脱する。
説明 | ||
トラックに轢かれそうになった女の子を助けて俺はお陀仏になった・・・。・・・って!それが本来の死じゃなくて、神様のミスで!?呆れている俺に、その神様がお詫びとして他の世界に転生させてくれると言うことらしい・・・。そして俺は『インフィニットストラトス』の世界に転生し、黒獅子と呼ばれるISと共にその世界で戦うぜ! |
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