同居人・達 06(後編)
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同居人・達06(後編)

 

 

 

 

 

振り向くとそこには私服の巴が立っていた

 

J 「え・・・?」

巴 「結構早く来たつもりだったんだけど、待たせちゃったみたいね」

いまだ状況をうまく読み込めないでいる俺

巴 「それにしても今日は暑いわね」

巴は日差しを手で隠しながら空を見上げる

巴 「こんな日に付き合ってもらってありがとう」

J 「いや〜、別に気にしてないよ。」

え〜〜っと・・・その前になぜに巴さんは俺に『ごめん、待った?』なんて

言ってくるのかな?

これじゃまるでデートしてる時のバカップルみたいじゃん

巴 「それじゃ行きましょうか」

行くってどこへ?ホテル?

・・・なんて聞いたら殺されるだろうな俺

巴 「どうかしたの?早くいこう」

錯乱してる俺を急かすように歩き出す巴

J 「う、うん」

 

巴 「だけどこうやって2人で歩くのって久しぶり

   こんなことでもないと普段一緒に歩かないもんね」

こんなこと?それってどんなことですか

巴 「どうしたの?変な顔してさっきから黙ってるけど・・・

   もしかして約束忘れてたの?」

エスパーですか!?君は

J 「そ、そんなことないよ。ただ暑いからボーっとしてただけ」

巴 「そう、じゃあ・・・今日買うもの言ってみて」

突然のクイズ!?

落ち着け俺、考えろ神経を研ぎ澄ますんだ

今までの言葉を聞いた限りじゃ多分、巴の用事を俺が手伝うって感じだったな

そして、この時期に女の子が買うものといったら・・・

 

1、日焼け止め

2、水着

3、夏服

4、コンド〜ム〜(ノブヨ風)♪

 

くそっ!どれだ!?どれが正解だ

どれも確率は高いがどれも違うってこともある

って、4番はぜってぇ違うし・・・

急げ!あまり時間をかけると怪しまれる

ちくしょう!こうなったらヤマカンだ!

 

J 「さ、3番の夏服でしょうか?」

巴 「ファイナルアンサー?」

J 「ふぁ、ふぁいなるあんすぁー・・・」

 

僅かな沈黙

 

生唾を飲む俺

強い日差しのせいで汗が顎先から落ちる

その時、巴の唇がかすかに笑みを作る

巴 「正解」

J 「うおっしゃーーー!!!!」

喜びのあまり上着を脱いでプラトーンのポーズをする

俺は勝ったんだ!あの長く辛い戦いに勝利したんだ!

見てたかいじいちゃん!俺やったよ!!

巴 「でも本当は忘れてたんでしょ?」

その瞬間、背後から巴の銃弾(声)が胸を貫き

俺はその場に倒れ伏した。

 

J 「ば、バレちょリましたか・・・」

巴 「うん、わりと最初から」

ちくしょう、俺の苦悩と感動を返せ

巴 「中学上がってからあまり話さなくなったけど

   人の話あまり聞かないところとか

   すぐ忘れるところ変わってないよね」

そう言ってほんの少しだけ笑顔を見せる巴を見て少し胸がモヤついた

 

 

まぁ別に怒ってないようだから

この難関は越えたと思っていいだろう

だが、俺は再び大きなハードルを越えないといけない事に気づいた

『あいつら』どうしよう・・・

このまま巴と街の中歩くのは別にかまわないとして

あいつらをほっとくのはまずい

万が一、巴と鉢合わせでもしようものなら・・・

秀吉の時みたいに殴って記憶を消すわけにも行かないしな

・・・・・・

ここはばれないようにお互いの買い物を素早く終わらせて

帰っていただくしかないか・・・かなり高等テクだが

大丈夫だ、俺なら出来る。このくらいの修羅場は慣れてるさ

妄想の中でだけど・・・

 

J 「えっと巴、ちょっといいかな」

巴 「なに?」

巴が歩みを止める

J 「先に寄りたい店があるんだけどいいかな」

巴 「別にいいけど」

J 「悪いな、すぐそこだから」

そう言って俺は巴を連れて水銀燈達が入った店を目指す

 

J 「ここなんだけど」

巴 「こ、ここ・・・?」

何故か巴は軽く引いてる

J 「そう、ここ・・・」

俺は今しがた自分で指差した店をよく見て固まる

店の前のウインドーには男性の性器を模った置物や

スケスケの下着を着たマネキン、オ○ホール等が置かれていた

J 「・・・・・・」

巴 「・・・・・・」

店の看板には『大人のお店 トイテック』と書かれていた

こ、ここって・・・アダルトな雰囲気の店じゃなくて・・・

アダルトショップじゃねぇかぁっ!!!!

俺は首をギギギッと鳴らしながら巴の方を見ると

その場には巴はおらず、はるか後ろの方に立っていた

巴 「私、ここで待ってるから・・・」

J 「そ、そうですか」

あいつらマジでシバき倒そうかな

 

 

店の中に入ると独特の雰囲気が俺の体を包んだ

やけに高い音量、微妙な空気、まばらな客

そのすべてがここが違う世界だと物語っていた

そして、その先により一層異種な空気をかもし出す存在がいた

翠星石 「メイド服があるですぅ。あっ、こっちにはチャイナ服もあるですよ」

水銀燈 「サラまんダー?甘汁工房?穴満月?

     なによこれぇ、変な名前ねぇ」

他の客がめちゃくちゃ居心地悪そうなんですけど

 

J 「おい・・・」

俺が声をかけるとナース服を手にした翠星石がこちらを見た

翠星石 「あっ、人間遅いですよ。と、いう訳でこれ買ってですぅ」

J 「いやいやいや、そんなのいらねぇし、それ以前に

  大きさ合わねぇし」

手をパタパタさせて拒否する俺を見て、翠星石は頬を膨らます

翠星石 「ぶー、ケチ」

その時、奥の方から水銀燈の声が聞こえてきた

水銀燈 「翠星石ー、目的のものあったわよぉ」

翠星石 「でかしたです水銀燈」

翠星石は声のするほうへ歩いていく

仕方なく俺もそのすぐ後ろをつけてく

 

水銀燈 「じゃーん♪」

効果音とともに水銀燈が広げて見せたのは

南の海よりも透明なスケスケエロパンツ

---がしゃーん!!----

俺は近くの棚に頭をぶつけた

翠星石 「何してるです人間?」

あきれた顔で俺の方を見る翠星石

水銀燈 「みてみて〜、色々あるわよ」

見んでいい、そんな人類の恥部は

翠星石 「おお!このパンツは下のほうにチャックが付いてるですよ!

     人間、何でこんなとこに付いてるですか?」

俺に振るな馬鹿、とはいえここはこいつらに変な知識を与えないためにも・・・

J 「暑い日にそこを開けて涼しくするんだよ」

翠星石 「へー」

水銀燈 「ねぇ人間、じゃぁ何でこれはこんなに透けてるの?」

J 「一時期スケルトンカラーってのが流行ってて、その名残だ」

水銀燈 「ほー」

翠星石 「じゃあこれは何で股間部に棒のようなものが付いてるですか?」

そんなのまで売ってんのか!?

J 「そ、それは・・・アクセサリーかな?」

翠星石 「こんなにデカイとズボンはけないですね」

J 「大丈夫、女の子用だから」

はぁ・・・なんとか答えれた

ようやく安堵のため息をつくが

水銀燈 「にんげーん、この下着なんで中古なのにこんなに高いのぉ?」

水銀燈が別のコーナーからエライ物を持ってきなさった

J 「ジーパンと同じで使い込まれてるものほど価値が上がるんです」

水銀燈 「へー、私が履いたのでも価値上がるかしら」

J 「やめさない」

高値が付いちゃうだろ

 

まったくこいつらは、もう少し常識って物を憶えてもらわないと

俺の身がもたねぇよ。

それよりどうする?このまま外に出たら

遠くから見てる巴にこいつらが見つかってしまう

う〜〜む・・・

翠星石 「人間」

J 「ん?なんだ?」

翠星石 「もう飽きたから他の場所に行くですよ」

そう言いながら翠星石達は店の奥に歩いていく

J 「?おい、出口はあっちだろ?」

すると水銀燈が入り口の上を指差す

水銀燈 「あそこに『こちらからは出れません』って書いてあるわぁ」

あっ、ほんとだ

なるほど、入口と出口が別々なのか

ということは、巴に見つからずに出れるじゃんっ!

J 「うっしゃぁ!」

水銀燈 「何してるの人間?」

思わずガッポーズをとっていた俺を店の中全員が冷たい目で見ていた

J 「ごめんなさい」

なんで俺がアダルトショップの中心でガッツポーズをとらにゃならんのだ

 

 

J 「おまたせ!」

アダルトショップからかなり離れた場所の自販機で休んでいた

巴に走り寄る俺

巴 「用事は済んだの?」

心なしちょっと巴の視線が痛いのは多分気のせいだろう

J 「うん、それじゃ行こうか」

俺は笑顔で巴の手をとる

巴 「え、ええ」

少し照れてる巴を引きながら俺は道を進んだ

ふっふっふっ、計画通りではないか

すでに我が術中に入り込んでいるとも知らずに

ついてくるとは哀れよのう!

そう、この時すでに俺の中ではこの危機を打破する作戦が

着々と進行していた

俺は今日という日を必ず無事に終わらせて見せる!

じっちゃんの名にかけて!!

 

 

J 「ここにしようぜ!」

巴を連れて来た場所はデパート

実はあらかじめここには水銀燈達も連れてきている

あいつらは今頃ここの5階の下着売り場で下着を選んでるはずだ

巴の買う予定の夏服は4階、速攻で行ったり来たりできる距離だ

それに加え、買うものは衣服!

試着中に俺が姿を消してもおそらくばれない

あとは、2組が買い終わったところで

これから用事があるとか言って姿を消せば・・・完璧だろ?

 

さてと、俺が今いるところは4階

巴が夏服を選んでいる

巴 「ねぇ、やっぱりこの柄がいいかな?」

俺としては、全部買えばいいじゃん!って言いたいけど

それを言うとさすがにやばいのでここは無難に

J 「俺的には今持ってる涼しげな柄がいいと思うが

  まずは着てみろよ。決めるのはそれからだ」

巴 「うん、わかった。着てみる」

巴は俺の案に従い更衣室へ向う

J 「さてと、今のうち・・・」

俺はエスカレーターを三段飛ばしで駆け上がった

 

翠星石 「人間、どこ行ってたですか?」

いつの間にかさっき買った服に着替えてるよ翠星石の奴

J 「ちょっとトイレに・・・ゼハゼハ・・・」

水銀燈 「それよりも人間、これなんてどぉ?

     翠星石がまだ早いって言うのよ」

そう言って水銀燈が見せた下着は黒レースの下着だった

黒は性的過ぎるのでやめて下さい

J 「それよりも健全にこれがいいんじゃないか?」

とりあえず近くに飾ってたマネキンの水玉模様の下着を指差す

水銀燈 「これー?」

J 「ちょっ!マネキンから剥ぎ取るなよ!」

俺の制止も聞かず水銀燈はマネキンのブラを剥ぎ取る

それと同時に周りからなんとも言いがたい視線があちこちからする

し、死にたい・・・

水銀燈 「翠星石ぃ、これ付けてみてぇ」

剥ぎ取った下着をそのまま翠星石に持っていく水銀燈

翠星石 「仕方ないですね、水銀燈服着替えるの手伝うですよ」

水銀燈 「なんで私が」

ため息を吐きながらも

2人は仲良く更衣室に一緒に入っていく

J 「ごゆっくり」

それと同時に4階へ向い走り出す

移動時間、脅威の5秒フラット!!

 

巴 「どこ行ってたの?」

もうすでに着替え終わり、更衣室から出ていた巴が

俺の方を見る

J 「・・・はひっはひっ・・・ちょっと他の階に散歩しに・・・」

巴 「散歩ってレベルじゃないスピードだったわよ」

J 「最近の散歩は・・・全速力なんだよ・・・」

そう言って顔を上げるとそこには涼しげな格好の巴

J 「すーっはーっ・・・いいじゃんそれ、似合ってるよ・・・」

息を整えてから巴に素直な感想を言う

巴 「ありがと、それじゃこれ買ってくるね」

少し顔を赤くした巴は更衣室へ戻っていった

J 「やっぱ、巴ってかわいいなぁ・・・」

って!んなラブコメしてる場合じゃねぇ!!

走れ俺!保身のために!

 

J 「コヒュー・・・ヒヒュー・・・」

水銀燈 「に、人間、なに『明日のジョー』のモノマネしてるの?」

イスに座って真っ白になってる俺を心配して水銀燈が

話しかけてくる

J 「だ、大丈夫・・・」

水銀燈 「そ、そう・・・それより見なさい、翠星石の下着姿」

え?シタギスガタ?

見るとそこには下着姿で隣のマネキンと同じポーズをとってる

プリティーで可憐な巻き毛ガール

J 「この、パカタレ!」

---スパカーン!----

俺のハリセンが唸りを上げる

翠星石 「いったー・・・何するですか人間!?」

はたかれた頭を押さえて怒る翠星石

J 「やかましい、そんなはすかしい格好でアホなポーズとるな!

  他の奴に見られたらどうすんだ」

翠星石 「ぶー、折角人間が喜ぶと思ってやったですのにー」

J 「確かによかったよ、元気になったよ(体の一部が)だけど

  そういうのはせめて家の中だけにしてください・・・」

頭を下げて懇願する俺

もう、疲労が吹っ飛ぶほどのストレスを感じるんですけど・・・

あ〜、胃がキリキリしてきた

翠星石 「まぁ、そこまで頼むなら聞いてやらんでもないですよ」

ほとんどはお前のためなんですよ。その点理解してよ

J 「そういえば、水銀燈は買わないのか?」

元々、水銀燈が買いたいって言ってたんだよな

水銀燈 「え、ええ、私はもう買ったわぁ」

そう言って小さな紙袋を見せる

J 「そうか」

翠星石 「それじゃ、翠星石はこれを買ってくるですよ」

翠星石は下着を持ってレジに向う

水銀燈 「ちょっと翠星石、お金忘れてるわよぉー」

翠星石を追って水銀燈が駆けていくのを見送ってから

J 「体が悲鳴上げてる〜・・・」

風のごとく駆け出した

 

 

J 「い、いねぇ・・・」

巴が居るはずのレジに着いたが、もうすでに巴の姿は消えていた

J 「す、すいません!ここにいたショートカットの女の子知りません!?」

店員 「ああ、あの子ならあなたを探しにいきましたけど」

あんですとー!!???

まずい、あいつの事だから合理的に

店内アナウンスで俺を探すように頼むかもしれない

そして、それを水銀燈達も聞く事になる

そうなったら今までの努力が水の泡になっちまうじゃねぇか!!

くそっ、計画変更だ。水銀燈達を早くこのデパートから出すか

あいつらを先に返してからここに戻ってきたほうがいいな

そうと決まれば膳は急げだ!

俺は再び水銀燈達の所へ戻った

・・・・・・

・・・

って、あいつらも居ねぇじゃねぇかぁぁぁーーーー!!!

やばいやばいやばい

最悪の展開だ、どうする・・・逃げるか?

いや、いっそのこと俺はここには居なかった、という作戦で・・・

そんなことを考えながらデパートを走っていると

翠星石 「あっ、人間見つけたですぅ」

少し先のほうでベンチに座ってジュースを飲んでいる翠星石発見!

水銀燈 「もう、どこ行ってたのよぅ」

同じく水銀燈も肉眼で確認

巴 「こっちよ」

続いて同席している巴を・・・・・・・・・え?

---ガッ、グシャッ!ズザーー・・・---

J 「あべし・・・」

バランスを崩し、頭から床に突っ伏す俺

巴 「デパートの中は走ると危ないわよ」

と、巴さんもご一緒でしたか

だけど、バレたにしてはなんか皆さん普通の態度だな

普通ならもっとこう、殺意に満ちた目を向けるはずなのに・・・

まさか、バレてないのか?

 

J 「そ、そういえば皆さんお知り合いなんですか?」

恐怖で体を縮ませながら恐々と聞く

翠星石 「知ってるですよ。雛苺の元ミーディアムですぅ」

巴 「桜田君の家で何回かあった程度だけどね」

J 「へーそうですか(棒読み)」

 

翠星石 「巴も買い物ですか?」

巴 「ええ、ちょっと夏服を買いにね。翠星石ちゃんも?」

翠星石 「そうですぅ。にんげんt」

J 「だよね!急に暑くなったもんね。やっぱり夏服買いに来てたんだ!」

2人の顔を交互に見てどちらに言ってるのかわからなくする

J 「それで買うものはもうないの?」

翠星石 「下着も買ったしあとは特にないですよ」

巴 「さっき買った服で私は十分よ」

水銀燈 「財布の中身ほとんどなくなっちゃったからもう買えないわぁ」

お、俺の財布の中身全部使ったのか!?

いや、ここは我慢だ。今ここで水銀燈を叱るわけには行かない

J 「それじゃぁ折角会えたんだし、一緒に帰ろうか」

翠星石 「別にかまわないですよ」

巴 「ええ、いいわよ」

水銀燈 「帰りの電車代あるかしらぁ」

 

 

こうして俺達はとりとめない会話をしながら一緒に帰った

っていうか、俺が神経をすり減らしながら会話をそっちに持っていたのだ

こえ〜・・・俺は今、地雷原を歩いてるのと同じ心境だ

一歩間違えれば爆死する

大丈夫だ。あとちょっとで歩ききれる

ゴールまであと少しだ。がんばれ

そんなこんなで巴の家の前

 

巴 「今日はありがとう」

翠星石 「?」

ヤバイ!最後に大量の地雷が!!

J 「いやいや、とても楽しい帰り道でしたよ」

そう言って俺は体を90度曲げてすぐそこの我が家を

目指そうとするが・・・

巴 「おかげで夏服もいいものが飼えたし」

その時、想像の中の俺が地雷を踏む『カチッ』て音を聞いた

あっ、地雷踏んだ

水銀燈 「夏服の事で何で御礼を言うのぉ?」

翠星石 「人間、どういうことですか?」

水銀燈と翠星石の2人が同時に俺の方を見る

J 「えっと・・・うんと・・・そ、そりはですね」

どうする!こうなったら死んだフリでもしてやり過ごすか?

いや、いっそのことこの場で口から泡吹いて痙攣起こすか!?

俺がいろんな意味で覚悟を決めたその時

 

巴 「翠星石ちゃん達の下着を選んでる間に

   偶然彼に会ってね。暇そうだったから私の服も選んでもらったのよ」

J 「へ?」

助け舟を出してくれたのはなんと被害者のはずの巴さん

翠星石 「なんだ。そうだったですか」

水銀燈 「それなら仕方ないわね」

巴 「ええ、勝手に借りてごめんなさいね」

翠星石 「別にいいですよ。こんなのでよければいつでも貸してやるですぅ」

J 「こんなのって・・・」

水銀燈 「それじゃまたね巴」

翠星石 「バイバイですぅ」

そう言うと2人は家に向って歩き出した

 

俺はその場に残り巴に小さく耳打ちした

J 「えっと巴さん、いや、巴様。いつ頃お気づきになられたのですか?」

すると巴はうっすら笑みを浮かべて

巴 「最初に言ったでしょ。割と初めからって」

J 「いやはや、これは巴様も人が悪い。気づいてたのなら・・・」

巴 「あら、約束を完全に忘れてた人よりはマシじゃないかしら?」

J 「・・・まったくその通りでございます」

俺は深々と頭を下げた

巴 「それじゃこれで『貸し』ひとつね

   いつか返してね」

J 「御意」

巴 「そういえば、ねぇ憶えてる?」

J 「なにが?」

巴 「小学校4年生の時に私がいじめられてたときの事」

いきなり何を言い出すんだこの人は?

巴 「いつだったか今日みたいに暑い日に公園で

   私がクラスの男子達に突き飛ばされて泣いていた時

   助けてくれたよね、あなたが」

J 「あ〜、そんなこともあったな」

バツの悪そうに俺は頬をポリポリかく

巴 「いきなりリーダー格の男子に体当たりして

  『馬鹿なことしてんじゃねぇ!怪我したらどうすんだ!!』

   なんて言って私のこと助けてくれたんだっけ」

J 「・・・・・・」

巴 「そのあと私、君みたいに強くなりたくて剣道やり始めたのよ」

巴が剣道始めた理由ってそれだったのか

J 「そうだったんだ」

巴 「それでね、今ここではっきり言っておこうと思って」

J 「な、なんスか?」

巴の真剣なまなざしに、思わず俺は身構える

巴 「今まで誰もいなかったからのんびりしてたけど

   そうもいかなくなったみたいだから、今度から積極的に行くね」

J 「はい?」

巴 「絶対に負けないから」

わけのわかんないことを言って

巴は家の中に入っていった

J 「つまり何が言いたいんだ?」

もしかして水銀燈達とバトルでもする気か?・・・まさかな

俺は頭を捻りながら家路に着いた

 

まさかあの一件が原因で巴が剣道を始めてたとは・・・

・・・あれって確か巴がいじめられてた時

俺と秀吉がブランコどっちが遠くまで跳べるか競ってたんだよな

そしてちょうど跳んだ瞬間に偉そうな奴が着地地点に飛び出してきて

思いっきりぶつかったんだよな

それでその時俺が言ったセリフは

『(着地地点で)馬鹿なことしてんじゃねぇ!

(俺が)怪我したらどうすんだ!!』って言ったんだっけ

・・・このことは永遠に黙っておこう

 

チョットした誤解があるみたいだが

気にせず俺は帰宅したのだった。

 

 

 

 

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ローゼンメイデン系の小説です
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