超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 リーンボックス編
[全1ページ]

意識が真っ黒だ。

光も届かない海淵に沈まれたように、漆黒の空間の中で身動きが出来ない。

いつここにいたのか、いつまでここにいるのか分からず呆然と流れに身を任せていると、足音が聞こえた。

右も、左も、下も、上も、大地も、天空も、認識できない状態なのに、『それ』は俺を見下ろしていた。まるで病気になった弟を見守る兄の様な眼差しで。

 

 

<クスッ>

 

 

何故か笑われた気分になった。

いきなり、笑われたら、流石に腹が立つ。感じる気配の方向に向かって睨むと頭を撫でられたような感覚がする。

一体お前は何者だーーー五感が機能していないのに、なぜか心で感じられた『それ』に向かって思念を送る。

それにまた笑われた気分になった。何が可笑しいのか問い詰めたくなる。何も感じられないこの空間の中で、『それ』だけは自由奔放に動いているのか、俺を観察するように向けられる視線が右往左往に動き回る。

 

 

そして、最後にそいつは、再度頭を撫でたような温かみをくれた。

 

 

ーーー変わろうとする思った時、既に変わっているんだ。

 

 

そんな優しい言葉を残して、漆黒の空間が反転する。

 

 

 

 

 

 

 

薄らと視界が開く。

目に見えたのは豪華なシャンデリアや高そうな絵等が飾られている見知らぬ部屋だった。

ベットで仰向けに眠っていた俺は、とりあえず起き上がろうとすると、主に腹部が重くて上半身すら上げることが出来ない。

首を動かすと、そこにはネプテューヌ達が眠っていた。

所々、包帯を巻いた痛々しい姿に、頭に激痛が走った。。

 

「………俺は」

 

胸を貫かれ、体の中で爆弾が爆発ような衝撃と共に倒れた。

体の至る所からの流血が止まらなくて、それを必死に手で抑えて止血しようとしていたコンパとアイエフ、そして、激昴しながら戦うネプテューヌ。

それを見た時、あまりに自分が情けなく無力なことが悔しくて、なんでもいいから力を求めて手を伸ばした時、何がか開いて、何かが溢れてきて、何かが見てきた。

 

最初は聞こえた。

太鼓のくぐもった狂おしき連打と、フルートのかぼそき単調な音色。

それはまるで、誰かを楽しめるように感じた。

吐き気と眩暈がする中で、俺を『見た』のは無形の黒影だった。

 

「………ッ」

 

更に頭痛が激しくなって『瞳』がこちらを見た瞬間、先の記憶が見せまいとシャッターが落されたように何も思い出せないようになった。

本能が告げる。あれを理解したらいかないと、冷や汗が一斉に吹き出し、まるで死地から舞い戻ってこれたような安心感と後に恐怖が追いついてきて、悍ましい存在に思わず歯が鳴る。

それでも、拳を握るだけで自分の気持ちを落ち着けたのは、幸せそうに眠るネプテューヌ達がいたおかげで発狂しそうになった意識を鎮めることが出来た。深く深呼吸をしたところで、ドアの開く音に視線を向けた。

 

「おっ、起きた……もしかして、お楽しみの時間中か?」

 

「……冗談のつもりか?」

 

「可憐な蝶が花に集まるようなその状況を見れば、そんなこともいいたくなるさ」

 

豪華な服装を着て、特徴的な髪をした青年がネプテューヌ達を見ながらそう言った。

冗談じゃない。正直な所、呼吸がしにくい場所でネプテューヌがいい夢でも見ているのか、口から涎が垂らしながらいい表情で眠っている。そんなところにいられると起き上がれない。

 

「……ところで、お前の名前は?ここはどこだ?」

 

「お俺の名前はジャッド。そして、ここは俺の家だ。まさかあの有名な黒閃に会えるとは光栄だ」

 

「……それはどうも…」

 

ジャッド……確か、貴族派で一番偉い手の貴族長の養子だと聞いたことがある。

直接的な面識がなくても、リーンボックスにいれば一度は聞くことになる名前だ。……まぁ、それは昔のことで、今はイヴォワール教院長の権限で公言を禁止されているから、知名度は低くなってきているが。

 

「ネプテューヌ達を匿ってくれて、ありがとう」

 

「……へぇ、噂じゃ暴れ者と聞いていたが、思いのほか誠実な奴だったみたいだな。こちらこそ、ネプテューヌ達には、ちょっとお手伝いを頼んでいる身だ。別にお礼を言われるまでもないさ。貴族は弱き者を守り、強き物を挫くって、ずっと俺達貴族に伝えられていることだからな」

 

「それでも、ありがとう」

 

「いいって」

 

照れくさそうに頬を掻くジャッドに俺は羽毛布団から手を出した。

俺も、教会関係者からは自分たちの名誉しか目がないと言われてきて、どんな奴かと思ったけど、ネプテューヌ達が言った様に、とてもいい人のようだ。

 

「それで、誰が本命なんだ?」

 

「……はっ?」

 

ニヤニヤとジャッドはネプテューヌ、アイエフ、コンパを見て聞いてきた。

 

「いやいや、俺が言うのもなんだけど、こいつらレベルが高いぜ?天然系、元気系、クール系と綺麗に分かれているんだ。この三人の中で気になっている一人ぐらいはいるだろう?」

 

「……確かに、俺から見てもこいつらは胸張って美少女と言えるレベルだな。そして、俺にとって大切な存在と言ってもいい」

 

「おぉ、なんと三人共か!なかなか獣だな黒閃は!」

 

更に笑みを濃くして、ジャッドは手を振りながら嵐が過ぎ去ったように消えた。

無音の空間の中で、扉が閉まる音が響く。何か、とてつもない勘違いをされたような気がする。……あと、ネプテューヌ達の顔が微妙に赤い気がするが……。

 

『ふむふむ、やっぱり純粋すぎるのも問題だね』

 

「……お前は元気そうだな」

 

『いや、これでもかなり疲労しているよ』

 

手からお決まりの黒色の宝玉からデペアの声がする。

 

「………教えてくれるか?」

 

『恍けてもいいかな?』

 

「感覚が正しければ、俺は間違いなく誰かを傷つけた」

 

?まれたーーーそう、表現すればいいのだろうか。

カチリッ、と鍵でも空いた音がしたとき、反発する暇もなく俺は飲み込まれた。あの冒涜的で下劣な単調の曲から現れた存在から伸びる影によって。

そのあと、何も覚えていない。ただ、兄の様な存在がくれた優しがあった。

 

『…………知った所で、何も得ることないよ。それに大体気づいているでしょ?』

 

「……ネプテューヌ達を、傷つけたのは俺……か」

 

『…………』

 

デペアは黙った。それは、俺の言っていることを肯定していた。

 

「あの場で、ネプテューヌ達を傷つけることが出来たのは、あの魔女、そして記憶がない俺しかいないだろうな」

 

『……そうだね』

 

「……魔女は?」

 

『君が抹殺した』

 

笑える話だ。脅威から突き放すために力を求めた結果、守りたいものまで傷つけるとか、本当に……バカだな。

あれは、制御出来るような代物じゃない。それが、俺の渇望によって反応して、『誰か』の意思を処理するだけの装置となっていたんだ。

 

『ハッキリ言えば、あれは仕方がなかったと思う。今出せる最大破壊力の技((黒竜撃|ドラグーン・デストラクション))をぶっ放して生きているなんて僕も想像を超えていたからね』

 

「でも、もう少し周囲に注意していれば避けれたかもしれない。勝手に勝ったと思い込んだ俺のミスでもあるさ」

 

焦っていた。この国にもう俺の居場所なんてないと言っても過言じゃない。

多分、戸籍とか既に消されているんだろうな。そもそも魔法が使える時点で、既にルウィーの住民と思われていた俺は、最初から怪しまれていた。ベールが庇ってくれなかったら、スパイと思われたまま意味も分からず処分されていたかもしれない。

……命の恩人と言ってもいいベールを裏切った。女神を慈悲を裏切った。それだけで、死刑と言われても仕方がないと言ってもいい重罪だ。もし、ネプテューヌ達がいなければ、無意味な気分で処刑台に上がるだろうな。

 

『君は気づいていないのかい?』

 

少しだけ、強い口調でデペアが口を開いた。

当然、俺は首を傾げて、何のことだと思う。

 

『君の人生を変えた存在を』

 

「……人生を変えた?ベールのことか?」

 

『はぁ…そういう意味じゃない。君は恩人を裏切った、友を裏切った、女神を裏切った、この国を裏切った。あの選択の後、君に降りかかったのは絶望だった。たった一人の少女の為に君は全てを失った。財産も信頼も名誉も思い出の場所もーーー((自分さえも|・・・・・))』

 

深いため息をして、デペアは語り出す。

ネプテューヌの暗殺の依頼を断って撃たれて、短くも思い出が詰まった家を燃やされて、ネプテューヌを救助するためにベールと争うことになって、ネプテューヌを追って俺はここにいる。

 

 

 

『ーーー元の始まりは、そこで眠っている((紫ッ娘|ネプテューヌ))だった』

 

ピクッと眠っている筈のネプテューヌの肩が震えた気がした。

 

『君は、ネプテューヌの暗殺依頼を裏切ったことから全ては始まった。異端者として体中を撃たれ山に捨てられかけた、そのあと零崎 紅夜の存在を消すために君にとっての憩いの場である家は、全焼させられ今は平地と言ってもいい、そして周囲は、((当たり前の天罰|・・・・・・・))と君の努力を嘲笑うかのように罵倒した。最終的に君の時間を始めさせてくれた((巨乳ッ娘|ベール))と無意味な争いをする羽目になった。この全ての事柄に((紫ッ娘|ネプテューヌ))が関与していた」

 

「だから……なんだ?」

 

『君の人生を|巨乳ッ娘《ベール》と仲良くゲームしたり、一緒に買い物行ったりした君の生活を当たり前の過ごせると思っていた毎日を((滅茶苦茶|・・・・))にした原因が今ここにいる』

 

……今更だが、ネプテューヌ達起きているな。

さっきから、微妙に動いているし、なによりネプテューヌは泣いていた。

何時もの元気に笑う彼女から想像もできない程、罪悪感と後悔、自分を責めているような顔で今にでも飛び出しそうな感じだった。なので、空いた((手で無理やり抑えた|・・・・・・・・・))。

 

「((言いたいことはそれだけか|・・・・・・・・・・・・))?」

 

『………驚いた。君は何も思わないの?』

 

「確かに酷い目に合ったさ、けど俺は((自分が正しいと思ったことしかない|・・・・・・・・・・・・・・・・))」

 

そんなものは結果論だ。運が悪かっただけだ。苦しかった、痛かった、暗かった、寒かった。

けど、それらを乗り越えて、守りたいものが合ったんだ。だから、俺は誰も責める思いになれない。

むしろ、俺がネプテューヌ達を傷つけた方がショックが大きい。

 

『((巨乳ッ娘|ベール))はどうするんだい?ハッキリ言って君との彼女の間にあった絆は、破局しているかもしれないよ』

 

「確かにな……でも、俺はやり直せると信じている。その為にこれから手を伸ばす」

 

『………バカだ。君は』

 

「諦めが悪いだけだ」

 

ネプテューヌが顔を上げる。悲愁が感じられる涙でぐしゃぐしゃになった表情だった。

頭に手を置いて、慰めるように彼女の悲しみを取り払うように乱暴に撫でる。

 

『やっぱり……君は、((零崎 紅夜|キャプテン))と会って話す必要がある』

 

子供のように涙を流しながら、謝罪の言葉を何度も言ってきたネプテューヌを黙らせる様に頭を撫でる。

優しげで、感謝の視線を向けてきたアイエフとコンパは笑って、俺も笑った。

 

 

 

「今日から一緒だ、だから、明日からも頑張ろうな。ネプテューヌ、アイエフ、コンパ」

 

 

 

 

 

 

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ヒノサン>紅夜「俺に切り捨てるなんて選択は最初からない。後悔しても苦悩しても、ただ諦めたくないただそれだけだ」空「だと意味も分からない発言している模様で……」紅夜「おいこら」空「君はとことん甘い、そしてこの世界に不釣り合いだよ。なんでこの世界に来たのさ?」紅夜「俺に言うな。過去の俺に言ってくれ」(燐)
ユウザ(R)「紅夜…まだベールを諦めてないのか…切り捨てる選択が無いんだな…とことんまで。」チータ(R)「君の言ったよーな自暴自棄且つ後悔しかしない選択をする訳がない。何せ彼にとって、彼女も『仲間』なんだしさ…君も解ってるだろ?」ユR「…………」(ヒノ)
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