Seiren―優しい時間そして疑問―
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3・優しい時間そして疑問

晴れた日の青空の下でクロウとティアは海に来ていた。

「気持良いな〜」

クロウは海の浜辺で風を感じていた。

涼しく優しい風がクロウと海を見つめているティアを包み込む。

「海は広いよね、ティア」

「ええ・・・」

2人は他には誰もいない浜辺で静かな時間を過ごしていた。

「・・・」

クロウは先程から海を見つめている後ろ姿のティアを見つめる。

(綺麗な髪だな・・・)

ティアの髪が風が吹く度にその風に乗っていた。

視線が気になったのかティアは海からクロウに視線を移した。

クロウはいきなり視線が合ったので少し驚いた。

「・・・どうしたの?」

クロウは驚きの表情から微笑みの表情に切り替えて訊いた。

「・・・」

ティアは無言のまま再度、海を見つめ近づき始めた。

「?」

クロウは暫く様子を見る事にした。

波打ち際まで来たティアはその場にしゃがみこみ、水面に手をつけた。

「・・・冷たくて気持ちいい」

そしてティアは裸足になり浅瀬に入って行く。

「・・・♪」

足首位までの水位だったのだがティアは楽しそうに波を感じていた。

波は気持ちよくて砂はひんやりしていた。

「楽しそうだな」

クロウはその光景が微笑ましくなっていた。

「〜♪」

その場から少し左に歩き始めては立ち止まり、また先程の場所へと戻り今度はその場から右へ少し歩き始めては立ち止まり、また先程の場所へと戻る。

「〜〜♪」

ティアは楽しそうに行ったり来たりを繰り返していた。

「・・・素敵な笑顔だな」

クロウはティアの小さなお散歩をずっと見ていた。

「・・・?」

ティアは気になったのかクロウにふと視線を移した、そこには微笑ましそうに自分を見ていたクロウがいた。

「・・・なんですか?」

「いや、楽しそうで良かったな〜って思って」

「・・・そうですか」

「気に障ったら謝るよ、ごめんね」

「いえ、そうではありません」

「・・・よし!僕も歩こうかな」

「・・・えっ」

「一緒に歩こう、ティア」

そう言うとクロウは裸足になり、ティアの手を優しく取った。

「気持ち良いね」

そう言いながらクロウはティアの手をひきながら歩いている。

「そうですね」

最初は無言だったティアも少しずつ話すようになっていた。

でもティアは先程から考え事が多くなっていた。

(どうして?こんなに落ち着くのは何故なんだろう?)

(何故、こんなにも暖かいの?)

「・・・さて、そろそろ戻ろうか」

 

クロウは日が落ち始めたのでそう言いながら振り向くとそこには・・・。

「分からないよ〜〜」

難しい顔をしているティアが居た。

「えっと・・・どうしたの?もしかして頭が痛いのかい?」

クロウは心配そうに尋ねてきた。

「・・・え?」

ティアはようやく気がついた。

「何か言いましたか?」

「いや、頭が痛いのかな〜って思って訊いたんだけど大丈夫かい?」

「あっ・・・大丈夫です」

「本当かい?無理してない?」

「本当です、ちょっと考え事していました」

「そうか、それならいいんだけど」

心配そうな表情から笑顔になっていくクロウ。

「あっ・・・」

「?」

「ううん、ありがとう」

ティアはクロウにお礼を言い、2人は元居た場所に戻り始めた。

そんな道中でティアはある事に気付いていた。

(心配そうな表情のクロウを見て辛くなった、そして笑顔のクロウを見て・・・

「・・・好きだな・・・あの笑顔・・・」

ティアは小さく呟いた。

「ただいま〜」

ようやく帰宅した2人、クロウはすぐに夕飯作りに入った。

「・・・」

無言のティア。

「今日は何がいい?」

夕飯作りを始めるクロウ。

(・・・手伝わなきゃ)

勇気を振り絞りティアはクロウに提案する。

「わっ・・・私も・・・」

「なんだい?」

「・・・私も手伝う」

「えっ」

「・・・ダメですか?」

「ダメでは無いけど良いのかい?」

「うん」

「ありがとう、ティア」

「・・・どういたしまして」

野菜を綺麗に洗うティア、その野菜を器用に切っていくクロウ。

ティアは野菜を洗ったり、煮込み中のスープの監視をしたり、食器を用意したりしていた。

「もうすぐ出来上がるよ」

本日の夕飯のメニューは野菜とお肉の煮込みスープにパンだった。

「おいしそう」

「さあ、食べようか」

「ええ」

食事をしながらティアは今日の事を考えていた。

(クロウは優しくて私を殺さない・・・)

(私、このままでいいのかな?)

「ティア?」

クロウは難しい顔をしているティアが気になっていた。

「大丈夫かい?」

「ごめんなさい、大丈夫です」

「本当かい?もしかして体調が良くないのかい?」

「ううん、本当に平気だから」

「・・・」

クロウは心配になっていく。

(ダメ、そんな顔しないで・・・)

ティアはそう心の中で呟き、そして・・・。

「このスープ、本当においしい」

スープを口にし、微笑みながら言う。

しばらくしてからクロウが言う。

「・・・それは良かった」

「ごめんなさい、本当に大丈夫だから」

「うん、でも悩み事があったら遠慮なく相談してね」

「・・・ありがとう」

こうして食事を終えた2人、クロウは疲れが出たのかすぐに就寝してしまった。

ティアは月の明かりに照らされている海を見ながら呟く。

「・・・クロウに心配を掛けさせたくない・・・」

ティアは今のこの時間が続く事を静かに、そして強く祈った。

 

説明
ティアは思い出していた、クロウとの思い出の日々の1つを・・・
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少女病 Seiren-彼方に謡う哀憐の姫- クロウ ティア 

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