バカとテストと召喚獣 五つの鎧を持つもの 第三十二話
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 海で皆で楽しんだ鋼牙達は冴島邸に戻ろうとしていた。と、そこへ二人の女性が近づいてきた。

「邪美!それに烈火も!」

「久しぶりだな鋼牙。」

「なんだか仲間が多いな。」

 烈火と邪美の姿を見て皆は驚く。

「鋼牙よ、その二人は一体誰なのじゃ?」

「ああ。この二人は幼馴染の一つ年上の上月(こうづき)烈火と園苞(えのほう)邪美だ。俺の幼い頃からの知り合いだ。」

「邪美だ。よろしく頼む。」

「邪美だ。俺のこともよろしく頼むぞ。」

「え、ええ。俺は坂本雄二です。」

「木下秀吉じゃ。」

「木下優子です。」

「・・・・霧島翔子です。」

「・・・・土屋康太です。」

「工藤愛子です。」

「姫路瑞希です。」

「島田美波です。」

 それぞれが二人に自己紹介をする。だが皆は二人の服装が気になって仕方がなかった。土屋も少しばかりか鼻血を出していた。

「あ、あの、いいですか?」

「どうしたんだい、姫路ちゃん?」

 邪美が訊ねる。

「そ、その格好って・・・・・」

「ん?ああこれかい。私服だよ。」

『し、私服!?』

 邪美がそう言うと皆は驚いた。二人の服装は胸元が開いている黒い生地の服。烈火はその上に黒いコートも着ている。だが邪美の肌は汗一つもかいていない。

「そんな大胆な服で出歩けるなんて・・・・・・・・・」

「なんだか・・・・・・・鋼牙君の知り合いって感じが伝わるわ。」

 美波と優子の言葉に一同頷いた。そんなに変な格好なのか?俺は昔からこの二人の服装は見慣れていたからむしろ町に住んでいる人たちの服装が暑そうに見えたな。

「ところでお前たちに聞いていいか?」

「なんっすか?」

「お前ら、もしかして文月学園の生徒か?」

「そうじゃが・・・・・」

「・・・それがなにか?」

「俺たちの後輩にあたるな。」

『・・・・・・・・・・え?』

 邪美の言葉に皆はまたしても驚いた。

「俺たちは去年まで文月学園の生徒だったんだ。だから実質上先輩に当たるな。」

「と言ってもこいつには関係ないがな。」

 邪美が鋼牙を見ながらそういう。

「俺とこいつは昔から稽古の相手をしていたからな。先輩なのに濃いうにめけてしまうのがたまに傷だ。」

「そうだな。だがこいつの強さは称号にふさわしいと思うぞ。」

「ところで二人とも、何故ここに着た?」

「決まっているだろ。」

「ああ。明日の桜の飲み会に来たんだ。」

 邪美の言葉に雄二が疑問を抱く。

「なんで今時桜なんだ?それにもう夏だぞ。」

「それについては明日話す。それより二人は子の後どうするつもりだ?」

「お前の家に泊めさせてもらってもいいか?」

「別に構わん。ゴンザ、二人増えたが問題はないか?」

「はい、鋼牙様。ささ、邪美様も烈火様もどうぞお車の方へ。」

 邪美と烈火も加わり一同は冴島邸に戻って行った。

 

 女子が泊まっている部屋では少し騒がしくなっていた。

「じゃ、邪美さんって学年主席だったんですか!」

「ああ。次席は烈火だったがな。」

「そういえば邪美姉、前に翼に胸を揉ませたことあったよな。」

「ばっ!それは言わない約束だろ!!」

「翼って・・・・・・鋼牙君と同じ魔戒騎士の翼君ですか?」

「ああ・・・・・よく知っているな・・・・・・」

「ウチ達が学園祭している頃に学校に来たから知っています。」

「あの・・・それより・・・・・・・」

「・・・さっきの胸を揉んだ話は本当?」

「・・・・・・ああ。」

 女子達は奇声を上げる。

「そ、そんなに騒ぐな!それにあれは翼が悪いんだ。」

「どう意味ですか?まさかあいつが何かやったんですか!」

「いや・・・その・・・あいつがあたしの態度を見て女かって聞いてきたから・・・その・・・胸を揉ませたんだ////」

 邪美は顔を紅くしながら言う。それを聞いている姫路、美波、優子、愛子も顔が紅くなってゆく。

「か、顔を紅くするな!それに烈火、お前も人のことを言えないだろ!」

「じゃ、邪美姉!それは・・・」

「・・・・なんの話?」

「こいつが会談から足を踏み外したときにレオが庇ってくれたんだがレオの顔が烈火の胸に収まったんだよ。」

「邪美姉!!!!!!!」

 烈火が名前の如く顔を紅くする。

「あんたも人のこといえた口じゃないってことだよ。」

「邪美姉も言えないだろ。」

「あ、あの、聞いていいですか?」

 二人に優子が質問する。

「お二人は・・・・・その・・・・・好きなんですか?」

「な、なななななな!」

「なんでわかった!」

「邪美!」

 テンパっている二人の光景はもはやお笑いのような光景だ。

 邪美と烈火は照れながらも本心を言う。

「ま、まあ翼は鋼牙のような堅物だが妹思いのいい奴で結構優しいんだ。」

「お、俺もレオはいい奴だと思うぞ。何かと気が利くし面倒見がいい。いや、良すぎるほうだな。」

「じゃあ!」

「ま、まああいつが18になってから話すつもりだ。」

「お、俺もだ。俺たちは年齢的に大丈夫だがあいつらはまだ未成年だ。気長に待つには少し長すぎるがな。」

 そんな時扉を叩く音が響く。

「入っていいぞ。」

 邪美が答えると鋼牙が部屋に入ってくる。

「邪美、少しいいか?」

「なんだ鋼牙?」

「さっきまで忘れていたのだが翼から渡すように頼まれていた物だ。」

「つ、翼から!?」

「ああ。どうかしたか?らしくないぞ。」

「な、なんでもない。それより何なんだ?」

「山刀家のピアスみたいだぞ。マグネット式のな。後手紙が同封されているぞ。中は見ていないぞ。」

 そう言って鋼牙は邪美に手紙とピアスを渡す。

「あと烈火、お前にもあるぞ。」

「俺にもか?」

「ああ。レオからだ。」

「なっ!何故あいつは俺に会いに来ない!」

「無茶を言うな。あいつは魔導具開発に日々追われていることはわかっているだろ。」

「そ、それはそうだが・・・・・」

「だがあいつら何か言ってたな。もうすぐ戻れるがどうとか。」

「そ、そうか。それでなんなんだ?その・・・・頼まれていた物は?」

 鋼牙は懐から紅い紐の髪留めと封筒を取り出す。

「これだ。お前に似合いそうだから渡すと言っていたぞ。」

「そ、そうか。すまないな。」

「気にするな。それにもしお前たちが来なかったとしてもそっちまで足を運ぶつもりだったからな。じゃあ俺は部屋に戻る。」

 そう言って鋼牙は出て行った。

「まったく、あいつは相変わらず無愛想よね。」

「そうでもないぞ。あいつは昔は普通に明るい奴だったぞ。」

 邪美のその言葉に姫路以外の皆は驚いた。

「そ、そうだったんですか!」

「そんな面影無いんだけど!」

「まああいつはあの日以降心を表に出さなくなっちまったからね。仕方ないったら仕方ないね。」

『あの日?』

「姫路ちゃんは知らないんだね。鋼牙と幼馴染って聞いててっきり知っているかと思ったけれど。」

「で、どうして鋼牙君は心を閉ざしてしまったんですか?」

 工藤が聞くと二人は重い表情になった。

「それは俺たちからは言えないんだ。」

「ああ。あいつの過去を話すのは堪える。」

「そ、そうですか・・・・・すみません。」

「いや、気にしなくていいんだ。今日ゴンザから聞くんだろ。覚悟していてくれ。あいつは見た目ほど心は強くない。」

「だな。まあ、あいつは自分よりも他人を優先する方だからな。昔あたいを守ってくれたように。」

『はい!?』

「ああ、主語がなかったね。お前たち、あいつの背中の傷は見たことはあるな。」

 邪美がそう言うと皆は首を縦に振った。プールや海で何度も見かけている鋼牙の背中には一つの長い傷があった。皆はそのことについて聞こうと思っておるのだがなぜだかなかなか言い出せなくなる。

「あいつがまだ小二だった頃にあたしはあいつの忠告を無視して山の中に入っちまったんだ。その頃は夏でね。あたしは油断していたんだ。鋼牙はあたしを追いかけて一緒に山の中に入ったんだがその時最悪のことが起こったんだよ。」

「・・・・・一体何が?」

「アタシがはしゃいでいると目の前に熊が出てきたんだ。あたしはその瞬間叫んでしまったよ。そしたら熊は驚いてアタシに向かって爪を振り下ろしてきた。あたしはその時あまりの恐怖に身動きが出来ずにいたんだ。その時鋼牙があたしを守ろうと飛びついてきたんだ。その時の攻撃をギリギリかわせたんだが熊はまだ乱心しててな、再度攻撃をしてきたんだ。鋼牙はあたしを庇って背中に傷を負っちまった。」

「それって!」

「ああ、鋼牙は背中に傷を負ってしまったんだよ。熊が乱心してもう一回鋼牙の背中に傷を負わそうとしたんだ。その時に鋼牙の親父さんの大河さんが駆けつけてきてくれてね。熊の腹部に拳を叩き込んで熊を気絶させたよ。」

「あの・・・・・いいですか?」

「なんだい、優子ちゃん。」

「熊の身体って鉛のように堅いですよね。それを気絶させるって・・・・・」

「まあ、あの人は先代の牙狼の称号を継承した人だからそんなこと造作もなかったんだろうね。」

「えっ!鋼牙君のお父さん魔戒騎士だったんですか!」

「・・・・・・ああ。あの人は魔戒騎士の中で強く、優しく、そして誇りを曲げない人だったよ。」

 邪美は暗い表情でそう話した。姫路達はそれ以上追求しようとしなかった。

 

 夕食後の冴島邸。皆はゴンザの作った手料理に心もおなかも満腹になった。

「オイ鋼牙、少シガキタチト話シタイカラ外シテクレナイカ?」

「わかった。俺は自分の部屋で寝ておく。」

 そう言って鋼牙はザルバを左の中指から外し指輪立てに掛けた。鋼牙はそのままスタスタと自室に戻って行った。

「サテ、ガキドモニ話スコトハ言ウマデモナイガ鋼牙ノトラウマニツイテダ。」

 ザルバのその言葉を聞いた瞬間、皆は表情を変えた。

「コレカラ話コトハ心シテオクンダ。他人ノ辛イ過去ッテノハ聞クダケ以上のノ精神ニクル。ゴンザ、イイヨナ?」

「はい、ザルバ様。あれは鋼牙様が小学・・・・・4年生の頃でありましたか。鋼牙様は父、大河様と共にお買い物に出かけておりました。鋼牙様にとって家族と過ごす時間は本当に幸せな時間でございました。ですがその日、とある精神的に狂っている殺人犯が鋼牙様と大河様のお買い物をされているお所に現れました。大河様は鋼牙様に隠れているようにと言われ、その殺人犯に立ち向かっていきました。」

「マアイツハ当時最強ノ魔戒騎士ダッタカラナ。ソレニ鋼牙ヲ守リタイ思イガアッタカラナ。」

「大河様は刃物を振り回している殺人犯に勇敢にも立ち向かい殺人犯に深手を負わせました。」

「ダガソコニ大河ヲ心配シテ鋼牙ガ掛ケツケテキテシマッタンダ。アイツハ鋼牙ノ方ヘ掛ケツケタ。ソノト殺人犯ハ折レタパイプヲ手ニ持ッテ大河ノ背中ニ突キ刺シタ。」

 ザルバの言葉に一同驚愕した。

「大河様は鋼牙様を抱きしめる形で鋼牙様を守りました。殺人犯のパイプは背中の大動脈を貫通し、手のつけようが無い状態でございました。」

「ソノ後警察ガ殺人犯ヲ逮捕シタンダガ大河ハ鋼牙ヲ抱キシメタママ死ンデシマッタンダ。鋼牙ハソノ日以来自分ノ無力サヲ恨ンダ。シバラクノ間ハ海外ニ行ッタンダ。」

 皆は話を聞き終えると深刻な顔をした。

「・・・・・あいつ・・・・・抱え込みすぎなんだよ。」

「アイツハソウイウヤツダ。ダガナ、アイツハ誰ヨリモコノ中デ命ノ尊サヲ知ッテイル。ダカラアノ時怒ッタンダ。」

 皆は言いたいことはあったが心のうちに収めた。

 

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ダイブウミヲタシンダトオモッタラコンドハコイツラカ。
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