第十話 |
木戸川清修との激闘は勝利と引き換えに多大な犠牲を払う結果となった。万全とはいえないまま迎えた幻影学園との一戦。そこには天城の幼馴染の姿があった……。
『悪闘、ホーリーロード!! ―偽りの過去―』
解説『さあ、雷門学園と幻影学園の選手の入場です。おや、雷門の選手が急遽、変更されているぞ。これはどういうことだ?』
怒羅えもん「どうしたんだい? ジャイアン、また誰かを病院送りにしたのかい?」
天城「俺は一度もそんなことしてないド。まるでいつもやってるみたいにいうなド!」
怒羅えもん「またすぐそうやって言う。だから君はいつまでたってもジャイアンのままなんだよ」
天城「い、いや、そのツッコミはよくわからないド」
輝「待ってよ! メンバー交代したQB先輩は他の学校の女子生徒に銃で撃たれたからなんだ。ジャイアンは関係ないよ!」
怒羅えもん「またすぐそうやって言い訳をする。だから君は新しいのび太君止まりなんだよ」
輝「えっ、僕も同じ扱いなの? そもそも新しいのび太ってどういう扱いなの? なんかすごく馬鹿にされてることは分かるけど」
怒羅えもん「じゃあ、スネ夫?」
輝「……あ、やっぱりのび太でいいです」
天城「いや、色々と違うだド! もっと上を目指さないで…… じゃなくて、お前はのび太じゃなくて影山輝だド! あと俺はジャイアンじゃないド!」
輝「そ、そうだった! すみません、ジャイアン先輩。思わず呼び捨てにしてしまって」
天城「いや、だから違うド! 先輩つけてないからツッコんだんじゃなくて、そもそも俺はジャイアンじゃないド!」
輝「……え? あれ? なんで僕は天城先輩のことをジャイアンなんて…… あれ?」
輝は正気に戻った。だが、逆に混乱した。
怒羅えもん「新しいのび太君は頭も弱くて都合がいいみたいだね、ジャイアン」
天城「いや、だから俺はジャイアンじゃないド!」
輝「あの、僕の頭が弱いってところはツッコんでくれないんですか?」
天城「あ、す、すまんド」
真帆路「……相変わらずだな、ジャイアン」
天城「真帆路までジャイアン言うなド!」
真帆路「昔からお前はボケもツッコミも今一つで、それが原因で苛められていた」
天城「……え? お、俺が苛められてたのはそんな理由だったのかど?! なんか違う気がするだド」
怒羅えもん「忘れたのならそれでもいいよ。でも、これだけは言わせてもらうよ。語尾にドをつけて濃いキャラ付けを提案したのは僕だからね」
天城「そ、そうだったっけかド?!」
真帆路「ゴーグルを逆さにつけるように提案したのは俺だ。もっともそれは目立ちすぎて逆に苛められる原因になったのは秘密だがな」
天城「い、色々とお前が原因だったのかド?!」
怒羅えもん「ほら、またツッコミが甘い。そんな君にはやっぱり頭の弱い新しいのび太君がお似合いだよ」
天城「い、いわれたい放題だド。だが、流石は笑わないストライカー・真帆路と笑えないゴールキーパー・怒羅えもんだド。まるで付け入る隙がないド。俺はもうボロボロだド……」
輝「しっかりしてください、天城先輩! 試合はこれから始まるんですから!」
天城「そ、そうだったド……。真帆路、なんでお前がフィフスセクターなんかに従っているのか、なんで笑わなくなったのかは知らないド。でも、でも……!」
真帆路「マボロシショット!」
三国「うわぁぁぁー!」
真帆路の放った必殺シュートは天城に気づかれることすらなく、雷門のゴールを守ると言われる幻のゴールキーパー三国もろともゴールネットへ突き刺さった。
解説『ゴオォォール! 幻影学園、開始早々に一点をもぎ取ったー!』
天城「……あれ?」
輝「天城先輩、もう試合始まってますよ!」
天城「展開早すぎだド! 俺が話し終えるまで待って欲しかったド!」
天城はあっさりと真帆路のゴールを許してしまったことを気負い項垂れる。
軌道「天城! 落ち込んでいる暇があったらどんどん動け! QBが抜けた穴を神童が一人でカバーしているんだ! お前ももっとサポートしてやるんだ!」
天城「は、はいだド!」
鬼道の指示に天城は改めて既に試合が始まっていることを意識する。
試合は常に幻影学園がペースを握っていた。流石はここまでやってきたチームである。マボロシショットがなくとも、真帆路はその技術だけで雷門DF陣を突破して攻めこんでくる。
天城「くそ! こうなったら力づくでもお前を止めてみせるド!」
真帆路「出来るものならな!」
天城と真帆路の技術の差は歴然であった。だが、真帆路の技術を超える執念でひたすらに食らいつき、パスを出させる隙さえ与えない。
真帆路「ちぃっ! 相変わらず執念だけはあの頃と変わらないな!」
怒羅えもん「まったくだよ。お前のものは俺のもの、俺のものは俺のものと言って、しずかちゃんを連れ去ろうとしていた執念深さは未だに顕在だね」
天城「いや、してないド! そんな覚えないド! と、いうかゴール前にいるのになんでこっちの話を聞こえてるド?」
真帆路「怒羅えもん、あれはスネ夫の仕業だ。スネ夫が逮捕されたのはあれが理由だからな」
怒羅えもん「あらら、そうだったんだ。てっきり、ジャイアンがスネ夫に全ての責任を押し付けたんだと思って、近所のみんなに言いふらしてたのに……」
天城「いや、そのスネ夫も知らないド! あととんでもない言いがかりを広めないで欲しいドー!」
真帆路「しま……!」
怒りで力を増しながらも、他のことに気持ちを奪われずに果敢にぶち当たり続け、遂にはボールを奪う。
解説『天城選手、激しい当たりで無理矢理ボールを奪ったぁー! ここから雷門の反撃なるか?!』
天城「いけ、一乃! 青山!」
天城は即座に待機していた一乃と青山へとパスを送る。幻影学園のメンバーは真帆路が抜かれることはないと過信していたせいで全体的に前に出ていて、絶好のカウンターチャンスとなった。
青山「いくぞ、一乃!」
一乃「おう!」
一乃と青山のコンビネーションで速攻で攻め上がる。ハイスピードなカウンターに幻影学園は為す術なく、見事にカウンターが決まった。そのままゴール前で待機していた剣城へとパスが通る。
剣城「くらえ、デスソード!」
絶好の位置からのデスソード。いくら剣城が下痢で苦しんでいようと、これは決まる! そう、雷門の誰もが思った。だが……
怒羅えもん「どこでも怒亜!」
怒羅えもんは迫りくるボールにドアをかざす。ドアの向こうには壁などがあるわけもない。デスソードはそのままドアを素通りする。
輝「やった! これで同……」
三国「ぶぐわぁぁぁぁ!」
輝「……え?」
同点に追いついた。そう思われた。だが、剣城のはなったデスソードは確かに幻影学園のゴールへと向かったはずなのに……
ボールは三国ともども雷門のゴールへと突き刺さっていた。
輝「嘘……でしょ……?」
解説『ゴォォォール! 剣城選手のデスソードが幻影学園ゴールではなく、雷門ゴールへと突き刺さったぁー! 攻めに、守りにまるで常識が通用しない幻影学園! この二点の失点は早くも決定打となってしまうのか?!』
守ることの出来ないシュート。攻めることの出来ないゴール。開始早々の二点の失点。レギュラーの半数が出られない戦力不足。残ったメンバーで組み立てた戦略もQBが銃で撃たれて欠場のために上手く咬み合わない。
どうしようもない。それは天城だけでなく、雷門の誰もが心の底に抱いてしまった感情だった。
そんな天城に真帆路は冷たく言い放つ。
真帆路「敵わない相手には従うしかないことを、その身をもって知るがいい」
『悪闘、ホーリーロード!! ―偽りの友情―』
剣城「くらえ!」
かろうじて回ってきたボールを、剣城はそのままダイレクトにシュートする。しかし、おせじにも良いパスではなかったものをシュートしたためにボールはあからさまにゴールポストへ向かっていた。
怒羅えもん「残念だけど、僕が動く必要もなさそうだ」
剣城「そいつはどうかな?」
真帆路「……ダメだ! 怒羅えもん、それはフェイントだ!」
怒羅えもん「え?」
剣城は高く跳び上がり、シュート体勢へと入る。そこへゴールポストに弾かれたボールが絶好の位置でやってくる。
剣城「デスドロップ!」
怒羅えもん「しまった! どこで…… うわぁーーー!」
最初のシュートはわざとゴールポストへ当て、跳ね返ったところをシュートを決める。剣城のフェイントは見事にはまり、怒羅えもんのどこでも怒亜を出させることなく一点を取り返す。
解説『ゴォーーーール! 剣城、難攻不落と思われた怒羅えもんのどこでも怒亜を頭脳プレーで突破したー! そして、ここでホイッスル! 前半終了だ!』
神童「やったな、剣城」
剣城「喜んでもいられませんよ、キャプテン。三国先輩じゃあるまいし、同じ手が二度も通じるとは思えません」
神童「確かにそうかもしれない。だが……」
剣城「なにより、今の状況を考えてくださいよ」
解説『さあ、前半終了して試合は49−1と幻影学園がリード! 雷門、ここから巻き返しなるのか?!』
三国「なかなかの強敵だったな。だが、安心しろ。なんとか50点はとられないで済ませたからな!」
剣城「前半だけで49点とられるってどういうサッカーですか?! つーか、なんで三国先輩はこんなに誇らしげになってるんですか! そもそも作者は既に前回の時点で逆転の方法が思いつかなかったのに何で開き直って更なる窮地に追い込んでるんですか!」
神童「流石だな、剣城。寄生虫にやられて全力が出し切れないというのに、メタな部分までツッコミをかかさないとはな」
鬼道「しかし、この突破力(ツッコミ)をしても、相手GKのブロック(ボケ)を完全に攻略できないか」
剣城「例え怒羅えもんを攻略したとしても、奴らの攻撃(ボケ)を防がなければ、差を縮めることすら出来ませんよ」
神童「くっ……。やはりここは三話目まで引っ張って、なんか逆転の糸口を見つけたぞ的な終わらせ方をしましょう! そして、次の話から何事もなかったように新雲学園編に突入しましょう! 大丈夫、天城先輩や影山がメインの話なんて人気無いんですから!」
輝「キャ、キャプテン! なに、とんでもないこと言ってるんですか?! ジャイアン先輩はともかく、僕は良くも悪くもないくらいの人気ですよ!」
天城「か、影山?! お前、俺のことをそんな目でみてたのかド?!」
剣城「いや、普通なのをいばるところじゃないだろう! ツッコミいれるところが違うだし、ジャイアン先輩じゃなくて天城先輩だろ! いつまであいつらのペースにはまってるんだよ! キャプテンもギャグで逃げようとするのはやめてください! そもそも、そのパターンは既に月山国光で使ってしまったから使えませんよ! くっ…… ツッコミすぎて腹が痛くなってきた……」
鬼道「無理をするな、剣城。無理にすべてにツッコミを入れる必要はないんだ。最小限の必要なものだけを的確にツッコめばいい」
三国「そうだぞ、剣城。俺のようにきちんと必要なものだけを見極めるんだ」
剣城「いや、あんたは必要なものも見逃してるだろ! そもそもまともにツッコミいれても止められないだろ! ……くっ、余計な力を使ってしまった」
神童「大丈夫か、剣城!」
剣城「すみません、キャプテン……。俺は…… もうここまでみたいです。これ以上は…… これ以上、ツッコミいれたら……」
神童「分かっている。もう…… もう腹が限界なんだな。あとは俺たちに任せて、ゆっくりとトイレに入ってくるといい」
剣城「でも、そしたらメンバーが……」
???「その心配はないよ!」
更なる絶対的窮地に陥った時だ。どこからともなく頼もしい声が響き渡る。
鬼道「まさか……!」
驚く雷門一同の元へと、観客席から五人の人影が飛び降りてくる。
吹雪「虫下し、飲もうよ! 雷門中監督、吹雪士郎だ!」
虫下し薬の瓶を持った吹雪だ。既にエキノコックスを打ち破ったらしく、セリフと持っているものはともかくとして、とても爽やかな登場だ。
後に次いでグラビアを差し出しながら二人目が、更に三人目、四人目と次々と降り立ってゆく。
天馬「お待たせ! 雷門中グラビア研究会、松風天馬!」
信助「同じく、西園信助!」
スネ夫「元網走刑務所・牢名主、骨川スネ夫!」
錦「元イタリア留学生、錦リョーマぜよ!」
鬼道「吹雪、お前は監督じゃないだろう! どさくさに紛れて何をしてるんだ! そもそもなんで虫下しでエキノコックスを打ち破っているんだ!」
剣城「天馬、お前はサッカー部だろう! そもそもグラビアなんて待ってねぇよ!」
信助「……って、僕はグラビア研究会じゃないよ、雷門サッカー部だよ! 天馬、打ち合わせにないこと言わないでよ!」
影山「いや、それ以前に一人関係ない人がいるんですけど! 元網走刑務所牢名主が何でこんなところにいるんですか!」
天城「え、えーと…… なんで錦がここにいるド!」
錦「いや、わしはツッコむ必要ないぜよ……」
新たに登場した仲間たちにそれぞれが思い思いのツッコミをいれる。
吹雪「みんな、遅れてごめん。でも、僕たちは虫下しで回復したから大丈夫! さあ、逆転といこうか!」
鬼道「よし。松風、お前はQBのポジションに、錦は影山のポジションに入れ」
輝「き、鬼道コーチ! 僕は……」
鬼道「コーチじゃない、監督だ。影山、お前は剣城のポジションに入れ。剣城は早く虫下しを飲んでこい。骨川は天城のポジションに」
天城「そうなると俺は誰のポジションに入ればいいド?」
鬼道「お前は便器を温めておけ」
天城「ちょ、ちょっと待つド! ベンチならわかるけど、便器を温めろってなんだド?! つーか、他人が温めた便器なんて使いたくないド!」
鬼道「……それでいい」
天城「な、なんだド?」
鬼道「お前は前半、真帆路の変幻自在のオフェンス(ボケ)に対し、戸惑い惑わされながらディフェンス(ツッコミ)をしてしまっていた。だが、それでは駄目だ。直線的でも構わない、反射的にしつこくディフェンス(ツッコミ)を行うことが大事なんだ」
天城「コ、コーチ……!」
鬼道「コーチじゃない、監督だ。分かったなら早くポジションにつけ。お前が出張っても人気は取れないからな」
信助「コー…… 監督、僕はどのポジションに入れば……?」
鬼道「西園、お前は……」
三国「監督、この状況なら試してみる価値があるんじゃないですか?」
信助のポジションを決めようとしたところで、三国が鬼道に目配せをする。鬼道はそれを見て小さくうなずいてみせる。
鬼道「西園、お前は三国に変わりキーパーだ」
信助「えー!? いくら三国先輩がザルだからって、無理ですよ! そもそも49点とか取られているのにキーパーやれって無茶苦茶ですよ!」
三国「無茶苦茶じゃないさ。俺はお前の脊髄反射のツッコミはキーパーに向いてると思っていたんだ」
信助「ツッコミでキーパーの才能決めないで下さいよ! それにこの窮地にキーパー交代なんてしたって取られる点が50点から5点に変わるくらいで焼け石に水ですよ!」
三国「安心しろ。今回は俺が信助の化身・寄生神サンゴクとして一緒にゴールを守ってやるから!」
信助「いや、ダメでしょ! そんなのバレるし、いても守れない化身だし、むしろ邪魔だし…… うわぁー、僕じゃとてもじゃないけどツッコミきれないよ!」
三国「信助がツッコミきれなくなったみたいなんで、このまま話を進めてください」
信助「なに、話しがまとまったみたいにしてるんですか!」
鬼道「分かった。後半はこのメンバーでいくぞ。不慣れな西園のサポートをみんなでするんだぞ」
信助「って、鬼道監督も納得しないでくださいよ!」
こうして、戦いの準備が整った雷門の、怒涛の反撃が始まろうとしていた。
『悪闘、ホーリーロード!! ―偽りの感情―』
解説『さあ後半戦、雷門はメンバーを大幅に変えて逆転を狙う。対して幻影学園は特に変更はなし。リードを守るどころか、更に攻め抜くつもりか?! さあ試合開始だ!』
ホイッスルと共にボールを受けた真帆路が単身で攻めこむ。前半と変わらない強気な攻めだ。
真帆路「メンバーを変えたところで俺のマボロシショットと怒羅えもんのどこでも怒亜を打ち破れはしない!」
天城「やってみなくちゃ分からないド!」
解説『攻めこむ幻影、真帆路選手に雷門、天城選手がブロックに入る! 前半は一度たりとも止めることはできなかったが、何か策はあるのか?!』
天城「策なんてないド! ただ全力でぶつかってゆくだけだド!」
真帆路「無駄だ、お前では俺に勝てない。お前もわかっているはずだ、より力のあるものには勝てないということを!」
真帆路は隙のない見事なドリブルで突破を試みる。だが天城はその機敏さからはかけ離れた鈍重な体でひたすらに追いすがり、強烈な当たりで真帆路にプレッシャーをかけてゆく。変幻自在の真帆路に翻弄されていた前半とは打って変わって、やっと勝負ができるようになったといったところか。だが、その差は決して小さなものではなかった。
たとえ天城が止められなくても、少しでも時間が稼げればそれだけ仲間が動くチャンスも増えるのだ。
三国「天馬、スネ夫、フォローに入れ! 神童はすぐに反撃にいけるように備えろ!」
信介「ちょっ、三国先輩、しゃべらないでください! 今は化身役なんですから!」
三国の指示に従って天馬たちは天城のフォローへ入る。
天城「真帆路! お前は俺をかばって…… 俺がまた苛められないように俺から離れたんだド?」
真帆路「なぜ、それを! まさか……」
天城「全て聞いたド。だが、それを聞いてもやっぱりお前は間違っているド!」
真帆路「口ではなんとでもいえる! 一時の感情なら尚更な! だが、現実は甘くないんだよ! 一日、二日…… 一週間、一ヶ月…… 延々と抗うことのできない苦しみに襲われて同じことが言えるのか?!」
天城「それは……」
真帆路「結局、強いものに…… より大きな力には従うしかないんだよ!」
スネ夫「そういうことだよ、ジャイアン!」
嘲笑をこぼしながら、幻影学園のユニフォームに着替えたスネ夫が真帆路と一緒になって天城に襲いかかる。
天城「え? ス、スネ夫? なんでだド?!」
スネ夫「くくっ、僕は強いものの味方なんだよ! 本当はのび太と怒羅えもんに復讐してやるつもりだったけど、勝ち目がなさそうだからね。死ね、ジャイアン!」
スネ夫は悪態をついて、スタンガンを振り回す。
天城「ちょ、ちょっと待つド! それは反則とかそういうレベルじゃないド! つーか、審判は何してるド?!」
スネ夫「くくっ、うちのパパはフィフスセクターのお偉いさんと知り合いがいてね。審判の家族を人質にとって言うことをきかせるくらい、なんてことないんだよ!」
天城「お偉いさんと知り合いがいるのと人質の繋がりが全く見えないド?!」
解説『これはひどい! 骨川選手、キチクとか外道とかそういうレベルじゃない卑劣さで天城選手を追い詰める! これが幻影学園のやり方なのか?!』
真帆路「いや、ちょっと待て! こいつは幻影学園の選手じゃないだろ!」
スネ夫「うるさいぞ、のび太のくせに! いいから、さっさとマボロシショットでもなんでも撃ってジャイアンにトドメを刺せ!」
真帆路「なんでお前にそんな指図を……」
スネ夫「強いものには従うんだろ?! なら、さっさとやれ! やらないとパパに頼んでしずかちゃんを誘拐するぞ!」
真帆路「げ、下劣な……! う、うおぉぉぉー!」
真帆路はやむなくマボロシショットを放つ。迷いはあるとはいえど、強いものには従うしかない。その呪縛に包まれた一撃は今までにない強さでゴールへと向かう。
天城「俺は…… 俺は……! お前のそんな悲しいシュート、これ以上、見たくないド」
天城の心の奥底でくすぶっていた感情の塊は、ここでついに爆発を見せる。それは新たな必殺技となってその思いを遂げる。
天城「アトランティス・ウォール!」
遙か新海より現れた古代の姿と未知なる機械の融合した壁は、真帆路のマボロシショットをも弾き返す。
真帆路「な、なんだと……?!」
天城「いくド、天馬!」
天馬「はい!」
天城がカットしたボールは天馬へ渡り、神童、一乃、青山達のよって輝の元まで運ばれる。
青山「頼んだぞ、影山!」
輝「はい!」
解説『天城選手から繋がった雷門の反撃! 最後の影山選手はGK、怒羅えもんと一対一で勝負だ!』
怒羅えもん「希望が大きいほどにそれが裏切られたときの悲しみは計り知れない……。これ以上、叶いもしない希望にすがらせて、のび太君を惑わせたりはしない。君達はここで止めてみせる!」
輝「うぎぃー! 自分から…… 逃げるなぁー!」
怒羅えもんはすぐにどこでも怒亜を出せるように構える。恐れるべきは剣城のようなフェイントだが、経験の浅い輝に同じ真似はできない。それが怒羅えもんの心に僅かな隙を残してしまった。
輝「エクステンドゾーン!」
輝の放った必殺シュートは想像以上の速さで真っ直ぐにゴールへ突き進む。なんの仕掛けもない単純な、だがそれゆえに強力なパワーとスピードを兼ね備えたシュートだ。
怒羅えもん「は、速い! ど、どこでもドワアァー!」
輝の放ったシュートは、怒羅えもんがどこでも怒亜を出し切るより早く怒羅えもんの体ごとゴールへと打ち付けた。
解説『ゴォール! 雷門、見事に反撃を一点を入れたー!』
天城を起点にして、反撃の一点をもぎ取った雷門。圧倒的に不利な状況は変わらないというのに
真帆路「怒羅えもん!」
怒羅えもん「あらら、どこでも怒亜が壊れちゃった。これじゃあ、今までみたいにゴールを守り切れないよ」
真帆路「くっ……!」
天城「真帆路! なんで…… なんで一人で抱え込もうとするド……」
真帆路「天城……」
天城「あのとき、お前は俺がまた苛められないように俺から離れていった……。その優しさは嬉しいド。でも、俺は例えまた苛められることになってもお前と一緒が良かったド! お前と二人なら苛めた奴らをギタギタのボッコボコに出来たはずだド! 一人で抱え込まないで欲しかったド!」
真帆路「天城……」
天城の思いを聞いて、真帆路の胸に支えていたものがボロボロと崩れていった。真帆路の心は最初から天城達に同調していたのだ。だが、いつの間にかその思いのままに動くことを恐れ、自分の本心から逃げてしまっていた。
頑なな思いを突き崩したのは、心の友のやはり頑なな思いであった。
真帆路「……天城」
天城「なんだド?」
真帆路「次はこうはいかないぞ!」
そう言った真帆路の表情は、今までの凍りついたものではなく、かつての友の笑顔であった。
天城「それはこっちも同じだド!」
友との全力の戦い。その仕切り直しが始まると思われたときだ。
解説『おや、これはどうしたことだ? 幻影学園の選手が次々と倒れているぞ?』
スネ夫「……し、しまった! 幻影学園の選手に旨みはない辛いだけのラーメンを差し入れと称して食べさせておいたんだった。まさか、今頃になってラーメンの寄生虫が動き出すなんて……!」
真帆路「そんな差し入れがあったなんて聞いてないんだが……」
怒羅えもん「アイタタ……。そ、そんなののび太君に分けたくなかったに決まってるじゃないか。まあ、今回はそのおかげで命拾いしたみたいだけど…… お、お腹がぁ……」
真帆路「怒羅えもんも食べてたのか?!」
解説「幻影学園の選手が次々に倒れて、残ったのは骨川選手だけだ!」
スネ夫「あれ? のび太?」
真帆路「天城、今日だけは雷門の選手として戦わせてもらうぞ!」
天城「また真帆路と一緒にサッカーできて嬉しいド!」
スネ夫「えぇー?!」
天城「さあ、スネ夫をギッタギタにするド!」
真帆路「任せろ!」
スネ夫「う、うわぁー!」
……その試合は雷門学園の圧勝で終わったという。
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