最終話
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 命を削るほどの戦いを繰り広げた天馬と太陽。その勝敗は雷門の勝利という形で幕を閉じた。勝者と敗者に分かれながらも、その戦いの代償は平等に訪れる。そうして倒れこんだ者たちの元へ一人の男が訪れる。

 

『決闘、ホーリーロード!! ―立ちふさがる強敵! その名は聖堂山中!―』

 

太陽「僕達の…… 負けだよ、天…… ごはぁっ!」

 

 自分たちの負けを認め、それでも微笑む太陽。そして、限界を遙かに越えた肉体は人生の終了までも合図する。

 

 太陽は血を吐き、糸の切れた操り人形のようにグラウンドへ沈むのであった。

 

天馬「た、太陽ーーー!」

 

 天馬はすぐにライバルの元へと駆け寄ろうとするが、彼の体もまたとうに限界を越えていた。歩くことすらままならず、その場へと倒れこみそうになる。

 

 そんな天馬の体をそっと誰かが支える。

 

???「大丈夫か?」

 

天馬「……あ、あなたは……!」

 

 天馬を支えたのはサッカーを志すものなら当然の如く、雷門にとっては更に因縁深く焼き付いているその姿。天馬を支えたのはフィフスセクターの聖帝イシドシュウジだった。

 

聖帝は天馬を地面へ座らせると、そのまま倒れている太陽の元へと向かう。その背中は敵対するものが後ろにいるというのにまるで警戒がなく、殺ろうと思えば今の天馬でもできそうなほどだ。

 

 それはまるで敵意すらも受け入れようという気概すら感じられ、天馬の心を惑わす。

 

天馬「な、なんで…… あなたが……!」

 

 ゆえに出来たのは攻撃ではなく、ただ拙い疑問を口にすることだけ。聖帝はそれに答えることもなく、倒れた太陽の体を抱き上げ、スタジアム出口へ向かうのだった。

 

天馬「ま、待て……!」

 

 立ち去ろうとする聖帝へと天馬は手を伸ばすが、それは届くわけもない。ただ、どういうわけか聖帝は立ち止まり、振り向こともせずに言葉を漏らす。

 

聖帝「松風天馬……」

 

 静かに天馬の名を呼んだだけ。ただそれだけだというのに、その場の空気は鉛のように重く、身動き一つできないような圧迫感に襲われる。

 

天馬「…………っ!」

 

剣城「なんてプレッシャーだ……! 聖帝はこっちを見てすらいないっていうのに!」

 

神童「がはぁっ!」

 

剣城「あぁっ! 倒れているキャプテンが更にダメージを受けてしまった!」

 

三国「うぐっ! は、腹が痛いのに…… ト、トイレまで行けな…… がはぁ!」

 

白竜「まずいぞ! 三国先輩がトイレにいきたいのに金縛り状態になってしまったぞ! それはともかく次の試合のポジションゲットだ!」

 

信介「ぐふっ! と、いうか…… 君、誰? ごふっ!」

 

 その威圧感だけで雷門を制した聖帝は僅かに顔だけ振り向き、視線を天馬に向ける。そして……

 

聖帝「松風天馬、一つだけ言っておく……」

 

天馬「…………!」

 

聖帝「おっぱいにニ次元も三次元もない!」

 

天馬「なっ!」

 

剣城「って、何を言ってるんだ、この人は! 天馬、お前も何とか言って…… 天馬?」

 

 ツッコミを入れ、天馬にも同意を促す剣城だが、そこに佇む彼は呆然とした表情で大粒の涙を流していた。

 

天馬「……せ、性帝…… お、俺……! すみませんでした! 俺、間違ってました!」

 

剣城「って、なんで誤ってるんだ、お前は!」

 

天馬「俺…… 俺……! 太陽に勝って、おっぱいは3次元こそが至高だなんて奢って…… くっ! なんてことを……!」

 

剣城「いや、なんで感動してるんだよ、お前は! つーか、今までと言ってること何か違うのか?!」

 

白竜「流石は性帝だ……。何を言ってるのかよくわからないが、とにかく感動したぜ!」

 

信介「分からないのになんで感動してるのさ! そもそもこの人、誰?! ユニフォームも違うし!」

 

 言いたいことを言って聖帝は満足したのか、再び歩を進める。そんな彼の背中に天馬は最後の、心の奥底からの疑問をぶつける。

 

天馬「なんで…… なんで、あなたほどの人が管理サッカーなんかをするんですか?!」

 

剣城「天馬……」

 

 聖帝は今度は歩みを止めることなく、振り向くこともなく去ってゆく。ただ一つ、「知りたいのなら勝ち抜いてこい」とだけ残して。

 

 残された選手たちを尻目に鬼道は聖帝の姿を見据えながら呟く。

 

鬼道「次の試合、最後の敵は聖帝が監督を務めるチーム、聖堂山中……。これは奴からの宣戦布告といったところか」

 

吹雪「……あれ? 今の豪炎寺君じゃなかった? でも、なんで聖帝なんて。もしかして豪炎寺君も二重人格に目覚めたのかな? ちょっと待ってよ、それだとキャラ被って僕の出番がなくなるじゃないか!」

 

鬼道「吹雪、お前はいい加減に北海道へ帰れ……」

 

 最後の試合へ向けて全ては重苦しく進んでゆくのであった。

 

神童「……がはぁっ! い、いい加減に担架を…… がくっ!」

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『決闘、ホーリーロード!! ―止むことなき強襲! 最強の攻撃サッカー!―』

 

解説『ついに! ついに、ついにホーリーロードも最終決戦だ! 長い激闘を繰り広げ、ここにたどり着いたのはこの二チーム! まずは聖帝率いる最強の攻撃サッカーを体現する者、優勝候補・聖堂山中! 対するは波瀾万丈の試合を繰り広げてきたダークホース・雷門中だ!』

 

 ナレーションと共にニ校の選手たちは入場行進を行う。

 

 聖堂山の先頭に立つのはキャプテンの黒裂。堂々とした態度でチームを率いていた。

 

 雷門の先頭に立つのはキャプテンの神童。既に満身創痍といった様子で顔面は蒼白、左手には点滴をうち、剣城に肩を借りて何とかやってこれたといった状況だった。

 

天馬「神童先輩、無理しないでください! キャプテンならくじ引きで決まった俺がいるんですから!」

 

霧野「そうだぞ、神童。チームのことは忘れて、お前は入院するんだ。きちんと俺が面倒みてやるから!」

 

神童「だ、誰が入院するものか! お、俺は最後までグラウンドにがはっ!」

 

剣城「しっかりしてください、キャプテン! 今、ここで倒れたら色々と取り返しがつかないことになります!」

 

 戦う前から半死半生ながらも、試合への執念で神童はグラウンドに立っていた。その気迫たるや狂気に近いものを感じさせ、神童の試合にかける思いの強さを物語る。

 

 その気迫は後に続く選手たちにも受け継がれているのは如実だった。どの選手たちもまるで刃物のようなギラついた雰囲気を放ち続けていた。

 

雪村「いい加減、白恋に帰ってきてください、吹雪監督!」

 

吹雪「えー……。だってさあ、みんなはビジネスクラスなのに、僕だけ格安航空機の更に安いのなんだよ? せめてみんなと同じビジネスクラスかファーストクラスじゃないと嫌だよ」

 

雪村「あなた、勝手に雷門にいっちゃんだでしょうが! わざわざ帰りの旅費を出して貰えるだけでもありがたいと思ってくださいよ!」

 

吹雪「でも、僕がここでいなくなったら雷門の監督がいなくなるじゃないか!」

 

鬼道「雷門の監督は俺だ! ついでに俺がファーストクラスでも、チャーターでも、自家用ジェットでも出してやる。だから、とっとと白恋に帰れ!」

 

ムッ苦「やりましたぞ、狩屋君。餓チャピンの飛行機のチケットを隠そうとしたら逆に奪われてしまった私達もこれで白恋に帰れますぞ!」

 

狩屋「いや、俺は元から雷門だし」

 

ムッ苦「帰ったら、辛いだけで旨みのないラーメンなんかじゃなく、海の幸の旨みが詰まった札幌ラーメンを食べましょうぞ! チャーシューはあの緑芋虫野郎の肉ですぞ!」

 

狩屋「札幌ラーメンだけ送ってくれればいいから」

 

天城「ラーメンか……。よし、この試合が終わったら俺達もラーメンでも食べるド!」

 

古いのび太「やっと辛いだけで旨みのないラーメン以外の旨みのある濃厚なラーメンが食べられるのか。楽しみだな、天城」

 

新しいのび太「そ、そうですね……。ところで僕と真帆路さんの名前が古いのび太と新しいのび太になってるのはなんとかならないんですか?」

 

何とか沢「その程度がなんだっていうんだ! 俺など何とか沢だぞ! 俺は南沢だ! やっと東西南北の東西北がいなくなったのにこれはないだろうが!」

 

太陽「……あ、ごめん。ゲームやってて聞いてなかったよ。それで何? えーと…… 誰だっけ?」

 

南なんとか「南沢だ!」

 

太陽「ごほっ、ごほっ! はぁ、はぁ…… あ、ごめん。吐血してて聞いてなかったよ。それで何? えーと…… 東西北沢君だっけ?」

 

東西北沢「もう嫌だ、こんなサッカー部!」

 

錦「なんちゅーか、色々とツッコミたいところがあるが…… どこからツッコめばいいのか分からんぜよ……」

 

信介「えーと…… 日本語の分からない武蔵先輩が何をいいたいのかわからないけど、とりあえず僕はどこからツッコめばいいんだろう」

 

錦「いや、だから、それはわしがもう言ったぜよ?! ちゅーか、もういい加減にわしが日本語話してることに気づいたらどうなんじゃ?!」

 

信介「それにしても、もう無理がありすぎるよ! 他校の生徒とか普通に紛れてるし! うわぁー、剣城ってば、これを見越して神童キャプテンと一緒に先頭にいったんだな! モミアゲクルクルしてるくせに、なんでこういうことにはすぐに気がつくんだよ!」

 

三国「この程度でごふっ! 動揺してるようじゃがはっ! まだまだだな、信ぐふっ! そんなんじゃ、ゴー…… うっ!」

 

白滝「しっかりしてください、三国先輩! あなたがいなくなったら、誰がゴールを守るっていうんですか!」

 

三国「あぁ、そうだな。だが、いくらなんでも信介とお前で担架を担ぐのはやめてくれないか。すごく、頭に血が上るんだがはっ……。あと信介、お前、さりげなくずれ落ちた俺の頭を蹴って戻すのはやめてくれぐはぁっ!」

 

信介「あー…… もう、どこからツッコめばいいのかわからないよ」

 

 選手たちの入場が済み、ベンチへ戻ろうとする天馬を聖堂山のキャプテンである黒裂が呼び止める。

 

黒裂「君が松風天馬君だね」

 

天馬「そうだけど……」

 

剣城「天馬、相手は聖帝のチームだぞ。あまり関わるな」

 

 フィフスセクターの、それも聖帝の指導を受けたチームの選手から声をかけられ、警戒しないはずもない。それは剣城に言われるまでもなくだ。けれど黒裂はとても爽やかな笑みを返す。

 

黒裂「……東、前5列、7人目」

 

天馬「なっ!」

 

 黒裂の告げたのはとても端的な、それだけでは意味が通じないようなものだった。なのに天馬はそれを聞いただけで激しい動揺を見せる。

 

剣城「ど、どうした、天馬!」

 

黒裂「……西、前7列、3人目」

 

天馬「ま、まさか! ……なら、南、前13列……」

 

黒裂「9人目」

 

天馬「そ、そんな……!」

 

剣城「ど、どういうことだ、天馬! 一体、なんの話をしてるんだ?!」

 

天馬「剣城、気づかないの? 観客席をよく見渡しなよ! どれも可愛らしい女の子がいる場所だよ!」

 

剣城「……おい」

 

天馬「まさか、入場時の僅かな時間でここまで厳選したとはね」

 

黒裂「ふふっ……。そういう君も厳選してたんだろ? さすがは性帝が認めただけのことはある。君とはいい試合ができそうだ」

 

天馬「あぁ、こちらこそ!」

 

 黒裂と天馬はお互いを認め、固く握手を交わすのだった。

 

剣城「……くそ。残り一話で決着がつく気がしねぇ!」

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『決闘、ホーリーロード!! ―ホーリーロード決着! 新たなる風が吹いて……―』

 

黒裂「ラウンドスパーク!」

 

天馬「うわぁっ!」

 

 黒裂は天馬との一対一に持ち込んでも強靭な脚力とバランス感覚から生まれるドリブル技をもって、見事というしかないほどの力で抜き去る。

 

天馬「そ、そんな……。パンをくわえた女の子と偶然を装ってぶつかるイメージトレーニングをしてきた俺のブロックをこんな簡単に抜かれるなんて……!」

 

剣城「そんなもんが役に立つわけないだろうが! サッカーしろよ!」

 

黒裂「……ふふっ。確かに君のブロッキングは今まで戦ったどの選手よりも完璧なものだったよ」

 

剣城「って、完璧なのかよ!」

 

黒裂「だけど、君らから見て右側の観客席、8列6番目のそこそこに可愛い女の子のスカートが風で少し捲れそうになったとき、わずかに集中が乱れた」

 

天馬「……ま、まさか、そこまで見抜いて……!」

 

剣城「いや、つーか、お前らの視力はどうなってるんだよ! あとサッカーに集中しろ」

 

天馬「で、でも…… なんでパンツが見えるかも知れないのに平然としてられたんだ!」

 

黒裂「残念だけど、あの風の勢いでは捲れないのは分かっていたからね。なにより…… 僕としてはルックスが物足りなかったから興味を持てなかった! あとパンツよりおっぱい派だ」

 

天馬「そ、そんな……!」

 

剣城「だから、なんの試合をしてるんだよ、お前たちは!」

 

 天馬を打ち破った黒裂は他の選手達と共に一気に駆け上がる。今までにない圧倒的な威圧感が雷門へ押し寄せる。

 

解説『聖堂山、全選手が一丸となって雷門ゴールへと一気に攻め上がる!』

 

神童「なんとしても守ってくれ、狩屋! ムッ苦!」

 

 神童はすぐさまDF陣に声をかけ、守りを固める。聖堂山の圧倒的な攻撃を凌ぎきらねば、勝利は果てしなく遠のいてしまう。

 

狩屋「言われなくても!」

 

ムッ苦「ここは通しませんぞ!」

 

 狩屋のズバ抜けた運動神経とムッ苦のパワー。そして絶妙のコンビネーションで聖堂山の行く手を阻む。並の相手なら充分すぎるほどの鉄壁の守りだ。

 

狩屋「霧野先輩からのストーキングから逃れるために鍛えぬいた俺の運動神経。どんな動きにだって対応してやるぜ」

 

ムッ苦「餓チャピンを蹴落とすために鍛えぬいた私の反則奥義。どんなフェアプレイだって一発レッドにしてみせますぞ!」

 

 しかし、それを持ってしても聖堂山の、いや、黒崎の力を防ぐことはできない。

 

黒崎「悪いけど、君たちじゃ僕を止めることはできない。1秒もあればスタジアムから可愛い子だけを厳選出来る僕の洞察力、判断力を持ってすればね! バリスタショット!」

 

狩屋「この位置からシュートだと?! なめやがって!」

 

 黒裂はゴールまでまだ相当の距離があるというのにシュートを放つ。黒裂は自信があってのことだろうが、雷門からすれば見くびられていることに他ならない。

 

狩屋「ハンターズネット!」

 

 怒りと共に狩屋はハンターズネットでシュートを止めに入る。だが、シュートはいとも容易く狩屋を打ち破ってしまう。

 

ムッ苦「狩屋君!」

 

狩屋「ぐわぁ! ……ム、ムッ苦! ボールを!」

 

ムッ苦「ボール?」

 

 ボールはゴールを大きく外れた方向へ飛んでいた。シュートは止められなかったものの軌道をずらすことだけはやってのけたのだ。

 

ムッ苦「わかりましたぞ! あのこぼれ球は……!」

 

 だが、ムッ苦が動くよりも早く、そのこぼれ球をキープする選手がいた。

 

解説『なんと! まるで狙いすましたように天瀬選手がこぼれ球を奪ったぁー!』

 

剣城「まるで……じゃない! あいつら、全て見越してやがったんだ! 観客席から可愛い子だけを選別するとかろくでもない使い方をしていたが、その洞察力、観察力、視力、全てをサッカーに転じたらこんなにも恐ろしいことになるのかよ!」

 

解説『天瀬選手、パスを繋いで再びボールは黒裂選手へ渡ったー! ついにキーパーと一対一になったぞ! 雷門ゴールを守るのは三国…… は頭を打ちすぎてドクターストップになったため、サブのゴールキーパーの白滝選手だ! その実力は一体、どれほどのものか未知数だぞ!』

 

 ゴールを守る白滝は余裕のあらわれか腕組みをしてゴール前で仁王立ちをしていた。

 

白滝「ふっ…… 三国先輩の究極のサブであるこの俺からゴールを奪えると思っているのか? いいだろう、特別に相手をしてやる。そして思い知るがいい! 己の無力さを! 不甲斐なさを! 未熟さを! あと――」

 

黒裂「バリスタショット!」

 

 黒裂のバリスタショットは口上を続ける白滝の真横をあっさりと通りぬけ、ゴールネットを揺らす。

 

解説『ゴォーーール! 聖堂山、一点をもぎ取ったぁー!』

 

 ゴールを奪われながらも、白滝は余裕の表情も腕組みも崩すことなく、不敵な笑みを浮かべる。

 

白滝「……ふっ。こんなシュート、取る価値もねぇ!」

 

信介「なに、やってるのさ! 格好つけてるけど、君の仕事やってないだけだから! あー、もう! せっかく三国先輩を倒したのに、もっとたち悪いのがやってきたよ!」

 

 そんな激しい試合展開を見ていた男は小さくため息をついて、ディスプレイに背を向けた。

 

千宮路「くだらん……。こんな試合、いつまでも続ける必要はない」

 

 雷門と聖堂山の熱戦を見ていたにも関わらず千宮路は心ない言葉を吐き捨てる。そのあまりの暴言に虎丸が詰め寄ろうとするが、先に豪炎寺に片手で制される。

 

豪炎寺「どうなさるつもりですか?」

 

千宮路「後半はドラゴンリンクを出す」

 

虎丸「選手全員を取り替えるつもりですか?! そんなのいくらなんでも無茶苦茶です!」

 

千宮路「無茶でもなんでも、これ以上、こんな試合を全国に流せると思うか?! パンツだおっぱいだの言ったり、フェアプレイを一発レッドにするとか言ったり、悪影響しか見当たらないだろうが!」

 

虎丸「いや、確かにそうかも知れませんが! でも、試合内容だけをみれば、とても自由で素晴らしい戦いじゃないですか!」

 

豪炎寺「やめるんだ」

 

虎丸「ご、豪炎寺さん……」

 

 反論をまくしたてる虎丸を豪炎寺は再び制する。それを自らに従うと受け取った千宮路は小さな笑みを返す。

 

千宮路「そうだ、それで――」

 

豪炎寺「ファイアトルネード!」

 

千宮路「ぐぼあぁっ!」

 

 豪炎寺は言葉の代わりにボールで答えを返したのだった。

 

千宮路「な、何をするんだ?!」

 

虎丸「豪炎寺さん、本当に何をやってるんですか?! 人のことは止めておいて!」

 

豪炎寺「あなたは彼らのサッカーを見て何も感じないんですか?! 少なくともこれを見た少年たちは管理サッカーでは得られなかったドキドキやムラムラ、ワクワクを感じたはずだ!」

 

虎丸「いや、ムラムラは関係ないと思いますが……」

 

 ファイアトルネードを受けて吹き飛ばされた千宮路は怒りを内に秘めて起き上がる。

 

千宮路「どうやら君は彼らを管理することを心の内では好ましく思ってなかったようだ。でも、君こそこの試合を…… いや雷門の今までの試合を見て何も思わないのか?! パンツだ、おっぱいだと連呼したり、危険なラーメンを知らず知らず食べて寄生虫に苦しめられたり、ゲームと現実の区別が付いてないような言動をしたり!」

 

虎丸「……くっ、言い返せない!」

 

千宮路「彼らは未熟なんだ! だからこそ管理せねばならない! 誤った道に進まないように! 楽しさも、辛さも、面白さも、苦しさも、全て私達が管理して、真に平等にサッカーが出来るようにすべきなんだ!」

 

豪炎寺「ファイアトルネード!」

 

千宮路「うべはぁ! な、なにを……!」

 

豪炎寺「確かに彼らは未熟だ。だからこそ、過ちを犯してしまう可能性もある。そう、かつてのあなたのように下着泥棒をしてサッカーをできなくなってしまうように!」

 

千宮路「いや、違う! 私が盗んだのはサッカーボールであって、決して下着などではない!」

 

豪炎寺「ファイアトルネード!」

 

千宮路「おぶあぁ!」

 

豪炎寺「言い訳など不要! ともかく、俺も彼らの未熟さを知るからこそ、管理サッカーを認めてもいた。この試合、雷門が負けたなら管理サッカーの指導者として生涯を尽くしてゆくつもりだった。だが、管理する側が未熟である以上、管理サッカーを認めるわけにはいかない!」

 

千宮路「管理する側が未熟か……。確かにそれはあるでしょう。でも、それでも未熟な青少年を健全に育てるには管理するしかないだろう!」

 

豪炎寺「違う! 未熟な彼らを、未熟な我々が管理するなどおこがましい! 我々がするべきことは千宮路のような下着ドロなどをしないように彼らを導き、我々が道を踏み外しそうになったなら彼らに教えられる。それこそが正しい道じゃないんですか?!」

 

虎丸「彼らを導き、彼らに教えられる……」

 

千宮路「……そんな簡単なものじゃないでしょう。それだけの指導が出来る大人がどれだけいるというのです。それだけの指導を受け入れる子供がどれだけいるのです! 未熟なものはやはり管理するしかないんだ! ドラゴンリンクを呼べ! 自由なサッカーなんてものを打ち砕いてしまえ!」

 

 千宮路は携帯電話でドラゴンリンクを呼ぶ。だが、なんの反応も返ってこなかった。

 

千宮路「おい…… どうした?! どうしたっていうんだ!」

 

大和「お……やじ……」

 

 そこに現れたのはどういうわけかボロボロになった千宮路大和だった。

 

千宮路「なっ! ど、どうしたんだ、その姿は!」

 

大和「すま……ねぇ……。ドラゴ……ンクは、や……られ……」

 

 途切れ途切れの言葉から発されるのはドラゴンリンクが何者かにやられたということ。フィフスセクター最強のチームをここまで追い詰めるなど、いるはずなどないのに。

 

千宮路「だ、誰にやられたというんだ?!」

 

大和「ゴ…… ゴッドエデンの…… エン……シャン……」

 

???「ロケット!」

 

???「ヘッド!」

 

 チームの名を告げるよりも早く、何者かが壁を打ち破って、カリカリに揚がった頭で頭突きをかまし、大和にとどめを刺す。

 

大和「ぐはぁっ!」

 

千宮路「大和ぉー!」

 

???「ちょっと、二人ともやりすぎだよ」

 

 さほど悪びれた様子もなく、そんなことを言って部屋に入ってきたのは黒髪の少年だった。

 

千宮路「お、お前は……!」

 

豪炎寺「シュウ……。なぜ、ここに」

 

 ドラゴンリンクを打ち破ったとおぼしきチームの少年、シュウは穏やかな笑みを浮かべながらディスプレイに目を向ける。ごたごたをやっているうちに試合は後半戦が開始しており、激しい攻防が続いていた。

 

天馬「いくぞ、剣城!」

 

剣城「おう!」

 

天馬・剣城「ファイアトルネードDD!」

 

解説『な、な、なんと! 松風選手、剣城選手、二人で幻の必殺技ファイアトルネードDDを決めたぁー! そして、ゴォーーーーール! 雷門、後半早々に同点に持ち込んだ! この試合、まだどうなるかわからないぞ!』

 

シュウ「やっぱり、彼らのいう自由なサッカーっていうのと戦ってみたいと思って。そこに変な横槍なんて無粋じゃないですか」

 

 ドラゴンリンクは打ち破られ、千宮路には何も残るものはなかった。あとは管理サッカーが勝利することを祈ることだけ。

 

千宮路「……私の…… 負けだというのか?」

 

豪炎寺「負けかどうかはわかりませんよ。まだ勝負はついてませんからね」

 

 豪炎寺もまたディスプレイに映る試合の様子を見守る。

 

豪炎寺「全てを失った今なら、あなたにも見えるはずだ。ただひたすらにサッカーを楽しむ、それが全てだったあなたのサッカーを」

 

 千宮路は試合の様子を見守る。激しい攻防、その中に映る思いと思いのぶつかり合い。そこにかつての自分の姿が重なる。

 

千宮路「あぁ…… サッカーは、こんなにも楽しいもの……だったんだな」

 

 試合は引き分けのまま、ロスタイムに突入する。そして、そこで最後のシュートがゴールネットを揺らした。

 

 千宮路は決着を知ることなく、静かに眠りについていた。とても満足気な表情で。

 

解説『ゴォーーーーーーーーーーーーール!!!!!!!! そして、ここでホイッスル! ついに、ついに、ついに! ホーリーロード優勝校が決定だーーーーーーー!!!!!』

 

 そして、少年サッカー界に新たな風が吹く……。

 

おしまい

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円堂「あれが……ゴッドエデン……」

 

 荒れ狂う海辺で円堂は一人、彼方で異様な存在感を放ち続ける人工島を見据える。空は厚い雲に覆われ、島への侵入を拒むように強風が吹きすさぶ。

 

 

 

――ホーリーロードを制して自由なサッカーを取り戻した少年サッカー界に巻き起こる謎の事件!

 

神童「ホーリーロード決勝に出場したチームが襲われている?!」

 

鬼道「そうだ。帝国学園も俺が離れている間に襲われたそうだ……」

 

吹雪「何やってるのさ、鬼道君。いつまでもこんなところで油売ってるからこんなことになるんだよ! さっさと帰りなよ!」

 

神童「こんなところってあんまりじゃないですか!」

 

鬼道「ちなみに白恋も襲われてるぞ」

 

吹雪「何やってるのさ、鬼道君。いつまでもこんなところで油売ってるからこんなことになるんだよ! 僕がいないんだから白恋をきちんと守ってよ!」

 

鬼道「お前が帰ればいいだけだろうが、このニート!」

 

吹雪「誰がニートだ、てめぇ!」

 

神童「くっ…… 円堂監督。いつになったら帰ってくるんですか!」

 

 

 

――監督不在で揺れる雷門に襲いかかる究極の敵!

 

白竜「ドナルド、パスだ!」

 

ドナルド「ヘブンズタイム!」

 

 ドナルドは指を鳴らすとデフェンスに回った雷門の選手達の時間が止まる。そのまま、その間を悠々と歩いてゆき、ユニフォームを奪ってゆく。通り過ぎたところで再び指を鳴らす。すると時間は再び動きだし、雷門の選手は裸のまま、吹き飛ばされる。

 

QB「ディメンションカット!」

 

 雷門がボールを奪ってもQBのディメンションカットであっさりと奪い返される。まるで歯が立たなかった。

 

白竜「QB、パスだ!」

 

 ドナルドとQBはたった二人で雷門イレブンを圧倒し、格の違いを見せつけて攻め上がる。そして、ボールはなぜか攻め上がっていたゴールキーパーへと渡る。

 

白竜「思い知るがいい。これが究極の力……! 聖獣シャイニングドラゴン!」

 

 シュート体勢に入った白竜へ雷門イレブンは持てる限り全ての化身、必殺技を持って迎え撃つ。だが……

 

白竜「ホワイトブレス!」

 

天馬「うわあぁぁぁ!」

 

神童「ぐあわぁぁぁ!」

 

三国「ぐごがべあべゃぁーーー!!」

 

 白竜のシュートは雷門イレブンを蹴散らしてゴールに突き刺さるのだった。

 

白竜「これが究極のチーム…… アンリミテッド・アダルトの力だ!」

 

 

 

――ゴッドエデンで待ち受ける究極の混成チームZ-ERO!

 

白竜「俺達、アンリミテッド・アダルト。そして……」

 

シュウ「僕達のエンシャント・ヤング。この二つの混成チーム……」

 

白竜「それが究極のチーム! Z-ERO!!」

 

神童「ア、アンリミテッド・アダルトの更に上だと……!」

 

剣城「究極の混成チーム……」

 

天馬「チーム…… エロ……!」

 

信介「エロじゃないよ、天馬! ゼロだよ! 一文字足りてないよ! 一文字違いでとんでもなく残念な名前になっちゃったよ!」

 

 

 

――仲間との、ライバルとの絆が新たなチームを生み出す!

 

南沢「あいつらには借りがあるからな」

 

雪村「この戦いは君たちだけのものじゃないってことさ」

 

ヤムチャ「ぶちのめしてやるぜ」

 

真帆路「嫌でも加わらせてもらうぞ」

 

太陽「さあ、いこう!」

 

黒裂「今日の入場待ちの行列を見た限り、可愛い女の子は七人はいたよ」

 

天馬「よし、みんなで力を合わせていこう!」

 

信介「こんなにたくさん力になってくれるのに、なんでゴールキーパーが一人もいないのさ……」

 

 

 

――絆の雷門VS究極の混成チーム! 果たして勝者は?!

 

   次週、公開の予定なし!!!!!!!

説明
イナズマイレブンGO 二次創作。作者HPより転載
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イナズマイレブンGO

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