真恋姫無双幻夢伝 第三章3話『三羽烏、登場!』 |
真 恋姫無双 幻夢伝 第三章 3話 『三羽烏、登場!』
白雲が浮かぶ初夏の空は、汝南の人々の心を良く映し出している。歯切れ良い客寄せの声と、それに応える買い手の声が、まだ朝早いというのに市場の空気を支配する。
燃える前の洛陽と比べるとまだまだ大きな店は少ない。それでも小さな店や露天商たちが生み出す活気は、これからも伸び続ける成長を感じさせた。
これが独立後の汝南の中心部の姿だ。
その市場の中のある店から男女一組が出てきた。大きな男がその耳を一回り小さい女性に引っ張られてくる姿は、いささか滑稽ではあった…
「痛って!!痛いって、華雄!」
「まったく!こんな所にいるんじゃない!」
娼館で気持ち良く遊女と寝ていたアキラを、眉間に皺を寄せた華雄が強引に引き取ってきたところだった。必死に耳を掴む手を放そうとするも、華雄の気迫に負けていた。
「一国の主がこんな所にいるんじゃない!大体、職務があるだろう?!」
「昨日のうちに粗方終わらせてあるから、今日はのんびりで良いんだよ!」
「そ・れ・で・も・だ!体面とかしっかり考えろ!」
「俺の勝手だろう!大体お前は、今日から西部の巡察だろ?まだここにいていいのか?」
「………あ」
「おい」
やっと放してもらった耳を撫でながら、アキラはじっと華雄を睨んだ。が、彼女はしらーん顔をして、代わりに輝く朝日を見て目を細めた。
ところで“商人”という言葉の語源はご存じだろうか?
この言葉を分解すると“商”の“人”となる。そう、その言葉通り、これは商という国の人を本来示していた。太古の時代、諸国の盟主として君臨した商は、太公望らが率いる周に滅ぼされた。領土を失った彼らは、国と国とを行き来して余剰物資を売り買いすることを生業とした。これが“商人”の始まりである。
ヨーロッパではユダヤ人がその役割を果たしたそうだ。国を失った民がこの役割を担うらしい。
この汝南の民も一度国を失っている。敗戦後は袁家に厳重に管理され、李民の軍勢に関わった者は追われた。李民ことアキラは他国に逃れた民をかき集め、商人の集団として活用、巨額な財をなした。この商人ネットワークは独立に大いに役立ち、この地方では珍しい騎馬も集めることが出来た。
そしてこの商人軍団は今も当然健全であり、汝南を支えている。この汝南の市場はこの国でもっとも情報が集まる場所となっているのだ。
その市場の中央の道を本城に向かって歩く二人。髪を後ろで束ねた細身の大男と鋭い目つきの薄紫の髪色の女。この汝南を独立に導いた二人の特徴を知らない者は、この市場にほとんどいない。
しかし田舎から出てきた商人は別だ。二人に対して呼びかける声があった。
「なあなあ!そこのおふたりさん、ええもんがあるで!」
うっかり二人が足を止めると、チャンスとばかりに工具を腰にぶら下げた少女が怪しい品を持って近寄ってきた。
「仲睦まじいお二人にぴったりのものがあるんや」
「なっ!違「あ、やっぱりそう見える?」
アキラがおちゃらけた様子で華雄の肩を抱こうとした。しかし顔を赤くした彼女にその抱こうとした手をつねられた。再び涙目になる彼だった。
「あら?喧嘩中かいな?…まあ、そんな2人でもこれさえ使えば一発仲直りやで!」
そう言った少女はカチッと商品のボタンを上に動かすと、その小ぶりなものが小刻みに動き出した。
「なんだこれは?」
「ふっふっふ、これはウチが開発した自信作!名付けるなら『夜のお供』!!どや?夜のお仕事がはかどるでえ〜」
「な、なっ!?!」
公衆の面前でこんなことを言われる気持ちにもなって欲しい。華雄は熟れたトマトのような顔色でその少女から後ろに一歩遠ざかる。
そんな華雄の珍しい様子に対して笑い声が零れるアキラにもう一人、三つ編みの少女が近寄ってきた。
「怒った奥様にはきれいなお洋服のプレゼントが一番なの!素敵な生地はどう!?」
笑顔で話しかけてきた少女の手から反物が差し出された。上質とは言えないが、肌触りは良さそうだ。
「ほう、良い品物だ「いっ…」
その反物に気を取られていたアキラが顔を向けると、お隣は珍しい羞恥の顔色では無くて見慣れた憤怒の顔色に変わっていた。アキラはこの後の展開の予想がついて、(しまった、やりすぎた)と後悔した。
「い、い、いいかげんにしろーー!!!」
突風にあおられたように、華雄の周りの三人がのけぞった。市場にいる人々も自分の持ち物で防御するような姿勢をとる。
と、その声に反応してもう一人走り寄ってくる少女がいた。
「真桜!沙和!一体何事だ!」
「いやあ〜、ちょっとな」
「お客さんが怒っちゃったの」
全身に傷がついている彼女はアキラ達の方を見た。その瞬間、電気が走ったようにビクッと体が反応し、とっさに二人の頭を押さえつけて謝った。
「も、申し訳ございません。二人が無礼なことを」
「な、なんや?!」
「なんなの、凪ちゃん?!」
「バカ!ご領主様の李靖様とその部下の華雄様だ!」
驚いた二人が顔を上げる。視線の先では、アキラは照れ臭そうに頭を掻き、華雄は腕を組みながらぴくぴくとこめかみを震わせていた。
二人とも状況を理解した。
「ご、ごめんなさいなの!」
「堪忍して!領主さんとはホンマに知らんかったんや!」
慌てて謝る様子にアキラは思わず苦笑する。
「いや、別に構わない。商人として商品を売り込むのは当たり前だ」
「…ありがとうございます。この二人にはよくよく言って聞かせますので」
三人は急いでその場を離れようと後方に舵を切り、走ろうとした。
しかし、それを未だ怒り冷めやらぬ様子の華雄が引き止めた。
「待て!」
「まだなにか?」
「私と勝負しろ」
あれ?どっかで聞いたセリフだな、と思いながらアキラは華雄を止めようとした。
「おい、華雄!」
「お前も分かるだろう。こいつらは商人というよりも武将といった出で立ちだ。特に、その傷だらけの女は“気”が使えるな?」
「…好きで傷を付けたわけではありません」
ムッとした彼女に対して華雄は不敵に笑う。
「ふっ、それはすまない。どれ、私を驚かせるほどの武力を見せたら、この軍の将として取り立ててやろう」
「いいでしょう。それと一つ、李靖様に聞きたいことがあります。それに答えて頂けるなら勝負に応じます」
「構わん。付いてこい」
先ほどの怒りがどこかに消えて嬉しげな華雄と、その後を憮然とついて行く少女。それをポカンと三人は見つめていた。
「……あれ?おかしいな?取り立ててやるってさ、俺が言うべきことじゃん。俺、大将だよな??」
「お気の毒様なの」
「そういう日もあるで」
二人に慰められてガクッと肩を落とす。なんとか自分の中で折り合いをつけようとした。
「ま、まあ、優秀な部下が増えるってことは良いことだよな」
「そやで、大将!」
「頑張ります、なの!」
けらけら、にこにこと笑う二人をジトッと見るアキラ。諦めたようにこう言った。
「…ところで名前は?」
「ウチが李典でこっちが于禁」
「そんでもってあっちが楽進」
「「これからよろしくお願いしまーす!!」」
「……あっそ」
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