超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 リーンボックス編 |
今日の目覚めは最高だった。
よくよく考えれば、野宿が基本的だった気がする。
血だからけで、痛みで意識が覚醒するのが、普通だった気がする。
ケイブ先輩の部屋で居させてもらった時も、ずっと悩んでまともに熟睡できなかった気がする。
それが要約、柔らかいベットの上で、窓から入ってくる優しい陽光で意識が覚醒できる。何気なく繰り返してきたが、これほど嬉しく思ったことは無い。
気分がとにかくいい俺は、体を起こそうと力を入れてーー………
「動けん」
前のようにネプテューヌが伸し掛かってわけじゃない。首を上げてベットの上を確認しても誰もいない。
腕がすごく重く感じられる。まるで誰かが抱き締めている様にがっちりと捕まえられている。
「……ぅ……ん」
「すぅ……すぅ……」
右に顔を向ける気持ちよさそうな顔で寝ているネプテューヌが、左に顔を向ける穏やかな顔で寝ているコンパ、その両方がまるで俺の腕を抱き枕でも勘違いしているだろうか、とにかく抱き締めていた。それもかなり力強く。そのおかげで体を起こすことが出来ない。
更に、鼻孔が反応する甘い香りと、腕を刺激する柔らかい感触に動揺が走る。
『僕と契約して、おっぱい紳士にならないかい?』
邪教への加入を誘ってくる精神を逆撫でするような小悪魔の誘惑をスルーしつつ、俺はこの状況をどうするか必死で考える。
二人とも気持ちよさそうに寝ているのを下手に刺激して起こすのは気が引ける。
ネプテューヌは引っ掛かる物がないので手で抜かすことは可能だが、ベールほどではないが大きい胸の持ち主であるコンパの場合だと少し動かしただけで、コンパが寝返りをうって今にでも起きてしまいそうだ。
「……俺に、どうしろと?」
『襲いちゃないなYO!』
「うん、お前とはやっぱり話し合わないといけないようだーーー主に拳で」
デペアは、俺に犯罪者になれといのか!いや既に国内指名手配されるほどの重罪人だけどさ!もう死んだことにされているけどさ!道徳的に超えちゃいけない一線というものがあるだろう!?
『這い寄る混沌は言ったーーーばれなきゃ犯罪じゃないんですよ』
「警察はどこですかー!」
ダメだコイツ!頭に蛆虫でも沸いて、それが木の根のように浸食されている!
「ぅうん……うるさいよぉ」
「ふぁ……んん………おはよう…ございます…ふぁ」
二人とも目を擦りながら起きてくれた。
手にかかっていた圧力が要約解放されて、内心ため息を吐いて起き上がる。
「か、顔を洗ってくるーー!!」
そして俺は火照った顔を冷ますためネプテューヌ達に背を向けて急いで外に逃げた。
ネプテューヌ達の服装は、ここの屋敷にあった物を借りた寝間着がネグリジェで似合っているのだが、胸元が見えたり肩が露出したり、際疾いので目を逸らさずにはいられなかった。
『ヘタレ』
「うるさい!」
◇
「コンべルサシオンさんの案内?」
「えぇ、今日強いモンスターと言われるダンジョンに案内してもらう予定なの」
俺達は朝食を済ませて、ネプテューヌ達とこれからについての話をしていた。
先ほどのことは頭を振るって忘れるようにして、アイエフから今日の予定を聞いた。
「さん…って、紅夜は会ったことあるの?」
「まだ追われる前にイヴォワール教院長からの紹介で会ったんだ。確か…ルウィーの宣教師だったよな」
四大陸中、最も寒い大陸として有名なルウィーらしい厚着の祭服だった。俺より少し年上の20前半くらいの女性だった。
「私達を匿っていくれた貴族たちには恩を返したいけど、とりあえず私たちは鍵の欠片を集めることに集中するわ。貴族長からは、モンスター討伐しか請け負わない契約だしね」
「なるほど……ところで、お前らはどうしてコンベルサシオンと会ったんだ?」
俺が教会に襲撃して、お前らを逃がして山に逃げ込んだぐらいまでは覚えているんだが、目覚めてネプテューヌの気配を追って魔女と戦ったからな。
手持ちに携帯があればいいのだが、二度も蜂の巣にされたからな流石にコートのポケットに入れていた携帯は電子回路がむき出してバラバラ事件になっている。買い替え直すしかないな。
「実は私達、教会側に毒殺の件について謝罪するために一度教会のパーティーに招待されたのよ。女神から直接」
それは危険すぎないか?と思ったが女神から……グリーンハートから?
「……グリーンハートとは会ったか?」
「心ここに有らず……って感じだったわ」
肩に重りでも押し付けられた気分になって、顔と肩が下がった。
俺の所為だ。もう少し、あいつにもっとうまく伝えれる言葉があれば、もっと力があればもっと別の選択が選べたのに!
「クソッ……」
過去は変えることが出来ないことは分かっているんだが、本当に変えれるものなら変えたい!
どうして俺は、ベールにもっと伝えれたはずなのに出来たかったんだ!
「こぅちゃん……」
「お前は気にするな。でも、俺は同行することが難しいなぁ……」
横に座っているネプテューヌの罪悪感が混ざった声を打ち消すように乱暴に頭を撫でながら、俺は窓から見える街へと視線を送る。
「こぅさんが、外に出たらまずいですか?」
「俺は死んだことにされているし、生きていても重罪人だしな……お前らと一緒にいたらかなりマズイ。アイエフ、指定されたダンジョンって人気の少ない場所か?もしくは森の中」
「集合が比較的安全な場所で、その近くのダンジョンを見たけど森の中よ。紅夜は隠れながら私達についてくるってこと?」
「一応そういう流れになるな。コンベルサシオンは他国の人とはいえ、リーンボックスの教会にいるんだ。何があるか分からないからな」
「分かった。コンパとネプ子もそれでいいわよね?」
アイエフの言葉にネプテューヌとコンパは頷いた。
正直な所、自分が所属していたといってもいい組織をこんなに怪しく思ってしまうなんて、笑いたくなった。
◇
時刻はお昼頃、リーンボックスの街から離れた俺は太い木の枝の上でしゃがんでいた。
視線の先には、コンベルサシオンさんを先頭にネプテューヌ達が開けた道を歩いている。
『まるでストーカーだね僕達』
「………言うな」
ため息を吐いた。
確かに女性四人の背中を追いかける今の状況はデペアの言うとおり、ストーカーだ。
だけど、これはとても必要なことだ。彼女達にもしものことがあれば、そこにいなかった自分を無力さと行動力を怨むことになる。そうならないためにここにいるのに、なんでそんなことを言うのかなこの変態ドラゴン。真面目に考えていることがバカらしくなってくる。
『楽しければ、なんだっていいじゃん!』
「はぁ……」
音を鳴らないように慎重に木の枝から木の枝の間を足場にして移動する。
一応、リーンボックスの住民でモンスターハンターとして大陸中を駆け巡った俺にとってここら辺は庭の様な物だ。故にここら辺のダンジョンの場所も掴めており、コンベルサシオンが行こうとしているダンジョンの場所も予測だが把握できる。しかし、ここから時間は少し時間があるので、デペアの宝玉が浮き出ている左手に視線を送る。
「正直に答えてくれるか」
『君が意識を失った時の話?』
デペアの言葉に頷く。あの時、俺は心の底から力を渇望して、?まれた。
暗黒に意識を溶かされ、感覚は奪われ、記憶は忘却な彼方だ。
『……僕も曖昧なんだよね。正直な所』
「そうなのか?」
『魔龍を円滑に動かすために僕も感情を限定的にだけど、排除されて操り人形となっていたからね』
「………そうか」
胸を触る。((死界魔境法|ネクロノミコン・ディザスター))の全貌は分からないままだ。
けど、今回のことではっきりと危険なものだということは分かった。
これを上手く使うなんてことは、今の俺には無理だと叩きつけられた。けどこれは確実に過去の俺は、使いこなしている。今の俺と、過去の俺とは一体何が違うだろう。
『そういえば君にプレゼントがあるよ』
「……プレゼント?」
『今の君なら、使えるだろう二つの魔銃だよ。顕現させるだけで魔力を消費するだろうから、詳細は後になるけど』
「それは、誰が?」
『きっとキャプテンだよ。((死界魔境法|ネクロノミコン・ディザスター))を封印したのは、キャプテンか破壊神にしかできないこと、そして目覚めて気づいたんだけど一つだけ制限があるけど使用可能な術式があるからね。……精神を修復しながら君を見ているんだと思うよ』
脳裏に浮かんだのは、頭を撫でた兄の様な温かみをした手だった。
「……俺にその魔銃は使えるのか?」
『んー………一割の出力ならギリギリ大丈夫。使い方は体が覚えているから心配しなくてもいいよ。非殺傷モードもあるから、人間を相手にするときも便利だね』
「そうか……」
本当に俺のオリジナルは凄いんだと感じてしまう。
今の俺は地を這う獣で、あっちは天に翔ける鳥ぐらい差があるだろうな。
『……君とキャプテンは違う。目指してもいいけど、君はキャプテンになれないよ。キャプテンの経験は君にはないからね。………っと話は終わりみたいだよ』
静かに木の枝に足を止め、目を鋭くして前を見つめる。
ネプテューヌ達は、土の壁にぽっかりと空いたダンジョンの出口の前で何かを話している。
そのダンジョンは、俺の記憶上確かに強いモンスターが生息していた記憶がある。しかし、今のネプテューヌ達ではそれほど苦戦するレベルではないはずだ。
とにかく、あの場所が目的地だということは分かった。後はコンベルサシオンさんがこの場からいなくなるまでここで待機するだけだ。
『紅夜!!あいつの手を見て!』
「!?」
デペアには何か見えたんだろう。良く見るとそこには、コンベルサシオンさんの手にはボタンのようなものが握られていた。
一気に背筋が凍る。足に力を込めて、コンベルサシオン目掛けてジャンプするが圧倒的に間に合わない。
『((死界魔境法|ネクロノミコン・ディザスター))起動。術式凍結!』
「−−−顕現せよ。極地から来る氷塵。絶対零度の疾風が世界を廻る!!」
本能のまま、頭に浮かんだ言霊が唱える。
どこからか紙ページが出現して、左手に集中する。それは螺旋を描く様に高速回転をして、手にナイフで突き刺されるような鋭い痛みが走る。紙ページが形を造り、それは氷を掴んでいるような冷たさがあった。しかし、その荒々しい紙ページの動きは炎を連想させる。底の見えない邪悪な力は、世界を浸食して、この場に創造される。
「アフーム=ザー!!!」
完成された餓えた獣様な凶暴で圧倒的な存在感を放つ、蒼白い回転式拳銃リボルバーを握りしめる。
心強い重量感を感じながら、銃口をコンベルサシオンに向ける。人差し指で力強く握りしめると同時に、腕に衝撃が響き、閃光が走った。
放たれた魔弾は、意志がある様に木の枝を電光石火の如く駆け巡り、コンベルサシオンの手握りしめたスイッチに直撃して、スイッチが一瞬にして氷の塊と化して地面に落ちた。
「おや……いたのですか、紅夜さん」
「……何をしようとしたのですか、コンベルサシオンさん」
茂みから飛び出て、氷魔銃『アフーム=ザー』の銃口をコンベルサシオンさんに向けて俺は睨んだ。
コンベルサシオンさんは、俺と対象にニッコリを微笑んだ。
「あなたも、アイエフさんも役に立たないのでこの手で生き埋めにしようとしましたが、失敗ですね。残念です」
「……そんなにネプテューヌを殺したいか」
「えぇ、他国の女神を潰せば大陸の守護の力は無くなり、直ぐに自滅します。これはプラネテューヌ以外の発展に繋がりますから、安い物ですよ?」
「命を安いなんてことを言っている時点で、俺はお前らを絶対に信用しない」
「女神を裏切った貴方に信用されていることに驚愕ですよ。では、私の仕事は終わりました」
そう言い残し、コンベルサシオンさんは崩れるように倒れた。
一瞬、呆気に倒れたがトラップに注意しながら氷魔銃『アフーム=ザー』の銃口で頬を押し付けるが無反応。
良く見れば、彼女は呼吸をしていない。手首をつかんで脈を量ろうと試みる、動いていない。この人は死んでいる。
『……こいつ、毒物による自殺に見えなかった』
「だとすれば、最初から死んでいたのか?」
『死者を生きているように見せかけて、操作する技術がこの世界にある?』
「少なくても俺は知らない」
プラネテューヌが一番科学力が進んでいるが、死者蘇生すら聞いたことない。
同時に科学的に負けているリーンボックスやラステイションは排除される。ルウィーの魔法でも人を蘇生させるような魔法は、聞いたことがない。
「見つけましたわ」
「−−−−!」
突然、耳元で知った声が放たれた。
思わずのことに前に飛んで、地面に着地すると同時に振り向いて彼女を見た。
エメラルドのような綺麗な緑のボニーテールを、白と緑が強調されているプロセッサユニットを、その微笑が似合うお姫様のような容姿を
「……ベール」
「帰りましょう。紅夜」
その時、俺は初めて女神に恐怖という感情を抱いたのかもしれない。
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その25 | ||
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ユウザ(R)「死者を動かす、『この世界には』を組み合わせれば、邪神絡みか…人形、替え玉の人造人間による操作か…かな?」デバッカ「そもそも邪神が介入すると思う根拠は?」ユR「邪神の目的は『種子』を芽吹かせること。仲間の死による絶望を引き金に…やっぱどーだろ…」デ「どっちだよ。」(ヒノ) 衝撃のラスト(駆蘭) |
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