運・恋姫†無双 第十九話 |
周泰は、賊の仲間になった、とは思っていなかった。
自然に同じような類の人間が集まってきただけである。
その中で一番腕が立つのが自分だったというだけで、だから他の連中も従っているようなものだ。
秀でた指揮能力を持っているという訳ではなく、成行きでそうなっただけで、命令などしたことは無い。
自分が襲い掛かれば他の奴らも襲い掛かるし、退けばそれに倣って退く。
集団という感覚ではなく、皆が勝手について来る、という感覚だった。
周泰にとって、仲間を大事にした、という記憶は無いのだ。
女であるからか、幼く見えるからか、たびたび喧嘩を売ってくる者、新参者の中には、犯そうとする者、夜這いをかけようとする者もいる位である。
その度に、こんな奴がいたのか、と思って斬り殺すだけだ。
鬱陶しく思う事もある。
それでも、すでに住み慣れた場所を離れようと思う事は少なかった。
ここを離れて新たな地に住み着こうとする気力を要するなら、腹を満たすために荷の一つでも奪っている。
そうやって生き抜いてきたのだ。
同族だと思っても、仲間だと思ったことは周泰にはない。
明け方である。
束の間まどろんでいた、という気がする。
身体の芯は重いのに、瞼は開いてしまった。
隣を見てみる。
運び屋は居なかった。
それに、傍らに「くれてやる」と言われた『魂切』が立て掛けられていた。
魂切を持って、部屋を出た。
犯された、とは思わなかった。
なるようになった、と周泰は思うのだ。
力のある者が、力を振るう。
暴力であれ、権力であれ。
それが今の時代で、自分は暴力でそうしてきたし、あの人もそうしただけだ。
あの人。
あいつやこいつなどではなく、あの人などという言葉を使ったのは初めてかもしれない、と周泰は驚いた。
大雨の日だった。
村を襲った帰りに、偶然出会ったから襲った。
そして返り討ちにあった。
そのくせ自分は生きていて、彼も生きている。
なんなんのだ、と可笑しく思った。
また、彼、などという言葉を使った。
変わったのか、自分は。
負けたからなのか、それとも、抱かれたからなのか。
負けた、という事がよく解ってなかった。
気を失った事が負けなのか。
地に叩きつけられた事が負けなのか。
そんなことは、負けの内に入らないだろう、と思った。
今まで生き死にをかけて生き抜いてきたのだ。
自分は、生きているではないか。
ならばこれは負けではない。
ならば何故、負けた、と言われたのか。
意志を持て、とも言われた。
意志。
自分に意志はあったか。
死は、負けなのか。
考えても、理解できるとは思えなかった。
いや、考えた。
今までしなかったことを、考えていた。
やはり、変わったのか。
抱かれたからなのか。
抱かれた時、求められる、という事を知った気がした。
今まで、求められたことがあったか。
違う。
自分は、求められたいのか。
変わっている、と周泰は思った。
あの運び屋のせいだ。
なんとなく気に喰わない。
自分は、あの人が嫌いなのかもしれない。
もしくは、好きなのかもしれない。
他人に対してそういった感情を働かせるのは久しぶりだった。
この感情が定まった時、嫌いだ、と思ったら一発ぶん殴ってやろう。
斬り殺すのもいいかもしれない。
好きだ、と思ったら、やっぱり一発はぶん殴ってやろう、と周泰は思った。
外に出ると、全てが霧に遮られていた。
少し歩いて、川に向かうと、紗羅が立っていた。
霧に、手を出し入れして楽しそうにしている。
その背に、周泰は話しかけた。
「風が吹いてきました。少しすれば、霧は晴れます」
あとがきなるもの
台詞すくねえ。二郎刀です。地の文で進めてみた。
キャラに言わせたい台詞ってのはありますが、台詞だけで進めていくのはこの外史には合いませんね。
最近使わせてみたい台詞
「頸を刎ねよ」
華琳が一番合いますかね、この台詞は。逆に一番合わないキャラは誰でしょうね?美羽とかはむしろノリで言っちゃいそうな気が。月とかでしょうか?あ、一番は一刀ですかね。
一刀「頸を刎ねろ」
うわあ想像できねえ。
さて今回の話はどうでしたでしょうか? 少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
説明 | ||
台詞なんてなかったんや。 | ||
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