英雄伝説〜光と闇の軌跡〜 691
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〜旧鉱山・奥〜

 

「き、消えた……」

「……今のは一体……」

魔獣が消えるとロイドは驚き、エリィは厳しい表情をしていた。

「ふう、どうやらタダの魔獣じゃなかったみてぇだな。ま、何とか倒せて良かったぜ。」

一方ランディはロイド達に振り向いて安堵の溜息を吐いて言った。

「あはは……さすがランディ先輩。」

「やれやれ。大した戦闘力だね。」

「フフ、どうやらギュランドロス達によって結構鍛えられたみたいね。」

(……彼があの”赤い星座”の団長―――”闘神”の息子、ランディ・オルランドか……)

ノエルとワジは感心し、エルファティシアは口元に笑みを浮かべ、リィンは真剣な表情でランディを見つめていた。

「はは……本当に助かったよ。」

「でも一体、どうして……?」

「いや、リハビリ訓練が完了してようやくお役御免になったから昼過ぎに支援課に戻ったんだ。そしたら、お前らがマインツに向かったって聞いてな。せっかくだから支援課に残っていた車で追いかけたらちょうど騒ぎになってたってわけだ。」

「そうだったのか……」

「それじゃあ、ひょっとして崩落していた入口も……?」

「ああ、マインツの鉱員が総出で撤去してくれたぜ。それで俺だけエルンストと共に先行してお前らを探そうとしたら……ひょっこりコイツまで現れてここまで連れてきてくれてなぁ。」

エリィの疑問に頷いて説明したランディはツァイトに視線を向け

「ウォン。」

視線を向けられたツァイトは吠えた。

「はは、そうか……」

「やれやれ。相変わらずとんでもないね。」

「ツァイト、ありがとう。」

「フフ、さすがは伝説の”神狼”ね。」

「ええ……とても狼とは思えない知能ですよ……」

「うーん、これはお礼にお肉でも買ってこないと……」

ランディの説明を聞いてロイド達がそれぞれツァイトに視線を向けて呟いたその時

「おーい、大丈夫かああ!?」

ガンツの声が聞こえた後、ガンツやマインツの鉱員達がロイド達に近づいてきた。

「ガンツさん、皆さんも……」

「おー、お疲れさん。」

近づいてきたガンツ達を見たロイドは驚き、ランディは声をかけた。

「よかった……無事だったみてえだな!」

「フフ、おかげさまでね。」

「急いで駆けつけてくださってありがとうございました。」

「いや、元々こちらがアンタらに頼んだ事だからな。しかしまさか、旧鉱山がこんな事になっていたとは……」

エリィの言葉に鉱山町は頷いた後周囲を見回して呟き

「俺達のひい祖父さんあたりが掘っていた坑道だよな?」

「こんな風になっているなんて聞いたことなかったけど……」

「そ、そもそもどうしていきなり入口が崩落したんだ?」

他の鉱員達は戸惑ったり混乱していた。

「……とりあえず、いったん町に戻りましょう。」

「町長さんへの報告と合わせて起きたことを全てご説明します。」

その後マインツに戻ったロイド達は町長達に一通りの事情を説明した。しかし旧鉱山入口の扉を破壊し、爆薬を仕掛けた犯人は明らかにならず、坑道内の異常も説明が付かなかった。その後、もう一度付近を調べて不審な人物がいないか確認した後……ロイド達は警備隊に巡回を要請してクロスベル市に戻ることにした。

 

〜マインツ山道〜

 

「ここに来るときにも思ったがホント良い車だよなぁ。こんな車を自分で持てたらナンパし放題じゃねえか?」

ノエルが運転する車の中にいるランディは口元に笑みを浮かべ

「あのな……」

「フフ、アシに頼るようじゃ君もまだまだなんじゃないの?少しは局長を見習ったらどうだい?」

ランディの言葉を聞いたロイドは脱力し、ワジは静かな笑みを浮かべてランディを見つめ

「うぐっ……後輩のクセに生意気な。というか俺だってあのハーレムを作ってる局長のモテっぷりを真似できるものならしたいっつーの!」

見つめられたランディは唸った後悔しそうな表情で言った。

「ふふっ……さすがに分(ぶ)が悪いわね。」

「ランディ先輩のモテ自慢もワジ君や局長にかかれば形無しですね。」

ロイド達の会話を聞いていたエリィとノエルは口元に笑みを浮かべて言い

「こら、ノエル!同じ警備隊出身なのに薄情な。……つーか、お前にとっては他人事じゃねえだろ。フランちゃんの件があるんだから。」

2人の言葉を聞いたランディは意外そうな表情でノエルを見つめた後疲れた表情で言い

「うっ……そ、それは言わないで下さいよ、ランディ先輩〜。」

ランディの言葉を聞いたノエルは唸った後溜息を吐いた。

「そういや、ランディ。課長からスペアキーを借りてもう一台の車に乗って来たんだよな?」

「いつの間に導力車の運転が出来るようになったの?」

「ああ、訓練の合間に一通り覚えちまったよ。お前らも暇みて覚えろよ?なかなか便利なもんだぜ。」

「はは、そうだな。」

「今後のことを考えると覚えて損はないかもしれないわね。」

「うーん、僕はどちらかというと運転してもらう方がいいけどね。」

「あ……」

ロイド達が会話をしていると真剣な表情になったノエルが呟いた。するとロイド達を乗せた車やその後ろにいるエルファティシアを乗せ、リィンが運転する車は旧鉱山への分かれ道を通り過ぎた。

 

「……一体、何者の仕業だったんだろうな。」

「目的がはっきりしないのが余計に不気味な気がするわね。」

「あの爆薬も……どこで調達したんでしょう?警備隊でもほとんど使われていないものですけど……」

「大方、旧鉱山に残っていた発破を使ったとかじゃないの?ま、僕も火薬についてはあんまり詳しくないけどさ。」

「いや、違うな。」

ロイド達が会話をしていると目を伏せたランディが呟き

「へえ?」

「何か知っているの?」

ランディの言葉を聞いたワジは意外そうな表情をし、エリィは尋ねた。

「入口あたりに漂っていた硝煙だが……調合されて1,2年くらいの新しい爆薬の匂いだった。しかもかなり高性能なヤツだ。」

「そ、そうなのか……」

「でも、よくご存知ですね?」

目を細めて言ったランディの言葉を聞いたロイドは真剣な表情で頷き、ノエルは尋ねた。

「火薬を使った重火器は完全に廃れたわけじゃない。正規軍じゃ滅多に使われないが未だに好んで使う物好きもいる。……特に猟兵団(イェーガー)あたりにな。」

「まさか……」

「そ、それって……」

「ま、あくまで可能性の話さ。ちなみに今、火薬式の重火器が一番使われてるのはエレボニアだ。今もラインフォルト社がラインナップを残してるからな。」

「そうだったんですか……」

「フフ、さすがに詳しいね。しかしエレボニアか……イヤな符号が重なるねぇ。」

ランディの説明を聞いたノエルは真剣な表情で呟き、ワジは静かな笑みを浮かべた後考え込んだ。

「ああ……昨日のこともあるしな。」

「何だ、何かあったのか?」

「ええ、実は―――」

ロイド達はランディにレクター特務大尉と再会した経緯を説明した。

 

「―――あの遊び人、エレボニアのスパイかよ。どう考えてもタダ者じゃないと思ったが……」

「単なるスパイというより情報将校と言うべきだろう。通商会議を前にして情報収集をしているだけかもしれないけど………どうも一緒にいた赤毛の子が気になるんだよな……」

「……ふう、あの子ね……」

「フフ、君にとってはトラウマになったみたいだね。」

ロイドの呟いた言葉を聞いたエリィは溜息を吐き、ワジは笑っていた。

「なんだなんだ?色っぽい話かよ。」

「その、実は……」

ロイド達の会話を聞いて興味深そうな表情をしているランディにノエルはレクターと一緒にいた赤毛の少女について説明した。

「………へえ…………………………」

話を聞いたランディは呟いた後呆け

「あ、あの子の話は止めましょう。まったく、イリアさんにセクハラされるリーシャさんの気持ちがわかった気がするわ。」

「ハハ、凄い説得力だな。……でも、いつの間にか懐に入り込まれていたし……ただの民間人じゃないのは間違いないと思う。」

ランディの様子に気付いていないエリィは頬を赤らめて呟き、エリィの言葉を聞いたロイドは苦笑した後真剣な表情になった。

「そういえば……西クロスベル街道で会った人もエレボニア方面から来たんですよね。あ、そういえば、あの人も赤毛だったっけ……」

「ああ、言われてみれば。」

「レクター大尉とあの子は赤毛でも色合いが違ったけど……考えてみれば、あの子と隻眼の男はそっくりな色だったかもしれない。」

そしてロイド達が話し合っているとある事に気付いてランディに視線を向け

「あれ……」

「ひょ、ひょっとして………」

「はは……―――つまり、俺の赤毛もそいつらに似てるってわけだ。」

視線を向けられたランディは苦笑した後目を細めて言った。

「あ…………」

「……もしかしなくても心当たりがあるみたいだね?」

「……参ったな。――――”そう来たかよ”。」

ワジに尋ねられたランディは溜息を吐いた後凶悪な笑みを浮かべた。

 

「なあ、ランディ―――」

ランディの言葉を聞いたロイドが尋ねかけたその時、エニグマが鳴る音がした。

「っと、こんな時に……はい、特務支援課、ロイド・バニングスです。」

「――――バニングス、私だ。」

「ああ、ダドリーさん。出張と聞いていましたがお戻りになったんですね?」

「ああ、昼過ぎにな。エマ君から話は聞いた。世話になったようだな。」

「いえ、気にしないでください。それよりも……何かあったんですか?」

「ああ、一応お前達にも伝えておこうと思ってな。――――ルバーチェ跡地の新たな所有者が決まった。『クリムゾン商会』という会社だ。」

「『クリムゾン商会』……ええっ!?『黒月(ヘイユエ)』や『ラギール商会』ではないんですか?」

「連中の裏をかくようにして電撃的に契約が結ばれたらしい。どうやらエレボニア方面からの裏工作もあったらしいな。」

「エレボニア方面から……一体、どういう会社なんですか?」

「帝都で”ノイエ=ブラン”という高級クラブを経営している会社だ。クロスベル市にもその視点が1年ほど前にオープンしている。その会社がクロスベルに本格的に進出してきたわけだ。」

「で、ですが当然、ただの会社ではないんですよね?」

「ああ………オルランドはそこにいるか?」

「ランディですか?ええ、先程合流したので……」

「『クリムゾン商会』についてはヤツから話を聞くといい。―――また夜にでも連絡する。」

「あ……」

ダドリーに一方的に通信を切られたロイドは声を上げ

「ど、どうしたの?」

「何やらキナ臭そうな話をしてたみたいだけど。」

ロイドの様子を見たエリィは戸惑い、ワジは真剣な表情で呟き

「―――なるほどな。ルバーチェの跡地を狙ったか。ノエル、街に着いたら歓楽街に寄ってくれねぇか?裏通りの手前まで頼む。」

ランディは溜息を吐いた後ノエルに言った。

「そ、それは構いませんけど……」

「……ランディ。『クリムゾン商会』っていうのはどういう会社なんだ?」

「ああ……高級クラブ”ノイエ=ブラン”を経営するエレボニア籍の会社……しかしその実態は――――猟兵団”赤い星座”が持っている資金調達用のダミー会社だ。」

ロイドに尋ねられたランディは目を細めて説明した。そして車が橋の下をくぐったその時、その様子を怪しげな2人の男が見つめていた。

 

「フフ、用事も済んだしそろそろ帰るとしようか?おっと、その前に旧鉱山とやらに寄っておくか。」

「フフ、せいぜい気を付けて。ボクの方はこのままお役目に入らせてもらうよ。」

白衣の男の言葉を聞いた片腕の少年は口元に笑みを浮かべて言った。

「フフ、せいぜい頑張りたまえ。そうそう、今回の計画での我々の割り振りが決まったよ。こちらの方は、私と七柱が担当することになりそうだ。」

「へえ、あの人が来るのか。ま、今回は色々と面倒な連中も動きそうだし、何よりあのメンフィルも最初から介入しそうだしね。良い判断かもしれないね。」

男の言葉を聞いた少年は意外そうな表情をした後静かな笑みを浮かべていた。

「フフ、そういう事さ。それと”アストラルコード”の運用レポートも頼んだよ。低レベルのネットワーク環境でどこまで真価を発揮できるか興味があるからねぇ。」

「はいはい。ヒマな時にまとめておくよ。それでは―――大いなる”盟主(マスター)”のために。」

「偉大なる”盟主(マスター)”のために。」

少年の言葉に続くように目を伏せて呟いた男は懐から装置らしき物を出してその場から消えた。

「……フフ。それじゃあ誰も見ていないけどお約束と行かせてもらおうかな。」

男が消えた後少年は口元に笑みを浮かべた後ロイド達が去った方向を見つめ

「執行者NO.0、『道化師』カンパネルラ――――これより盟主の代理として『幻焔(げんえん)計画』の見届けを開始する。」

妖しげな笑みを浮かべて静かな口調で宣言した………………

説明
第691話
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コメント
感想ありがとうございます 本郷 刃様 というか未だ幻焔計画の内容って不明なんですよねぇ。閃でわかるといいんですが THIS様 そりゃあもう、色んな意味で荒れたり派手になるでしょうねww(sorano)
ここから荒れますね。派手になることは間違いなし!!(THIS)
お、見届け人のカンパネルラも登場しましたか・・・ついに幻焔計画が始動しましたね・・・(本郷 刃)
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