英雄伝説〜光と闇の軌跡〜 693 |
『西ゼムリア通商会議』―――各国首脳を招いた国際会議がディーター・クロイス新市長の提唱で開催されようとしていた。同時にそれは、完成したばかりの新市庁ビルのお披露目を兼ねていた。―――通称『オルキスタワー』。地上40階、高さ250アージュとなる、大陸史上初の超高層ビルディングは今や大陸中の人々の関心を呼んでいた。そして―――各国首脳がクロスベル入りをし、オルキスタワーが公開される前日。警察本部の対策会議の場に別の用事でいないヴァイスとアル以外の支援課のメンバーが呼ばれていた。
〜警察本部〜
「―――以上が明日から3日間の通商会議の警備体制となります。ベルガード、タングラム門及び国境付近にはすでに警備隊による検問体制が敷かれています。市内に関しては――――ジョーリッジ課長、ドノバン警部。」
会議に参加している者達に説明をしたダドリーはそれぞれの課の責任者を指名し
「あー、広域防犯課では総員を市内巡回に当たらせている状態だ。会議終了までフル稼働だな。」
「二課は駅・空港・商業区画を特に重点的に警戒しているぜ。こちらも会議終了までは総員で当たることになりそうだ。」
指名された2人はそれぞれ説明した。
「なお、警備対策本部は捜査一課で運営している状況です。考えられる限りの非常事態に対応できると自負していますが……」
「……どんなに厳重な警備体制も決して完璧ではありえない。そこで支援課(ウチ)の出番ってわけだ。」
「ええ、お伝えしているようにセルゲイ課長には渉外担当として対策本部に詰めていただきます。警備隊方面との連絡も受け持っていただけると。」
「やれやれ、人使いが荒いこった。俺なんかより有能な局長やルファディエル達を使えばいいだろうが。」
不敵な笑みを浮かべて言ったダドリーの言葉を聞いたセルゲイは溜息を吐き
「ハハ、とにかくいろんな所に顔を突っ込んでるからな。それで死角を突いたやり方で有利な捜査体制を確立する……」
「うむうむ。『搦め手のセルゲイ』の面目躍如ということだなぁ。」
「よしてくださいよ、ンな昔の話。」
ドノバン達の言葉を聞いたセルゲイは目を丸くして指摘し
「『搦め手のセルゲイ』ですか……」
「ふふっ……成程という呼ばれ方ですね。」
「昔の話だ、昔の。それで……コイツらに関してはいいんだな?」
ロイドとエリィの言葉を聞いたセルゲイは溜息を吐いた後ダドリーに確認した。
「ええ、構いません。彼らにはしばらく遊軍として動いてもらおうと思います。」
「遊軍ということは……」
「通常の支援活動を行いながら何かあればバックアップに回れるようにするんですね?」
ダドリーの言葉を聞いたノエルは声を上げ、ロイドは尋ねた。
「ああ、その通りだ。遊撃士協会と同じスタンスだが彼らに頼り切るわけにもいかん。それに……”あんな連中”が入り込んできた以上、予想外の事態への保険は欲しい。」
「あんな連中……」
「”彼ら”の事ね……」
「―――”赤い星座”だな。」
ダドリーの話を聞いたエリィは不安そうな表情をし、エルファティシアは真剣な表情で呟き、ランディは静かな口調で言った。
「ああ……猟兵団”赤い星座”……ゼムリア大陸西部において最強と言われる猟兵団の一つだ。現在、多数の所属メンバーがクロスベル入りしていることが確認されている。ちなみに1年ほど前、あの『黒月(ヘイユエ)』と共和国方面で大規模な抗争を起こし、さらにリベールの”異変”でも”結社”に雇われてメンフィル帝国軍と戦争したらしい。」
「ふーむ、物騒な連中だなァ。」
「ってことは、この街で黒月や”店員”として偽っているメンフィル兵がいるラギール商会と抗争や戦争の続きをするつもりなのか?」
「いえ、基本的に猟兵団はミラによって動く連中です。以前争っていたとはいえ、再び争う理由にはなりません。そうだな、オルランド?」
ドノバンの疑問をダドリーは静かな口調で否定した後ランディに視線を向けて尋ね
「―――まあな。縄張りを重視するマフィアと違って猟兵団にはミラと戦場が全てだ。昨日の敵は今日の味方……その逆も日常茶飯事にありえる。その意味で、以前の抗争を引っ張るというのはねぇだろう。」
尋ねられたランディは頷いた後答えた。
「……例え団長を討ち取った人物がいても、連中は動かないのだな?」
「ああ。戦場で討ち取られるのもまた、猟兵団として日常茶飯事だからな。団長や部隊長だってあり得る事だ。」
「となるともう一つの心配は…………―――シュバルツァー。ラギール商会や未だラギール商会の客人として現在もクロスベルに滞在している”赤い星座”の団長を討ち取った”戦妃”が”赤い星座”に抗争をしかける可能性はあるか?」
ランディの説明を聞いたダドリーは考え込んだ後、リィンに視線を向け
「……恐らくそれはないと思います。ラギール商会の目的はあくまでこちらの世界の商品を大量に手に入れる事ですので。それと確かにカーリアン様は”戦闘凶”とよくメンフィル兵達に呼ばれているくらいですが、あくまでその時に起こった戦場での戦いを楽しんでおられるとの事なので、自ら抗争を仕掛ける事はないと思います。」
「そうか……」
リィンの答えを聞いて頷き
「フフ、そうなると一つの謎が浮上してくるわけだ?どうして”赤い星座”がクロスベル入りしたのかっていう。」
会話を聞いていたワジは静かな笑みを浮かべて尋ねた。
「一課でも探ってはいるがその目的は未だ判明していない。ただ、エレボニア政府の後押しを受けているのは確実のようだな。」
「通商会議に関係することで何かを行おうとしている……もしくは共和国系の『黒月』やメンフィル帝国系の『ラギール商会』の台頭を抑えるのが狙いでしょうか?」
「ま、どちらもあり得るだろうな。いずれにせよ、通商会議において無視できる要素じゃないってのは間違いなさそうだな。」
「ええ、無論です。―――ちなみに”赤い星座”だが、クロスベル市の周辺にも何度か足を延ばしているらしい。もし、各地を回ることがあればそのあたりの動向も探って欲しい。」
セルゲイの言葉に頷いたダドリーはロイド達に言った。
「―――了解しました。それでは、支援要請に対応しつつ、”赤い星座”の情報収集を行います。」
「何かありましたら各方面に応援に行きますのでいつでも連絡してください。」
「おう、頼りにしてるぜ。」
「遠慮なく頼らせてもらうぞ〜。」
ロイドとエリィの言葉にドノバン達は頷き
「それともう一つ……ツェリンダー局長とノウゲート警視が”また”何か問題行動を起こそうとしたとき、すぐに連絡を頼む。……あの2人の事だ。今のこの状況で”何か”行動を起こす可能性が高い。」
ダドリーは疲れた表情でロイド達に言い
「ハ、ハハ…………了解しました。」
「うふっ♪しっかりと”信用”されているわね、2人は。」
「笑いごとではないですよ……」
ロイドは仲間達と共に脱力した後苦笑しながら頷き、エルファティシアは微笑み、ノエルは疲れた表情で溜息を吐いた。その後ロイド達は支援課のビルに戻って、支援要請を端末で確かめた…………
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第693話 | ||
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コメント | ||
感想ありがとうございます 本郷 刃様 やはりそこがクロスオーバーの醍醐味ですものねww THIS様 今後どうなるか楽しみにしていてください♪(sorano) この支援要請の中で・・・某皇子と名局長がやらかしてくれることを期待WWどんだけ派手に暴れまわる通商会議になるのやら・・WW一番やりたい放題やるのは誰か楽しみです。(THIS) ついに通商会議の始まりですか、各国の重鎮達が揃い踏みになりますね! やはりエウシュリー勢が楽しみだな〜w(本郷 刃) |
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