リリカルなのはSFIA
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 第三十九話 『鋼のレジスタンス』

 

 

 

 アリシア視点。

 

 アースラにある個室に用意されたベッドの上で魂が抜けたかのように。そして、人形のように

 

 「…あのね、あと三時間で『聖王のゆりかご』との交戦区域なんだって」

 

 私はアースラに運ばれてきたお兄ちゃんの頬に触れようとしたけど、その手を途中で止めた。

 魔力障壁で誰にもスティグマを刻み込まないようにと、だれも傷つかないように微弱な魔力の壁は消失している。

 それは目の前の『傷だらけの獅子』。いや、高志という人間の行為を無駄にする気がしたから…。

 何度も彼に触れようとした。何度も彼の体温を感じたかった、だけど、それを彼は望まない。それを良しとしない。

 彼が運び込まれた時、改めてそれを気づかされる。

 体中がボロボロだった。

 普段は袖の長い作業着を愛用していた彼はそのボロボロの体を隠したかったのかもしれない。そして、今度は心をボロボロにしながら助けてくれた

 ボロボロになっても助けてくれた。

 だから、今度は私が助ける番だ。

 本当なら安全な所に彼をおいておきたかった。だけど、それも出来ない。

 このミッドには彼を狙う人間が多すぎて、強すぎる存在がいる。

 

 「…私、行くね」

 

 彼を守る為に作られたDエクストラクター。二丁拳銃の形をした想いを力に変える兵器、ラッキースターを懐にあることを確認してもう一度、自分達を守ってくれた獅子の頬を撫でるようにハンカチ越しに触れる。

 

 「………」

 

 未だに反応が乏しい彼に私は彼に触れるか触れないかのギリギリまで彼の顔に自分の顔を寄せる。

 彼の暗い瞳の奥にいる。ボロボロになって、未だに泣いているかのような獅子に呼びかけるように私は声をかけて部屋を出て行った。

 

 

 

 「…私ね。私アリシア・テスタロッサは。貴方の事が本当に、大好きです。世界の誰よりも何よりも大好きです」

 

 

 

 プレシア視点。

 

 「目標『聖王のゆりかご』確認しました。このままいけば一時間後には交戦区域に到達します」

 

 「わかったわ。みんなやることは分かっているわね」

 

 「「「はい!」」」

 

 アースラには私が艦の操縦とゼクシスメンバーの指揮。

 リニスがモニターからオペレーター。

 『揺れる天秤』の力。SPIGOTでアースラに近付いてくるガジェットの狙撃までやってもらうことになる。

 だけど、それはこのアースラ内での事。

 

 アリサさんとすずかさんが前衛。『聖王のゆりかご』に突入。そこに捕らわれているだろうヴィヴィオを救出。余力があるならエンジンを破壊。

 リインフォースが中衛。前衛の二人を援護しながら『聖王のゆりかご』の外にいるガジェットの掃討。

 アリシアが後衛で援護射撃。そして、アースラの護衛だ。

 

 「セオリー過ぎてつまらないけどね」

 

 私が悪態をつくとリニスが苦笑する。

 本当ならリニスも中衛。もしくは前衛に出しておきたいところだけど…。リニスはアサキムが出てきた場合、リインフォース一緒に迎撃に出る予定。

 

 「問題はいつ仕掛けるかだけど…。管理局が来る((だろう|・・・))時間帯に仕掛けるわ」

 

 「だろう?…なるほどね」

 

 アリサさんが質問してこようとしたが、ため息をつきながら何かに納得した。

 ゼクシスは現状、管理局に追われている状況だ。ジェイル・スカリエッティも同時に追う管理局に追わなければならない。

 三者が睨み合いをしているだけも時間過ぎていき、月からの魔力を得るために移動している『聖王のゆりかご』。スカリエッティ陣営に有利になる。

 それも管理局側もわかっているだろう。

 管理局的には両方を相手にしなければならない。その場合、弱い方を。攻撃しやすい方を、ゼクシスを狙うだろう。

 

 このまま戦うのは愚策だと思うが、管理局は((同時|・・))にあくまでも『聖王のゆりかご』を逮捕しなければならない。

 

 正義を謳う管理局がゼクシスの中にはゼクシスを本当に悪として捕まえて良いのかと疑問に思う人間が多数いる。

 それはゼクシスのメンバーが美人だったこと。

 そして同様に機動六課にいる高町なのは。そして八神はやてが管理局に入局してしばらくしてから地球の文化を持ち込まれてから地球支持派なんてのもいる。

 あのリンディのような日本かぶれもいれば、ティーダのように積極的に取り入れてミッド全体で好感触を持たれているのだ。

 というわけなので…。

 不意打ち同然にバトルフロンティアとラッキースター。ガナリーカーバーで長距離砲を打ち込む。

 無論、最大出力で。

 そして、それを好機と考え管理局がゼクシスよりも『聖王のゆりかご』を狙ってくれれば御の字である。

 例えそうならなくてもクロノとはやてが指揮する管理局のゼクシス支持派が管理局員達を『聖王のゆりかご』を攻撃するような流れにもっていってくれればいい。

 こういう戦場ではゼクシス否定派の後方指揮官よりも前線で戦っている彼女達の指示に従う局員も出てくるだろう。

 

 要約するとゼクシスの仕掛けた奇襲で、

 体勢が崩れた『聖王のゆりかご』を管理局に制圧させるために、

 仕掛けちまおうぜ。ということになる。

 

と、普通なら考えるだろう。

 

 「…そう上手くいけばいいんですけどね。バトルフロンティアやラッキースターも射程は長く強力ですが両方とも転移してからチャージしないといけませんよ」

 

 『聖王のゆりかご』を攻撃してこちらを攻撃されたらこちらはたまったもんじゃない。

 そう考えたすずかは不安そうに呟いた。

 が、それを安心させるために私は一枚のCDを皆に見せた。

 

 「まあ、使えるモノは何でも使うわ。そうでもしないと『聖王のゆりかご』いえ、『知りたがる山羊』を相手にするには、ね。だから攻撃を仕掛ける前。砲撃を行う三分前に((これ|・・))を使うわ」

 

 「それって…。本気なの、お母さん?」

 

 アリシアがプレシアの持つCDの正体を察して尋ねる。

 本気でそれを使うのかと…。

 無論、プレシアは平然と頷いた。

 

 「勿論、使うわよ」

 

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 クアットロ視点。

 

 ヴィーッ。ヴィーッ。

 

 『聖王のゆりかご』を月に向けて運航していると警報が鳴り響く。

 その警報が示しているポイントをモニターに映し出すとそこには時空管理局で使われている次元航行船が一隻映し出されていた。

 そして、その船は恐らく主砲である巨大な砲台のチャージにかかっていた。

 次元航行船は転移する前から、莫大なエネルギーをチャージするということは出来ない。

 もともと転移というのは繊細な作業である。

 それは力を入れ過ぎた状態で綱渡りをするような事だ。

 

 「あら?もしかして自棄になって特攻でもしに来たのかしら?」

 

 最初に不意打ちをして、調子づいたところに管理局が尻馬に乗せるという事かしら?

 だけど、残念。

 いくらゼクシスの攻撃射程が長く、強力でもすぐには撃てない。

 あちらのDエクストラクターは使用者に負担がかからないように設定されている。

 つまり、チャージ中の主砲同様。今からチャージしないといけない。

 だけど『傷だらけの獅子』をやられてテンションが落ちているゼクシスのメンバーだ。それに世界の命運がかかった戦いでもある。

 甘ちゃんであるゼクシス。スフィアリアクターのリニスとリインフォースが出撃したところであの二人の砲撃能力ではこの『ゆりかご』は堕ちたりはしない。

 出来るとしたらアリシアのラッキースター。もしくはあの巨大な大型砲台の砲撃だろう。だが、その二つがチャージし終える頃にはガジェットが取り囲んで落としている。

 

 

 ビィイイイイイイイイイイイイイイイイッ!

 〜〜。

 

 高エネルギー反応を感知したセンサーが鳴り響く。

 みれば、アースラの甲板に立つ『悲しみの乙女』。リインフォースが持つガナリーカーバーがその砲身から本当に出たのかと思わせんばかりの砲撃を行っていた。

 その砲撃はその射線軸上にいた無数のガジェット達を消し飛ばしていたが、そのガジェット自体が鋼鉄の壁となり、その砲撃は『ゆりかご』に届くことは無かった。

 やはり、あちらは無茶を売ったみたいね。

 それにしても警報にかき消されたみたいだけど何か他の音も拾っていたみたいだけど。と、私が警報以外の音を調べようとした瞬間だった。

 

 ビィイイイイイイイイイイイイイイイイッ!

 〜〜〜。〜〜〜。

 

 また高エネルギー反応?!

 新たに映し出されたモニターには一つだけだったが、本来はライフルの状態のラッキースターが本来はチャージがかかる筈のバスターキャノンが発射可能な域まで…。

 

 ズドォオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!

 〜〜。〜♪〜〜〜。

 

 対スフィアの名は伊達ではない。

 ラッキースターはゼクシスと機動六課の中では最強の砲撃を放つことが出来る。

 クアットロは前もって知っていたラッキースターの威力のデータは持っていた。ガジェットの隊列を防御の陣に固めその砲撃をやり過ごす。

 

 ビィイイイイイイイイイイイイイイイイッ!

 〜〜〜♪〜〜〜♪

 

 更に警報が鳴り響く。

 見ればアリシアの隣に紅の鎧を纏ったアリサが立っていた。

 その鎧の胸部を覆っている装甲。その装甲に埋め込まれていた宝玉のような部分に高エネルギーが集まっていた。

 

 「そんな?!彼女も遠距離砲撃が放てるの!?」

 

 アリサは今の今まで近距離戦闘だけでガジェットを屠って来た。

 それはアリサの性格からもあるが、本当の目的は自分の事を知る敵に遠距離攻撃など持っていないと思わせるために使わなかった。

 元々、狙撃が苦手なアリサだったから使わなかった。

 だが、今回的にしているガジェットの多さと『聖王のゆりかご』の巨大さでアリサ。いや、プレシアはこの攻撃を取ることにした。

 下手な鉄砲でも撃てば当たる状況を利用して撃ったのだ。

 

 『焼き尽くせ!ターミナススマッシャァアアアアアッ!!』

 

 赤紫。黄金。と、続いて紅の閃光が『聖王のゆりかご』を守るガジェット群を焼き払い、『聖王のゆりかご』に初めて攻撃が直撃する。

 だが、燃え尽きていったガジェットも無駄ではなかった。

 アリサの攻撃に無残に散ったかのように見えたガジェットの犠牲のおかげでその攻撃力は減衰し、『聖王のゆりかご』の装甲の表面部に焦げ跡を残すだけだった。

 

 「くっ。どうしてこれだけの攻撃が放てるの?!奴等にプレッシャーという感情は無いとでもいうの!」

 

 どう考えても先の砲撃はチャージがかかる収束砲。加え、スフィアもDエクストラクターも感情に左右されやすい。

 年端もいかない女性がこんな戦場で出せるものなのか!『傷だらけの獅子』が倒れたという不安を感じないのか!

 

 ビィイイイイイイイイイイイイイイイイッ!

 

 想定外の事に慌てているクアットロの耳にもう聞きたくない警報が鳴り響く。

 そして、思い出す。

 ゼクシスには何人のDエクストラクター使いがいた?

 先程砲撃を放った三人の後ろですずかが空に向かって手を振り上げていた。

 その手の先には巨大な氷の華が咲いていた。

 その巨大な花は自分達が足場にしているアースラすらも覆い隠すほどの影を生み出す華。

 

 『あの人がもう傷つかないように。心の底から笑えるように!』

 

 「…じょ、冗談でしょ」

 

 クアットロは信じられない物を見たかのように言葉を漏らすが、それは冗談ではなかった。

 すずかは振り上げた腕を大きく振りかぶる。

 

 『捧げます!この華を!』

 

 〜〜♪〜♪〜〜〜♪

 

 『ブルーム・イン・ヘブン!』

 

 その巨大な氷の華はすずかの動作に反応したかのように高速回転しながら『聖王のゆりかご』に飛んで行く。

 とっさに予備戦力として放っていたガジェット呼び集めて『ゆりかご』の盾代わりにしたクアットロは称賛に値するだろう。

 

 ドドドドッドドドドドドドドッドドッド!!

 

 だが、クアットロに呼び寄せられたガジェットはその氷の華に切り裂かれ、爆散していた。そして、もはや巨大な刃と化した華の花弁は『聖王のゆりかご』の装甲に突き刺さり爆散した。

 

 ドォオオオオオオオンッ!!

 

 その衝撃は『ゆりかご』の表面部に人が数人入れるほどの穴をあけるものだった。

 それにクアットロは悔しがるが、悪い事というのは重なる。

 

 ビィイイイイイイイイイイイイイイイイッ!

 緊急警報!目標Aから強大なエネルギー反応!

 

 その警報にクアットロはそれが何かを確認することなく全ガジェットにAMF及びバリアーを全開にさせながら『聖王ゆりかご』とアースラを結ぶ線上に並ぶように指示を出す。

 と、同時に『聖王のゆりかご』の防御フィールドも全開にする。それはアースラ側から見ると『聖王のゆりかご』が巨大なシャボン玉に包まれたのようにも見える。

 そのシャボン玉が発生すると同時にアースラの右半分を覆う方針から、超重力で目標を押しつぶすアルカンシェルを元にして作られたDエクストラクター四号機。

 

バトルフロンティアの武装。

その砲撃に飲み込まれたもの全てを超重力で粉砕する収束砲。マクロスキャノンが放たれた。

 

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 はやて視点。

 

 まったくやってくれるなプレシアさんは。

 アースラの半分近くを覆う巨大な砲身から放たれた砲撃。

 それは『聖王のゆりかご』の障壁をぶち抜き、更にはどってぱらに巨大な穴をあけてくれた。

 まるでアルカンシェルを。

 目の前の光景を見て私は聖王教会の騎士達と私達についてきてくれた武装局員に檄を入れる。

 

 「今、まさにゼクシスがガジェットを薙ぎ払った今こそ好機!我々は『聖王のゆりかご』に突入するで!!」

 

 うおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!

 

 と、声を荒げる局員はおもむろに自分のデバイスを持って外に出る。

 そして、空中に名が出されるように飛び出し、空中浮遊の魔法を使い戦闘区域に出るとすぐさま空中戦を始める。

 外では既にゼクシスメンバーが『ゆりかご』の中から吐き出される数百。幾千機のガジェットを放ち武装翼因果先程のゼクシスメンバーが明けた風穴を発見。そこに一人の隊員が入りこもうと思った時だった。

 

 

 

 『舞えっ』

 

 不気味な魔力が、

 

 『トラジック』

 

 その威圧感が、

 

 『ジェノサイダー!』

 

 辺りに鳴り響く。

 

 

 

 「総員全力防御ぉおおおおおおおっ!!」

 

 私は檄を飛ばした時以上の声を張り上げて指示を出すと同時に黒い鳥がその身に纏った炎ごと私や周りにいた武装局員に襲い掛かる。

 ガジェットの群れを蹴散らしらがらアサキムは誘発効果のある黒い燃えるガジェットを無視して『ゆりかご』に入りこもうとした管理局の人間を吹き飛ばした。

 

 「…やれやれ。プレシア女史は思い切った行動に出たものだな。まさか、あそこにヴィヴィオがいない。と、嘘をついて全力攻撃とはな」

 

 『遅いですわよ!アサキム!おかげでこのゆりかごのどてっぱらに風穴が空いてしまいましったのよ!』

 

 クアットロがはやてと武装局員の前に現れたアサキムに通信で文句を言う。

 そして、アサキムの言った言葉にはやては少しばかり悪寒が奔った。

 プレシアはヴィヴィオごと『聖王のゆりかご』を攻撃したのだ。

 この事態から少ししてからヴィヴィオのいるところ。そして、『聖王のゆりかご』の動力炉の場所が分かるのだが、それが分かる前にプレシアはアースラや他の戦艦と『聖王のゆりかご』の操縦席と動力部をある程度想定してゼクシスメンバーの総攻撃を仕掛けた。

 だが、それはあくまでプレシアの予想。

 もし、その攻撃した『聖王のゆりかご』の場所にヴィヴィオがいたら…。

 

 『失ったガジェットの分を出撃させるまで貴方が一人で相手をなさってください!』

 

 「最初はそうしようと思っていたが、そうもいかなくなった。………歌の所為でね」

 

 『・・・は?』

 

 

 

 

 体に受けたっ、傷の数だけっ、((魂|こころ))に刻め!闘志をぉおおおおおおお!

 お前が静かに眠れる日までっ、全てをかけて戦えぇえええええええ!

 

 

 

 

 そして、意外なことに高志が聖王教会で熱唱していた歌が聖王教会の騎士達の記憶に引っかかっていた事が起因している。

 十年前に地球で広めた歌と、つい最近聖王教会で歌った歌。

 その両方がテロに会う前にすでにCD化。ただし、歌っているのはタカではなく別の人間だ。

 たとえ、ゼクシスやタカの事を知っていなくても、戦闘を仕事とする管理の武装局員にはその受けがいいらしい。

 

 まとめると、歌を聴いた局員のテンションが上がりまくっている。ゼクシスメンバーがDエクストラクターの出力を上げきれたのもこれが起因していた。

 そして、感情に合わせて魔力の方も一時的に上がり、アサキムの放った炎の烏も次第に抑え込まれていた。

 

 この歌の出所がアースラからとなっている。

 クアットロが警報の音と一緒に聞いた妙な音は、この歌だった。

 

 『…歌?歌でこんなにも戦力が上がるなんて』

 

 戦闘機人ではない人間。いや、自分自身と自分の生みの親スカリエッティ。そして姉の二人以外は虫けら程度にしか思っていなかったクアットロは驚愕していた。

 逆にはやては今、大音量で流れている歌の歌詞を聞いてテンション。いや、魔力や闘志を上げていく。

 

 「だから、人間は弱くて強い。何かあればすぐに弱くなるし、強くもなれるんや」

 

 「そうだね。はやて。少し君を。いや、君達を甘く見ていた。だからこそ…。僕も全力で戦おう」

 

 「っ!?鳴り響け!終末の笛!」

 

 ただでさえ相対するだけで後ずさりしそうな魔力と威圧感。それがさらに濃縮されて自分の体に降り注ぐ。

 それを感じ取ったはやては自身の前に魔方陣を展開、そして目標に着弾すると炸裂する魔力砲撃を行う。

 

 「エンプラス・ジ・インフェルノ!」

 

 「ラグナロク!」

 

 

 ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!!!

 

 

 はやての砲撃がアサキムに着弾する直前にアサキムの体から黒い太陽のような爆発が起こった。

 その黒い太陽ははやての砲撃とぶつかり合うと、アサキムを中心に黒と白の入り混じった太陽へと変化する。

 その爆発した太陽はアースラ。『聖王のゆりかご』。そして、はやて達を乗せてやって来た管理局の時空航行船の間で起こった。

 

 「つうううううっ。まさか自爆?いや…」

 

 はやては自らが放った砲撃。そしてアサキムの魔力が荒れ狂う空間を見ていると自分の目の前に通信用のモニターが浮かび上がる。

 

 『八神はやて!八神はやて二等陸佐!どういう事かね!何故今、『聖王のゆりかご』に攻撃を仕掛けている!』

 

 「あー、これはこれはミッドのお偉い上司さん。申し訳ございません。貴方が出した秘匿任務のゼクシスとスカリエッティの同士討ちをねらえと言った上司様。誠に申し訳ないのですが…逆らわせてもらいます」

 

 『な、貴様。逆らう気か!私に逆らうというのは管理局への反逆になるという事だぞ!』

 

 「反逆?私はこの世界。ミッドに脅威を与えているガジェット。スカリエッティを捕縛するには今しかないと判断しました。『聖王のゆりかご』を守るガジェットはご覧のとおりゼクシスの攻撃で殆ど撃破されていますから」

 

 どうや、別に間違ってはいないでしょ。

 モニターに映っているブタ上司は醜い顔をさらに醜く歪めながら声を荒げる。

 

 『き、き、貴様!儂に逆らえば貴様もそこにいるテロリスト同様に反逆者として生きていくことになるのだぞ!』

 

 ちょうどいいな。今流れている歌にそろえて伝えておく。

 

 「構わんよ!それでミッドを!この世界に生きている人達の平和が守れるなら私は喜んで((反逆者|レジスタンス))になる!」

 

 『な?!貴様ぁ!ただです』

 

 ブチ。

 と、強制的に回線を切る。

 

 「あ〜、という訳でここにいる管理局の皆。遅れてすまないんやけど、今の会話で分かったと思うけど。…私は」

 

 「「「うおおおおおおおおおおおっっ」」」

 

 非難されることを覚悟して振り返るとそこには私にむかって笑顔を見せる局員達。

 

 「え、ちょっ、なんで?」

 

 慌てふためいている私の隣にバリアジャケットを羽織ったクロノ君が下りてくる。

 

 「忘れていたのかいはやて。彼等は元から君に協力することを前提についてきた者達だよ。いわば、同志だ。その同志があのようなすべてを捨てて守ると宣言したら僕等も続くしかないじゃないか。それに今流れているこの歌。何が正義か、答えを自分で決めろと言っているような歌じゃないか。…さて、もうそろそろアサキムも出てくるだろう。構えろはやて」

 

 クロノ君に言われて私は再びマーブル状態の黒と白のマーブル色の太陽に目を向けるとその太陽を振り払うかのようにアサキムが赤黒い剣を軽く振り、その高密度の魔力の渦を払った。

 

 「あいも変わらず馬鹿魔力だね」

 

 「それをいなすあんたに言われたくないわ」

 

 「アサキム・ドーウィン。貴様を逮捕する」

 

 「出来るかな?君達四人に」

 

 私とクロノ君を相対しながらアサキムは両手に魔力を込めて万歳するかのように腕を回す。

 と、同時に爆風の中からガナリーカーバーを握ったリインフォース。

 回転する氷の華の盾を振るってきたすずかがアサキムが上げた手に向かって攻撃をする。

 

 「『悲しみの乙女』『スフィアもどき』『夜天の主』『天才執務総官』。君達が僕の相手をするとなると…」

 

 いけない。早く連絡を入れないと。

 

 「フェイトちゃん!アリサちゃん!『聖王のゆりかご』は任せたよ!」

 

 「「任せて!」」

 

 私の言葉を聞いて管理局からはフェイト・テスタロッサ・ハラオウン。ゼクシスからはアリサ・バニングスがガジェット出てきているとはいえ、二人は勢いの弱いところから『聖王のゆりかご』に突入していった。

 

 「っ。『白歴史』と少し違うね。てっきりあの白い魔導師が来ると思ったが来なかったのか」

 

 「なのはちゃんはティアナと一緒にミッドを防衛線にでてる!ゼクシスと合流する寸前で命令を変更したからな。いくら、『考えを読む』という『知りたがる山羊』でも対処できへんやろ!」

 

 「ということは、ジェイルの所に向かっているのは…」

 

 「気にしている場合でもないで!」

 

 

 ドゥッ!

 

 と、魔力弾をアサキムに向かって撃つ。

 その事によりアサキムの目線をこちらに向ける。ゾクッ、と走る悪寒に私は顔に出さずに次の魔力砲撃のチャージを行う。

 

 「さあ、『傷だらけの獅子』が起きるまであたし達の相手をしてもらうでアサキム!」

 

 私は背中から感じ取れる局員達の視線や機体を受けながら杖を振るう。

 

 

 たった一つ、誇れるものは、この身を。投げ出す勇気!

 

 

 そして、背中から聞こえる歌はまるで私達を応援するかのようにテンションが上がる音楽だった。

 

 曲名は『鋼のレジスタンス』

 

 「この胸に宿った闘志!打ち砕けるものなら打ち砕いてみぃや!」

 

 体に受けた傷の数だけ((魂|こころ))に刻め闘志を、お前が静かに眠れるその日までっ全てをかけて戦えぇえええええ!

 

 「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!」」」」

 

 はやて達だけではない。

 周りにいた局員たち全員までもが戦闘意識を高めて『聖王のゆりかごに』立ち向かっていった。

 

説明
 第三十九話 『鋼のレジスタンス』
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コメント
なんか第三次αの最終回みたいだww(りんどう)
誤字修正しました。申請ありがとうございます。(たかB)
誤字報告でっす。 × ドラジックジェノサイダー ○ トラジックジェノサイダー(龍牙2世)
これを読んだらついYou Tubeで『鋼のレジスタンス』を流しながら読み返してしまいました。(クロノ)
TERMINATED・ZONEALONE・Shangri−La・紅蓮の弓矢・自由への進撃も似合いそう。Name・迷宮のプリズナー・未来への咆哮・GONG・SKILLの独逸語v・仏蘭西語v・英語v・露西亜語v・伊語v・西語vてつべに有るかな?(道産子国士)
鋼のレジスタンス持ってないから、『NAME−君の名は−』『鋼の救世主』『未来への咆哮』を代わりに聞いていたら……泣けてきた(デルタ)
歌を聴きながら読み直したら燃えた(匿名希望)
マジで音楽で局員を強化して突っ込ませたwwwたかBさんマジでありがと〜〜〜!!(神薙)
うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!俺の歌を聞けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!(匿名希望)
初めまして〜こんにちはーたかBさんの小説は前々から読ませて頂いていてファンです、そして初めてコメントを書かせて頂いてます三十九話に一言だけ歌はいいねぇー歌わー(ガアット)
この話を読んだら久しぶりに鋼のレジスタンスを聞きたくなりました。パソコンに保存してるので探してみますかね。(竜牙)
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