英雄伝説〜光と闇の軌跡〜 695 |
遊撃士協会に入ったロイド達はミシェルの好意によってアリオスが戻るまで支部の2階でくつろぎ、アリオスが戻ると情報交換を始めた。
〜夕方・遊撃士協会・クロスベル支部〜
「―――なるほどな。”クリムゾン商会”というのにそんな裏があったとは……」
「最近、帝都方面の情報が入りにくくなってたものねぇ。ありがと、おかげで助かったわ。」
ロイド達の話を聞いたアリオスは頷いた後考え込み、ミシェルは溜息を吐いた後口元に笑みを浮かべた。
「いえ、お役に立てたら幸いです。」
「しかし”赤い星座”の情報はそっちの方でも掴んでないわけ?ギルドって、猟兵団と小競り合いをすることが多いって聞くけど?」
「確かに多いが”赤い星座”クラスの大物と事を構える機会は滅多にない。……下手をすればお互い全面戦争になりかねないからな。」
ワジに尋ねられたアリオスは重々しい様子を纏って答え
「そこまで……」
「遊撃士と猟兵……まさに正反対の存在ですしね……」
「何が何でも民間人を守る存在……金に雇われてどんな非道な事もする存在……よく今まで潰し合わなかったものね。」
「ちょっとした小国の軍隊レベルみたいですね……」
アリオスの話を聞いたエリィは厳しい表情をし、リィンとエルファティシアは真剣な表情で呟き、ノエルは不安そうな表情で言った。
「―――数ある猟兵団の中でも”赤い星座”は別格といえるわね。大陸全土のコネクションを持ち、紛争の兆しあらば即座に介入して自分達を高く売り込む……同じ猟兵団で匹敵しそうなのはかつて存在していた”西風の旅団”くらいかしら?」
「たしか、ルバーチェの若頭の古巣だった場所だったっけ?」
「……あっちもあっちで歴戦の猛者どもが集まる猟兵団だ。特に”猟兵王”と呼ばれたトップは化物みたいなヤツだったが……1年前のリベールの”異変”の件で”空の覇者”に討ち取られたらしい。」
ワジの疑問にランディは目を細めて答え
「一応、その情報についてはギルドの方でも把握しているわ。”異変”の際、”西風の旅団”はリベールの援軍要請に応えたメンフィル軍との戦いによって一人残らず殲滅されたから事実上壊滅しているそうだけど……”赤い星座”もその時の戦いでおよそ半数を失ったにも関わらず精力的に活動しているみたいね?」
ランディの話にミシェルは頷いた後真剣な表情で尋ねた。
「叔父貴が残っているからな。―――赤い星座の副団長、”赤の戦鬼(オーガロッソ)”シグムント。”闘神”と”猟兵王”に匹敵するほどの化物だ。」
「その3人は特に有名だろう。―――話を聞く限りでは、俺ですら太刀打ちできるかどうか。」
「そ、そんな……!?」
「”風の剣聖”が太刀打ちできない……?」
(相当厄介ね……)
アリオスの言葉を聞いたロイドは驚き、エリィは信じられない表情でアリオスを見つめ、ルファディエルは考え込んでいた。
「うーん、アタシの見る限りじゃ五分五分くらいかしら?剣士と猟兵じゃ、戦闘スタイルも得意とする間合いも違ってくるし。」
「……だな。アンタは確かに強いが叔父貴も正真正銘の化物だ。やり合えばお互いタダじゃすまねえだろう。……まあ、あのセリカって言うエステルちゃんが遊撃士協会に残して行ったとんでもない助っ人やヴァイスハイト局長、後はギュランドロスのオッサンが戦えば話は別かもしれねぇが……」
「……エステルちゃんに感謝ね。アリオスをあしらうほどのとんでもない強さを持つ助っ人を残して行ってくれたんだから。それに今のクロスベルにはあの”紅き暴君”や”黄金の戦王”だけじゃなく、”六銃士”全員が揃っているからね。彼らと協力し合えば勝利も見えてくるわね。」
「ああ、わかっている。―――だが必要とあらば敵対することもあり得るだろう。そしてその際にはセリカ殿達にも助力を頼むつもりだ。問題は彼らが何の目的でクロスベル入りをしたかだが……」
アリオスに言ったランディの言葉を聞いたミシェルは安堵の表情で溜息を吐いた後口元に笑みを浮かべ、アリオスは重々しい様子を纏って頷いて答えた後ある事を言い、アリオスの言葉を聞いた全員は考え込んだ。
「結局そこですよね……」
「これだけ情報を集めてもそこがわからないんじゃねぇ。手掛かりはエレボニア政府が絡んでいるってことくらい?」
考え込んだ後何も思いつかなかったノエルは溜息を吐き、ワジも溜息を吐いた後言った。
「それなんだけど……一つ、気になる情報があるのよ。共和国方面でアリオスが掴んできてくれたんだけど。」
「え……?」
「どんな情報ですか?」
「ああ――――”黒月(ヘイユエ)”についてだ。どうやら現在、共和国政府が”黒月”の長老たちと何かの取引を行っているらしい。」
「本当ですか……!?」
「”黒月”の長老というとシン君のおじいさまもそうね……」
アリオスの情報を聞いたロイドは驚き、エリィは黒月を訪ねた際、ツァオよりある人物の観光案内を依頼されて実行し、その時の人物の事を思い出した。
「……それでね。もう一つポイントなんだけど。その取引を主導したのがキリカ・ロウランって女性なの。」
「ええっ!?」
「それって……まさか、あのキリカさん!?」
「へえ、競売会の時に見かけた黒髪のお姉さんか。」
「実は、彼女は遊撃士協会とも縁がある人物でな……リベールのツァイス支部で受付をしていた経験もある。だが、1年ほど前に引退し、カルバードの情報機関に移籍した。その機関の名前を”ロックスミス機関”という。」
「そうだったんですか……」
「ロックスミス……共和国の大統領の名前ですね。」
アリオスの話を聞いたロイドは溜息を吐き、ノエルは考え込み
「大統領主導で、新たな情報機関が設立された話は聞きましたが……ちょ、ちょっと待ってください!”赤い星座”と”黒月”は以前抗争しているんですよね!?その2つに、二大国の諜報関係者がそれぞれ接触しているという事は……」
エリィは溜息を吐いた後ある事に気付いて表情を厳しくした。
「フフ、見事な対立構図が出来上がりつつあるというわけだ。」
「くっ……」
「ま、まさかクロスベルの地でエレボニアとカルバードの代理戦争を……!?」
そして静かな笑みを浮かべて言ったワジの言葉を聞いたロイドは唇を噛みしめ、ノエルは厳しい表情になった。
「当然、その可能性も考えられるわね。特に明日からの通商会議では。エレボニアからの宰相に皇子、カルバードからは大統領が来るわ。お互い機に乗じて、相手のトップを抹殺するつもりかもしれないけど……」
「だが、それにしてはお互い、接触を隠していないのは不自然だ。仮に”黒月”や”赤い星座”が動けばそうした背景が明るみに出て国際社会の非難を招き寄せるだろう。エレボニアにしてもカルバードにしてもそれだけのリスクを負うとは思えん。」
「う、うーん……」
「……確かに、短絡的な攻撃を仕掛ける状況ではありませんね。でも、それならどうして……?」
(裏組織を利用してまでやる事……ね…………元々二大国はクロスベルを手に入れる機会を狙っていたから、それに関する事だと思うのだけど……問題は通商会議で何のために裏組織を使うかね。)
ミシェルとアリオスの話を聞いてノエルとエリィは考え込んだが答えは出なく、ルファディエルも考え込んでいた。
「クソ、叔父貴ども、一体何を考えてやがるんだ……?」
「―――いずれにせよ、現在出来つつ構図には何らかの意味があるはずです。多分、俺達が手に入れていない”欠けたピース”があるはず……それを掴む必要がありそうですね。」
「あ……」
「フフ、なるほどね。」
「ウフフ、さすがロイド君。先回りされちゃったわね。」
「実は、我々も同じ見解でな。その”欠けたピース”についてはギルドの情報網を駆使して現在当たりを付けている最中だ。」
ロイドの言葉を聞いたエリィは明るい表情をし、ワジは口元に笑みを浮かべ、ミシェルは感心し、アリオスは口元に笑みを浮かべて言った。
「そうだったんですか…………」
「そんじゃ、何かわかったらこっちにも教えてくれんのか?」
「ええ、新たな事実が判明しだい、警察本部にも連絡するわ。」
「お前達の方でも何か掴んだら知らせてくれ。明日から3日間を何事もなく乗り切るためにな。」
「了解しました……!」
「何か判明したらすぐにお知らせします。」
その後、ツァイトと共にキーアとシズクがギルドに戻って来た。ロイド達は、父娘水入らずで夕食に行くというアリオスたちに別れを告げて支援課に戻る事にした……………
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第695話 | ||
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コメント | ||
感想ありがとうございます 本郷 刃様 まあ確かにww THIS様 ルファ姉がどうするかは今後をご期待下さいww(sorano) 本当に波乱になりそうだWWルファ姉。期待しています。(THIS) エレボニアとカルバードの代理戦争ねぇ・・・ぷっ、エウ陣営に制圧される姿しか思い浮かばんwww(本郷 刃) |
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