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第四十話 自由に生きろ
ジェイル視点。
「やれやれ。あのフェイト・テスタロッサが攻めてくると思いきや、君等が攻め込んでくるとはね。スバル・ナカジマ。ギンガ・ナカジマ。そして竜使いの少女。こんな所まで何をしに来たんだい?」
「もちろん…」
スバルとギンガは声を揃って言った。
「「逮捕だ!」」
その瞬間薄暗い洞窟の中で四人の戦闘機人たちがぶつかり合った。
「フリード、ブラストレイ!あの人の退路を塞いで!」
「きゅあーっ」
ナカジマ姉妹が戦闘機人の二人を抑えているうちにキャロとフリードがスカリエッティの後ろに炎の壁を作り逃がさないようにした。
「ぜいやぁあああああああっ!」
「く、このぉ!」
ブーメランに似た曲刀を持つ戦闘機人のセッテをスバルが。
両手、両足に光る羽のような刃を出現させたトーレをギンガが相手していた。
「これがプロトワンの力か!私達の方がデータ上では性能は上のはずなのに!」
「これが経験。人の技。経験の差よ!」
スバルとギンガのコンビネーションに押されていた
「…なら、君達よりも経験のある彼女ならどうなるかな?」
炎に囲まれた洞窟内で激しい攻防を繰り広げている中、その拳や蹴りが時折その炎を揺らす。その揺れた炎の中に突っ込んでくる紫の人影。
「スバル!?」
それに気がついたギンガはその人影が自分の妹に向かっていると気がつくと同時に彼女に呼びかけようとした時、同時に黒の人影が飛び込む。
そして、機動六課と不意に交差した銀と黒の人影がぶつかり合う衝撃でフリードの放った炎が霧散し、ぶつかり合った紫の正体が露わになる。
「…うそっ。…メガーヌさん」
ギンガは目の前で拳をぶつけ合った片方を見て、目を見開いた。
だが、驚いたのは管理局チームだけではない。
「…ガリュー。という事は」
「…ごめん。ドクター」
「ルーテシア…。君かい」
トーレはギンガと同じようにメガーヌと拳をぶつけ合っているマフラーをつけた昆虫じみた風貌の鎧を纏ったルーテシアの護衛をしているガリュー。
そして、スバルたちの後方にいたキャロの更に後ろの陰から現れたルーテシア。
「…『白歴史』では君は。…そうか、君は洗脳していなかったね」
私は申し訳なさそうにしているルーテシアの顔見てアサキムから聞かされた『白歴史』と今の状況を見比べ、ため息をついた。
「…トーレ、セッテ。この施設を放棄する。急いで脱出の準備を」
「「ドクター?!」」
トーレとセッテは私の言葉を聞いて思わず聞き返す。
「ドクターッ、何故です?!実力は拮抗。いえ、私達が上のはずなのにっ」
「トーレ、君は拮抗。と言ったね。それは勝てる可能性と負ける可能性があるという事だ」
「…っ」
トーレは悔しそうに表情歪め、セッテの方はそんなトーレを気遣うような表情を見せる。
この二人もだいぶ変わったな。
いや、その変化に気づけたのも…。
アサキムから渡された『ブラックワード』を解除したからか…。
この施設の遠い場所ではガジェットの捜査と施設全体にAMFを操作しているウーノを除くと、戦闘員は私自身を戦力に入れても四人。
対して管理局側は姉妹の二人に竜使い。そして、ガリューにルーテシアを入れると五人。
この戦力差は無視できない。下手したらゼストまでここにきてしまうかもしれない。
「…ドクター。その人」
「ああ、君のお母さんだね」
私とルーテシアの話を聞いてギンガはある考えが思い浮かんだろう。
母親であるメガーヌを人質にしてルーテシアを。そして、自分の母親であるクイントの元上司ゼストに自分達の活動を手伝わせているんじゃないかと。
「…もしかして」
「……貴方には関係ない」
「………ルーちゃん」
ルーテシアは無表情ながらにもガリューと鍔迫り合いをするように取っ組み合っているメガーヌと私を見比べて話しかけてくる。
それは無表情の中にも悲しみを秘めているようにも見えた。
「…撤退だ」
「…了解」
私の言葉にトーレは苦々しく頷いた。
が、それを見逃すほどスバルたちも大人しくしているはずもない。
「逃がすと思って」
「そこのメガーヌを解放すると言えばどうだい?」
私は皮肉に笑って見せる。
ああ、そうだったな。アサキム。確かに嫌だな。
誰かにこうも操られるというものは。
「…人質ですか」
スバルがスカリエッティを睨みつけ殴りかかろうとしたが、それをギンガが止める。
「落ち着いてスバル。…ジェイル・スカリエッティ、何を考えているんですか?」
「…なに。誰かにこう操られるのはこうも気持ち悪いものだな。と、思っただけさ」
「今までこんなちっこい子まで脅していたくせに何を今さら!」
「スバルッ!」
トーレとセッテは既にナカジマ姉妹から距離を取るようにこの二人から離れ、私を守るように立ちふさがる。
が、未だに私に((操られている|・・・・・))メガーヌは未だにガリューと取っ組み合いをしている。
「脅迫は確かにした。それは否定しない。だが、洗脳しているのはそこのサンプルだけだ」
「………アサキムの事を気にしているの、ドクター?だから私とゼストを洗脳しなかったの?」
「…どういうことなの?」
ルーテシアの言葉にキャロが質問をする。
裏切りの恐れがある。ゼストとルーテシア。アギトの三人は洗脳出来るのならした方がいい。
ゼストは高ランクの魔導師。アギトもユニゾンデバイスなので洗脳という事に対しては抵抗力がある。
現に少し前まではルーテシアは洗脳されていた。
だが、アサキムがスカリエッティに洗脳を解くように持ちかけた。
彼は『太極』に縛られている。だから、洗脳されているルーテシアが自分にも似ているような気がした。
アサキムにとってはルーテシアの洗脳は少しばかりに気になっていた程度だった。
だが、当時の私はルーテシアやゼストの力を捨ててでも、アサキムの力の方が魅力的だった。だが、
「こうして自分が枷から解き放たれて、自分に似たような存在。メガーヌを。そして、その娘のルーテシアを見ると胸糞悪いものだな」
自分自身もあの脳みそどもに目の前にいるメガーヌのように操られていたと考えると胸糞が悪くなる。
「…ドクター」
「………もし。もし、そちらの方に今までの罪を悔いているというのなら自首をしてください。今からでも間に合います」(あのジェイル・スカリエッティに罪悪感があるというのなら…)
ギンガはもしやと思いながらスカリエッティに自首を勧めるが、それは否定した。
「操られていた。枷をつけられていた私に?操られていた私の娘達に?それは無理というものだ。私を罪に問うというのならそこのルーテシアも同様に裁かなければならないぞ」
「っ」
「私はね。やっと、本当の意味で自由になれたんだ。管理局の暗部の研究もしない。ただ思うが儘、わがままに生きる。ブロックワードも外れた。私は自分の意志で、生きられるんだ!」
「……ドクター」
そんな目をしないでくれルーテシア。
私は最高に幸せというものを感じているんだ。
「そ、それでも貴方をそのままにしておくわけには…」
スバルがまだ何かを言おうとしたが、それを遮るかのように私達と彼女達を遮るかのように透明な隔壁が現れる。
この隔壁は防弾ガラスをさらに強化した物だ。いくら彼女達が攻撃を加えようとそう簡単には壊れない。
「…本当はここでフェイト・テスタロッサを相手するために設置した罠だったんだが、君等とは相性が悪かった。ワイヤートラップを引きちぎりながら攻撃してくるんだからね」
フェイトのバリアジャケットのように防御力が低い場合、ジェイルの手袋から出てくる赤いピアノ線のような物で相手の動きを拘束する。
だが、ナカジマ姉妹は近接格闘戦を想定したバリアジャケット構造。機動性よりも防御力を取っているのでピアノ線はあまり効果は見られなかった。
「な、待て!」
転送されていく最中、スバルが私達を捉えようとしたが、彼女の手が届く前に目の前に現れた隔壁に邪魔されてその手が届かない。
「あと、ここの施設の自爆装置も起動させた。君達の場合、すぐにでも取りかからないと解除できないよ」
「…メガーヌさんで足止めしている間に私達ごとこの施設を吹き飛ばすつもりですか!」
「残念ながら彼女の調整は急だったんでね。私達に攻撃を仕掛けようとする者には攻撃するけど、それ以外の事には何もしないんだ」
私は肩をすくめながら短い髪の方。スバルの発言に答えた。
「………ドクター。それ以上は」
「おっと。口が過ぎたね…。だが、自由というのはこんなにも素晴らしい者なんだね。アサキムが欲しがるのもわかるよ」
トーレが私の言葉を遮るように声をかけてくる。
この感動。歓喜。あの脳みそ共の傀儡だった頃には味わえない解放感。
この感覚を娘達にも知って欲しいだから…。
「トーレ。セッテ。ウーノ。いや、全ての私の娘に最後の命令だ。『自由に生きろ』。私の元を去るのもいい。このまま私についてくるのもいい。裏切りも服従も何をしても構わない。自分で考えて自分で決めて、『自由に生きろ』」
『私は貴方についていきます。ドクター』
音声だけではあるが、ウーノの声が聞こえた。恐らく捜査室からスピーカーを通じて声が聞こえた。
その言葉を聞いたトーレは深く頭を下げながら言った。
「ウーノ姉様とドクターだけを置いてはいけない。私もついていくぞ。ドクター」
「…私も」
セッテが何かを言おうとしたがそれをトーレが止めた。
「…セッテ。お前まで付き合うまでもない」
「………私は。っ、ドクター?」
セッテが何かを言う前に私もまた、トーレの頭の上に手を置いた。
「セッテ。さっきも言ったよね、『自由に生きろ』と」
そう言うとセッテは黙り込んだ。私達についていくことに抵抗を感じているのだろう。
それも仕方ない。枷をはめられていたとはいえ、私達は罪を犯した。今から行おうとしているのは正義を語る者達からの逃亡生活になるだろう。
逃亡生活中にその罪悪感に潰されてしまうかもしれない。
「スバルさん!ギンガさん!この施設は後数分もしないうちに本当に吹き飛んじゃいます!手伝ってください!」
「〜〜〜〜〜〜〜っ!絶対に、絶対に捕まえてやるんだから!」
「スバル!手伝って!今は少しでもこの施設の自爆装置の停止させないと!」
管理局のメンバーはルーテシアとガリューにメガーヌの動向を見守らせながら近くにあったコンソールからこの施設の自爆を阻止しようとしている。
「………ドクター」
今にも転送されそうな私とトーレを目の前にセッテは私から一歩離れて真っ直ぐに私の顔を見る。
「今まで何一つ親らしいことが出来なくてすまなかったね。セッテ」
「…そうでもない。姉様や妹達と遊べたから、全然つまらなくは無かった。少しは楽しかった」
セッテが笑った表情を見るのはこれが初めてだな…。
彼女もまた私の元を離れて自由になった。
「…そうか。管理局の諸君。こんな事を言えた義理ではないがセッテを、そしてこの施設にいるまだ起きていない娘達をどうかよろしく頼む」
「まあ、悪い待遇をしたという情報を聞いたら私達が助けに来てやるから安心して捕まるといい」
トーレはぶっきらぼうながらにも自分から離れていく妹に激励の言葉を投げかけた。
「…ドクター。トーレ姉様。また会える?」
「…さあな」
「…ああ、これが本当に最後の会話になるみたいだね。ああ、最後に管理局の諸君。私からの置き土産だ。よーく、聞きたまえ。『聖王のゆりかご』、あれにはAMFを発生させるガジェット以外にももう一つある機能が備わっている。それはあの『尽きぬ水瓶』に関連する物なんだがね…」
アサキム。あれが本当に機動したらいくら君でも勝てないんじゃないかな。
あれが起動したその時、君は…。
フェイト視点。
アリサと一緒に『聖王のゆりかご』に突入できたのはいいけど、問題は山積みだった。
先程、判明したアリサは動力炉を壊しに行き、私がヴィヴィオが捕らわれているだろう操艦室へと向かう。
途中でガジェットの妨害もあったけど何とか辿りつけただけどそこにいたのは…。
「…フェイトさん」
玉座に無理矢理座らされて身動きが取れないように拘束されたヴィヴィオ。
今も苦しそうにしているとこを見るとヴィヴィオがこの『聖王のゆりかご』の操艦をしているのは間違いなさそうだ。
だけど、問題は。
「あらあら、フェイトお嬢様がこちらの方に来られるなんて思いもよりませんでしたわ。でも、フェイトお嬢様も。あの侵入者もエースクラスの攻撃力を持った方でよかった。だってぇ」
クアットロは自分の手元に浮かび上がったコンソールパネル操作してフェイトに襲い掛かる二対の鎧を操作してフェイトを攻撃している。
その襲ってくる鎧の外観。
全体的に白い丸みを帯びた騎士然とした甲冑を身につけた鎧が二体を相手にしていた機械人形を相手にいしていた。
「くっ、このぉっ」
私はバルディッシュを振るい、二体の鎧の攻撃を捌く。
王冠じみたチャクラムに赤いマントを羽織った機械兵にフェイトは表情を歪める。
「聖王機クローンと聖王機の正当縦者ヴィヴィオ。『聖王のゆりかご』の操艦が出来なくても操艦者を守るための鎧。サフィアーダ。そして聖王機ジ・ベルカ・アークライナスがはつかえますわぁ」
クアットロの操作でフェイトに襲い掛かる二体の鎧はその攻勢を一進一退にしていた。
「さあさあ、フェイトお嬢様。貴方のお友達の方はどれだけ耐えきれるんでしょうね」
説明 | ||
第四十話 自由に生きろ | ||
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コメント | ||
誤字修正しました。申請ありがとうございます(たかB) 赤いマントを羽織った機械塀にフェイトは→赤いマントを羽織った機械兵にフェイトは だと思われる。(シキ) アサキムから渡された『ブラックワード』→アサキムから渡された『ブロックワード』 だと思われる。(シキ) 誤字修正しました。申請ありがとうございます(たかB) 誤字報告 姉様や妹建と遊べたから→妹達 ですかね 機械人形を相手にいしていた→”い”はいらないかと ジェイルがまともだ…(雷光) 最終話まで残り数話と言った所かな?(ohatiyo) |
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