真恋姫†夢想 弓史に一生 第八章 第十話 
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〜聖side〜

 

 

 

 

曹操の天幕から出た俺は、そのまま自分たちの陣へと向かう。

 

その後ろを急ぎ目に付いてきた橙里と麗紗だが、既に息も絶え絶えだ。

 

 

 

「…はぁ……はぁ……先生、ちょっと待って欲しいのです!!!」

 

「はぁ……はぁ……お兄ちゃん…待って……。」

 

 

 

後ろを付いてくる二人に配慮が出来ていなかったと気付き、俺は一度立ち止まって彼女たちが追い付くのを待った。

 

 

 

「悪い。ちょっと早かったか?」

 

「はぁ……はぁ……それは、良いんですけど……良かったのですか、先生?」

 

 

 

追いついて少し呼吸を整えた橙里は、先ほどから疑問に思っていた質問をぶつける。

 

 

 

「ん??何がだ?」

 

「曹操の事なのです。五万の兵力で広陵を襲うと言っていたのですよ!?」

 

「あぁ。それについては問題ない…。あれは俺を値踏みするための嘘だよ…。」

 

「嘘っ!!?? しかし、そんな証拠がどこに………。」

 

「それは、曹孟徳っていう人の問題かな。」

 

「……?? 意味が分からないのです…。」

 

 

 

それもそうか…。彼女たちは曹孟徳と言う人物がどんな人間だが知らないのだから…。

 

とはいえ……俺も本で得た知識程度しかないし、実際に彼女がそうと言うのは些か安直すぎるが……。

 

 

 

 

「彼女のあの威圧感。あれこそ覇王たる曹孟徳のものさ…。だからこそ彼女は町を襲わないし、俺もそれを信じてる。」

 

「あの……その……やっぱりわからないんですけど……。」

 

「もしさ……ここで俺の町を襲うとしたら、二人ならどうする?」

 

「それは、兵を引き連れて広陵の町に……。」

 

「この町をこのままにしてか?」

 

「「っ!!?」」

 

「そう…。もしそんなことでもしようものなら、『この町がこんな状態なのに放っておいた』とでも噂を流せば、曹操軍の評判はガタ落ち、彼女たちの町でその事を話して回ればそれだけで民心の心は離れて、曹操の覇道への道は終了さ…。そんなことも覚悟で襲ってくるって言うなら、話は別だけどね…。」

 

「た……確かに……。言われれば納得するのです…。」

 

「でも……襲ってくることもないとは……。」

 

「いや、ないね…。曹操と言う人物がそれを物語っている。彼女は計算高い……俺を逃がさないように到着予定日をずらして部下に言うようにしている所とかはさすがだ…。だからこそ彼女なら考える。評判を落とすことに何の得もないことを…そして彼女なら考える…今後敵になるに値する人物かどうかを試す方法を……。」

 

「な……成程……。流石、お兄ちゃんです!!」

 

「さぁ、分かったらとっとと帰ろうか…。こんなとこに長居してると、色々と情報を相手に与えちまう…。次に会う時はたぶん戦場で敵同士だ…。下手に付き合うと情が出ちまうからな…。」

 

「「…………ふふふっ…。」」

 

「あぁ?? 何でそこで笑うんだよ…二人して。」

 

 

せっかく人が真剣に話してるって言うのに………。

 

 

「だって………お兄ちゃんは優しいから……。」

 

「戦場で会ってもどうせ峰打ちして、命までは取らないのです。ならば、情などあろうが無かろうが同じなのです。」

 

「…………………へっ………分かったような口を利くじゃねぇか!!」

 

 

二人の至極真っ当で、しかし世界観的には間違った答えに思わず苦笑と照れを覚えながら、二人の頭をゴシゴシと撫で、そのまま陣地に帰っていく聖であった。

 

 

 

 

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〜桂花side〜

 

 

 

 

…………何であいつが居るのよ……。

 

…………何であいつが来るのよ……。

 

…………何であいつに裸を見られなきゃいけないのよ……!!

 

 

 

「あぁ〜!!!!!!!!!!!!! 殺してやる!!!!!! あいつを殺してやる〜!!!!!!! そして男なんて言う気持ち悪い変態に見られて汚れた身体を、華琳様に浄化してもらって………それから………っへへ………。」

 

 

 

聖が曹操と話をしている天幕の裏側では、桂花がその顔を赤くしたり青くしたりと忙しくしていた。

 

 

 

「……それにしても、なんであいつが広陵の太守なのよ……。」

 

 

そう。私が初めて彼に会った時には彼は唯の義勇軍の大将だったはずだ…。

 

ならば、この短期間に名を上げたと言うのか…。

 

 

「いやっ、それもないわね…。そう考えると、あいつが広陵の太守に任じられたのはもっと前……広陵の町の発展を許昌の町で聞くようになる少し前くらい…。」

 

 

 

私があいつに会ったのは許昌の町に入る少し前だから……。

 

 

 

 

………と言うことは…。

 

 

 

 

 

「あいつ!!!!! 私を騙してたのね!!!! 偽善者ぶって私を助けて恩を売ろうと言う魂胆だったわけ!!!! ふんっ!!! そんな手なんかに乗るもんですか!!!! あんたのことなんか文字通り知らなかったことにさせてもらうわよ!!!!!」

 

 

 

勿論聖にそんな打算があったわけではないのだが……勝手に勘違いしている桂花だった。

 

 

 

その後、着替えて戻ってみると聖の姿はどこにもなく、代わりに曹操が「彼、私の軍に欲しいわ…。」と呟くのを聞いて、必死に聖の悪口を連ねてあいつなどいらないと言う事を説き伏せる桂花の姿が曹操軍の中で目撃されたと言う……。

 

 

 

 

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〜聖side〜

 

 

 

 

 

 

「……ぁっ……先生…??」

 

 

 

「……何だ??」

 

 

 

「あの……このままだと……。」

 

 

 

「……そうだな、入っちゃうな…。」

 

 

 

「あの……その……流石にいきなりと言うのは……準備が出来てないのです……。」

 

 

 

「今すぐじゃないと駄目なんだ……どうしても無理か……??」

 

 

 

「先生は言っても聞かない人だとは……分かってるつもりなのです…けど……。」

 

 

 

「なら良いだろ? それとも、橙里は俺の事が信用できないのか?」

 

 

 

「………いいえ。心から信用しているのです…。あなたの愛に答えるために…。」

 

 

 

「なら、四の五の言わずに受け入れなきゃな……。」

 

 

 

「………はい…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやっ、駄目でしょ!!!!!! 何、説き伏せられてるの橙里ちゃん!!!! 使者ぐらい送らないといくら周知の中とはいえ、流石に桃香ちゃんたちに会うのは無理だって!!!!」

 

 

 

 

所変わって今現在は平原の町。

 

 

 

 

黄巾の乱で戦果をあげた桃香達は、帝から平原の相へと任命されこの地を治めている。

 

その祝いと黄巾の時の詫びをしに、今回の遠征の後、橙里と一刀だけ連れて来たわけであるが……。

 

 

 

 

「いや〜そこはさ。ほらっ、俺ってあの戦で有名じゃん? だから顔パスで……。」

 

「流石に無理だろ…。向こうはここら辺を治めてる存在、かたやこっちはここら辺ではただの一般市民。門兵に門前払いされるだけだろ…。」

 

「じゃあ、俺の幻視を使って門兵に偽の映ぞ………。」

 

「やめとけって!!! それ後で問題になるからな!!!!」

 

「………冗談が通じない奴め。」

 

「聖の場合それが冗談で終わらないから注意してんだよ…。大体この恰好からしておかしいんだから、これ以上目立つようなことしたら今度こそ警備兵呼ばれるからな。」

 

「この恰好のどこがおかしいんだよ…。どこからどう見ても、可愛い女の子三人組だろうが。」

 

「いやっ…まずそこがおかしいから!!」

 

「恥ずかしいのです先生〜………絶世の美女なんて〜………。」

 

「何気に話盛ってるし!! そこまで言ってなかったと思うけど!!!」

 

「おかしくなんてねぇよ。俺達はあの戦で顔を売っちまったから、変装でもしないとこうしておちおち歩いてられねぇんだ。桃香たちがどんな町を作り上げているのか……こうして一庶民の目から見ないと見えないもんだろ??」

 

「……それはそうかもしれないけど…。」

 

「それに良く似合ってるぜ、一子ちゃん!! ………ぷっ…ふふふっ……。」

 

「お前完全に馬鹿にしてるだろ!!!! 自分が少し似合うからって!!!!!!」

 

「ふふふっ……大丈夫だって……よく似合ってるぜ……芽衣から借りた修道服……ぶふっ……くくくっ…。」

 

「怒りたいが…………まぁ、聖の格好よりはマシか……。」

 

 

 

 

会話の内容から分かると思うが、俺達は変装しながら平原の町をうろついている。

 

と言っても、橙里は本陣に居たため、あまり顔がばれていないのでそのままであるが、俺と一刀は最前線にいたため顔がバレている恐れが強い。

 

そのため、女装すれば大丈夫だろうと言う予想の下、一刀には芽衣の修道服を着て貰ってかつらを被ってもらい、俺は少し長くなった髪を橙里に結って貰ってお団子にし、奏が貸してくれたチャイナドレスを着ている。

 

 

 

ちなみに一回着て見せた時には、我が軍の重鎮の八割が暗い顔をしていたが……あれは何だったのだろうか…。。

 

 

 

 

「とにかく、桃香たちに挨拶に来たんだから、このまま帰るなんてことは出来ねぇよ。なんとかして会う方法を考えなきゃな。」

 

「そうですね、先生。こうして街並みを見る感じでも良い雰囲気が出ているですし、きっと立派な太守に桃香様もなられていると思うのです。」

 

「まぁ、まだ治めて半年だけどな……。」

 

「逆を言えば、半年でここまでなったと言うことだろ?」

 

「確かにな、違いねぇ。流石、天下に名を馳せるに値する人物だ……。」

 

「えっ!!? 先生は桃香様が天下に名を馳せる人物だとお思いですか!!?」

 

「橙里はそう思わないのか?」

 

「…………あの……周りの方々は優秀な方ばかりですけど……本人が……その……。」

 

「言わんとしたいことは分かるがな。でも、決して君主が優秀だから天下に名を馳せる訳じゃあない。自分にない者は他の人で補う。そうすることで、足りない部分のない大きな一人を作り上げるっているのも、一つの天下への向かい方だと俺は思うがね…。」

 

 

 

己が力で仲間を導き天下へと名を馳せる者がいれば、集団の力で天下に挑む者もいる。

 

そのどちらが強いかは定かではないが……結局目指すべきものの先にあるものだが同じならば、どちらも天下を目指すに相応しいものだと俺は思う。

 

まぁ、俺は俺のやりたいように行くが………。

 

 

 

「へぇ〜……聖も色々と考えてんだな…。女の子の事以外で……。」

 

「…………俺は脳内ピンク野郎か…。」

 

「…………間違ってなくね?」

 

「…………あのな…俺だってk『きゃあああああぁぁぁぁ!!!!!!!!!』………んっ??」

 

「通りの向こうの方なのです!!!」

 

「行ってみよう!!!」

 

 

 

急いで声のした方に向かうと、三人の賊が一人の女性店員らしき子を囲んでいる。

 

周りを囲まれていることと、男たちの持つ剣に恐怖を感じ、女性は身動き一つすら出来ない状態。

 

これは直ぐにでも助けてあげねば!!!!!

 

 

 

「先生!!!! 早く助けてあげない……………と……???」

 

「聖!!!! 早く助け…………るぞ……??」

 

 

 

二人が振り向いた先には居るはずの自分たちの主はいなく。

 

二人とも同時にいやな予感がしたと言う。

 

そして、その予感は的中する。

 

 

 

 

「へへへっ……お嬢ちゃん。なに、難しいことは言ってねぇ……ほんのちょっと俺達に付き合ってくれればいいからよ……。」

 

「そうそう……。付き合ってくれたら、お礼に最高に良いものをくれてやるから……クヒヒッ……。」

 

「逃げ出そうなんて………考えない方が身のためだぜ??」

 

「…………誰か……誰か助けて!!!!」

 

「誰も助けになんて来るわけg『待てぇ〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!』………あん??」

 

「片手にピストル、心に花束、口に火の酒、背中に人生を!!!! (ビシッ!!!)   助けを呼ぶ悲鳴を聞き、蝶々マスクパピヨン、只今見参!!!!!!」

 

「「…………やっぱり、嫌な予感がしてました…。」」

 

 

例のマスクを付け、賊の前に登場する俺。

 

急に俺が現れたことに賊は動揺する。

 

 

 

「まぁ、無理もない。このマスクを見れば、あまりの素晴らしさにお前らが怖気づくのも分かる…。」

 

「はっ…?? そのどこが素晴らしいって言うんだ!!!! ただ単にヘンテコな仮面z『チェスト〜!!!!!!!!!!!!!!!!』ぶはぁぁぁあああああああああ!!!!!!!!!!!」

 

 

 

賊の一人が俺のマスクを批判したようだが……そう言う輩には愛の鉄槌をくらわすのも正義の勤め……。

 

綺麗にシャイニングウィザードを決め、戦闘不能に追い込んだところで残り二人を見やる。

 

 

 

「さて、君たちはさっさとその子を離さないと、こいつと同じ目に遭うぞ?」

 

「………ぁぐ……。くっそ!!!!! 女!!!! こっち来い!!!!!」

 

「きゃああああ!!!!!!」

 

 

 

賊たちは、女性店員を無理やり拘束すると、盾にするようにして人質にとる。

 

 

 

「どうだ、これならあんたも手出しできまい……。大人しくそこで指でも銜えてみてるんだな。」

 

「ぐっ……卑怯者……。」

 

 

 

くそっ……一刀や橙里は反対側だし、一足で到達できる距離でもねぇ……。

 

何か……何か手はないか………。

 

 

 

「へへへっ、あんたも一緒に可愛がってy『ぎゃあああああぁぁぁ!!!!!!』っ!!! どうした!!!」

 

 

 

賊の内の一人が急に倒れたかと思えば、捕らえられていた女性は逃げだし、代わりにマスクをつけた女性がその場にいた。

 

 

 

「天知る、神知る、我知る、子知る!悪の蓮花の咲くところ、正義の華蝶の姿あり!かよわき華を護るため!華蝶仮面ただいま参上!」

 

 

 

そして、決めポーズを決めながら大仰なセリフで名乗りを上げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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弓史に一生 第八章 第十話    華蝶仮面    END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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後書きです。

 

第八章第十話の投稿が終わりました。

 

 

そして、百話の投稿も無事に終わり、一年と一カ月ほどですが、掲載を続け、多くの人に読んでもらえたことがすごくうれしいです。

 

 

まだまだ物語としては序盤の方ではあるんですが、ここからは展開は早いとは思うので、何とか二百話までには収めたいところではあるんですけどね……。

 

 

 

さて、前々から申し上げておりましたが、百話投稿を記念して、今話ではアンケートを取りたいと思います。

 

アンケート内容は前にも書いたのですが、『本郷一刀は幸せになってもいいか?』と言うことです。

 

 

具体的に申しますと、私の物語の主人公は聖さんであって、一刀はあくまで仲間の一人的扱いです。しかし、そこは原作主人公である一刀ですから、少しくらい彼にも良いことがあってもいいのでは?と言う考えに至りまして、皆さんに問う形となっております。

 

 

ですので、アンケートの回答には、@幸せになってもいいのかどうか、A幸せになるなら誰となるか(@で幸せにならなくてもいいと回答した人は無記入でお願いします。)で答えて下さい。

 

 

 

また、回答はコメント欄に書いて頂いても構いませんし、熱い思いの程を書き綴りたい、他の人に読まれるのが嫌、こういう流れでこういう風に惹かれあって、こういう風に結婚してなど長くなりそうな等の場合はショートメールの方を直接送って頂けると助かります。

 

 

 

アンケート終了は次話を投稿するまでとなります。

 

予定では9月9日日曜日に次話を投稿するので、その日までにお願いします。

 

 

 

それでは、百話まで見ていただいた皆さんここまでありがとうございます。

 

これからもお付き合い下さると幸いです!!

 

それでは、また次話でお会いしましょう!!

 

 

説明
どうも、作者のkikkomanです。

ようやく百話投稿となったわけですが、ここまで一年と一月かかってまだ黄巾の乱が終わったところとか……先が思いやられる所です…。


さて、今話ではあの人が登場しますよ!!

勿論、あの話を書いた以上はこうなることを望んで書いてましたがね!!



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