超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 リーンボックス編 |
ーーー『元』パーティー?紅夜って、私達以外にパーティー組んだことあったの!?
頭に響くその言葉。
振り払いたくても、消したくても、それは湖に巨大な物が落ちた時に発生した波紋のように広がるだけで決して止まる気配を見せない。
ネプテューヌーーー革新する紫の大地の((守護女神|ハード))。
ベール自身、敵である感情以外それほど彼女に抱いた思いはない。
彼女の性格は、四女神中最も明るく、戦闘力も中々の物だが、女神としての義務には無頓着な部分がある。
仕事を良くサボって、草原などで昼寝したり、とにかくサボり魔でいつもイストワールの眉の説教を受けていた記憶がぼんやりとある。故に、ベール自身は彼女に負けるとは想うことすらなかった。
……しかし、今の状況はどうだろう?
女神である故に、いつか永遠のお別れがくることは承知の上でも、紅夜と過ごした日々はベールにとって宝物だ。それは、自身と紅夜がいたからこそだ。
紅夜は困っている人を放ってはおけないお人好しで、ベールの手からよく離れたりしていた。
しかし、約束をしていつでも帰ってきてくれた。ベール自身も少なからずリーンボックスの住民として活躍している紅夜のおかげで信仰シェアが集まっている。
その大切な物が、勝てると自信がある相手の隣に立って、対峙している。
紅夜は、ネプテューヌの為に名誉も財産も信頼も、全て投げ捨ててて傍にいる。
それを見た時、知った時、どうしようもなく心が痛くなった。
刃物の先端で突かれて、破裂して中に詰まっていた溜まっていた想いが濁流のように勢いよく流れ込んでベールを苦しめる。
「……本当に、紅夜には苦労させられるよ」
地で見上げた太陽のように真っ白な色のコートで身を隠し、思わず嫉妬してしまうような美貌。
見惚れてしまうほどに美しい黄金の長髪と同じ冷たくも視線を誘う宝石のような銀眼。
あの時の人物。人間が踏み入れることが出来ない女神だけの世界。神界で四女神が戦っている時に来襲してきた者は紅夜を守る様に、ベールと対峙していた。
◇
「安泰と平和……ですって?」
「そう、みんな笑顔でみんな平等な永遠に実現不可能なレベルの夢物語だよ」
思わず、乱入しちゃった(´・ω・`;)
今のベールって確実に病んでいる……よね?
身近に一名どうしようもないヤンデレキャラがいたからこういうのには敏感になっちゃったけど、全く紅夜のフラグ建築技術には空いた口が閉じれないよ。女神とラブラブするまでならまだ、予想の範囲だったけどさ……まさかここまで執着されるまで好感度を上げているだなんて……恐るべきフラグメイカー!
「一応、警告のつもりで大人しく退くならなにもしないよ?」
「紅夜は私の国の住民ですわ……退くのはあなたの方です」
そういわれてもねぇ?今の君の様子だと、二つ選択肢が脳内に浮かんでいるんだけど
1.「あっ、そう」と言って引き下がる←紅夜の監禁エンド
2.「今の君は危険だ。よって、それ相応の対処に移る」←確実に戦闘フラグ
……うん、どっちも嫌な感じだ。
恋の闇に囚われた女神以前にただ一人の少女を平和的に和ませてバイバイする方法はないのかな?
「空、なんでお前がここに……?」
「僕の知っている紅夜なら、任せていいんだけどね……精神的に童貞な君には重すぎると判断したまでだよ」
両手に小剣である『オスカルト』『エィロワ』を握りしめて、戦闘態勢に移行する。
僕の親友であった紅夜から生まれた落とし子である今の紅夜は、オリジナルである紅夜の意思がかなり反映されているが、今の紅夜自身は生まれてまだ一年ぐらいしか時を生きていない。
思考、精神を無理やり熟成させているような、教科書通りにしか動けない紅夜にこの状況は重すぎるんだよ。
「……俺がやる」
肩を掴まれ、紅夜は僕を見つめてきた。
「……どうする気?」
「ちゃんと話し合う」
大きくため息を吐く。肩を動かして、手を退ける。
「今の彼女の耳に届くことは、全て自分の利益になる様に勝手に脳内変換させるんだよ?経験者から言わせてもらうけど、無力化したほうがいい」
「ベール!!」
紅夜は僕を無視して、一歩前に出た。
「……紅夜、一緒に帰りましょう?」
「あぁ、俺も帰りたいよ……けど、今のお前は教会の言葉を疑わず鵜呑みにして、何も見ていない。俺のことを想ってくれてありがとう。だけど、だからって、お前はここにいるべきじゃないだろう?」
「どういう意味ですか!?」
「……きついことを言うかもしれないが、お前は……女神だろう?」
「−−−−−−−」
その一言に紅夜の想いが伝わったのか、グリーンハートの表情が変わった。
「女神グリーンハート、この大陸にはお前の知らない闇がある。お前が遊んでいる間に広がってしまった闇がある。俺達はそれに嵌められたんだ」
「………闇…?私の…国に…?」
「あぁ、だから。俺と一緒に来てくれないか?このままだと貴族側と教会側の間に戦争が起こる」
「…………」
あれ?なんだかグリーンハートが徐々に正気に戻って行っている気が……。
このままだと、あっさり解決しちゃう?僕がしたことなんだっけ?
「俺がなぜ、お前を裏切るようなことをしてまで教会を襲い、ネプテューヌに付いていったのかそれも全て話す。そして考えてくれ、それでも俺を教会に戻したいのなら俺はお前に従う。対話で解決できるのなら、これ以上に平和じゃないだろう。俺は……もう、お前と戦いたくなんてない」
「……勝手、ですわ…」
「いつも、お前は勝手を俺に押し付けるだろう?たまにはやり返しさせろ」
グリーンハートの瞳に徐々に光が戻ってきた。
力が抜けた様に肩を下ろした時、光がグリーンハートを包みんで、女神形態から人間形態に変わる。
「……信じていいですね?」
「あぁ、俺を信じてくれ」
………僕の出番、終わったぽいです。流石紅夜!主人公補正っぱないです!
◇
「……ということなんだ」
「そんな……ことが…」
ジャッドの家の客室に無事に集まった俺は、まず今までのことを全て話した。
まずネプテューヌの出会いから、ラステイションでの出来事。
そして、ここに戻ってきてイヴォワール教院長に言い渡されたネプテューヌ暗殺の件を断った結果、どんな目に合ったのか、無事に合流したネプテューヌ達と話を混ぜながら、ベールに伝えた。(あのダンジョンには何もなかったらしい)
「洞窟の出口に爆薬が隠されていた。……コンベルサシオンさんは、ネプテューヌ達を生き埋めにするつもりだったんだろうな」
「……………」
ベールは顔を蒼白くして、今にも倒れそうな姿を横から支える。
ネプテューヌ、アイエフ、コンパを向かう会う形で俺の隣にはベールがいる。
「ところで、一ついいかしら?」
「ん?」
ベールを支えているとアイエフが挙手する。
「なんでここにグリーンハート様がいるの!?」
「なぜって……?あぁ、貴方達に見せたのは、女神化状態のことですわ」
「女神化……ですか?」
コンパが頭を傾げた。俺は二本指を上げて説明する。
「女神には二つの姿があるんだ。一つは俺達とほとんど変わらない姿の人間形態、莫大な((信仰力|シェアエネジー))を消費することを犠牲に戦闘力を高める女神形態の二つがあるんだ」
「へぇ〜、なんだか女神様ってすごいんだね〜〜」
ネプテューヌが深く深く頷きながら、納得する。
この場の全員が冷たい視線を向けるが、話しを続ける。
「話しを戻して、これからどうする?デペア曰く、死者に生気を送ることで無理やり生きている様に見せかけている技術でスパイ活動していたコンベルサシオンが倒れた。そして、いま貴族と教会の間に嫌悪な空気が流れているんだが……」
「私は、教会側の話しかお聞きになりませんから、貴族側の状況が分かりません。どうしてそんなことになったのですか?」
「えっとね。貴族長から聞いた話なんだけど………教院長が本当のコトを隠して、勲章を返せなんて言ったから、貴族の人たちが怒っているんだよ!」
「詳しいことは私が話します。実はーーー……」
大雑把すぎるネプテューヌの説明をフォローするように、アイエフが語り始める。
数十年前に教会の国政院が女神が留守をいいことに権威と役目を独占して後にギルドと呼ばれるようになる異教徒たちを集めて教会襲撃を計画した。
その攻撃に対して疲労した教院派は、貴族派に救援を頼んで結果的に異教徒たちを逃がしたが、その実績は女神に勲章が遅れる程の大活躍だったそうだ。
しかし、今の教院長にとっては身内の汚れた事件を隠蔽することを決意してこの事件に関わる関係書類を燃やして、公言を禁止させて、勲章を取り上げようとした。
「十年前…確かにそんなことがありました。勲章を私自身が貴族長にお渡ししたことも記憶にあります。………あの貴族長が、そんなことをしていたことには信じがたいことですが……」
ベールは、俺とネプテューヌを交互に見る。
自分を責めるように迂鈍と罪悪感を映す表情で頭を抱える。
「私がもう少ししっかりしていれば、紅夜にもあなた達にも迷惑を掛けることはなかったのに……本当に申し訳ありませんわ」
「グ、グリーンハート様。頭を上げてください!」
「そうだぞベール。懺悔と謝罪より先にお前にはやることがあるだろう?」
「……そうですわね」
ネプテューヌ達に向けて下げていた頭を上げて、ベールは立ち上がる。
「付いてきてください。教会で直接、教院長に審議を問いますわ。この前と違いあなた方には絶対に迷惑をおかけしません。この大陸の守護女神ハードの名に誓って」
自分に言い聞かせるように静かに、しかし強く誓いを立てた。
ゲームをして楽しそうにしているベールはここにいない。モンスターという災いを排除しようと敵を見つめるような決意の瞳。ネプテューヌ達は視線を合わせて、頷くと立ち上がる。
「全てが終わったら今までの謝罪と感謝をこめて盛大なパーティを用意しますわ」
「それ本当!?いや〜、流石にあんな目に合ったからもうこりごりなんだけど、流石にパーティとなると楽しみだよ!」
「リーンボックスが誇る優秀なコックを集めて、おいしい料理を歓迎しますわ。あ、紅夜も勿論来てくださいね」
「はいはい、お前がそんなこと言えば拒否権がないことぐらい分かっているさ」
ふと、手を見つめる。
ネプテューヌ達、ベールにも伝えていない俺と言う存在。
本物が復活するまで造られた代わりの者が俺だ。
精神を破壊された零崎 紅夜の修復が終われば俺はお払い箱。あっという間に消えて無くなる未来が見える。誰かの為に死ぬのではなく、寿命が尽きて死ぬのではなく、ただ消滅するだけが俺の定められた人生の終わり。それが訪れるのは今?明日?明後日?……そんなこと分からない。だけど、それでも、俺のすべきことは決まっているよな。
「紅夜、こっちを向いてください」
「ん?ーーーーむっ!?」
見下ろしていた手からベールの方に向くと同時に唇に柔らかい感触が触れた。
視界は、全てベールの顔で埋め尽くされていた。口を封じられたので声を出ない。
突然のことに唖然としていると、ベールが離れた。指を口に当て片目だけを空けて、恥ずかしそうに顔を紅潮させていた。
「これはお礼ですわ。私のファーストキスーーーどうぞ貰ってください」
「−−−−−−」
そのあと、屋敷の窓ガラスが全て割れるほどの大絶叫がネプテューヌとコンパから放たれた。
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