超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 リーンボックス編
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あー……なんて居づらい雰囲気なんだ。と俺は内心呟いた。

女神専用の応接間、そこらの部屋とは格段に違うほどの豪華さと広さで、部屋から見渡させる景色はリーンボックスの雄大な自然と蒼穹の空が広がっている。そしていっその事、あの自然の中に飛び込みたかった。

 

「…………」

 

「…………むむ…!」

 

ベールが勝ち誇った表情でネプテューヌを見下ろしている。

ネプテューヌは、鋭い目つきでベールを見上げている。

バチバチと二人の間には雷撃がぶつかり合っている様に見えるのは俺だけか?

剣呑な雰囲気に思わず身の危機感を覚える。アイエフに視線を持っていくが瞬時に顔を逸らされた。ならばとコンパに顔を向けるがぷくぅと頬を膨らませてこちらも顔を逸らされた。…えっと……どうしよう。

 

『修羅場ktkr』

 

「本当にお前、戦闘以外だと役に立たない気がするよ……」

 

『ひひひひ、サーセンww』

 

相変わらずウザさMAXのデペアに頭を悩ませながら、睨み合う二人に声を掛けることに覚悟を決め口を開いた。

 

「お、お前ら?ここに来た理由、分かっているよな?」

 

多少の動揺があったものの、俺達はベールの先頭に教会に入ることが出来た。

今は、イヴォワール教院長を待っているだけだ。女神直々のお呼びだから、それほど時間が掛からない筈だ。

 

「分かっていますわよ?でも、そこの貧弱な体をしたネプテューヌが睨みつけられれば、私してお相手しなければなりません。まぁ、負け犬の遠吠えクラスなので、全然気にしてはいませんけれど」

 

……く、黒い。俺が知っている綺麗な微笑をするベールはどこにいった…!

 

「ふーんだ!女神だからって、こぅちゃんのこと何も守れなかったくせに!」

 

「な、なんですって!?」

 

「なんだよ!!」

 

あわわわわわ……これは、どうすればいいんだ……。

お互い、今にでも女神化してぶつかり合いするぐらい顔が恐い。

 

『お前は次に俺を巡って争わないで!……と言う!!』

 

「誰が言うか変態ドラゴン!」

 

『……ノリ悪いよ』

 

「そのノリは理解不能だ」

 

しくしくと泣き始めたデペアと無視して、イヴォワール教院長早く来てください!

このままだと、空気が悪いままだと本当にあの二人、喧嘩しそうです!

 

コンコン。

 

 

『グリーンハート様、お呼びでしょうか?』

 

キタ━━\(T▽T)/━━━ !!!

なんてタイミングだ。ご都合展開にマジ感謝!。

 

「…あなたとは、いつか決着を着けなければなりませんね。ネプテューヌ」

 

「ふんっ!こっちそこ相手が女神様でも容赦しないよ!」

 

まだやるのかよ。見ている方は胃が痛くなる。

ベールがネプテューヌから視線を外して、扉の奥で立っているだろうイヴォワール教院長に「入りなさい」と言った。

それに「失礼します」と言い返し、貫禄のある表情を見せながらイヴォワール教院長は慎ましく入室して、俺達を目に入れた時、一気に顔が険しくなった。

 

「………なぜ、ここに彼女たちがいるのです。そこの娘はグリーンハート様の宿敵!そしてそこの化物は、この国を貴方様を裏切り、それだけに止まらず教会を奇襲してきた異教徒ですぞ…!」

 

「異論は聞きません。貴方には聞きたいことが山ほどあります。同然、ここで嘘を並べることは許しませんわよ?」

 

槍の様に鋭い目つきでベールはイヴォワール教院長を睨む。そのまなざしにイヴォワール教院長は押し黙る。

 

「まず、あなたは紅夜を使ってネプテューヌを暗殺しようとした。その件を断った紅夜を異教徒として烙印を押し、家に火を放ち戸籍を無くした……それをしたのはあなたなのですか?」

 

「ぐっ………はい、その通りでございます……」

 

「貴族側から話を聞きました。私が授けた勲章を取り返そうと、あなたは貴族側を圧迫していると聞きました。どうして、そんなことを?」

 

「……国政院の反乱は、教会組織全体の恥です。ですから、私は国政院の反乱事件そのものを隠蔽しようと考えました」

 

「紅夜にしたようにですか?」

 

「……………」

 

威圧するような視線にイヴォワール教院長は押し黙る。

額にいくつの汗が流れ、今にでも倒れてしまいそうだ。

例え、俺を嵌めた人でも、ネプテューヌを殺そうとした人でも、俺の為に住む場所を提供したり、この世界について教えてもらった間違いない恩人だ。

 

「私は……自分のしたことに一切の後悔はしておりません!もし私のしたことが罪なことであるなら、甘んじて受けましょう!しかし、私はグリーンハート様の為に最善を尽くしてきました!それだけは信じていただきたい!!」

 

「……分かりました。あなたのひたむきな想いは信じましょう。しかし、女神同士の戦いは私達だけの戦いです。私が許せないのは、貴方が紅夜にしたことです」

 

「私には理解できない!あれは化物です!人間ではありません!あれは将来、女神様の立場を崩壊させる災厄となりえる存在です!グリーンハート様……私の様な罪深き者の最後の言葉を信じてください…!」

 

「……連れて行きなさい」

 

「グリーンハート様!!」

 

ベールの言葉に扉の奥で待機していた教会のメンバーがイヴォワール教院長を拘束する。

イヴォワール教院長は連れて行かれるまで、ずっと俺を睨んでいた。

憎悪に囚われた瞳。なぜお前がそこにいると言わんばかりの怒りが込められた眼差しに思わず目を逸らす。

 

「……あんな人でも、俺にとって恩人だった」

 

イヴォワール教院長がいなくなり、この部屋が静かになった。

要約、一呼吸おける空気の中で、俺は昔を思い出しながら呟いた。

 

「……こぅちゃん?」

 

「例え、都合のいい道具を作るだけ俺を利用としたとしても、あの人にはお世話に生活に必要な物を無償で提供してくれた。……何が、あの人をそこまで追い詰めたんだろう」

 

「…そうなんだ。こぅちゃんにとってあの人は、とても大事な人だったんだね」

 

隣に移動したネプテューヌが、俺の手を握った。

手を通してネプテューヌの温かみが直接感じられた。

俯いている俺に向かって、向日葵の様な笑みを作った。

 

「これで、終わりなんだよな」

 

「えぇ、終わりですわ」

 

もう一方の空いている手に、ベールが手を重ねた。

複雑な思いが心を駆け巡った。他人から見れば、悪者が捕まっただけかもしれない。

けど、少なくても俺にとってイヴォワール教院長は恩人だった。期待に答えるためにいろんなことを必死で勉強したことも記憶に懐かしかった。もし、俺に祖父がいるとしたら、あんな人が良かった。

 

「申し訳ありません紅夜。この件、私がしっかりしていれば未然に防げたこともしれません……」

 

「ベールは……悪くない。……悪くない」

 

「私、頑張りますから。もう、こんなことが起きないようにしっかりこの国を見ますわ」

 

「……あぁ」

 

「だから、もう((泣いていいのですよ|・・・・・・・・・))。紅夜は悪いこと一つもしていませんから、許してあげてください自分を」

 

耐え切れなくて涙が流れた。

発生した渦の中にいろんな感情が溢れて、どう整理したらいいか分からない。

 

………けど、はっきりと言える。

 

 

例え、俺が本当にバケモノでも。

バケモノであっても、誰かを守れる力がこの手にあるのだと、俺は信じたい。

 

 

 

 

 

 

 

「結局、この事件。紅夜がベールを女神として見て、伝えた時点で終わることだったんだよね」

 

遠く遠い山の山頂で、望遠鏡を片手に僕は事の終わりを見ていた。

あの部屋に盗聴器でも仕掛けられたら良かったんだけど、時間が無かったから会話は読唇術で把握した。

 

「その優しさは、自分を傷つけるのに……はぁ、変わらないね」

 

ため息を吐いて、草原に寝転がる。

リーンボックス中に探索術式を組み込んで、ゲイムキャラにも会って聞いたところ、マジェコンヌはこの大陸から完全に手を引いたと断言していい結果が出てきた。

 

「さて、あの貴族長の義理の息子は、どう動くんだろう?」

 

グリーンハートが女神として存在を再度理解したことで、貴族側と教院側がぶつかることはまずないだろう。

だとすれば、自分の家を教院側に襲わせて、戦争の口実を作るという彼の目的は、達成できないと考えていい。

 

「ここにいましたか」

 

「……何の用?ナイアーラトホテップ」

 

空を見上げている所から、冷たい笑みを浮かべるナイアーラトホテップが乱入してきた。

全く気付かなかった。……本当に忌々しい、相手にしたくないので、体を横にして視線を逸らす。

 

「ここで起きたことを調べましたよ」

 

「…………」

 

「中々のお話でした。貴方がこの世界に執着する理由も分かりました。本当に『恋』という感情は、どこの世界でも激しく、緩やかで、憎悪と熾烈が奏でるオーケストラですね」

 

人の失恋話を持ち上げにきたのかこの野郎……?

どう殺してやろうか?

 

「神が築いた神話を破壊し、人が世界が終らせた結末を貴方は認めていない。許していない。形容していない。何度だってやり直して、やり直して、再選択リライトを繰り返して、いつかこの世界の生が朽ちるその時まで、貴方は悲劇と観劇を何度も見るでしょう。自分の好む物語が始まるまで」

 

「………何が言いたい?」

 

「還るつもりですか?」

 

僕の左手に刻まれている旧神の印エルダーサインを憎たらしくナイアーラトホテップの視線が突き刺す。

 

「世界改変レベルの乱用は、神性の存在であっても神でないあなたにとっては自殺行為だ。貴方は『現実』を理解できていても、それを受け入れていない」

 

「アホなことを言うなナイアーラトホテップ。僕の目的ないつだって変わらないさ」

 

「あなたには、まだ死んでもらっては困ります」

 

「……僕は、君のように最初から強くない。やること終ったら自殺させてよ」

 

「残念、それは王も許しません」

 

ナイアーラトホテップはリーンボックスの街並みを見下ろす。

その漆黒の瞳には、何が映っているのか。まぁ、何かするなら全力で止めるけど。

 

「そもそも、貴方はその『旧神の鍵・儀典』は埋め込まれている限り永遠に死ねませんよ。旧神たちの都合のいい木偶人形になるつもりですか?」

 

「そうなったら、君を久遠の彼方まで追いかけて相打ちしてでも完全に死なせてやる」

 

「嫌ですよ。貴方に追われるならいつものようにその綺麗な顔を鬼神の如く憤慨させ、駄々っ子のように武器を振りまわす……そんな、愛らしいあなたでないと、つまらない」

 

「………今続いている神話を破壊する気か、お前が作ったFDVシステムで」

 

「えぇ、お相手をお願いします。一緒に遊びましょう((有機物|イムナール))」

 

どんな武器を抜くよりも早く、ナイアーラトホテップの姿は消えた。

あっちはこの世界でも、完全な形で戦えるからまともにやりあえば確実に負けるよな……。

双眼鏡で再度、教会にいる紅夜達を確認する。女性四人に囲まれた紅夜は静かに涙を流していた。

 

「………はぁ」

 

ため息を吐いて、双眼鏡を保有空間に押し込み立ち上がる。

手を鳴らして、モンスターを召喚して、懐から取り出した『鍵の欠片』を渡す。

空を見上げれば、白い雲が蒼穹の空をゆっくり泳ぐように浮かんでいる景色が見えた。

 

「……ルウィーは荒れそうだ」

 

暴走状態の紅夜を止めるための戦いで、傷だらけのプロセッサユニットを修理する為、僕は冥獄界に向かった。

 

 

 

 

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