ワスレナグサを片手に  没2
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「キリスなのか?」

 

 

 

 

青い髪、青の入った紫の瞳、落ちついた雰囲気と優しい頬笑み。

俺は忘れていなかった、あの顔を。

ルートの双子だが、二卵性の双子でそっくりとは言えないが、ルートの顔は俺ははっきりと覚えていた。

「久しぶりだな。まさかこんなところで会えるなんてな、ルート。」

俺が手を差し出すと、ルートはすぐに手を握ってきた。

「キリスこそ、元気そうでよかったよ。」

近づいてよく見ると身長も高くなっていて、俺より小さかったはずが、俺と同じくらいの背丈になっていた。

 

あと、顔立ちも少し大人びた・・・・気がする。・・・多分。

 

「い…今ルートって…。まさか、この方が…!?」

「なななんですって!?」

動揺しているカイを吹き飛ばす勢いでナナはすさまじい勢いでルートのそばに近づいた。

その目はいまだかつてないほどキラキラしている、そんな気がした。

 

「うわっ、びっくりした…えと…君は?」

「わ、わたくしはナナ。…貴方が…あの最年少の天才…ルートですの…?」

ルートと言えど、さすがに突然のことだったからか少し驚いていたみたいだが、

「僕は天才じゃないよ。でも、ルートって名前だよ。」

といつも通りの笑みをナナに向けていた。

 

 

・・・・・・・・・・いつも・・・・・どおり?

あれ?なんだろう?

いつも通りという言葉にすごく

違和感を感じる。

 

時間が空いたからではない、もっと別の何か…

 

「ルーヤさんともっと似ているかと思っていました…」

「ルーヤを知ってるの、カイさん?!」

ルーヤのことを耳にして反応したルートの言葉に俺は気がついた俺は

「俺らはルーヤと同じクラスなんだよ。」

と補足すると、ルートは安心したような顔をしていた。

 

・・・・安心できる状態ではないんだけどな…。

 

「へぇ…ルーヤは元気?ご飯ちゃんと食べてる?あと、キリスは寝坊してルーヤ困らせてない?」

って、おい。

「…昔からキリスさん朝が苦手なんですね…。」

「う、寝る子は育つとかいうだろ!ほっとけ!」

笑うなカイ!

「育つどころか寝過ぎて花咲かせるの忘れて枯れる気がいたしますわ。」

「お前ら…。」

あとで覚えてろよ、こいつら…。

「あはは、キリス元気そうでなによりだよ。…ラリィさん?」

「ギクッ」

ルートの言葉で俺たちはルートの背後で下半身に手を伸ばそうとしている変態がいたことに気がつかされた。

俺は思わず距離をとったが、ルートは落ち着いて後ろを振り向いて、変態の顔を見るように顔を動かした。

が、それとは対照的に変態男は目線をそらし、のばしていた手を察と後ろに隠していた。・・・・おい、バレてるぞ、もう。

「ラリィさん…。あなたって人はまた…。」

「何度も言ってますよね…。セクハラで逮捕しますよ。」

「あはは、いやー久々にあんな嬉しそうな顔したルートくんをみたからつい。」

「ルートもかよ…。」

やっぱりと言えばやっぱりだけど、俺はルートの言葉に愕然とした。

「ショタコンというやつですわね、下劣ですわ。」

「変態さんです…。」

「だまらっしゃい!!…そんなわたしをいじめなくてもいいじゃないですか…。」

「みんな、ありのままの真実を述べたまでかと。」

「よくもまぁそんな減らず口叩けるわね。」

マーヤさんとルートの言葉が明らかに心に突き刺さったのか、変態男はゆっくりと倒れるオーバーリアクションをとっていた。

てか、ショタコンって…ナナ、そういう言葉一応知ってるんだな…。

 

「うぐぐ…。しかし、ルートくんの幼なじみ…と言っていた子とは…偶然ですね。キリスくん、カイさん、ナナさん、今日からとりあえずしばらくの間よろしくお願いしますね。」

明らかにその手前までの空気をぬぐい切れていない状態であったが変態男…いや、今日から俺達が世話になる規律所の人・ラリィさんは手早く挨拶をした。

「は、はい。よろしくお願いします。」

「変態っていうのが、納得できませんがよろしくお願いしますわ。」

「よろしく…お願いします…」

「よろしくお願いしますね、皆さん。」

「ねぇちょっとひどくない?」

「自業自得です。」

「自業自得よ。」

「僕泣いてしまいますよ!枕をぬらしちゃいますよ。」

「勝手に一人で泣けばいいじゃないですか。」

ルートが結構えげつないことを言っているけど、誰も助けない。自業自得だな。

「ルートくんひどい!でも、その心を切り裂くような言葉と態度が僕を燃え上がらせます!はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」

・・・・・・・・・・・・・・とりあえず心に突き刺さっているふりをしているのだけは分かった。

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「あっ、キリス、準備終わった?」

 

 

規律所の服に着替えた俺が更衣室から出て歩いた廊下の先に立っていたのは

「…ルート…。」

 

その顔はカイと話していた時の笑顔とは違う、いつもの笑顔。

気のせいなのか分からない、でも…

 

「それにしても久方ぶりだね。何だか見てない間に背が伸びたね…。僕よりもまだ大きい…?」

 

そんなことよりも・・・

 

「………。」

「あぁ、そういえば、ルーヤの手紙でキリスは相変わらず目覚めが悪いって…」

 

俺は・・・俺は・・・・・・・・・

 

「…だよ…。」

「えっ?」

「なんで帰ってこないんだよ…。」

「…キリス?」

俺は我慢できなかった。

笑顔を見せるルートの顔を見ていたら・・・

「ルーヤを一人にさせて…なんで顔見せないんだよ!!」

「キ、キリス落ち着い「落ち着いていられるか!」

俺は場を忘れたわけではなかった。人だって数人いた。

でも、俺は我慢できなかった。

「ルートお前、ルーヤが苦しんでることくらい分かってるだろ!!手紙に書いてなくても分かるだろ!!」

「………。」

ルートは気が付いている。

ルートは分かっている。

「なのに…なのになんで…!!」

「ごめん、キリス…。」

「なら「僕は帰れない」

 

 

ルートの言葉が俺の心臓を止めた気すらした。

言葉が出ない。

息ができない。

頭が真っ白になる。

 

 

「…えっ…?」

言葉が思い浮かばなかった俺はそうぽつりとつぶやいた。

「今帰るわけにはいかない。」

ルートは俺に対して顔を振って意思を証明する。

「お前、正気か?」

「正気だ」

俺はルートが言い終わる前に顔面を思いっきり殴った。

殴るのは良くないって分かってる。

だけど、俺はその衝動を、俺はその怒りを止められなかった。

殴られたルートは少しバランスを崩したがまっすぐ俺の顔を見ていた。

ルーヤと同じ、すごく真面目な顔であり、そして…。

「…そんなにも帰りたくないのには理由があるんだよな。」

「………。」

ルートは口を開こうとしない。

だが、俺には何と無く分かった。

 

”言えない理由がある”と。

 

握り締めすぎて手に穴が開きそうだった。

また殴りたい気持ちで胸がいっぱいだった。

だけど…

「話せる時が来たら…話してくれ。」

ルートもとても辛そうな顔をしていて、そんな気持ち何処かにふっとんでいってしまった。

 

ルーヤもそうだが、ルートも決して他人を巻き込まないようにする。

俺はそのことをよく知っているから…

 

 

 

 

「さぁ、今日は実習生もいるので今日は学校付近の警備を……って、皆さんなんだか元気がないような気が…。」

「あはは…はぁ。」

さすがにため息が口から洩れてしまう。

ルートが何か理由があって帰ってこれないのは分かった。

でも、だからといって、あの状態のルーヤをルートに会わせないままずっとこのままだなんて…

 

 

ルーヤが壊れてしまう…。

 

 

「・・・・キリスさん…?」

「あ、すまん、何か言ったか?」

カイに声を掛けられてもしかして話しかけられたかと思ったけど、どうやら違ったみたいで、カイは無言で首を振った。

「・・・・・・・・・・・・あの…後でお話したいことがあります、いいでしょうか…?」

「ん…?・・・あぁ、別にいいが…。なんだ、変なことでもあったのか?」

「・・・いえ・・・そういうわけで「キリスくんにカイさん?」

「!?」

俺とカイが話していたら突然寒気を感じ振り向いた。

そこには満面の笑みを浮かべながらこちらを見るへんた・・・ラリィさんの姿があった。

「おしい!」

「は?」

「あと少しでキリスくんの背中に手を突っ込めたのに…」

「なにしてるんですか!!!!!」

思わず身をすごめると、ラリィさんはやや涙目になりながら、俺たちの目の前にある机の近くに戻った。

「・・・・・こほん。もう一度言うから良く聞いていてくださいね。今日は学校付近の警備を行います。警備といっても、帰り道に立って、子供が寄り道をしないようにとか、変な人がいないかを見るだけで大丈夫ですよ。」

「悪い人はまれにいるけど、僕らがいるだけで、それなりに効果があるから、そうそうなことがない限り大丈夫だからね。」

ルートはラリィさんと少し距離を離した場所でニコニコとしながら言った。

あの笑みは本物だ。

多分本当に滅多に出ないのだろう。

「万が一変な人を見かけても私達に報告をしてください。最近は違法で魔術規制のない魔術具を持つ方もいるらしいので。」

 

 

魔術規制…原則1人1つ杖などの魔術具を持っている。

俺達のような学生は杖を持っている。

 

その魔術具には必ず規制がつけられている。

規制内容は人に向けて致死量となる魔力を浴びせられないようにする。魔法によっては人相手に使用はできない。

その規制を破ると規律所に連絡され、罰金や処罰、場合によってはお縄となる。

ちなみに俺達のような学生が持つ魔術具は、学校から支給されたもので、魔術が規制される以外に、学外では原則使用できない規制がついている。

 

 

「この規律所の職員には規制なしの魔術具を職務中に限り使うことができますが、貴方方はまだ実習生なので、お渡しできません。」

「たしかに、規制なしの魔術具相手では勝ち目はありませんわね…」

「そういうことです。」

「もし襲われたら、赤い照明魔術を打ち上げて、こちらに連絡をしてください。」

「はい。」

「見つけた場合は伝達魔術でお願いします。連絡先は私でお願いします。」

「では、もし、襲われても、連絡して、くるまでは帰宅中の子供を守れ…という感じでよろしいでしょうか」

「はい。」

…ただの子供のお守りではない。

今の世の中、自己満足のために殺人をする奴が溢れている。

そう、明白な殺意がある。その狂気から子供を守るのが、この規律所の仕事の1つ…

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規律所 ルートside.

 

 

持ち場に着いた僕はため息をついた。

キリスに言われたことが胸に突き刺さる…

「喧嘩をしたのですか?」

「ラリィさん…。」

僕はとても悲しかった…だけど、僕はこうするしかなかった。

「いえ…大丈夫です。」

「ひとりで抱え込むと倒れちゃいますよ。無理せずほどほどに…ね。」

「…………。」

…いや、抱え込まないといけない…僕はルーヤもキリスも巻き込みたくない。

この件は………みんなを傷つけてしまうから僕だけでやらないと…。

 

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規律所 キリスside.

 

 

「…で、話ってなんだ?」

「………ナナさんのことです。」

説明を受けて目的地に移動する前に俺はカイの話を聞く為、人通りの少ない場所でカイと話していた。

 

「……ナナか…。俺あいつ好きになれないんだよな…。異性とかそういう意味じゃなくて「ルーヤさんを虐めているからですよね」

そうだ。あいつはクラスの奴らを利用して虐めている。俺はそれを知っている。

「…なら、なんでナナの話を俺にするんだ?」

「その……実は先ほど…」

 

 

 

 

「私、あの方が優れた魔術師とは思えませんわ。」

「………ナナさん?」

 

『先ほど着替えていた時、ナナさんがそう言っていました。私、ちょっと分からないから首をかしげていたんですけど・・・』

 

「だって、隙だらけでしたわよ、あの方。あんな方が天才だなんて…呆れますわ。」

 

『そう、ナナさんは言いました。きっとるートさんのことなんだなって私思いました。・・・・・でも、私、ルートさんに対して違うことを思っていたんです…。』

 

「………私は違うな…」

「違う?つまり、天才であるとみとめると?」

「そうじゃなくて…ルートさんのあの目…。ルーヤさんとは違って…なんだかとても怖い感じがしたんです。多分、あの場で誰かが攻撃をしようとしたら…返り打ちにあっていたとおもいます。」

 

『ごめんなさい、キリスさん…でも、キリスさんのお知り合いだったとしても…私そう思ってしまったから…。』

 

「…まぁ、とにかく私は認められませんわ。」

「…ルーヤさんみたいに…?」

 

『私、ナナさんがルーヤさんにあまり印象をおもっていないこと、私知っていたから思わず言ってしまいました。そうしたら・・・』

 

「あの方は………あの方は嫌な思い出をほじくり返される、それが不愉快なんです。私はあぁいう方は嫌いですわ。」

「嫌な…?」

「この話はもういいでしょう。私は準備が終わったので失礼しますわ。」

「………ナナ…さん?」

 

 

 

「嫌な思い出………ねぇ…。」

話し終ったカイは俺の方をじっと見ていた。

多分俺に何かしらの意見を求めているんだろうけど、正直俺はあいつのことはさっぱり分からないし、興味もないから何も思い浮かばなかった。

すると、カイは

「私その時思い出したんですけど、ナナさんのご両親…参観日などにも一切見えてないと思います。」

と俺から少し目線をそらしていった。

「確かにみたことないな。ナナも孤児院出身だったか?」

俺は知らなかっただけであいつも孤児院だったのかと聞いたが、

「いえ、違うと思います。孤児院出身の方なら学年が変わる際に必ず届け出をしないといけませんし…」

と、すっかり忘れていた返答が返ってきた。そうだ、孤児院なら学年変更時に届け出が必要だ。必要書類は教室内で回収する。

興味がないって言ってもさすがに届け出があれば覚えているはずだ。

「たしかにな。…まぁ、家庭の事情にしろ、ルーヤを虐めているのには違いないからあいつは好きになれない。」

「………キリスさん…。」

カイを見ると、少し顔が赤くなっており、今にも泣きそうな顔をしていた。

仕方がないから頭を少しなでてやると、カイは恥ずかしそうな顔をしたが、涙は収まったようだ。

「そんな泣きそうな顔するなよ…。だいたいカイもあいつの行動が良くないことは分かるだろ?」

「分かります…だけど…あの時のナナさん………とても辛そうな顔をされていたので…。」

「………辛そう…ねぇ。」

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規律所 ルートside.

 

 

キリスにぶたれた痕がまだ痛い。

身体の痛みではない。心の痛み…なんだろうな。

僕はそう思うとチクリチクリとキリスにぶたれた痕が傷んだ気がした。

 

廊下を歩いていた僕が顔をあげると、目の前から先ほどあった女の子…ナナ…さん?が歩いてきた。

「あっ、ナナさん…だっけ?」

僕が呼びとめるとナナさんは足をとめた。

「………何用ですか?」

「いや、準備早いねって思って。少し話をしない?」

「貴方とお話するようなことはありません。」

 

・・・・・・・・・・・・・えっと・・・

 

「…なにか嫌なことでもあった?」

「……憶測でモノを語らないで下さる?吐き気がいたしますの。」

ナナさんは僕の方を見てとても嫌そうな顔をしていた。

「ごめんごめん。でも、なんだか凄く不満そうな顔してたからさ…。」

「あなたが気に食わないだけですわ。」

「…えっ?」

「へらへらして…貴方の妹にそっくり。もう少し緊張感とかありませんの?」

ナナさんは僕を睨みつけていた。

 

僕はこの顔を何度か見たことがあル。

僕はこの思イを何度も向けられたコとがアる。

 

・・・でも・・・・

 

「…そっか…それはごめんね。君を不満にさせるようなことして。」

「謝れなんて一言も言っていませんことよ!謝るくらいなら改善されてはいかが?」

「癖みたいなものだから…ちょっとそれは難しいかな?ごめんね、僕やルーヤの為を思って言ってくれたんだよね。」

僕はそう思った。ナナさんは

「…………………はっ?」

優しい人なんだって。

「君は優しいね。言葉はきついかもしれないけど、君は心配してるんだよね?他の人が緊張感をもって行動してるのに僕だけ緊張感がないように見えるのは良くないって。」

「ななななな?!あ、あなたは人のことを信用しすぎですこと!そのうち痛い目を見ますわ。」

「大丈夫だよ。」

「はぁっ?何処からその台詞が………」

「僕は人を信じるのが苦手なんだよ。だから昨日まで味方でも裏切り者には処罰を与えろ。許されざる敵には非情になれ…てねっ。」

「…………。」

僕は笑ったはずだったが、ナナさんは何か、苛立ちではない、思いを感じた。

僕はその思いも感じたことがある。

あぁ、そんナ気はナイのだけド

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規律所 キリスside.

 

 

 

「遅くなってすみませ…あれ?」

俺がカイとの話が終わって戻るとルートが既にそこにいた。

「キリスにカイさん。遅くないから大丈夫だよ。」

「なーんだ。遅くなって説教されるかと思って走ってきたのに…心配したのに走って損したー。」

「あはは、大丈夫。1番遅いのはラリィさんだから。」

・・・ん?

「そうなのか?」

「うん、ラリィさんのことだから、きっと更衣室でセクハラしてマーヤさんにお説教食らってるから。」

ルートの言葉にカイと俺は思わず頭を抱えた。

「………これはひどい。」

「がっかりしますね…。」

「面目ない…。じゃあ僕は呼んでくるから少し待っててくれるかい?」

「あいよー。」

ルートが走っていく姿を見ていた俺はルートが走って行った先からナナが歩いてきたことに気がついた。

「………ナナさん、どうかされたんですか?」

しかし、俺ですらその違和感に気がついた。

震えている。肩が。

顔も青ざめており、俺たちを見つけたナナは寄ってきたカイの肩をつかんでいた。

「………されるかと……」

震えていた声から紡ぎだされる言葉。

「へっ?」

「殺されるかと思った…。ルートさんに・・・。」

俺の想像できなかったその言葉はカイにも分からなかったのか俺に助けを求めるように俺の方を見ていた。

「…な、何言ってるんだ、お前は…。そんなことないに決まってるだろ?ルートはそんなことする奴ではさすがにないからな。」

「………。」

ナナは相変わらず震えている。

「そもそもルーヤもいえるが、ルートも滅多に怒らない。怒ってそうに見えるときは照れ隠しとかだしな。」

「……そうだと…いいです…わね」

「?」

 

 

 

「…荷物置きの時間と着替えの間に何かあったのですか、皆さん?」

「私達としてはその明らかに殴られた頬の方が気になるのですが…。」

「いやはやすみませんねぇ。出来心を抑えられなくて叱られてしまいました、あっはっは!」

多分その時俺は勿論、カイもナナもルートも同じこと思っただろうな…

『駄目だこの人…』

…って。

「では目的地までは空間転移を「私は歩いて行きます。」

「…はい?」

ルートさんの言葉をさえぎるようにナナが手を挙げた。

「すみません…私、空間転移魔術には抵抗がありまして…。」

「…えーっと少し待ってくださいね。」

そういうとルートが持っていた書類をラリィは手に取りラリィは書類に目を通した。

「………あー、なるほど。なら、仕方がありませんね。ルートくん、飛行魔術で彼女と共に来て下さい。場所は分かりますよね。」

「少し待ってください。地図を一応確認します。」

ルートがラリィさんに言われた通り地図を広げて調べて

「……………はい、大丈夫です。」

と言った。

「よろしいっ!では行きましょうか!!」

 

 

「…空間転移とか初めてです…♪」

「俺もだ。くーっ!パッと移動するとか遅刻の心配がない「キリス君は遅刻するタイプなのですね。」

俺の言葉をさえぎるようにあの変態野郎は俺の身体に抱きついてきたので思わず足を踏みつけた上で膝を思いっきり蹴飛ばした。

「な、なにしやがる!!気持ち悪い!!」

思わず敬語を使い忘れた俺は鳥肌が立ってしまい、傍にいたカイは俺がまた蹴らないように抑えるように手をつかんでいた。

プルプルと震えていた変態野郎は震えた声で

「殴られたところと同じところを蹴らないで……」

と言った。

「自業自得です…。」

カイはため息交じりにそう言った。

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