IS?インフィニット・ストラトス?黒獅子と駆ける者? |
episode207 伝えたい想い
「・・・・」
『・・・・』
IS学園に戻ってから、隼人とリインフォースは寮の自室に居り、壁際の机のイスにリインフォースが座り、隼人がベッドに腰掛けているも、かなり気まずい空気が流れていた。
隼人はその前に千冬より無断で出て行った事と暴行の処罰として拳骨を受けているために頭を押さえている。
本来なら謹慎ものなのだが、状況が状況とあって拳骨程度に済んでいる。が、これで二度目なので事が済み次第に処罰を与える事を考えるとの事。
「・・・あぁ、その・・・なんだ?」
『・・・えぇと、はい・・・?』
ギクシャクとした会話をすると、また沈黙の間が続く。
(言いづらい・・・。言わなきゃいけないって言うのに・・・)
内心で「うーん・・・」と唸る。
「・・・リインフォース」
『・・・・』
しばらくして、ようやく口が動く。
「・・・すまなかった」
と、隼人はベッドから立ち上がるとすぐに床に正座をしてそのまま額を床につけて土下座する。
『は、隼人!?』
隼人の行動にリインフォースは驚き戸惑う。
「もちろん、こんなので許してもらおうとは思っていない。何度も許しても、どれだけ土下座しても、俺がお前に言ってしまった事は許されることじゃない」
『そ、そんな事は。私はそこまでは―――――』
「いや。いくらお前でも、心のどこかじゃ許していないはずだ」
『・・・・』
「・・・・」
隼人は頭を上げて正座から胡坐に座り直して両膝に両手を置く。
『な、何を・・・?』
「・・・やれ」
『え・・・?』
「蹴るなり殴りなり、引っぱたくなり、咎めるなり、罵ったり、辱めでも、何でもしろ!」
『そ、そんな!?そこまでしなくても!』
「そうでもしないと!俺の気持ちが収まらないんだよ!」
『っ・・・!』
「・・・すまない。強く言ってしまって」
『・・・・』
「・・・これでチャラにしろとは言わない。お前の気が済むまでやれ。それが何日何週間何ヶ月何年だろうが構わない」
『は、隼人・・・』
「・・・・」
『・・・・』
隼人の頑固さはリインフォースが良く知っているので、何かをしない限り終わる事は無い。
『・・・・』
リインフォースはしばらく考えると、頬を赤く染める。
『な、何でも、しても良いんですよね?』
「あぁ。男に二言は無い」
『・・・・』
リインフォースは戸惑うも、口を開く。
『で、では、立ってください』
「あぁ」
隼人は胡坐を解いて立ち上がる。
『・・・それから、目を閉じてください』
「・・・・」
隼人は目蓋を閉じる。
『・・・・』
リインフォースは頬を赤くしてゆっくりと立ち上がって隼人に近付き、少し戸惑いながらも隼人の右頬に左手を添える。
隼人は一瞬ピクッと反応すると、息を呑む。
ちゅっ・・・
「・・・・?」
と、左の頬に柔らかい感触がすると、そんな音がする。
不本意に目が開いてしまうと、リインフォースは隼人の左の頬にキスをしていた。
『・・・ま、まだ目を開けてはいけないのに』
リインフォースは顔を真っ赤にして顔を離す。
「・・・す、すまない」
『・・・・』
「・・・・」
そしてまた沈黙が続く。
「・・・な、なぜ、だ?」
まさかの行動に少し戸惑う。
『・・・これで、いいんです』
「・・・・?」
『私の気持ちを伝える事ができれば、それで・・・いいんです』
「リインフォース・・・どういう・・・事なんだ?」
『・・・・・・私は・・・あなたにどんな事を言われても、どんなに心を傷つけられても、それでも、私はあなたの傍に居られるだけで・・・嬉しいんです』
「・・・・」
『・・・あの時、隼人の気持ちが分からなくなって、私の前から居なくなって、私はとても不安でした』
声を震わせながら喋り出す。
『不安で不安で、生きている感じがありませんでした・・・』
「・・・・」
『でも、こうしてまた隼人の傍に居られて、気持ちが分かるようになって、私・・・ようやく分かったんです』
すると目頭に溜まっていた涙が溢れて頬を伝って一筋に流れ落ちる。
『私は・・・・・・例えあなたを一度は死なせてしまったとしても、パーツの一部に過ぎなくても、人間でなくても・・・・・・それでも―――――
―――――あなたの事を愛しているのだと』
「・・・・」
隼人は少し頬を赤く染める。
『・・・あなたと身を一つに出来なくても、私を愛されなくても、私はあなたの傍に居られる・・・それだけで、私は幸せなのです』
「・・・・」
「・・・俺も、お前が傍に居たのが、どれだけ助かっていた事かが・・・ヴィヴィオを助ける時に実感した」
少しして隼人は口を開く。
『・・・・』
「・・・こんなに俺の事を想っているのに・・・それなのに俺はお前を遠ざけてしまった」
隼人は顔を俯かせる。
『隼人・・・』
「・・・お前の気持ちは嬉しいよ。・・・・・・でも、俺は――――」
と、隼人が言い終える前に、リインフォースは隼人をそっと抱き締める。
『・・・分かっています。言わなくても・・・分かっています』
「・・・・」
『だからこそ、隼人は隼人が愛する者を愛してください。私は・・・こうして近くに居られる。それだけで十分です』
「リインフォース」
リインフォースは優しい笑みを浮かべる。
「・・・ありがとう」
その一言で、その場の空気が軽くなった。
――――――――――――――――――――
「うーん・・・これはどういう事なのかなぁ・・・」
その頃、地下の特別区画で束は首を傾げている。
目の前の窓の向こうには、台の上に横になって身体中に色んなものを付けられている一夏の姿があった。
「お前でも分からないのか?」
「そりゃまぁねぇ。まさか白騎士の生体再生能力がここまで再生能力が高い物だ何て思わないし」
「・・・・」
問題は一夏の右腕だった。
切り落とされたはずの右腕はデスティニー覚醒後、どういうわけか腕が生えていたのだ。切られた後すら残さずに・・・まるで切られて無いように・・・
「それと、ヴィヴィオのあの姿はどういう事なんだ?」
別の部屋では大人の姿のヴィヴィオが台の上に寝かされて検査を受けている。
「こっちの方がもっと分からないんだよね。幼かった子がいきなり大人になるなんて、科学的にもありえない」
「・・・・」
「前にも言ったけど、ヴィヴィオちゃんの細胞は日に日に急激に成長しているって」
「あぁ。それが関係しているのか?」
「たぶんね。まぁ精神年齢は以前のままだから・・・・・・見た目は大人、頭脳は子供ってところかな?」
「某少年探偵じゃないんだぞ」
「おや?ちーちゃん意外とネタ知ってんだね」
「・・・・」
「まぁはっくんやゆーちゃんの話によれば、しばらくこの状態か、もしくはもう元には戻れないらしいね」
「ゆーちゃん?」
「ユニコーンの事だよ。ちーちゃんみたいでしょ?」
「・・・・」
「まぁ、しばらく検査が必要だね。それで解決策が出るかは分からないけど」
「・・・・」
「ちーちゃん」
「なんだ?」
「・・・後でネェル・アーガマの私のラボに来てくれるかな?」
「・・・・」
「渡したい物があるんだ」
「・・・分かった」
――――――――――――――――――――
隼人はあの後移動して颯がいる格納庫に居た。
その場にシノンも同席していた。
「・・・颯。その・・・だな」
「・・・・」
「・・・すまなかったな。何していないで、俺の事を心配してくれたのに、いきなり殴ったりしたりして」
「・・・もういいんだよ。過ぎたことだし、それに兄さんが理由もなしに殴る人じゃないのは知っている」
「颯・・・」
「・・・・」
シノンは壁にもたれかかって腕を組む。
「でもね、兄さん」
「え?」
ガスッ!!
と、颯は手加減なしの全力で隼人の左頬を殴りつける。
「ぐほっ!?」
倒れはしなかったが、殴られた勢いで仰け反る。
「悪くは思わないでね。一回は一回、だから」
にっこりと笑顔を浮かべているが、どこか寒気がする。
「・・・やっぱり、怒っているのか?」
「オコッテナンカナイヨ?」
すげぇ棒読み・・・
(絶対怒ってる・・・)
(根に持っていたのか)
表面に出さないだけで、内心ではかなり怒っている。
こういう所はシャルに似ている。
「ま、まぁ、殴られても仕方が無いな」
常人だったら骨折で済まないほどの拳で殴られた左頬を摩りながらため息を付く。
「今度からは気をつけてね」
「あ、あぁ」
笑顔を浮かべたまま颯は格納庫から出て行く。
「・・・・」
殴られて赤く腫れた頬を摩りながら再度ため息を付く。
「自業自得だな、ゼロ」
「うっ」
的確なシノンの毒舌突っ込みに隼人は言葉を詰まらせる。
――――――――――――――――――――
千冬は束の言われた通りにIS学園のある人工島の壁を(無理矢理)掘った洞穴の中に停泊しているネェル・アーガマの艦内にあるラボに来ていた。
「来たね、ちーちゃん」
既に束がラボの中で待っていた。
「一体何を渡すのだ」
「その前に、ちーちゃんのエピオンなんだけどね」
「・・・・」
「かなり損傷が酷くて、換えのパーツがもう残ってないんだ。新規に作るとなると時間が足りない」
「・・・そうか」
「・・・だからね、ちーちゃんの為に新しく作ったの」
「新しく機体を?だが、よくそんな事が出来たな」
「まぁ、一からとなると時間が掛かるけど、ベースにしたものがあるの」
「なに?」
「・・・もしかしたらちーちゃんの気に障るかもしれないけど」
「・・・・」
束は宙に投影型ウインドウを出すと、照明のスイッチを入れて明かりを付ける。
「・・・・!」
千冬は明かりがついて部屋の奥にあったものを見て目を見開いて驚く。
見間違えるはずも無い。そこにあったのは父親の魂が宿っていた・・・フリーダムが立っていたのだから。
「この機体は・・・」
「・・・・」
貫かれた胴体は完全に修復されており、照明の光に装甲表面が反射してまるで新品同様であった。待機状態な為色が着いていた箇所は灰色になっている。
「まさか・・・この機体を・・・」
「・・・私が持てる限りの技術力を用いて、ISに改装したんだよ。でも、未知の技術が積み込まれた、ISのカテゴリーから外れたイレギュラーみたいな物だけど」
「・・・・」
「もちろん勝手に改装した事は謝るよ。ある意味ちーちゃんのお父さんを改造したみたいなものだし」
「・・・・」
「・・・ちーちゃん」
「・・・確かに、勝手に改装した事は少し遺憾だな」
「・・・・」
「・・・だが、それでよかったのかもしれない」
「え・・・?」
予想外の言葉に束は唖然となる。
「父さんだって、あのままの状態ではなく、こうして使われる事を望んでいると思う」
「・・・・」
「・・・本当に、お前には助けられてばかりだな」
「ちーちゃん」
「ありがたく、使わせてもらう」
そうして千冬はラボの奥に立たされているフリーダムに歩み寄って、装甲に手を添える。
(私や一夏、兄さんを見守ってくれ・・・父さん)
――――――――――――――――――――
その頃―――――
「ようやく揃った」
と、バルバトスは右手にヴィヴィオより取り出してエネルギー状のデータを見る。
「これで我が陛下の計画が実行に移せる。世界を我が手の中に・・・」
「くくく・・・」と静かに笑う。
説明 | ||
トラックに轢かれそうになった女の子を助けて俺はお陀仏になった・・・。・・・って!それが本来の死じゃなくて、神様のミスで!?呆れている俺に、その神様がお詫びとして他の世界に転生させてくれると言うことらしい・・・。そして俺は『インフィニットストラトス』の世界に転生し、黒獅子と呼ばれるISと共にその世界で戦うぜ! | ||
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