リリカルなのはSFIA |
第四十一話 『痛み』の連鎖
フェイト視点。
ヴィヴィオが捕らわれている操艦室に突入して三十分以上経っている。
ヴィヴィオは今も玉座に縛り付けられて苦しんでいる。早く助け上げたいのに。目の前の青と白の鎧がそれを邪魔する。
「どうですかフェイトお嬢様。貴方のオリジナルが吹き飛ばした緑の機械兵エメラルダンを強化したサフィアーダ。そして、聖王の鎧と称されたアークライナスは?」
三つ編みの戦闘機人は私を見て嘲笑う。
AMFの効果が常時発生している『聖王のゆりかご』。そして、恐らくDエクストラクター搭載型の機械兵。
だけど…。
「バルディッシュ!」
[オーバードライブ!イグニッション!]
私はバルディッシュに搭載されたカートリッジ。その内の一つの弾倉を消費してバルディッシュを大剣に。そして、二振りの剣へと変える。
「だぁああああああああああああああっ!!」
そして、私にむかってサフィアーダはメイスをアークライナスは斧を振り上げ襲ってくるけど、リミッターを解除し、限界を超えることのできるオーバードライブ状態の私とバルディッシュなら!
ギィンッ!
碧と白の鎧を貫通するように黄金の光が通過する。そして、
ズンッ。と重たい音を響かせながらに対の機械兵は倒れる。
「…ぜぇ、ぜぇ。…今すぐ、ヴィヴィオを解放して『聖王のゆりかご』を止めなさい」
私は肩で息をするどころか、全身を大きく動かさないと呼吸できないくらいに疲弊してしまった体に鞭を打ちながら目の前の女性に剣の矛先を突きつける。
「そ、そんな。こんな事で…」
目の前の女性は目の前の光景に驚いているのか口元に手の甲を当てて驚いた表情を見せる。だけどそれは…。
機械兵が負けて驚いているわけではない。
「こぉおおんな事で((勝った|・・・))気になっているなんて!」
そう言うと彼女は自分の髪を止めている紐をほどきながら私を見て笑った。同時に私の首筋に冷たい気配を感じた。
ガンッ。
私は思わずそこを飛び退くとそこには先程まで戦っていたアークライナスの持っていた斧が突き刺さっていた。
と、続いて、再び似たような斧。そして、サフィアーダの持っていた三角錐状の剣が突き刺さる。
斧。剣。剣。斧。と、幾つもの武器が私目掛けて飛んで来る。
それを避けながら周囲を見渡すと…。
そこには((十数体|・・・))もののサフィアーダとアークライナスがいた。
「どうして?!」
私は視界の端にうつる先程撃破したはずの二体の機械兵を見る。
撃破したサフィアーダの中には、指名手配中の壁や地面をすり抜けることのできる水色の髪をした戦闘機人の子。
アークライナスの中からは茶色の髪を肩の位置で一括りにした子が入っていた。
「どうしてではありませんわよ。フェイトお嬢様。不思議に思いすか?べつに『聖王のゆりかご』にもプロジェクトF。戦闘機人。クローンを作っていても何らおかしくないでしょう?」
「まさか!?」
私は嫌な予感がして目の前の戦闘機人を睨む。
その顔が見たかったとばかりに目の前の女性クアットロは狂喜的な表情をして笑う!
「そのまさかですわ!この機械兵たちの中身はみんな戦闘機人をベースにDエクストラクターを搭載した機械兵なんです!」
高笑いするクアットロに共鳴したのか十数体の機械兵たちの顔にあたる部分がはじけ飛ぶ。その下から見せた顔に私は驚いた。
「…ヴィヴィ、オ?」
老若男女。性別から年齢まで幅広くの顔がのぞかせた。が、その全員の顔がどこかヴィヴィオに似ていた。
「ええ、貴女と同じ((出来そこない|・・・・・・))。聖王のクローンですわ」
出来そこない。
それは私が母さんと決別する前に聞いた重い言葉。
「先程のセインちゃんやディードちゃんとは違ってテクニックはガクンと落ちますが、パワーとスピードは先程と変わりません。勿論ディフェンスもね♪」
ウインクをしながらクアットロは語る。
私が疲弊しきったところに増援を出したことで優位に立っていると思っているんだろうけど…。
オーバードライブ状態はまだ解除していない。まだ数分は持つ。目の前の機械兵もギリギリ倒しきってクアットロを逮捕することも出来る。まだ勝ち目はある!
「性能は落ちているから数を多少増やしても勝てる。そうお思いなんですか?甘いですね」
私の考えを先読みしてか、クアットロが指をパチンと鳴らすとヴィヴィオの座っている玉座を中心に壁が一枚スライドする。そして、そのスライドした壁の向こう側から百を超えるカプセルが姿を現せる。
その時私は、((既視感|デジャヴ))を感じた。
「「…え?」」
苦しんでいたヴィヴィオもそれを見て、その驚きの所為か苦しんでいることも忘れて目を見開いた。
カプセルの中には金髪の女性と男性が入っていた。
皆目を閉じている状態なので瞳の色まではわからなかった。だけど、それは確かにヴィヴィオだった。
ヴィヴィオに似た存在だった。
「聖王のクローンはこのゆりかごの中に二千体以上あるんですよ!もちろん先程お嬢様が倒した機械兵の鎧もね!」
私はその言葉を聞いて目の前が真っ暗になった気がした。
「ご理解しましたか?しましたよねっ。しやがりましたよねぇっ!じゃあ、死んでください!フェイトお嬢様!」
十数体ものの機械兵が私を押しつぶそうと迫ってくる。
私はあまりの状況に数瞬、全身の力が抜けた。
でも、その内の一瞬。機械兵は私との距離を詰める。
次の一瞬の間に武器を振り上げ、次の一瞬にはその武器が振り降ろされる。
そして最後の一瞬。私の耳に聞こえた。
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!
私に迫りくる凶刃を押しのける獅子とその力強い咆哮を。
???視点。
何もない。
何もなかった。
ボロボロになっても諦めなければ得られるものがあると信じていたから。
家族を。俺の家族に会えると思っていたから。
だけど…。何もなかった。
俺は…。
欲しかったものに。
欲しかった家族を傷つけた。
それだけが欲しかった。
だけど、それはもうなくて…。
それはもう望めなくて…。
家族はもういなくて…。
―本当に?本当にもうないの?―
ない。
―それじゃあ、何で君は泣いているの?―
ないから泣いて…
―諦めたくないからでしょ―
諦めた。何もかも…。だからもう、話しかけないで…。
―それじゃあ、なんであの時。プレシアを助けきれたの?―
…助けきれた?そんなの嘘だ。
あの時の俺は体力も気力も。スフィアの力だって…。
―尽きたね。だけど、君は動いたよね。『知りたがる山羊』にプレシアを殺されそうになった時に―
…嘘だ。
―僕もアサキムも驚いている。体力どころか気力もない。『傷だらけの獅子』のスフィアも確かにあの時、何も出来なかった。それほどまでに君は憔悴していた。僕は動けなかった。だけど、動いた―
…本当に助けきれたのか。
―ああ、助けきれたさ。君は自分の身を犠牲にしてプレシアを守った。全てを犠牲にするつもりで、動けるはずないのに。でも、それは再び消えかけている。奪われようとしている。だから…―
プレシア視点。
ドォオオオオオンッ!!
警戒音と共にアースラ全体を揺らす振動が襲い掛かる。
アサキムを相手しているすずかやはやて。リインフォースにクロノが四人がかりなのにアサキムを抑え込めない。
クロノがトラップのバインド。はやてとアリシアが援護射撃。リインフォースとすずかが斬りこんでいたのに…。
アサキムはバインドを力づくで引きちぎり、流れるように回避し、斬撃を切り払っていく。
『聖王のゆりかご』からは幾千もののガジェットが吐き出されている。
管理局員達も最初は戦意が溢れていたのに、自分達の主力が押されている戦況に次第にその勢いを失い、戦況はあちら側に映しかけていた。
そして、それが顕著になる瞬間が訪れる。
『遅いっ』
『かはっ!』
「…っ。すずかさん!下がりなさい!もう、スノーホワイトは限界です!」
『でも!ここで退いたら!クロノ君?!』
最初から全開状態で戦っていたすずかのDエクストラクターがついに悲鳴を上げた。
氷の刃でアサキムに斬撃を放とうとした瞬間にスノーホワイトの核である左手袋の宝玉に亀裂が入ると、格段にその速度は落ちて、アサキムの斬撃を受けた。
そのダメージは彼女に致命傷を与えるとは言えなくても、ホワイトスノーを戦闘不能に追い込むには十分だった。
それを見たクロノは予め用意していたのであろう。近くにいた管理局員に指示を出して彼女を強制転送させた。
恐らく転送先は彼の所有する時空航行船クラウディアだろう。
「〜っ!プレシア!私も」
「駄目よ!リニス!あなたまで今、前線に出たら誰がアースラ。いえ、バトルフロンティアを守るの!アリシアだけじゃもう捌けない数なのよ!」
先程からリニスはマルチタスク。並行思考を行いながらゼクシスと管理局の連携の指揮。『聖王のゆりかご』の動き。
そして、元々はブラスタの武装。銀色のチャクラム。SPIGOTの遠隔操作でアースラ、そしてその唯一の武装と言ってもいいバトルフロンティアを『聖王のゆりかご』から射出されるガジェットの攻撃から守っていた。
最悪の場合。『聖王のゆりかご』に突貫を決めながらバトルフロンティア。マクロスキャノンを放つつもりだ。
今、ゆりかごに決定的な手段は三つ。ないし四つ。
その内の二つはスフィアリアクターの攻撃。
リインフォースの砲撃も考えられる。けど、彼女にはアサキムを抑えてもらわないといけない。
リニスのSPIGOT砲撃も試してみたいが、ぶっつけ本番という訳にはいかない。にはマクロスキャノンを放つまでアースラを守ってほしい。
あれには再度発射するまでチャージがかかる。
残りの二つはアリシアやバトルフロンティアなどのDエクストラクター。
アリシアの砲撃。これも再度チャージ時間を要する上に、連発すればスノーホワイト同様瓦解してしまう。
せめて、なのはさんがいればスターライトブレイカーも放てるんだけど、彼女は今ミッドの首都防衛をティアナと行っている。
ヴィータは未だに自分の愛機の修理を待っている状態。そして、エリオとシグナムは…。
そう考え込んでいた瞬間。
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!
医務室で寝ていたはずの『傷だらけの獅子』が咆哮を上げた。
そして、リンカーコアを失った私にすらも感じさせる膨大な魔力を感じさせながらアースラ内部から外部。アリシアの隣へと転移した。
いつもと同じ力強い咆哮を鳴り響かせた獅子に私とリニスは不思議と失いかけた戦意を取り戻す。それは外にいたはやてさん達とも同じだった。
アリシアを転移先に指定したのは発信機でもあるアリシアのリボンがあったからだろう。
『ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』
マグナモードで展開したガンレオンの凶悪な翼をはばたかせて高志は、アサキムと交戦中のはやてさん達の元へと高速移動する。
マグナモードを展開した時だけガンレオンの飛行速度は直線のみにてリミッターをかけた状態のフェイトと同じかそれより少しだけ上になる。
『っ!ラスターエッジ!』
だが、そう簡単には近づけさせないとアサキムは身に纏ったシュロウガの額からなのはさんのショートバスターにも似た収束砲を撃ちだす。
ドォンッ!
だが、高志はそれを回避することも防御することもせずただ一直線に飛ぶ。
直撃してもまっすぐ飛ぶことしか出来ないから仕方がない。いつもの事なのだが、私は少しだけ違和感を感じた。
いつもはライアット・ジャレンチを右手で持っているはずなのにそれが今は無い。
命を守る為に鎧があり、武器である。それなのに今のタカは…。
((武器を守る|・・・・・))為に、((命を盾|・・・))にしているように見えた。
『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!』
そして、本来ならアサキムの攻撃で薄くなった装甲に魔力を注いで少しでも耐久力を戻すのにそれをしない。
それに気がついたのは私だけではなくもう一人いた。
いや、あの子だけは最初から気がついていたのかもしれない。
「…だ、め。駄目!そんなことしたら!そんな戦い方をしたらお兄ちゃん死んじゃうよ!」
シュロウガにガンレオンが追いつき羽交い絞めにする。そして、飛びついた勢いそのままにはやてさん達からも距離を稼ぐ。
その間にも高志は攻撃を受けて、ガンレオンの装甲を削られている。そんな状況でガンレオンの節々から『傷だらけの獅子』のスフィア。緑色の輝きが溢れ出す。
『高志!君はまさか?!やめろ!』
アサキムはタカがこれからしようとすることに気がついたのだろう。
だが、それはやってはいけない行為だ。
『ペイン・シャウタァアアアアアアアアアアアアアアア!』
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!
装甲が削られた状態でガンレオンの拡散砲撃と言ってもいい攻撃を行う。それはつまり火のついた爆竹を素手で握り手の中で爆発させる行為に等しい。
いくらガンレオンが頑丈でも至近距離そのような真似をすればアサキムにもダメージを与えられるだろうがタカもただでは済まない。
獅子の砲撃と共に巻き起こった大爆発にはやてさん達やの周りの管理局員やガジェットは少しの距離だが吹き飛ばされる。
そして、アースラで投影されているモニターに数秒ノイズが奔るが、ノイズが晴れると同時に爆発も収まる。
爆心地に映し出されたのは…。
『ぐ、うううううう…』
シュロウガのあちこちに亀裂を走らせたアサキムと、力尽き背負われているような状態のタカの姿だった。
マグナモードが解除されて、ガンレオンの装甲はあちこち剥がれ落ち、一部一部には生身の部分が見え隠れしており、その部分は残すことなく血塗れだった。
『…自爆攻撃。…君がこんな馬鹿な真似をするとは思いもしなかったよ。タカ、シ?!』
再びアサキムの声に驚きの声が混じる。見れば、ガンレオンはボロボロになりながらもマグナモード展開していた事に気がついたからだ。
と、同時にボロボロの筈のガンレオンから再びスフィアの光が灯る。
『連発だぁあああああっ!!』
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!
大爆発が再び巻き起こった。
今度の爆発は先程より小規模。だが、それでも大出力には変わらない。その上、
ビシャッ。
と、アリシアの頬に赤い液体が振りかかる。
アリシアだけじゃない。比較的近くにいたはやてさん達のバリアジャケットに降りかかっていた。
その爆発の中から現れたのは重症。いや、危篤状態のタカだった。
今もマグナモードを発動させてなんとか浮遊している状態のタカだった。
「…がひゅーっ、…がひゅー」
そこにアサキムはいなかった。
高志が吹き飛ばしたのか逃げたかは分からない。
ただ、スターライトブレイカーを連発。しかも至近距離で受けたような物だ。さすがのアサキムもただじゃ済まなかっただろう。
「ご、がっ。がぶっ」
「タカ!」
「高志君!」
「お兄ちゃん!」
「…あっ。ぎぃ!ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!
口から血の塊を何度も何度も吐くタカに慌てて近づこうとしたアリシア達だったが、その様子を見てかタカはほとんど残っていないだろう体力、魔力を使って再びマグナモードを発動させる。その余波でタカに近付こうとしたはやてさん達やアリシアは彼に近付けなかった。
そんな無茶をすれば体の組織を壊してしまうのに、いや確実に壊れていたはずなのに…。
ガンレオンの装甲が急速に修復されていく。それと共に高志の体の傷もふさがる。
まるで闇の書の暴走体のように。
それだけじゃない。
「…くっ。スフィアの力と魔力が回復?!いや、これは暴走!?」
胸元を抑えて苦しんでいるリニスは画面越しに見たタカを見て目を見張る。
すぐ近くにいるリインフォースも同様だ。
そして、数秒もしないうちに完全回復。いや、先程の出撃時。それすらも越えて今までにないほどの出力を叩きだし続けているガンレオン。
だが、その装甲の端々からスフィアの光とは違う赤い液体。恐らくタカの血だ。
タカのコンディションを映し出した画面は異常な事実を知らせた。
「スフィアの力を引き出しすぎて、体の組織を内側から壊している!?でも、その破壊された怪我はすぐに治されるけど、スフィアの力で砕けて!これじゃあ彼は耐えがたい苦痛を味わい続けて!?まさか!」
リニスが考えたことを私はすぐにくみ取る。
あの子は自ら進んでダメージを受けているのだ。
「あの馬鹿!なんてスパイラルを考えているの!」
いや、バカは私だ。
タカは今までどんな((痛み|・・))も((犠牲|・・))も、家族の為なら支払ってきたじゃないか!
『傷だらけの獅子』は『痛み』で力を増す。
大雑把にいえばどんなダメージも意識をしっかり持っていれば持っている間だけ受けたダメージも自分の攻撃力に変換できる。
だけど、反動がただでさえ大きいマグナモードにペイン・シャウター。しかも連続且つ至近距離で発動したら普通の人間はショック死が普通だし、耐えることが出来ない。
だが、タカは普通じゃない。
家族に対する執念が強いがためにそんな痛みにも耐えうる精神力があるのだ。
マグナモードの『痛み』。それを『傷だらけの獅子』で魔力等に変換。
その『痛み』を返還した魔力の一部を使用して癒す。変換した力の大半は蓄えられたまま。
癒したダメージが使用しているマグナモードで再び『痛み』を受ける。
マグナモードを使用している間。タカがダメージを受けている間、パワーアップしていくのだ。だけど、それは自分の命を燃やしているに同等の行為だ。
そして、タカはそんな私達に構わず『聖王のゆりかご』に向かって突貫していった。
私達テスタロッサの家族であるフェイトを迎えに。そして、その友人たるアリサを助けに行くために。
こんな時だけオープンチャンネルでお互いの現状を知らせていることを後悔する。
この情報さえなければタカはゆりかごに向かわなかったかもしれないのに!
『…はっ。総員、『聖王のゆりかご』の攻略にかかるぞ!アサキムがいなくなった今なら』
『…あ、悪魔だ』
そこまで言ってクロノは局員達が怖気づいていることに気がついた。
みな、恐れているのだ。『傷だらけの獅子』に。
今の今までまともなダメージを与えることが出来なかったアサキムに大ダメージを与え、高出力の魔法を連発で行い、その戦闘後に見せた異常な修復能力と魔力回復。
加えてガンレオンのマグナモードを見て、殆どの局員が恐怖しているのだ。
『っ。クロノ君!ここは私が行く!リインフォース!アリシアちゃん!アサキムがまた出てきてもいいようにクロノ君達と一緒に皆を守ってや!』
そんな状況をいち早く判断したのかリインフォースとアリシアにそう言いつけたはやてさんはタカを追うように『聖王のゆりかご』に向かう。
『わ、私も…』
「駄目よアリシア!貴方も一度戻ってラッキースターをクールダウンさせなさい。もうそろそろ活動限界なんだから!」
アリシアもその後を追おうとしたが私がそれを止める。
『でも!』
「駄目よアリシア!それでもしもの時に故障してあなたが空中にでも投げ出されたらどうするの!」
『〜〜〜っ』
アリシアもわかっているのだ。今すぐにでもラッキースターを休めないと自壊することを。
こんな時だけ魔導師で無い事が悔やまれる。
気合や根性と言った精神論でどうにか乗り越えられる状況も、Dエクストラクターでは出来ない。明確な数値が眼前のモニターに映し出されているから。
『大丈夫だ。テスタロッサ姉!あとは私達がやる!』
『必ず僕達がフェイトさんと高志さんを連れて帰りますから!』
『シグナム?!それにエリオ!…と、誰?!』
それでも、アリシアは諦められないのか、『聖王のゆりかご』を睨みつけていると、銀と明るい紫、そして黄色の光がはやてさんを追うように突入していく。
アリシアが言った通りはやての後を追ったのは周辺区域で遊撃をしていたシグナムとエリオ。だが、その隣を飛ぶ一人の男性に見覚えが無い。
エリオはタカに似て飛行魔法は苦手だが、一直線に飛ぶことは出来る。それはアリシアの目に映っている通りだ。
『彼は元エースオブエースだ。と、説明は後だ。行くぞエリオ!ゼスト!』
『はい!』
『…ルーテシアとアギト。レジアスの件もある。俺も全力を尽くすさ』
そう、言葉を残していくと三人は『聖王のゆりかご』に突入していった。
確かに今は時間がおしい。このままだと『聖王のゆりかご』は位置的に不味い空域にたどり着く。
私は突入していったはやてさん達四人にタカの事を任せながら、アースラの艦内に戻ってきたアリシアのラッキースターの応急メンテを行う。
そう、後一時間もしないうちに『聖王のゆりかご』はたどり着いてしまうのだ。
月の魔力が得られる月の衛星軌道にではない。
首都グラナガン。
今、この町には多くの一般人と避難民がいる。『聖王のゆりかご』がそこにたどり着けば私達がそれを撃墜することはこんなになる。
撃墜すればその瓦礫や破片が町を襲うから。
航行進路を月野衛星軌道じゃなく、首都グラナガンにしたのはそこにいる人間を人質にしながらゆっくりと月の衛星軌道上まで上昇すればいい。
衛生軌道上へ移動するよりも首都を目指したほうが時間は遥かに短い。
「…急がないと」
最悪、グラナガンの人達を無視してでも『聖王のゆりかご』は撃墜しないと…。
私は焦る気持ちを抑えてラッキースターのメンテに取りかかった。
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第四十一話 『痛み』の連鎖 | ||
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コメント | ||
誤字修正しました。申請ありがとうございます(たかB) 誤字報告 いつもと同じ力強い方向を→いつもと同じ力強いほうこう(漢字が出ないけど、前文の『傷だらけの獅子』がほうこうを上げた、のほうこうで)を ボロボロになりながらもマグナモード展開→ボロボロになりながらもマグナモードを展開 航行進路を月野衛星軌道じゃなく、→航行進路を月の衛星起動じゃなく、 だと思われる。(シキ) 誤字報告 機械塀エメラルダンを強化した→機械兵エメラルダンを強化した 消費して、バルディッシュを体験に。→消費して、バルディッシュを大剣に。 疲弊して締まった体に鞭を→疲弊してしまった体に鞭を だと思われる。(シキ) タカシ・・・なんて無茶を・・・ダーリンですらそこまで無茶はしなかったのに!!? やべぇよ・・・STS編でタカシまさかの本気の死亡フラグ!?(孝(たか)) |
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