魔法少女リリカルなのはA's Another 第四話「それは、二度目の出会いなの」 |
桜色と金色の光が空中にて幾度もすれ違い、重なり合う。
「ディバインシューター!」
『Divine Shooter』
「フォトンランサー・マルチショット!」
『Photon Lancer Multishot』
白い少女と黒い少女、それぞれが互いに向けて打ち出すそれらは、相手に届くことなく空中でぶつかりあい爆発四散する。それによって生まれた黒煙がたちこもる中、二つの光は再び交差を繰り返し始める。ある時は近距離、ある時は遠距離から、桜色と金色の閃光が中空に走る。
その様子を、少し離れた場所から冷徹な瞳で見つめる二つの影があった。
「……どちらも現地住民、か?この世界、魔法とは無縁のように思えたのだが」
「黒いほうは結構戦いなれてんな。白いほうはまだまだ動きが鈍い。つか、むしろ素人じゃねーか、あれ」
その二つの影、シグナムとヴィータは八神家周辺に突然張られた結界の、その原因となるものを確認するため、シャマルの変身魔法によって騎士服と髪型を変え、さらに目の部分のみを隠す仮面を着けるという姿で、その二つの光のぶつかり合う様を見ていた。もちろん、両者ともに認識阻害の魔法を使って気配を隠している。
「(シャマル、残る他の三つの魔力反応はどうなった?)」
「(三つのうち、他の二つは二人から少し離れたところに反応があるわ。ただ)」
「(ただ?どうしたんだよ。なんか問題でもあんのか?)」
「(問題というか……残り一つの方、消えちゃったのよ。それも唐突に、忽然と)」
「(……どういうことだ?)」
念話、つまり魔力を使った一種のテレパシー魔法により、八神の家の中にはやてたちとともに残っているシャマルと、周辺状況のやり取りを行うシグナムたち。彼女らが家を出る少し前に感知された魔力は、今、二人の視界の中で何度も交差する少女たちのそれを含む、計五つあった。
しかし、シャマルの再度の検知には現在四つしか魔力を確認できていないという。
「あ、おいシグナム。白いほうが黒いほうにやられて落ちたぞ」
「そのようだな。白いほうは……どうやら少し離れたほうに落ちたようだ。こちらは放っておいていいだろう。問題は」
「あ、あの黒いやつ、((八神家|ウチ))の方に降りていくぜ!」
「よし、追うぞヴィータ。連中が何者で、何を目的にしているのか。……主はやてに害をなす者かそうでないか、見極める」
「おーけー」
そうして二人は、八神家の裏手にある林へと降りていった黒い影を追い、宙を滑空する。そしてその二人の追った件の人物は。
「あったよフェイト!ジュエルシード!」
「うんアルフ、確保ご苦労様。……これでやっと四つ目……早く封印して母さんに届けないと」
「……いや、それがさフェイト。これ……魔力、空っぽみたいなんだけど」
「……え?」
林の中、そこに立っていたオレンジ色の髪をした女性と合流し、その彼女の手の中の碧眼の瞳を思わせる色と形状をした宝石を確認すると、黒い衣服の少女は安堵の表情を顔に浮かべる。だがそれも一瞬のこと。
女性が持っていたその石からは、本来内包されているはずの膨大な魔力、それが一切失われていたのである。
「そんなどうして……かあさんの話だと、ジュエルシードの内包魔力は一個でもオーバーSランク魔導師十人分以上なみの魔力があるはずだってことなのに」
「あたしにも分かんないよ。見つけてみたらもうこういう状態だったんだからさ」
「……しょうがないね。一応、持っていくだけ持っていこう。かあさんなら何か分かるかもしれないし」
「捨てておけばいいじゃない。魔力のないただの石っころなんか持っていったら、あの鬼婆、またフェイトを」
「……でも、これがかあさんの頼みだし。ジュエルシードを集め、きゃっ?!」
「フェイトっ!?」
黒い服の少女がその石を握り締め、俯き気味に呟いた、その時。突然、彼女らの背後から伸びてきた“鞭状の何か”によって、少女の手の中の石が奪い去られてしまった。
「ほう、ジュエルシードというのかこれは……これがお前たちの目的か」
『え?!』
突然背後から聞こえた声に、少女と女性はそちらを仰ぎ見る。そこに居たのは、青い、まるで中世の騎士を彷彿とさせる衣装を着た白い髪の女性と、こちらは黒い、アンティークドールが着ているような、いわゆるゴシックロリータという衣装を着た、黒髪をお下げにした少女であった。
「じゅえるしーど、なあ。こんな石っころ一つのために、わざわざ結界まで張りやがったのかよ。……手前ーらいったいなにもんだ?こりゃ一体なんなんだよ?」
「そ、そりゃこっちの台詞だよ!そっちこそ、いきなり出てきて一体」
「……アルフ、撤退しよう」
「……良いのかい、フェイト?」
「うん。かあさんにはまた怒られるだろうけど、あの子と戦って消耗した今の魔力じゃ、転移魔法を使うだけでギリギリだしね」
「っ!?そう簡単に逃がすと思うか?!」
この場から逃走しようと算段するその二人を、シグナムとヴィータがそれを阻止しようとそれぞれにデバイスを構える。ところがそこに。
「(シグナム!ヴィータ!聞こえるか!?)」
「(これは、真咲か?お前、いつの間に念話を)」
「(んなことは後で!今すぐこっちに戻ってくれ!大変な事態になってる!)」
「(っ!?おい!はやてになんかあったのか?!)」
「(はやてにというかはやてがというか……とにかく来れば分かるから!)」
一体いつの間に覚えたのか、九郎からの突然の念話にシグナムたちが気を取られた、そのわずかな間隙。そこを、もう一組の方は逃がさなかった。
「何があったか知らないけど……フェイト!今のうちに」
「うん、アルフ。術式展開……座標固定……転移!」
『あっ!』
黒衣の少女がその足元に円形の魔方陣を展開し、その次の瞬間には二人の姿はその場から完全に掻き消えていたのだった。
「くそっ!逃げられちまった!」
「……仕方あるまい。今は何より、主はやての方が気がかりだ。戻るぞ、ヴィータ」
「……あいよ」
九郎の慌てぶりからして、よほどの大問題が起こったのだろうと察し、早々に八神家へと戻るシグナムとヴィータ。そして、戻った二人が見たものはというと。
「……」
「……おい九郎。アレ、なんだよ?」
「何だと言われても……はやてが、さっき、庭で拾った、“妖精”さんです」
それは、テーブルの上に敷かれた、おそらくは布団代わりなのであろう、小さなマットに挟まれてシャマルに治癒魔法をかけられていた、身長およそ三十センチ程度の、妖精というか、小さな金髪の少女だった。
「……これでいいわ。体の損傷もそんなに酷くなかったし、ちょっと衰弱していただけみたいですね」
「ほんまかシャマル?よかったあ、妖精さん、大丈夫なんやな」
「……主はやて……この、えー、妖精、ですか?一体どうなされたので?」
「いや、出てった二人のことがちょお心配になってな?窓越しにでも外を伺おうかと思たんよ。そしたら」
「……庭に倒れていたこの子を、はやてが見つけたってわけ」
「……なあみんな、こいつさ、もしかして」
「……ヴィータちゃんの推測どおりよ。この子、“ユニゾンデバイス”だわ。しかも、私たちと同じ、古代ベルカの」
ユニゾンデバイス。
「融合型デバイス」、もしくは「融合騎」とも呼ばれる生命体型のデバイスで、魔導師と融合を果たすことによって驚異的な能力向上を果たす(ただし、融合する側にもそれに適した素養が求められるが)。
デバイスではあるが同時に個としての生命でもあり、他のインテリジェントデバイスやアームドデバイスなどとは比較にならない自我をもって、所有者(マイスター、ロード等の呼び方が一般的)と離れて独自行動を行ったり、魔導師と同じように魔法や別のデバイスを扱って戦う事も出来る。
シャマルはその妖精が、ユニゾンデバイスであることを、先の治療中に察した。しかも、彼女らとその根元を同じくする、古代ベルカの術式に則って生み出された存在であるということも。
「……なんでそんなやつがウチの庭に居るんだよ」
「分からん。主が発見したとき、この子は服らしいものは何も着ていなかった。おそらくは」
「……どこかの研究施設から、何かしらの手段で逃げ出してきた、と?」
「……管理外世界にそんな施設があるとは思えねーけど」
「管理外世界だからこそ、とも言えるぞヴィータ。管理局の目を逃れるため、違法な研究をしている連中がこの世界に拠点を造っていたとしても不思議はあるまい」
「まあこの子の出自については、本人が目を覚ましたら聞けばええことや。……もっともこの手の場合のお約束は」
「……記憶喪失になってる可能性、だな」
一同の視線が再び、テーブルの上に横たわっているその少女に集中する。シャマルの治療が効いたのか、彼女はすうすうと安らかに穏やかな寝息を立てている。時折、何かしらうわごとを呟いているようだが。
「……ま……ま……ふぇ……と……」
そのかすかな声は、はやてたちのその耳には聞き取れていなかった。その場に居る、いや、正確には存在する、というべきだろう、いまだその姿を顕現出来ていない、彼女以外は。
「……私と同じ、融合騎がこの世界に居るとは……一体何者なのだろう、彼女は」
自らが、その意思として誕生して後、数多の世界を渡り続けたその間にも、彼女は自分以外の同胞に会ったことはない。
おそらく、彼女と彼女がその管制を司るそれが生み出されて以降、融合騎と呼ばれる存在はそのほとんどが失われて久しい存在となっていたであろう。融合騎、つまりユニゾンデバイスは確かに、所有者の能力を飛躍的に上げることの出来る優れた存在だが、いかんせん、その製作にはかなりの制限がある。
とくに、所有者との適合性をあげるために、ユニゾンデバイスは基本、その本人のリンカーコアをコピーするところから始まるのだが、それが可能な魔導師や騎士そのものの数が少なすぎたのが、一番の理由である。
「……私は元々、この闇の書の管制人格として生み出された。それゆえに、闇の書の求める魔力ともっとも波長の合うよう調整されている……だからこそ、歴代の主、そのすべてと適合して来たわけだが……ふ、今ではそれがかえって仇となってしまっているのがなんとも皮肉だな……」
彼女、闇の書の管制人格は、自らの背負わされたその深い業に、改めて自嘲の笑みを浮かべる。その脳裏には、彼女が、正確には闇の書の中のとあるプログラムがだが、過去、もはや正確な数も覚えていないほどに“食い殺してしまって来た”、主たちの姿がよぎっていた。
「……この運命、もはや変えようのない私の宿業、いつか誰かが解き放ってくれる、そう、期待していたこともあったが……それも終わった夢、だな」
みずからに組みこまれ、もはや一心同体となってしまったそれ。歴代の主、その誰もがそれに気づくことなく、蒐集された魔力によって、それは主ばかりでなく周囲のそのすべてに破滅をもたらしてきた。
「……前回などは、本当にあっという間だったな。たしか、十年ほど前のことだったか。次元航行船の動力炉そのものの魔力を一瞬で蒐集してしまったため、私の出る幕もなく暴走が始まってしまった……そして終わるのも一瞬だった……もっとも、前回はこれまでで一番犠牲者の少なかった回でもあったな……主と、そして……名はなんといったか……管理局の一人の魔導師、他の者を逃がすため、ただ一人船に残った勇敢なあの青年……その二人だけだったが……」
わずかな回想の後、彼女は再び意識を外へと、テーブルに横たわる小さな少女を見守っている今代の主、はやてへとむける。
「……今度の主はずいぶんと穏やかなお方だ……蒐集を命じる意思の無い主であるなら、もしかしたら……私を、闇の書と呼ばれるようになってしまったこの書を、夜天へと還してくれるかもしれない、そんな予感をさせてくれる……それに」
ちらり、と。彼女はその視線を今度ははやての横に立つ少年、九郎へと移す。
「……やはり、あの少年、なにかが引っかかって仕方が無い……ナハトが、闇の書の防衛プログラムが、魔力も蒐集されていないのに時折反応を示すようになったのは、彼に何かしら、書との繋がりがあるからとしか思えない……しかし」
魔力の供給ラインや繋がりなどはなにも、現時点においては彼女には感じられていない。なのに、そうとしか思えない何かが、ナハト、闇の書の防衛プログラムであるナハトヴァールの反応からみても、あるようにしか思えない。
「……一度、書の中の深層部分に潜ってみてみるか?……いや、だめだ。それをすれば、主に更なる負担をかけてしまう……やはり、ただ見守ることしか出来ないのか……っ。歯がゆすぎる……外へと出れぬこの身があまりにも……っ」
和気藹々と団欒をする、外のはやてたちの様子を見ながら、彼女はただ、何も出来ない自らに忸怩たる思いをもつのであった……。
つづく
というわけで、
アリシア、なんと融合騎としての再生です!
どうして彼女が融合騎に、ユニゾンデバイスに生まれ変わったのか、もちろん、ジュエルシードが関係していることに間違いはありませんが、詳しいことはもっと先のお話で明らかにさせていただきます。
闇の書の管制人格、つまり、今はまだ名の無いリインフォースは、なぜか九郎と闇の書の間に繋がりがあるような気がしています。
もちろん、これも最後のための伏線、というやつなので、どういう形になっているかは、その時までお待ちくださいw
さて次回は、目の覚めたアリシアとはやてたちのやり取り、そして再び平穏な日常風景をおおくりします。
そして、もう一人のオリキャラも登場予定となっています。
なのはssではよくある、自称オリ主。勘違い系踏み台ww
そういうやつもある種必要ですからね。九郎にとっての××ともなる、そんな感じのキャラクターになる予定です。
それでは今回はこれにて。
ちゃおwww
説明 | ||
狼印のリリカルss、四話目でございます。 だから原作改変はしな(ry じゃ、本編どうぞw |
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コメント | ||
今後の展開が気になって、夜も眠れないので早く続きをお願いします。(kirit) ↓ミス 恋姫好きでリリなの好きの俺に死角は無かった。次が楽しみ。(なるっち) 恋姫好きで(なるっち) これは九郎くんとのユニゾン(意味深)ってことですかな?← 正直、無印すっとばして、早くAs編をやって欲しいところですww(神余 雛) |
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