リリカルなのはSFIA
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 第四十二話 メラゾーマではない。メラだ。

 

 

 

 ティアナ視点。

 

 『聖王のゆりかご』から出撃しただろうガジェットと戦闘機人の相手をしていた私は一つのビルの中に閉じ込められていた。

 数人の戦闘機人を一人で防衛とかあのブタ上司。今に見てなさい。情報操作をしてでも無い事と無い事を振り撒いて社会的に殺してやるんだから。

 

 「…ふん。大分逃げ回ってくれたがそこまでだ」

 

 「というか逃げ過ぎっす。私等数人相手に逃げ切るなんて…。ところで何もないっすよね?」

 

 チンクはその長い銀髪を覆いに乱しながら、私に文句を言ってくる。

 サーフボードに乗ったウェンディとかいう戦闘機人が疲れ切った表情を見せながらあちこちきょろきょろと見渡す。

 

 「オットー。四人がかりなのは少し気に食わねえが。覚悟しろ、エビ尻尾」

 

 チンクと同じくらい私に因縁があるのか執拗に私を追ってきたノーヴェが私を睨みつける。

 ノーヴェがいうように私は目の前にいる三人の戦闘機人に今自分がいるビルを結界で閉じ込めている戦闘機人はもう一人いるようだ。

 …何気に戦闘機人四人を相手にしている自分の境遇に涙が出る。そして、今から起ころうとしていることも考えると。

 

 「…クロスミラージュ。サードシフト」

 

 [了解]

 

 私は両手に持っているクロスミラージュの形態を拳銃からパイルバンカー。鉄杭を付け加えた手甲に変える。

 それを見たチンクとノーヴェが鼻で笑う。

 

 

 「はっ。それで私等を攻撃するつもりか?」

 

 「貴様は馬鹿か。私達にも遠距離攻撃は出来るんだぞ」

 

 「うわぁ、小物臭全開っす」

 

 目の前のやりとりを無視して私は左手を後頭部。右手を足元より少し前に出す。

 

 「何の構えだ?」

 

 「降参のつもりっすか。でも、あんたは捕獲対象になって…。ないけど、私等の間じゃ要注意人物だから…。殺させてもらうッす」

 

 ウェンディが私を見ながらどこか怯えた目で私を見る。

 やはりここに来るまでに兄さんや高志さんから教えてもらった『落とし穴&竹やり』が効いたのだろうか?それとも布団を丸めてそこに折れた鉄筋や砕けたコンクリートの塊を混ぜた『スパイクボール』だろうか?

 よく見るとノーヴェとチンクの戦闘服の所々が汚れて破けている。…落ちたのか。

 ウェンディの方は必要以上に埃まみれだ。あっちはスパイクボールだろうか?

 

 「…悪いけど殺されるつもりはないわ。それにね、私は何もあんた達を一人で相手しているわけじゃないの」

 

 「…何を?!」

 

 「お前正気か!」

 

 チンクとノーヴェは少し不思議そうな顔をしたが、すぐに顔を青ざめさせる。

 同様にウェンディの方も私を信じられない化物を見つけた目付きになる。

 

 「あ、あんた本気っすか!これじゃあ、結界に閉じ込めたのはあんたじゃなくて、((私達|・・))じゃないっすか!」

 

 おそらくこの結界を張っているオットーとやらが彼女達に知らせたのだろう。

 このビルに向かって放たれた収束砲が迫ってていることに。

 

 「それじゃあ…。揃って『少し頭を冷やそうか』」

 

 私がそう言った直後、私達の頭上から結界をぶち破ってくる桜色の光が降り注いだ。

 

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 なのは視点。

 

 「ティアナ―!生きてるー!」

 

 私は今更ながらにクロノ君に『君は地面に向かって魔法は撃つな!』と言ったのがよくわかる。

 

 戦闘機人が四人攻め込んできているとティーダさん率いる偵察部隊が見つけて知らせてくれた。

 ((熱探知|サーモグラフィー))すらも感知させず、かつ、魔力を持たない人を中心に編成された部隊はまるであの段ボールを使って潜入する部隊にも思えた。

 そこで攻略案として出たのがティアナを囮にして出来るだけ戦闘機人を一ヵ所にとどめて私がそこに収束砲を撃ちこむというもの。

 …私達が小学生の頃によく高志君が使っていた方法だ。立案者は高志君。

 自分は目立つし、空も飛べない。正直言って空戦が出来る私達と組むとお荷物になる。だけど、その攻撃力は無視できないのでどうしてもそこに人を向かわせる。

 そこに収束砲を撃ちこむ。まさに囮以外何でもない。

 ただ、囮にされた人は必ず攻撃を受ける。

 

 ぼこっ。

 

 「…堅さが取り柄ですから」

 

 私の声を聞こえたのか、爆心地(自分で言うのもなんだが…)から顔を出したティアナの顔を見て私はほっとした。

 ティアナの持つクロスミラージュはサードシフト。一点突破型。

 私が放ったディバインバスターに対して射線軌道に対して円錐状。ティアナが腕につけている円錐状の障壁を張る。防御の一点突破だ。

 砲撃の射線上に平行になるよう障壁を上下に展開。すると、向かってくる砲撃は左右に分かれて最小限の空間に最高の防御効果が発揮される。逆方向に展開された障壁は釘が地面に打ち込まれるように地面に埋まっていく。地面に埋まれば埋まる程、砲撃をやり過ごせる。

 

 「…あれがディバインバスター」

 

 なんだろう?

 ティアナがとある大魔王に『今のは((全力全開収束魔法|メラゾーマ))ではない。((収束魔法|メラ))だ。』と、言われた未来の大魔導師のような顔している?

 

 「では、私はここに転がっている戦闘機人たちを捕縛したら別働隊の皆さんと合流します。ですので、なのはさんは『聖王のゆりかご』に向かってください」

 

 ティアナはそう言うと戦闘機人の少女達にバインドをかけて更に金属錠をつけて行く。

 

 「あと、それから…」

 

 [魔力委譲]

 

 ティアナはクロスミラージュから純粋な魔力を私に渡す。

 

 「これで少しは足しになるといいんですけど…」

 

 「てぃ、ティアナ。駄目だよ、ティアナにだって魔力は必要でしょっ。だから…」

 

 「残念ですけど『聖王のゆりかご』攻略では私程度の力は役に立たないです。ですから、なのはさん。私の分まで頑張ってください。…あの人を助けてください」

 

 少し悲しそうな表情を見せるティアナ。彼女が言うあの人はきっと…。

 

 「あの人は誰か傍にいないと駄目になります。ずっと無茶をして最後は壊れちゃいます。だから、お願いします。あの人を助けてください」

 

 「…ティアナ」

 

 「あと、私ならいつでも貴方を受け止めます。と、伝えてくれませんか」

 

 「それは自分で言った方がいいよ、ティアナ」

 

 私の言葉にそれは分かっている。と、諦めが混ざったかのような顔をしている。

 

 「それは難しいです。あの人の周りには彼の傍に行こうと近づく人がいて、その人は私やあの人から見ると眩しく見えると思うんです。あの人はきっとそれを拒まない。だけど、それにも疲れたら、私の所に来てほしいんです」

 

 彼が必要とした時だけそこにいる。必要としない時は傍には居たくない。

 ティアナの表情はまるで…。

 

 「あ、護送部隊が来たみたいです。それではなのはさん、健闘を祈ります」

 

 ティアナは私に敬礼をすると近くにまでやって来た護送部隊の人と合流していく。

 その後ろ姿を見送った後、私は『聖王のゆりかご』の浮遊しているポイントまで高速飛行を行う。

 

 「…ずるいなぁ。高志君。ティアナは私が訓練していた子なのに私よりも君に似ちゃうんだから」

 

 私は誰も聞いていないだろう大空でぽつりと愚痴を呟いた。

 

 

 

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第四十二話 メラゾーマではない。メラだ。
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SLBじゃない……だと……?(夜の魔王)
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