真・恋姫無双 〜乱世に吹く疾風 平和の切り札〜第7話 進撃のT/村を守る戦士
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「ぞ、賊だぁ!賊がこっちに来るぞぉぉぉ!!」

 

村全体に響かんばかりの大声。

入り口方面から走って来た若者のその言葉は、外に出ていた村人たちの間にざわめきをもたらした。

 

「おお…なんということじゃ…」

「ちくしょう……こんな村襲ったってどうしようもないだろうに…!」

「そんなこと言ってる場合かい!賊がここに来る前に何とかしないと、ボーっと突っ立ってたって何も始まらないよ!」

「けどどうすりゃいいんだ!?家財持って逃げたって間に合うかどうか…下手したら追いつかれるぞ!」

 

初めは其処まで大きくなかったざわめきも、時間が経つにつれて徐々に大きくなり、喧騒の色が濃くなっていく。

桜桑村の村人たちに限らず、賊の奇襲は財産や命の危機が関わっている。

それでなお余裕と言うのも不自然だから、慌ててしまうのも無理はない。

 

「愛紗、まずいのだ。村の人たちがどんどん焦ってきてるのだ」

「北郷殿に訪ねる前に村の様子を見ていたが、争い事に縁が無いかのような平和ぶりだったからな……こういう賊の襲撃に慣れていないのだろう」

 

しかし、慣れていないからと言ってこのままの状態でいてもよろしくないのは確定的。

村人の一人も言っていたが、このまま慌てているだけで何もしないのでは、状況は良い方向へと転ぶことはまずありえない。

 

「…とにかく、まずは冷静になってもらわねばな…」

 

一先ず動揺している村人たちを落ち着かせるべく、一喝しようと関羽が息を大きく吸い込もうとした時……

 

 

 

「みんな!落ち着いてっ!」

 

 

 

喧騒の中、一際大きく響いた桃香の声。

普段は大声を出さないため声色こそはいつも通り柔らかく、声量が上がっても威厳は大して変わらない。

だが彼女の声は太い芯が通っているかのようにしっかりしていて、脅威に怖気づかないその意気は、皆の心の奥に響かせるに十分な毅然さを持っていた。

 

桃香の声に村人たちは騒ぐことを止め、一斉に彼女の方を注目した。

 

村人たちだけでなく隣にいた張飛、そして関羽も桃香の方を見る。

 

「劉備殿…」

 

意外だっただろう。

 

劉備とは一刻程度前に会ったばかりだが、活気のある町娘という印象を関羽は感じていた。

関羽が劉備に対して『殿』と敬意を込めて話していたのは、天の人(御使いでなく)と思われる北郷一刀と親しい間柄にあったからだ。

 

しかし、たった今関羽の口から零れた呟きには天の人の親友などといったものは関係なかった。

恐らく劉備本人の風格、威風を感じた故の敬称だっただろう。

 

 

 

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「子供達や女の人、それからおじいちゃんおばあちゃんは村の裏口まで退避しておいて!あと誰か数人が一緒に着いて行って、他の悪い人たちがいないか裏口周辺の警戒をしてください!後の人たちは自分の身を守れるものを持って、村の中央より入り口寄りに待機しててね!」

 

表に出ている人たちに向けて、口元をメガホン形式で覆いなるべく遠くまで聞こえる様に声を張る劉備。

 

何故いきなりの事態においても素早く指示が出せたのかは不明だが、村人たちは彼女の指示を聞き、各々が慌ただしく動き始める。

 

「よし、ここは劉備ちゃんの言うとおりに動いてみよう。それじゃあ避難組は先導する人を直ぐに決めて動くよ!」

「よし、俺はじいさんばあさんたちを連れてくぜ。女連中と子供たちを誰か頼む!」

「なら女性の皆さんは僕について来て!」

「それじゃあ子供たちはアタシについてきな!絶対にはぐれるんじゃないよ!」

 

避難組は素早くリーダーを決めると迅速に人を分別し、用意が出来たものから直ぐに裏口向かって固まって歩いて行った。

 

「よし、俺らも動くぞ!まずは適当な農具、それから盾に出来そうなものを持ってこい!」

「なら俺たちで鍬(くわ)や鎌を運ぶか」

「んじゃあ早速行くぜ!」

 

いざという時の戦力となる若い男衆も、自分たちと村人たちを守るために武具を得るためそれぞれ分担して動き始める。

指示を受けて方針が定まることによって、村人たちの安心感が確立。

加えて元々備わっているチームワーク力が作業をスムーズに進めてくれるようになっている。

 

皆に動きがあることを確認した桃香は、先ほど賊が来ることを教えて来た若い男性の元に駆け寄る。

 

「ちょっとすいません。賊の人たちの人数とか距離とか、もう少し詳しい情報を持ってませんか?」

「あ、ああ……賊の人数は大体100人くらいだよ。茂みにいてあまり派手に動けなかたから確実な数字じゃないけど、200もいってなかったな。それと俺が見つけたのはここから一里(約400m)先だよ。あんまり速く進んでなかったから、もうあと半分ちょっとでつくと思う」

「そっか……武器とか凄いの持ってたの?」

「う〜ん……別にそうでも無かったかな。大体の奴は農具を軽く弄って武器らしくしたもの程度だったし。先頭にいる奴数人が剣を持ってたような気が……」

「ふむふむ」

 

そこまで聞き出して十分だと判断したのか、桃香はその男への質問をそこで終え、自分の担当する役割に行って来て良いと解放した。

 

「劉備殿、随分と指示が慣れているような気がするのですが…こういった事態の経験があったのですか?」

「ううん、別にそんなことないよ?ただ、こういう事がいつか起きるかもしれないってことで、事前に一刀さんと打ち合わせしてたの」

「あのお兄ちゃんとなのだ?」

「そうだよ。村の人たちには戦える人が少ないけど、せめて逃げる準備が出来てれば命は助かるからって…さて」

 

一しきり説明をしたところで、桃香は一息つくと入り口の方へと体を向ける。

 

「私も私で頑張らなくちゃ、ね」

 

 

 

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「劉備殿……確かに村人たちが動いている以上、貴女も動く必要があったかもしれません。それには私も同感な思いを抱いてます」

「もちろん!私だけ何もしないなんて無責任だもん」

「そうなのかもしれません……そうかもしれませんが……」

 

 

 

「おいおい嬢ちゃん、見逃してくれなんていい度胸してんじゃねぇか!」

「こちとら飯の為にこうやってんだ!邪魔すんじゃねえ!」

「俺は腹減ってんだ、早くどけー!」

 

 

 

「……何も賊どもと直接交渉に打って出なくてもよいでしょう!」

 

現状を説明しよう。

 

まず、村人たちに素早く支持を出した桃香は、防衛に回る人たちを待機させたまま、村から出て行った。

彼女が進む先は賊が発見された場所、というか賊の元であった。

 

賊の元を訪ねた理由、それは村への侵攻を止めて欲しいという要望を賊たちに提案するためだったのだ。

 

しかし、目前の利益に囚われて侵攻の意志を固めてしまった匪賊たちは、桃香の願いを聞き入ることを一切使用としていない。

元々、極貧生活に耐えきれずに賊徒になり下がった連中なのだ。

いまさら堅気な行動をとってくれるなど有り得ない話だったに違いない。

 

「うぅ……もしかしたら説得が通じるかもって思ってたのに…」

「通じるわけないでしょう!あ奴らは最早他人の財産を意地汚く狙う獣のような輩、今になって劉備殿の説得に応じるはずがありません!」

「劉備お姉ちゃん、すっごい能天気なのだ」

「あうぅ……関羽ちゃんならともかく張飛ちゃんに言われるのはちょっと複雑な気が…」

「……なんだか鈴々、お姉ちゃんに馬鹿にされてる気がするのだ」

 

実際、悪意はないもののそういう事になっている。

 

そんなやり取りを3人でやっていると…

 

「ええい、こんな阿呆どもに構ってられっか!野郎どもぉ!とっとと村襲って有り金と食糧かっぱらってくぞぉ!」

「「「「「おおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」

 

3人の引き留めにしびれを切らしたのか、進行を阻まれた盗賊の頭と思われる人物が後ろにいる手下100程度の指揮をとり、村に向かって再び進み始めた。

しかも今度は走っての進軍。

獲物が目前にあるという獣ならではの欲望が、急くようにと賊の体を動かしたのだろう。

 

「うわわわわっ!」

 

 

賊たちの進行に慌てて構え始める桃香。

 

 

 

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しかし、桃香の傍らには彼らの進行を許す筈も無い人物がいることを、盗賊たちは知る由も無かった。

 

「ぜあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「うりゃりゃ〜〜〜〜!!」

 

少女二人の勇ましい咆哮。

 

振り抜かれた白銀の刃。

 

紙きれのように吹き飛ぶ、20近くの盗賊たち。

 

「「……え?」」

 

桃香と盗賊頭の素っ頓狂な声が重なる。

盗賊頭の後ろにも控えていた手下たちも、まるで夢でも見ているかのように呆気にとられた表情で、目の前の事象を凝視した。

その原因は言わずもがな、桃香の両隣にいた二人が起こした今の光景。

 

そして当の両人は何食わぬ顔である。

 

ビュン、と自身の得物である青竜偃月刀を鋭く一振りした関羽は、目前の盗賊たち目掛けて啖呵を切り始める。

 

「聞け、下郎ども!我が名は関羽、山賊狩りの関羽なり!」

「鈴々は張飛なのだ!」

「武を持たぬ庶人から財貨を奪い、汚い欲望のままに動く貴様らけだもの共は今この場で青竜刀の錆にしてくれよう!」

「自分より弱い人たちからご飯を奪うなんていけない事なのだ!お前たちがやってることは絶対に許しちゃいけないのだ!」

「さぁ、我が武と競いたいという者が居れば出て来い!相手になってくれよう!」

 

青竜刀の切っ先を盗賊たちに向け、鋭い目で彼らを睨みつける関羽。

 

ここで『女なんかに負けてたまるか!』とでもいえる胆の大きな輩がいれば多少は見栄もあったものだが、中々そうもいかないらしい。

先程の常人離れな芸当を見せられ、更に彼女の剣幕に威圧されてしまった盗賊たちの腰は完全に引けてしまっていた。

戦う=やられる、という至極単純明快な方程式が出来上がった今、関羽や張飛と真っ向勝負をしても勝ち目などゼロに等しいというのが、盗賊たちの心に根付いてしまったのだ。

 

 

 

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「…ったく、使えん奴らめ……」

 

ゴミでも見るかのような視線を自身の手下の姿たちから外し、盗賊頭は狼狽える彼らの前へと進み出る。

 

 

「いきなり奴らを吹き飛ばした時は少々驚いたが……何、こちらもその怪力に劣らぬ力を持ってるのだ。遅れをとるわけがない」

「…随分と余裕だな。そんな細腕で私よりも強い力が出せるなど、冗長も過ぎるぞ」

 

『怪力』と言うワードに眉を寄せつつも、関羽は改めて目の前にいる男の姿を一瞥した。

外見には目立った特徴も無く、簡素な防具を取り付けた服の上から見ても、男に十分な筋力が備わっていないことが分かる。

別段太っているわけでもなく、あまり鍛錬を行っていないような細腕と言ったところだろう。

 

相当な腕前を誇る関羽には、先程の男の言葉が戯言にしか聞こえていなかった。

 

「……ふん、こいつを見てもまだ強気でいられるか?」

 

そう言って男は懐に手を伸ばし、その中から長四角の小さな物を取り出した。

 

「……何だそれは?容器か何かの類か?」

「でも入れ口が見当たらないのだ」

 

盗賊頭の手にあるものが何なのかを知らない関羽と張飛は、訝しげにそれを見ている。

 

しかし、桃香だけはそれが何なのかを知っていた。

 

「!!まさかそれは……ガイアメモリ!?」

「ほぉ……意外だったな。まさかこんな田舎でコイツの事を知ってる奴がいるとはな」

「どうして、あなたがそれを持ってるんですか!?いや、そんな事よりそれを直ぐに捨ててください!それはとっても危険な物なんですよ!」

「ふん、知ったような口を利くなよ小娘。今はまだ控えめに動いてるが、時期が来たらコイツを使って漢王朝をぶっ潰してやるんだよ」

 

そう、男の手に収められていた物は、極一部の者しかその実情を知らないガイアメモリ。

 

2年前に村を襲ったマグマのメモリ、そして一刀の話から聞かされたガイアメモリの秘密。

ガイアメモリがどれほど危険な可能性を秘めているのか、経験と情報を得られた桃香は十分理解していた。

だから彼女は、今にもメモリを使おうとする男を何とか説得しようとする。

 

しかし、男は聞く耳を一切持たない。

長い間待ち望んでいた強い力を漸く手に入れられたことで手放す気を失ったのか、男のメモリを握る力が一層強まっているのが、浮かび上がる手の血管で判断できた。

 

 

 

『T-REX(ティーレックス)』

 

 

 

男は上着を軽くはだけさせ、左肩に刻まれたコネクタにメモリを近づけていく。

 

「ダメっ!」

「劉備殿!前へ出られては危険です、下がって下さい!」

「そうなのだ!お姉ちゃんとあいつの話はよく分かんなかったけど、今近付いたら危ない気がするのだ!」

 

桃香は男の行動を止めようとするが、どう考えても間に合うような距離でも時間でもない。

それを判断した関羽と張飛は飛び出そうとする劉備の前に身体を動かし、彼女が男に近づかない様に制する。

 

 

 

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そして、男の持つガイアメモリはコネクタに挿し込まれてしまった。

 

「ぬぅおおおおぉぉぉ!!」

 

メモリを挿し込んだ男の身体に異常が起こり始める。

身体中の血管が不気味なほどに浮かび上がり、それに準じて腕、足、その他の筋肉が膨張していった。

身体も筋肉の強化に伴って一回り大きくなり、突如、男の身体が闇色の光に包まれていく。

 

その黒い光が解き放たれた瞬間、男の容姿は人間とはかけ離れた存在となっていた。

 

太古に存在した恐竜の頭部。

人間の頭部とは比べ物にならない大きさのそれが、目前の関羽たちを鋭くにらみつけてくる。

更に恐竜の頭部の左右からは腕が、下からは両足が生えており、どれにも先ほどの男の名残がある。

 

 

 

2【ティーレックス・ドーパント】

 

 

 

「な……何なんだ…あの化け物は…!?」

「さっきの奴がいなくなって、代わりに変なのが出て来たのだ!」

 

突然自分たちの前に現れた禍々しい姿に、関羽と張飛は動揺を隠しきれなかった。

鈴々に至っては先ほどの男と認識していない、が、非現実的な体験をしたことのない彼女らにとってはその反応は仕方のない事。

 

「よっしゃぁ!アニキが本気出したぜ、これでもう怖いもの無しだ!」

「あの姿になったアニキに勝てたやつは一人もいないからなっ。アニキ、そんな奴らやっちゃってくだせぇ!」

 

かつての盗賊頭――ティーレックス・ドーパントの手下たちはその姿を見て怯えるどころか、逆に意気揚揚と顔を綻ばせ活力を取り戻していた。

 

 

 

 

 

…だが

 

 

 

『……お前等はもう、必要ない』

 

氷のように冷たい一言が、手下たちの上司によって告げられた。

アニキは一体何の冗談を言っているのか、と、そんな疑問が手下たちの脳に浮かぼうとした瞬間。

 

「……え?」

 

最前線に立っていた手下の眼前には、ティーレックスの巨大な口が迫っていた。

鋭い牙が幾多と並び、深い井戸のような深淵を思わせる口内がその手下を包み込んでいき……

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

その場に居る者に戦慄を覚えさせるほどの凄惨な断末魔。

 

悲鳴を上げたその手下は腹から上をティーレックス・ドーパントに飲み込まれ、その腹の部分からは真っ赤な血が盛大に吹きこぼれた。

否、血だけではない。

ドーパントの咀嚼に比例して肉片、臓器の一部までもが広がりつつある血の池にポチャリと音を立てて落ちていく。

 

「う…うわあぁぁぁぁぁ!!」

「に、にげろぉぉぉぉ!殺されるぞぉぉぉぉ!!」

「た、助けてくれ…助けてくれぇ!!」

 

悲惨な光景を目の当たりにした賊徒たちは、心に一生涯分の恐怖を植え付けられたような感覚を得た。

このままこの場に居れば、自分たちも同じ目に遭ってしまう。

そう理解した盗賊たちがとるべき手段はたったの一つ、逃げる事だけだ。

顔に恐怖の色を浮かばせつつ、盗賊たちはティーレックス・ドーパントに背中を向け一目散に、そして散り散りに逃げて行った。

 

『……ふん、安心しろ。お前等はこの先見つけ次第、一人残らず喰らってやる』

 

ペッ、と口の中に残った賊の血と小さな肉片を吐き捨てるティーレックス・ドーパント。

そしてそのまま180度に振り返り、改めて関羽たちと対峙する。

口や歯には先程喰らった手下の血肉がべっとりと付着しており、元と相まって実にグロテスクな姿だった。

 

「うっ……酷い……」

 

口元を覆っている桃香の顔色がみるみる青ざめていく。

 

「劉備殿!」

 

そんな様子の桃香を心配し、関羽が桃香の盾になるように前に出る。

 

それに応じ、張飛も前に出た関羽の隣にスッと動く。

 

 

 

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『さぁ、次は貴様らが死ぬ番だ!!』

 

ティーレックス・ドーパントが駆けだす。

目標は言わずもがな、前方に佇む関羽と張飛の二人だ。

 

「来るぞ、鈴々!」

「分かってるのだ!」

 

敵の接近に備え、更に警戒を行う関羽たち。

 

『ハァァ!!』

「っぐ…!」

「にゃにゃっ!?」

 

猛烈な勢いによる突進攻撃を、関羽と張飛は桃香を守るように互いの得物を交差させ真っ向から防ぐ。

しかし、ドーパントの見た目に相応しいパワーを受け、攻撃を辛うじて受け止めた二人に強い衝撃がかかる。

地面に出来た後ずさりの跡がそれを物語っている。

 

『ふん!!』

「くっ…(今の一撃で腕が痺れて……だが!)」

 

続けざまに横から放たれてくる、ティレックス・ドーパントの剛腕。

標的は関羽。

 

衝撃によって生じた手の痺れに眉皺を作る関羽だったが、柄の部分を寄せてそれを防ぐ。

上手く防いではいるが、今の態勢では防戦一方となってしまう。

 

「愛紗!」

「ああ、分かっている……今だ!!」

 

張飛とアイコンタクトを交わす、その間一秒と無かっただろう。

二人はほぼ同時に力加減を調節し、揃って一気にティーレックス・ドーパントを押し返した。

 

『っとと……女にしては随分と立派な馬鹿力だな』

「女だからと甘く見るなよ、妖(あやかし)め!…鈴々、初撃は私が行く」

「分かったのだ、なら愛紗の攻撃の次に、鈴々が一気に畳みかけるのだ!」

 

そう言うと、半歩ほど下がって自分の義姉と化け物の動向を観察し始める張飛。

天性の戦上手と讃えられている彼女ならではの、無駄の無いスムーズさだ。

 

『…良いのか?二人同時に攻めた方が良いと思うがな』

「好きに言っていろ。我らは我らの戦い方をする、それだけだ」

 

実は二人同時に戦おうとしたいのには、理由がある。

 

それは関羽と張飛、二人の得物の長さにある。

 

関羽の青龍偃月刀は現在の長さで言うと約3m、張飛の蛇矛に至っては更に長く4m以上はあったとされている。

そんな長いもの同士で一緒に攻撃していては、いつ事故で自分の味方に当たってしまうか分からないのである。

縦振りや突きを重点的に戦えば問題ないのでは?とも思うが、攻撃パターンだけでなく防御の仕方までもが限定されてしまうのでそうもいかない。

 

まぁ今まで二人掛かりで戦う程の人物と対峙したことがなかったので、困りの種とはしていなかったのだが。

 

『余裕ぶりやがって……ならば死ねぇ!!』

「っ!!」

 

声を張り上げたティーレックス・ドーパントはそのまま関羽へと肉薄し、攻勢に打って出る。

基本的な攻撃は噛み付きと頭突き、時折腕や足を払うといったもので、前者を主力に織り交ぜて戦う。

 

対して関羽は偃月刀の刃で迫る牙を弾き、腕や足による攻撃は柄を巧みに利用して受け流していく。

攻めの勢いは強く、気を抜けば逆に押し込まれてしまいそうだ。

しかし集中して今のように流せば可能性は十分に見えてくる。

 

『ふっ!』

「…せいっ!」

 

いまだティーレックス・ドーパントの攻勢が続くが、関羽も敵の戦術を把握し始めたお陰で防御もこなれ始めてきた。

攻撃の流し方も無駄な部分が削られ、立ち振る舞いも安定してきている。

 

『さっきから面倒な……どぉらぁ!』

 

決定打を浴びせられない事に対するイラつきを混じえた台詞を吐き捨てると、ティーレックス・ドーパントは脚に大地を蹴る力を込め、鋭いタックルを関羽へと見舞わせようとする。

 

その瞬間、関羽の眼がより一層鋭く光る。

 

「今だ、鈴々!」

「応、隙ありなのだぁーっ!!」

 

ドーパントの突進を大きく受け流した関羽。

 

そこに迎撃を担当するのは、後方に控えていた張飛。

自分の身の丈より遥かに長い蛇矛を軽々と振り回し、その刃をドーパントの脳天目掛けて振り下ろそうとする。

 

先ほど関羽と共に盗賊たちを吹き飛ばした時、彼女がどれほどの力を持っているかは既に明白。

一騎当千の実力者の一人である張飛翼徳の一撃をモロに喰らえば、先ず無事ではいられない。

 

 

 

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しかし……

 

『ばあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

「にゃ、にゃにゃぁ〜〜〜〜っ!?」

 

けたたましい爆音…否、爆音と言う表現だけでは物足りない。

強烈かつ耳障りな音に加えドーパントの周辺の土石や草木、さらには攻撃しようとしていた張飛までもが吹き飛ばされている。

 

「にゃあ!?」

 

そして張飛は地面に身体を打ち付ける。

 

「鈴々!今のは一体………」

『なに、簡単な事だ。今のは俺の【声】さ。それもただの声なんかじゃない、周辺に衝撃波が発生する程の大音量の声だ。お前たちが俺の隙を作って攻撃を仕掛けようとしてたのは目に見えてたからな…わざと引っ掛かって油断させてもらった』

「なに…!ならさっき私に受け流されたのは…」

『芝居さ。そこのチビスケがまんまと近づいてくれてよかったぜ……まぁ得物が長すぎるせいで耳をぶち壊せなかったのは癪(しゃく)だが』

 

表情こそは読めないが、声色から機嫌を上々とさせているティーレックス・ドーパント。

そして身体の向きを関羽へと向け直した。

 

『さて…次は貴様の』

「……させないよ!」

『っ!?』

 

張飛に続いて関羽に手を出そうとしたその時、2名の戦いに第3者の声が割って入ってくる。

その声に続いて、ティーレックス・ドーパントに向かって何かが突っ込んできてドーパントの身体にダメージを与えた。

 

ティーレックス・ドーパントが飛んで来た物を見ていると、それはコウモリの型をした生物―バットショット―。

そしてそれが向かってきた方向を見てみると………

 

『…今のこの俺に突っかかってくるとは、どうやら死にたがりがいたようだな』

 

桃香が、ティーレックス・ドーパントに向かって敢然と立っていた。

 

「劉備殿!?何故下がらないのです、此処は危険だとあれほど言ったでしょう!」

「……うん、分かってる。2年前もそんな風にお説教をされたこともあるから」

 

桃香の脳の中で思い出されるのは、2年前のマグマ・ドーパント襲撃事件の時。

 

あの時、桃香は一刀の引き留めに従わず、彼の事が心配だったために危険な場所へ足を踏みこんだ。

勿論、一刀は激しく怒っていた。

戦う力を持たない彼女が戦地に赴けば、高確率で命を落としてしまうからだ。

 

「確かに今の私じゃドーパントに戦えることなんて出来ない。一刀さんみたいに一人じゃ変身できないし、一刀さんみたいに腕っぷしが強いわけじゃない。だけど……私は、一人じゃないから!」

 

気迫に満ちた桃香は、背中に乗っかっていたスパイダーショックを掌へ乗せ、白い糸をドーパントに向けて噴出させる。

 

クモの糸は素早い速さでドーパントへと向かっていき、その上半身を絡みつけた。

 

『なにっ?』

「バットちゃん、お願い!」

『一体何を…ぐぅ!?』

 

バットショットがドーパントの眼の前まで飛んでいくと、腹部から眩しいフラッシュを放った。

 

光を近距離で喰らったティーレックス・ドーパントは眩暈を起こし、足取りがフラフラし始める。

 

「ガタッくん!」

『ぬぉ!?』

 

更に桃香は懐に控えていたスタッグフォンを使役し、ドーパント目掛けて突進させた。

 

スタッグフォンのスピードは鋭く、弓矢を髣髴とさせるその体当たりはドーパントの頭部へと直撃する。

 

「クモくんにバットちゃん、ガタッくんだって居る。それに何より……」

 

 

 

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「関羽さん、俺に合わせてくれ!!」

「っ!」

 

 

 

「私には、とっても頼もしい相棒がいるから」

 

 

 

「うぉらぁ!」

「はああぁぁぁ!!」

『ぐおおぉっ!』

 

突然現れた男の跳び蹴り、そして関羽の偃月刀による斬撃がティーレックス・ドーパントへ同時に襲い掛かり、その巨体を吹き飛ばした。

 

乱入した男は空中で態勢を整えると、地面に足を着けて無事に着地する。

 

その男の姿は、関羽にも見覚えがあった。

数時間前に会った人物の姿など、早々忘れる筈がない。

それも、関羽たちが探していた天の御使いと思われていた者の姿を。

 

「ほ、北郷殿…!?」

「ふぅ……ギリギリセーフってところか」

 

天の人にして探偵と呼ばれている男、北郷一刀であった。

 

「北郷殿…何故このような場所に…!」

「説明は後だ。取りあえず関羽さんは張飛ちゃんのことを――」

「鈴々は大丈夫なのだー!」

「うおっ、さっき倒れてたのが見えてたけど…もう大丈夫なのか?」

「当然なのだ、鈴々は弱くなんてないのだ!」

 

エッヘン、と誇らしげに胸を張る張飛。

確かに見た所、彼女の身体には目立った外傷もないため、心配する要素もなさそうである。

 

一方、後方にいた劉備も一刀、関羽、張飛の3人が集まっている所へ駆け寄ってきた。

 

「一刀さん!良かったぁ〜、中々来ないから心配しちゃったよ?」

「あー…すまん。依頼の場所が入り口と逆方向にあってな…これでも急いできたほうだぞ?」

「そっかぁ〜。とにかくありがとう、一刀さん♪」

「どういたしましてってな。…それにしてもまさかドーパントが来てたとはな」

 

劉備から視線を外し、一刀は少し離れた所で立ち上がろうとしているティーレックス・ドーパントを一瞥する。

するとすぐに目を離し、今度は関羽と張飛に視線を向けた。

 

「二人は少し下がって、此処は俺に任せてくれ」

「なっ…!駄目です、あの妖(まやかし)には複数で挑まねば危険です!」

「そうなのだ!お兄ちゃん一人だけ戦うなんて危ないのだ!それに鈴々達だって、まだまだ戦えるもん!」

「二人は多分、ああいう奴との戦い方に慣れてないだろ?それに普通の人間相手だったらともかく、二人にとって相手は化け物だし」

「関係ありません!敵が何であろうと、我らが成すべきことは一つ!弱き者から財貨を奪おうとする輩を討つのみ!」

「………」

 

関羽と張飛の真っ直ぐな正義感を目の当たりにしながらも、一刀は彼女たちの一歩前へと進み出る。

 

一刀の動作に続き、桃香も彼の隣に立つ。

 

「…二人とも、私の身体をお願いね」

「はい?」

「にゃ?」

 

二人にそんなことをお願いしつつ。

 

 

 

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どうやら一刀たちが話している間に、向こうも態勢が整ったようである。

ティーレックス・ドーパントは砂ぼこりのついた体を起こし終え、大きな頭をフルフルと左右に振り、気をしっかり持たせ直す。

意識が明瞭になったところで、ドーパントは突然現れた一刀を睨みつける、

 

『お前……一体何者だ』

「別に、俺はどこにでもいるただの探偵だ。どんな依頼もハードボイルドに解決する、な」

 

ドーパントの威圧に動じず、一刀は何処からともなくWドライバーを取出し、それを腰に巻きつける。

そしてすぐさま懐から黒色のメモリを取り出した。

 

≪Joker(ジョーカー)!≫

 

「で、私はその相棒だよ」

 

一刀の隣にいた桃香も同様に、緑色のメモリを取り出す。

彼女の腰にもまた、一刀と同様のドライバーが巻かれていた。

 

≪Cyclone(サイクロン)!≫

 

そして二人は鏡合わせのようなタイミングで構えを取り、口を開く。

 

「変身」「変身」

 

先ずは桃香がWドライバーの向かって左側に緑のメモリ――サイクロンメモリを差し込む。

その直後、彼女の身体は糸が切れたようにフッと倒れ込んでしまった。

 

勿論、事情を知らない関羽と張飛は、桃香が倒れたことに対して思わず目を丸くしてしまう。

 

彼女たちの驚きを余所に、一刀の腰のWドライバーには桃香の挿したサイクロンメモリが突然現れる。

一刀はそのメモリをしっかり奥まで押しこみ、自身の黒いメモリ――ジョーカーメモリをドライバーの開いている側へ挿し込む。

そしてドライバーを外側へと向かって開き、バックルを『W』の形にした。

 

≪Cyclone(サイクロン)!≫

≪Joker(ジョーカー)!≫

 

その瞬間、一刀を中心に突風が発生し、土煙が巻き上がり周囲の草草も大きくしなり始める。

激しい風力に平然としていられず、一刀と気絶している桃香以外の者達は顔に降りかかってくる砂埃を腕で覆い防ぐ。

 

そして風が収まった頃、一刀の姿は赤色の複眼に緑と黒が半分ずつの身体、首に銀色のマフラーを巻いたものとなっていた。

 

『なっ…!?』

「あれは……」

「お兄ちゃんが変な恰好になったのだ!」

「変は余計だ!」

 

鈴々のリアクションにツッコミを入れた所で、一刀はポージングを取り始める。

 

『「さぁ、お前の罪を数えろ!」』

『…やっぱり女の子がお前って言うのは慣れないなぁ』

「でも貴方とか君じゃ全然締まらんだろ?我慢してくれ」

『そういう問題なのかな……まぁいっか♪』

「よし…それじゃあ行くぜ!」

 

そう言うと一刀は素早く駆け出し、ティーレックス・ドーパントへと一気に肉薄する。

先ずは牽制として跳び蹴りをかます。

 

『ふん、見え見えの攻撃だな』

 

ティーレックス・ドーパントの言うとおり、初動を容易く見破られた跳び蹴りは難なく防がれてしまう。

 

「おらぁ!」

 

防がれても一刀の動きは止まらない。

一刀は防がれた方の足を地に付けた瞬間、もう片方の足を回して敵の頭部目掛けて回し蹴りを叩きこもうとする。

 

『ぬっ!』

 

しかしこれもドーパントが瞬発的にのけ反ったことにより、チッ、と掠った音がした程度で致命傷には程遠いものとなった。

お返しとばかりに、のけ反りを利用してヘッドバットを一刀へかまそうとするドーパント。

当たれば盛大に吹っ飛んでしまいそうな威力を持っているのは明白。

 

しかし一刀はその頭突きを無理に受け止めることはせず、跳躍で相手の背後へ向かって避け、更に相手の背後をとる。

そして即座にストレートキックを後頭部にかます。

 

「後ろ、貰ったぜ…おら!!」

 

追撃として複数の回し蹴りを叩き込む一刀。

 

しかし関羽の斬撃を受けても血を流さなかったティーレックス・ドーパントの外皮は想像以上に固く、思ったよりもダメージを与えられていなかった。

 

『ふん……左程痛くは無いな』

 

 

 

-11ページ-

 

『うわわ…一刀さん、なんだかあんまり効いてないような気がするんだけど…』

「確かにな…俺も蹴ってて手応えが大してなかった感じがしたし」

『うーん、それじゃあもっとパワーのあるメモリに替えてみよっか!』

「よし。なら…こいつだな」

 

≪Heat(ヒート)!≫

 

桃香の言葉に頷いた一刀はサイクロンメモリを抜き取ると、今度は赤色のメモリをバックルに挿し込んだ。

 

『熱き』記憶を持つメモリ――ヒートメモリだ。

 

≪Heat(ヒート)!≫

≪Joker(ジョーカー)!≫

 

先ほどまで緑と黒の配色だった一刀の身体は、緑が消えて赤と黒が半分ずつの姿となった。

 

変身を終えた一刀は右手を力強く握ると、ドーパント目掛けて駆ける。

走るその様子では、蹴りを仕掛けてくる様子は無い。

 

先程の動作を見る限り、拳撃を仕掛けてくるのだろう。

 

『(さっきまで足技を使っていたヤツが急に拳で攻撃を…?色を変えた手品をしたからってどうなるわけでもないし、威力も弱くなって…)』

 

これまでの賊としての経験からか、パンチはキックよりも威力が劣っているものだとドーパントは判断するがこれは正しい。

腕と足の筋肉の量を見てみると分かるのだが、足の方が圧倒的に筋肉が多い。

足は人間の身体を支える必要があるのでそうでなくてはならないからだ。

 

大まかに計算すると、キックのほうがパンチの2〜3倍近くのパワーがあるらしい。

 

ならば戦法を脚から拳に切り替えた一刀の技は、ますます聞かなくなるのではないか。

 

「おらぁ!」

『ごふっ!?……な、なんだこの力…さっきまでとはまるで桁違いだっ…!』

 

しかし一刀の拳を受けたドーパントの様子がおかしい。

風を纏った鋭いキックを何発も受けて平然としていたというのに、たった今放たれた一撃に苦悶の声を挙げたのだ。

 

しかもそれだけではない。

一刀の拳がドーパントの肉体に接触した瞬間、そこから炎が炸裂したと来た。

 

「まだまだ…熱いの奢ってやるぜ!」

 

一刀の拳に、文字の通り炎が灯る。

炎が激しく燃え盛る己の拳を強く握り、続けざまに拳撃を放っていく一刀。

一刀の放つパンチは初見の一撃で怯んだティーレックス・ドーパントの肉体を的確にとらえ、その体に炎と拳の2重苦を見舞わせる。

 

勿論、喰らった側としては堪ったものではない。

 

ティーレックス・ドーパントは熱さと痛みを一度に受け、その巨体を軽々と吹き飛ばされてしまった。

 

「よし…桃香!」

『うん!あれだよね?』

「ああ……これで決まりだ」

 

二人の意志は綺麗に疎通し、即実行に移された。

 

 

 

-12ページ-

 

Wドライバーからジョーカーメモリを抜き取り、右の腰部分に付けられたスロットにそれを挿し込んだ。

 

≪Joker(ジョーカー)!≫

≪Maximum Drive(マキシマムドライブ)!≫

 

「行くぜ!」

『…!?』

 

ヨロヨロと立ち上がるティーレックス・ドーパントだったが、気付いた時にはもう手遅れだった。

ティーレックス・ドーパントの眼前には、3m近くまで上昇した仮面ライダーWの姿。

そしてその身体は左右に分裂し、赤の身体と黒の身体とでドーパント目掛けて不規則に向かう。

その動きに翻弄されたドーパントの肉体に、一刀たちの強力なパンチが叩き込まれた。

 

『「ジョーカーグレネイド!」』

『ぐあああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?』

 

一刀たちの必殺技を喰らい、ティーレックス・ドーパントは断末魔を上げながら爆発していった。

その爆発の中からは盗賊の頭の元の姿と、ティーレックスメモリが飛び出してきた。

盗賊頭は身体に複数の傷を負い服装がボロボロの状態に、メモリは地面に叩き付けられると、無残に砕け散っていった。

 

『ふぅ……終わったね、一刀さん』

「ああ。んじゃ変身は解くぜ」

 

一刀はそう言うとWドライバーを元の形に戻し、ライダースーツから元の学生服の格好に戻った。

変身を解いた一刀はバラバラになったメモリの元まで行くと、それを踏んづけて地面の砂と入り混じらせ、痕跡を消した。

 

一方で桃香も、関羽と張飛に任せていた身体で意識を取り戻した。

歴史に名を遺した人物の名を冠しているだけあって、気絶していた桃香の身体には傷一つ付いていなかった。

 

 

 

そして戦いが終わったのち、一刀と桃香は関羽たちに事情を説明し始めた。

内容は仮面ライダーWの力、ドーパント、ガイアメモリ、一刀がこの世界に来た目的、桃香が気絶した理由など。

話の中には酷く現実離れした内容も多々あったが、現に実物を見たお陰で、説明を受けた二人の飲み込みも案外早く済んだ。

まぁ、あれだけ決定的な光景を見せられて、尚信じられないというのは考えにくいが。

 

 

 

こうして4人は村へと帰宅。

 

桃桑村への第2のドーパント襲撃事件も、一刀たちの厚役によって幕を下ろす形となったのであった。

 

説明
第7話です。

今更ながら、原作のWみたく2話構成で進めるのは無謀だと感じました。一話一話がどうにも長くなっちゃうし。
今回は分割しませんでしたが、次回からはスムーズに投稿できるようにその辺りを考慮していこうかと思います。
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コメント
咲実さんへ ありがとうございます!(kishiri)
更新お疲れ様です。(咲実)
タグ
真・恋姫無双 仮面ライダー 仮面ライダーW 北郷一刀 桃香 関羽 張飛 

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