運・恋姫†無双 第二十話
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川が流れている。

これが長江なのだそうだ。

大きい、と陳宮が長江に手を浸しながら感心していた。

 

傲慢になった、と思った。

長江に身を浸しながら、紗羅はそう感じていた。

奔放ではなく、傲慢である。

無論陳宮ではなく、自分が。

 

 

「これが、海に通じているのだな」

 

「海、ですか。ねねは海を見たことがありません」

 

 

力を得てからである。

それも、突然でありながら、その後もじわじわと変わり続けている。

それが傲慢という形で、性格に表れてきているのだ。

 

 

「なら行くか、海。この流れに沿って行けば着く」

 

 

身を起こし、濡れたままの姿で陳宮を引っ掴んで絶影二号に乗せた。

その前に紗羅も跨る。

 

 

「驚く暇くらい与えてくれてもいいと思いますが」

 

「おお、慣れたな公台。待て、今服を乾かす」

 

 

妖術を使えば、濡れた服などすぐ乾く。

 

 

「行くぞ二号。全速力だ」

 

 

馬腹を蹴る。

陳宮と乗っても速度はあまり変わらず、何日もかからないだろう、と思った。

身軽だと、気軽でいい。

 

 

「喬には」

 

「構わんさ。また戻ってこよう。その時に」

 

「心配はしないでしょうね、喬は。しかし、周泰はどうなのでしょうか」

 

 

否応なく変わっているのではない。

望んで変わっているのだ、と紗羅は思った。

力ある者は、それでいい。

それを許されるだけの力がある者は。

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今運んでいる荷はなく、馬車や他の馬は喬に任せてある。

その喬は周泰と共にいるはずだった。

周泰はあれから大人しくなって、紗羅が住処に居つくことも容認している。

まだ、気持ちの整理がついていないのだろう。

 

海辺に着いた。

小波が、幾度も砂浜を均している。

陳宮が目を輝かせてはしゃぎ回っていた。

 

 

「すごい! すごいすごい! これが海なのですね!」

 

「舐めてみろ、しょっぱいぞ」

 

紗羅は絶影二号の鞍を外した。

そうすると、二号は海の中に入って行った。

そしてじっと浸ってこちらを見ているのである。

洗え、と言っているように見え、紗羅はそれを無視した。

 

 

「公台、今日はここで野宿をしよう。海の魚も食ってみたいし、川の魚とは違う味がするんだろうな」

 

「紗羅殿、これを」

 

 

陳宮が、半透明の固形物、塩の塊を抱えるように持ってきた。

 

 

「すごいな、自然の産物か。でかしたぞ、魚を食う時に、少し砕いて使ってみるか」

 

 

海の、波が届かないぎりぎりの所で立ち止まった。

海と空の分かれ目を見つめてみる。

この先に、故郷と呼べる所がある。

わざわざ意識しないと、そう思えなかった。

郷愁じみた思いとはすでに袂を分かったつもりでいる。

そういう思いは湧き出ては来ず、この先に日本となる場所がある、とやはり意識しないと、ここが何処ということを忘れそうだった。

 

「すごいですね、本当に。果てが見えませぬ」

 

「そうだな、こうしても見えないだろう」

 

陳宮を肩まで持ち上げた。

街なら見え方は変わるが、相手が海となると空しくさえある。

 

 

「あの果てには何があるのでしょうか?」

 

 

陳宮が目を細めて言った。

あの彼方に何があるか知っている。

大陸だ、大陸がある。

そんな思考が頭をよぎった。

 

陳宮には、あの海平線が未知に見えるのだろう。

しかし、紗羅は知ってしまっているのだ。

そういう所で、紗羅は陳宮がたまらなく羨ましく思えた。

 

いや、違う。

ここは、元の世界ではないのだ。

三国志の武将が女になっていた位だ。

もしかしたら、全く知らない大陸もあるのかもしれない。

妖術もあるのだ。

どこかに、魔法が存在する国もあるのかもしれない。

この世界に関しては、自分は全く未知なのだ。

同じだ。

陳宮も自分も。

見える景色は、一緒なのだ。

そう思えることが、紗羅は嬉しかった。

 

 

「さあ、何があるのだろうな。何かあるかもしれんし、もしかしたら何もないかもしれん」

 

 

いつか、この海を渡る、というのも面白いかもしれない。

海を、砂漠を、大陸を越えていく。

それは口には出さなかった。

 

 

「紗羅殿?」

 

「どうした」

 

「珍しいですね。こんな海を見たら真っ先に泳ぐとか言いそうだと思っておりましたのに」

 

「そうかな」

 

 

陳宮を海に放り込んだ。

自分の名を呼ぶ絶叫が、着水音と共に消える。

浮かんできた時には波に揉まれながらじたばたしていた。

紗羅は、可笑しくなって声をあげて笑った。

やがて陳宮が見えなくなっていく。

 

 

「おい二号。まさかあいつ、泳げないんじゃないだろうな。……助けに行くか。ついでに、泳ぎ方を教えよう。その後でお前を洗ってやる」

 

 

紗羅が海に飛び込んだ。

己は今だ大海を知らず、初めて大海を想う。

俺は蛙か、と紗羅は思った。

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あとがきなるもの

 

もうあとがきとかかかなくていいかなーとか最近思ってます。二郎刀です。書くことないと困るもの。書きたいことがあった時に書けばいいですよね。

 

そろそろ戦闘を書きたくなってきました。戦闘つーか戦を書きたい。つーか虎牢関を書きたい。しかしまだ先が長いです。ちゃんと段取りは踏まないとですね。まだ黄巾さえ起こってないですもの。

 

では今回はここまで。

 

今回の話はどうでしたでしょうか? 少しでも楽しんで頂ければ幸いです。

説明
最近話が思い浮かばない・・・
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コメント
最新話期待してます。(zny)
↓え、そんなの右足が沈む前に左足を出してって繰り返せば誰だってできるのでは?(ハイライトの消えた瞳)(親善大使ヒトヤ犬)
水の上を歩くような妖術を期待してます♪(ミクボン)
更新ありがとうございます、呂布のような傲慢さという事でしょうか?弱肉強食にあってはokです。(禁玉⇒金球)
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