恋姫無双〜魏の龍〜第壱話 |
「・・・華・・・ま・・・・あ・・・・です・・起きて・・・。」
自分を呼ぶ声に華琳はそっと目を開ける。
「・・・・おはよう。桂花・・・。」
「おはようございます。華琳様。」
「ん・・・」
桂花の接吻が華琳の寝ぼけた頭をゆっくりと覚醒させる。
「ん・・・。華琳様、今日は少しだけ機嫌が良ろしいのですか?」
「あら何故?」
「接吻がいつもより、優しかったので。」
この娘は、そんな些細な事で自分の機嫌の良さが分かるとはそんなに機嫌が良いのだろうか?
でも確かに、機嫌が良い。なぜなら、
「今日、兄さんの夢を見たわ。それも、私達の目の前で大泣きした時の夢を・・・ね。」
「!そうですか。確かにあの日は私達5人が絆で結ばれた日ですしね。」
あの後、直ぐに兄は戦に出た。
その戦で、見方をかばって敵の矢に当たり、崖から落ちて行方が分からなくなったと聞いている。
死体は見つかっていないが、今では死んだことは分かっている。
あの日からもう5年、私は魏の王となった。
兄のしたかった国に少しでも近づけるために。
ドドドドドド!!
「華琳様!!」
そんな物思いに耽っていると、廊下からけたたましい音を立て春蘭が慌てて部屋に入ってきた。
何があったというのだろうか?
「このバカ!華琳様のお部屋に行き成り入ってきて何事!!」
「一時(約2時間)前に黄巾党の討伐に、500ほどで向かった秋蘭たちが、援軍を所望してきているのです!」
「敵の数は?」
この慌て振りだとそんなに危ないのだろうか?
「始めは、200だったようのなのですが、敵に援軍が来て5000ほどのものになったとのこと!」
それは急がねばならない。秋蘭なら私が行くまで守り切れはするだろうが、少し厳しい。
「春蘭!直ちに5000の兵をもって援軍に行きなさい!」
「御意!!」
〜秋蘭SIDE〜
「いいか!援軍は必ず来る!!それまで持ちこたえろ!!」
戦局かなり厳しい。
敵は烏合の衆とは言え10倍の兵。
戦は数とはよく言ったものだ。
「全弓兵構えー!!てー!!
今はまだ平気だろうが、徐々に押されぎみなのは分かる。
現に今、敵との圧倒的戦力差に見方の兵は疲れを見せ始めている。
最早突破されるのも時間の問題だった。
「夏侯淵将軍!!」
「如何した!」
戸惑った幹事の顔をして、一人の兵が入ってきた。
「敵軍後方より『大きな剣のような物』を持った者が入っていき、次々と敵兵を倒していっているのです!」
「何だと?」
『大きな剣のような物』
それを聞いて、秋蘭は有るものが浮かび上がった。
「(だがアレはあの方しか扱えた者は居ない。)そのものの容姿は?」
秋蘭は、自分の考えを否定したが兵の言った次の言葉にさらに驚愕する。
「遠めだったので詳しくは分かりかねますが、淡い緑色の髪だけは分かりました。」
「何だと!!?」
『淡い緑色の髪』
かの人も美しい淡い緑色の髪の毛だった。
若しかしたらと思う。
違うかもしれないと思う。
でも、秋蘭は自分の感を信じる事にした。
「全軍!緑の髪の者を援護せよ!」
秋蘭は迷うことなくそう軍に指示を出した。
〜???SIDE〜
「戻ってきて早々戦場に鉢合わせだなんて、皮肉ですか?」
愚痴も言いたくなる。なぜなら、自分はこの地の戦で矢で討たれ崖から落ち、死に掛けたのだから。
まあ、それも今となっては良い思い出となっている。
傷も漢の勲章と思っていれば何のことは無い。
「じゃ、行こうか。牙龍(ガロン)。」
そう自分の武器に語りかけ、黄巾党の陣の後ろから突っ込んだ。
〜秋蘭SIDE〜
私は今、我が目を疑っている。
「アレは・・・間違いない。『牙龍』だ。」
一度だけ、華琳様達に秘密で触らせてもらったから鮮明に覚えている。
あの武器『牙龍』は龍翠様が特注で作らせた剣だ。
重さが25貫(約100kg)ある、非常に重い剣だ。
この時点で最早剣と言う代物を超えている。
その重さ故、普通の者は両手で持つどころか、持ち上げる事すらできない物だ。
勿論当時の私も、持ち上げようとして龍翠様に支えてもらったことを覚えている。
だが、かの人は・・・龍翠様はこれを片手で扱える。
その巨大な剣を薙ぎ、振り下ろし、突き刺す。
その後には、唯の肉片しか残らない。
まるで龍が敵兵を食い荒らしたかのように。
故にあの方はこう呼ばれる。
「我が名は姓は、曹!名は朋!字は錬鳳!魏の龍と知って恐れぬならかかって来い!!」
その言葉に黄巾党には恐怖と絶望を、夏侯淵隊の兵には希望を、秋蘭自身には歓喜を与えていた。
黄巾党が竦みあがっているこの機を逃す秋蘭ではない。
「全軍!!この機を逃すな!!突撃せよ!!」
「―――――――――――!!」
戦意をほぼ完全に失った黄巾党になすすべなく、程なく一掃されてしまった。
「一体これは・・・?」
春蘭が援軍に駆けつけるともう戦は終わっていた。
だがそこは戦場と言うより、屠殺現場のようだった。
無理やり引きちぎれたような肉片がそこかしこに飛び散っている。
「姉者ーー!」
秋蘭が軍を率いて此方にやって来た。
「秋蘭!これは一体如何言う事だ?」
「それは、この人が我等に加勢してくれたのだが、戦が終わると倒れこむように寝てしまってな。」
秋蘭は後ろに乗っている者を見ながら言う。
「・・・すー・・・くー・・・。」
寝息を聞いた感じは女子の様だ。被り物のせいで顔は見えない。
「その人はな、あのお方かもしれん。」
「あのお方?」
「我らが男の中で最も愛したお方で、我らが主の兄上様。龍翠様だ」
春蘭は我が耳を疑った。
そして秋蘭は寝ている者にかけてあった布の顔の部分を捲る。
寝ているその者の容姿は女性と見ま違うほど美しい顔立ち、美しい艶のある淡い緑色の髪。
そして、左腕には春蘭が龍翠に贈った「春」と彫ってある腕輪。
最早疑いようが無かった。
「!?りゅ、龍翠様!!」
「待て姉者。今はまだ寝ておられる。起きる前に城に行こう。」
春蘭がその者に突っ込みそうになるのを秋蘭が必死に止める。
秋蘭の言い分に渋々了承した春蘭は足早に城へと戻った。
ドドドドド!!
「華琳様ー!!」
遠くから春蘭が走ってきているのが分かる。
相変わらず子供の用に元気が良い。
「お帰りなさい春蘭。で、今度は何?唯の報告にそこまで急がなくても・・・。」
「あのお方が!龍翠様が帰ってらっしゃいました!!」
「・・・・・・・・え?」
華琳は春蘭の言っている事が理解できなかった。
「今、秋蘭が御傍に居ます。秋蘭の戦に加勢していただいた後、そのまま寝てしまわれたそうです。」
そう言って春蘭は、華琳の手を握って走り出した。
まるで子供ときに戻ったように。
〜龍翠の部屋〜
部屋に着くと兄は床に寝ていた。
あの時より少し成長した兄が。
「華琳様。どうぞ此方に。」
そう言って秋蘭は龍翠の前から離れる。
兄の顔を覗き込むと、行き成りとこに引きずり込まれた。
「キャ!?」
細い女子のような腕なのに何故かたくましさが感じられる不思議な腕。
顔を上げると、懐かしい兄の顔があった。
「兄・・・さん?」
華琳は確かめるように問いかける。
「君のお兄さんが龍翠と言う名なら、僕だよ。それとも違う名前なのかい?」
意地悪だけど優しい兄らしいこの声に華琳は龍翠の胸の中で泣いた。
「ひっく・・・・バカっ・・・・5年も待たせて・・・・・兄さんのバカっ!」
「ただいま。華琳」
「・・・お帰りなさい兄さん・・・。」
二人は離れていた5年を取り戻すようにお互いを抱きしめた。
「春蘭、秋蘭。君達もおいで。」
そう言って、龍翠は二人を引っ張り寄せ、華琳と一緒に抱きしめる。
「龍翠様〜!おがえりなざいばぜ〜!」
顔をぐしゃぐしゃにして龍翠に抱きつく春蘭。
「お帰りなさいませ龍翠様。」
秋蘭の頬には涙が伝わせ、龍翠を抱きしめる。
「ただいま。春蘭、秋蘭。」
そう言って龍翠は三人の額に口付けをした。
説明 | ||
完成しました二作目!! 今回龍翠は、ある事になっていると言う設定で、前回の5年後から始まります。 それでは、魏の龍二作目お楽しみください。 |
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コメント | ||
魏できるのあまりに早すぎでは?(ちまき) 黄巾党「に」なすすべなく ではなく 黄巾党「は」なすすべなく のほうが意味が通りそうです。(なっとぅ) キーパー様 ・・・勉強不足な自分には分からない問題です・・・。(タンデム) 三国時代なら兄妹って結婚できたっけ?(キーパー) 竹師様 「それを言っちゃあ御しまいですぜ」って言うやつですよ(^^)(タンデム) これからの展開が楽しみ!だけど三国志知らないようだけど誰か死ぬのかなぁ?ですが楽しみにしてます。執筆頑張って下さい!!(竹師) ビスカス様 ありがとうございます!その言葉が私の元気の源(^^)(タンデム) 100`ってwwwあ〜こっからどんな話になるか楽しみだ!頑張ってください^^(ビスカス) munimuni様 ふっふっふ〜。それは本編でですよ。(タンデム) MiTi様 桂花ちゃんはちゃんと次回再会させます!それと誤字報告とご指摘ありがとうございます。(タンデム) Poussiere様 龍翠君は男前なんですが、これからどんどん化けの皮を剥がして行こうと思います(^^)(タンデム) 後誤字報告と指摘…3n最後の部分で秋蘭の字が収攬になってます。そんでこの時代では時間換算はしないかと…一刻とかそんな感じのはず(MiTi) いいねいいね〜!やっぱこうでなくちゃ!!次回更新待ってます! 再開の場に居合わせられなかった桂花に合掌w(MiTi) 龍翠男前wwwwww てか25貫(約100kg)の剣って・・・・重すぎだろw これからの展開が楽しみでしょうがないですww (Poussiere) |
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