読書日和の午後
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ふと気付くと、太陽が大きく傾いていた。そこまで読書に熱中していた事に気付き、少し反省をする。

日影も選んで読書をしていたはずなのに、傾いた太陽はひさしを避けて直接梨に差し込んでいた。

道理で少し熱が籠っていると思った。

ふぅと息を吐いて辺りを見渡すが、苺は近くには見当たらない。恐らく退屈して誰かの所へ遊びに行ったのだろう。

 

ならば、続きを読もうか。西日を避けられる場所を探すが、生憎この部屋では避けられそうもない。計ったかのように部屋の隅々まで橙色の光が差しているのを不満そうに見やり、部屋を移動すべく立ち上がる。

部屋の出口向かった足に長く影が差す。目で追った先には、筋肉質な長身の男。

 

「よぉ、金烏の嬢ちゃん。」

 

「雨合さん…」

 

梨も決して背が低い訳ではないが、彼と並ぶと小柄にみえてしまう。太陽を背にした彼は武器の手入れでもするのか、油の入った小瓶と刀、布を持っていた。

 

「武器の手入れか…」

 

「お?あぁ。ガキんちょ達が菓子食ってる側で油の匂いさせんのもなんだろ?適当な場所探してたんだよ」

 

大振りな斬馬刀を軽く持ち上げて見せ、縁側でもいいか〜と呟く。雨合が身体を動かすたびに大きな影も動く。

 

大柄な雨合…西日。

 

ふと、梨の思考にある良い考えが浮かんだ。

 

「…この部屋を使うと良い。私も本を読んでいるだけだから気にしない。」

 

「お?そうか。あんがとな、嬢ちゃん」

 

気遣いを快く受け取って、適当に本をどかして壁を背に畳に腰を下ろした。胡坐をかいた横に油の小瓶を布を置き、重厚な斬馬刀を軽々と持ち上げ、刃の点検を始める。

その隣…体躯で陽が遮られてできた影に本を持って移動し、その身を滑りこませる。畳はまだ熱を持っていたが、直射日光がこないだけでも十分だ。

わざわざ移動してきた梨に、雨合は怪訝な顔をして手を止めた。

 

「嬢ちゃん、そこだと本読むにゃぁ暗くねぇか」

 

「問題ない。日向はあまり好きじゃないんだ」

 

黒い着物は光を吸収して熱が籠るし、どちらかというと日影の方が好みだ。和綴じの表紙を開いて先ほどの続きを探す。栞とは言わずとも、紙切れでも挟んでおけばよかった。

 

「日向…ねぇ。…金烏っていやぁ太陽の化身じゃなかったか?」

 

「…私に足が三本あるようにみえるか?」

 

ついでに言えば苺は早寝だ。と、言外に一緒にするなと言ってやると雨合は愉快そうに笑った。

 

その笑い声が治まる頃には梨は目的のページにたどり着き、続きを読み始める。

それを横目に、雨合も手入れを再開した。

 

 

 

 

次に梨が我に返った時には夕陽は半分沈み、雨合の刀の手入れも済み、誰かが夕食の支度が整った事を告げていた。

 

 

説明
ここのつ者小説4作目。
登場するここのつ者:金烏梨・雨合鶏
梨ちゃんのPLさんからリクエスト頂きました。
口調のミスなどありましたらご指摘ください。
読書してる梨ちゃんは可愛いと思う。雨合さんはいいおっちゃんだと思ってる。
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小説 ここのつ者 

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