【SS】懺悔【オリジナル】 |
空からひとひらの雪が舞う。
それを目にするまで、そんなに冷え込んでいる事に俺は気付かなかった。
空を覆う厚い雲。
昼か夜かも分からぬ薄暗い丘の上で俺は一人佇んでいた。
ボンヤリと空を見上げながら、この分では積もりそうにないなと呟く。
その言葉に返事をする者など、誰もいないと分かっているのに。
余りに沢山の事があった。
沢山ありすぎて大半の事は忘れちまった。
昔の鬱積した気持ちや破壊的な衝動……
それがどこからもたらされたのか、もはや俺にも分からない。
俺のやった事は間違いではない。
少なくても俺はそう信じたい。
だが、それを止めに入った“お前”も間違いではない。
俺はそうも信じたいんだ。
俺達は革命を起こし、俺達に自由をもたらした。
だが、それを成すには余りに犠牲が多すぎた。
お前はそれを警鐘していた。
だが、当時の俺にはそれが分からなかった。
隷属して生きる事など、死んでいるのと同様にしか思わなかったからだ。
視線を空から足元に移す。
ふもとには小さな町の明かりがチラチラと輝いている。
煙突から上がる煙は、そこに確かに人がいて、生活を営んでいる事を感じさせる。
その町にいる父親、母親と呼ばれる者達は覚えているだろうか?
その父や母と呼ばれる者の子供達に知る機会があるだろうか?
その昔、この丘は血に染まり、沢山の人間が死んでいったと言う事実を。
お前はそれを警鐘していた。
だが、当時の俺にはそれが分からなかった。
今ならもう少し、お前の話をちゃんと聞いていたかも知れない。
だが、何をするにも全てが遅すぎた。
失われた時間も、亡くした人間も、もはや取り戻す事が出来ない。
後悔しても仕方が無い。
なら、今からでも少し話をしようじゃないか。
今からでも遅くは無い。少なくても、俺はそう信じたい。
俺は腰につけていたボトルの栓を開けて天に向けて掲げる。中身は上物のウィスキーだ。
今夜は飲もうぜ……我が友よ……
その声に応える者は、もはや、誰も、いない……
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・執筆時間30分(笑)細かい設定とかは敢えて公表しません。 | ||
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