英雄伝説〜光と闇の軌跡〜 723
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その後ロイドは2人で話し合っているエリィとノエルに近づいた。

 

〜エルム湖〜

 

「あ……ロイドさん。」

「甲板に出ていたの?」

「ああ、風にあたりにね。えっと、お邪魔だったかな?」

「あ、ううん………」

「……その、通商会議の時の出来事について……それとディーター市長の提案について話してたんです。」

ロイドに尋ねられたエリィは辛そうな表情で答え、ノエルは答えた後不安そうな表情を見せた。

「提案……『国家として独立』するってあれか。」

「ええ……私にとってはちょっと他人事ではないわね。まさかおじさまがあんな事を考えてたなんて……」

「あたしもその……正直、他人事じゃない感じです。警備隊の存続にも関わってくる話ですから……」

「そうか……エレボニアとカルバードはクロスベル警備隊の規模縮小を要求してきているんだよな。代わりに自分達の軍隊をタングラム門とベルガード門に駐留させようっていう……」

「ええ………リフィア殿下やルファディエルさん達の活躍のおかげで二大国はそうは言ってられない状況になったけど……あの時はどう考えてもクロスベルから更なる富を吸い上げる為に結託したとしか思えないわ。そしてあわよくばお互いの隙を狙って併合して果実の独り占めをする……その準備としか思えないもの。」

「確かに……となると、市長の提案はそれに対抗する案でもあるのか。」

エリィの話にロイドは頷いた後言った。

「ええ、国家として独立すれば今まで両国に抑えつけられていた警備隊の装備も充実できます。対人用の武装だけじゃなくて、他国の侵略を阻止するための戦車や軍用飛行艇なんかも。……そんな風に考える自分がちょっと嫌になりますけど。」

「ノエル………」

「でも、おじさまの提案が現実的かどうかと言われると……エレボニアとカルバードは自国の混乱を治めるのに手一杯でまだ何とも言ってこないようだけど……混乱が治まれば間違いなく否定的な声明をするでしょうね。でも、リベールやレミフェリア、アルテリア法国などは好意的に受け取る声明を出してくれて…………ただ、二大国に睨みを利かせる事ができる肝心のメンフィルは中立の声明だし…………正直、もどかしい状況だわ。」

「そうだな……………通商会議の時、味方してくれたのは結局は自国の領を増やす為や”力”を示す為に協力したとしか思えないしな………光と闇の共存を謳う国とはよく言ったものだよ………」

「そうね……時には優しさや懐の広さ―――”光”の部分を見せ……時には非情さや戦争を起こす事も迷わず自分達の”力”を見せつける――――”闇”の部分を見せるんだから……………――――そして初代皇帝であるリウイお義兄様は”魔神”と”姫神”の血を引く方。その妻であるお姉様は”聖皇妃”という異名を持ち、まさに民の”光”とも言える存在だし、リウイお義兄様の側室の方達もそれぞれさまざまな”光”や”闇”の部分が特化した方達。……さらには現メンフィル皇帝であるシルヴァン陛下は”メンフィルの守護神”と称えられ、光の陣営の神々の代表格とも言える”軍神(マーズテリア)”の聖騎士シルフィア様の血を引く御方で、その妻のカミーリ様は”闇夜の眷属”の中でも秀でた戦闘能力を持つカーリアン様のご息女であるし、二人のご息女であるリフィア殿下の異名は”聖魔皇女”。皇族自身も”光”と”闇”の”共存”の手本となっているわ。」

疲れた表情で溜息を吐いたロイドの言葉にエリィは頷いた後複雑そうな表情で説明を続けた。

「……今日、招待してくれたマリアベルさんなんかはどう考えているんでしょう?」

「どちらかというと彼女は今はIBCの運営の方に専念しているみたいね。今回の提案についてはそこまで関わっていないみたい。」

「そうですか………せっかくの機会だからお聞きしたいと思ったんですが。」

「そうね……私もベルには聞きたいことが結構あるし……」

「―――なあ2人とも、こういう時だからこそさ。目一杯楽しんでいかないか?」

エリィとノエルが話し合っているとロイドが意外な言葉を言った。

「え………」

「……?」

「滅多にない休暇でミシュラムのホテルに宿泊だぞ?しかもあのテーマパークで遊びたい放題だっていうし。さぞかし頭を空っぽに出来るんじゃないかな?」

「……で、でも………」

「……あんな事があった後で………」

ロイドの言葉を聞いたエリィとノエルは迷いの表情を見せたが

「あんな事があったからこそさ。この先、クロスベルの状況がどうなるかわからない……俺達の仕事だって大変になる可能性が高いだろう。だからこそ何て言うか……『思い出』が作りたいんだ。」

「ええっ………!」

「そ、それって……!?」

笑顔で言ったロイドの言葉を聞いて2人とも顔を赤らめ

(ハア………懲りずにまたこんな事を無意識に………)

(こ、この男は”また”無意識にこんな事を……!エリィはともかく、他の者にまで言ってどうする!)

(くかかかかっ!駄目だ、笑いが止まらん!我輩を笑い殺すつもりか、ロイド!?くかかかかかかかっ!

その様子を見たルファディエルは呆れた表情で溜息を吐き、メヒーシャは顔に青筋を立てた後ロイドを睨み、ギレゼルは笑い続けていた。

「(……え?何でそこまで反応するんだ?)はは……さすがにクサすぎたかな?」

そしてロイドは2人の反応に内心不思議に思いながら苦笑した。

「クサすぎっていうか……(エリィさん……わざとやってるんですか?)」

「(ううん……天然の可能性が高いわね……)―――えっと、ロイド。その『思い出』っていうのは特定の誰かさんのことじゃないわよね?」

ノエルに耳打ちされたエリィはジト目で答えた後、頬を赤らめてロイドを見つめて尋ねた。

 

「?できればエリィとも作りたいとも思っているよ。今までデートする暇もなかったんだしさ。」

「〜〜〜〜〜〜〜!!!そ、そう……………………」

ロイドの答えを聞いたエリィは顔を真っ赤にし

(や、やっぱりロイドさんはロイドさんですね………局長は局長で問題ありますけど、自覚のないロイドさんの方が一番性質(たち)が悪いかもしれませんね……………エリィさんも苦労していますね。)

(ううっ………将来ロイドは何人の女の人達を落とすのか、かなり不安だわ…………現在の時点でロイドに好意を寄せている人達が既に4人もいる上、さらに一番厄介な相手―――ルファディエルさんがいるんだから………)

苦笑しながら小声で言ったノエルの言葉にエリィは疲れた表情で答えた。

「あれ、ひょっとして俺、さっきから外しまくってるか?みんなが落ち込んでるみたいだから少しでも元気付けようと――――あ。」

一方2人の様子に首を傾げたロイドは尋ねたがある事に気付いて声を上げ

「ぷっ……」

ノエルは口元に笑みを浮かべ

「あははっ……!あ、貴方って本当に……天然というか不器用というか。まあ、そんな貴方だからこそ私は好きになったんだけど。」

エリィは大声で笑った後頬を赤らめてロイドを見つめ

「ふふ、何だか悩んでいたのがバカらしくなっちゃいましたね。」

ノエルは笑顔で話を続けた。

「……悪かった。顔を洗って出直してくるよ。」

「ふふ、すねないの。……ごめんなさい。私達の方こそちょっと空気が読めてなかったわ。」

「そうですね……やっぱりバカンスに行くなら目一杯楽しまないと!」

「そっか……(一応、目的は果たせたかな?)……あ、そうだ。…………いや、これを聞くのはさすがにエリィに失礼だな……」

二人の答えを聞いたロイドは心の中で安堵した後声を上げ、迷っていた。

「?私に何を聞きたいの?遠慮なく言って。」

ロイドの様子を見たエリィは不思議そうな表情をした後言い

「えっと、その……………エリィってもしかして凄い数の縁談が来ていたりするのか?」

「ええっ!?え、縁談……!?」

ロイドの疑問を聞いたノエルは驚きの表情でエリィを見つめ

「……………………………どうしてそう思ったのかしら?」

エリィは少しの間呆けた後、ロイドを見つめて尋ねた。

「えっと、その……リィンが言ってたんだけど……………」

そしてロイドはリィンの推測を2人に話した。

「た、確かに言われてみれば、そうですよね………エリィさんのお姉さんはあの”聖皇妃”なのですから、エリィさんと結婚できればメンフィル皇家とも強い繋がりが持てますし……………」

ロイドの話を聞いたノエルは複雑そうな表情でエリィを見つめ

「……………私への縁談がマクダエル家に来ている事は否定しないわ。お姉様の件が世間に知られてから、各国のさまざまな貴族や議員の方達から縁談の話が来ている事はおじいさま達から聞いているわ。」

エリィは少しの間考え込んだ後静かな表情で答え

「やっぱりか…………」

エリィの答えを聞いたロイドは疲れた表情で溜息を吐いた。

「フフ、でもおじいさまがみんな断ってくれているからそんなに心配しないで。」

「そ、そうなのか?」

「ええ。おじいさまは政略結婚に反対だし、何より私と貴方の関係も知っているし。……それにもしおじいさまが引き受けても私が絶対に拒否するわ。貴方がいるのに、そんな失礼な事はできないわ。」

「エリィ…………………」

エリィに微笑まれたロイドはエリィと見つめ合い

(ふ、二人が作る空気が辛い……………ううっ……できれば今すぐにでもこの場から離れてしまいたい……………というかランディ先輩達はずっとこの空気を耐えてきたなんて……凄すぎる………!)

二人の様子を見たノエルは疲れた表情で溜息を吐いた。

「っと!ノエルがいるのに自分達だけの空気を作ってごめんな、ノエル。」

「ご、ごめんなさい、ノエルさん。もっと場所を考えるべきだったわ。」

そしてノエルに気付いた二人は我に返ってノエルを見つめて謝罪し

「アハハ……あたしの方こそお邪魔しちゃってすみません。」

謝罪されたノエルは苦笑しながら答えた。その後ロイドは二人から離れた後キーアを探して甲板に出て、甲板にいたキーアを見つけてキーアに近づいた。

 

「………………………………」

「キーア、ここにいたのか。」

「あ……ロイド………えへへ……そろそろ到着かなー?」

「ああ、後少しだよ。テーマパークもあるから着いたら目一杯遊ぼうな?」

「うんっ!……えへへ………」

ロイドの言葉にキーアは頷いた後どこか陰りのある笑顔を見せた。

「……ごめんな、キーア。最近、ずっと寂しい思いをさせちゃってたみたいで……」

「………ううん。ぜんぜんヘーキだよ。詳しくは知らないけど……みんなが落ち込んでるのはなんとなくわかったから……キーアの方こそみんなを元気付けてあげたかったのに……けっきょく何もできなくて………」

ロイドの言葉を聞いたキーアが寂しげな笑顔を見せた後複雑そうな表情をした。するとその時ロイドはキーアの頭を撫でた。

「あ……」

「十分、元気をもらってるよ。キーアが側にいてくれること……それがどれだけ、俺達全員に力と元気をくれていると思う?」

「そーなの?……本当にそうなのかな………」

「……?」

キーアが呟いた言葉を聞いたロイドは不思議そうな表情でキーアを見つめた。

「……えへへ。なんかわかんなくなっちゃった。あ、でも、みんなちょっと元気になったみたいだねー?えへへ。やっぱりロイドはすごいなー。」

「いや、俺のせいってわけじゃないと思うんだけど……でも、せっかくだからみんなで目一杯楽しもう。テーマパーク。すごく楽しみにしてただろう?」

「うんっ!キーア、観覧車に乗りたいー!あと、ティオといっしょに『みっしいにキック』もしたいかな〜!」

「『みっしぃにキック』って……子供の間で流行ってるんだっけ?うーん、ティオはちょっと年齢制限に引っかかりそうだけど。」

無邪気笑顔を見せて言ったキーアの言葉を聞いたロイドは戸惑いの表情を見せた後苦笑した。

 

「―――そのあたりのマナーはわきまえているつもりですが。」

するとその時ティオがエリィ達と共にロイド達に近づいてきた。

「ティオ、それにみんな……」

「あれー、どうしたのー?」

「ウォン。」

「ふふ、何となくみんなで集まっちゃったというか……」

「それに、そろそろ到着するみたいだからね。」

「ああ、そうか。」

ワジの言葉を聞いたロイドがキーアと共に振り向くと水上バスはミシュラムの港に近づいていた。

「わあ〜っ………!」

ミシュラムを見たキーアは嬉しそうな表情で声を上げ

「綺麗ね……」

「本日晴天、行楽日和ですね!」

「まさに遊びにとっても適している天候だね!」

「シャマーラ、あまりはしゃぎすぎて皆さんに迷惑をかけたら駄目ですよ?」

「フフ、こんな時ぐらいは別にいいじゃないですか。滅多にない機会なのですし。」

エリィは微笑み、ノエルとシャマーラは嬉しそうな表情で言い、シャマーラを諌めるエリナにセティは微笑みながら言い

「よーし、ガンガン、テンション上がってきたぜ〜!」

「休暇なのに、疲れるぐらい楽しんでしまうかもしれないな……」

ランディは嬉しそうな表情で言い、リィンは苦笑していた。

 

その後水上バスはミシュラムの港に到着した……………

 

 

 

 

説明
第723話
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コメント
感想ありがとうございます Kyogo2012様 まさにロイド爆発しろっ!ですね!! 本郷 刃様 本当に厄介です!! THIS様 ロイドは一体何人を毒牙にかけるのでしょうね!?(sorano)
ロイド・・まさかノエルまで毒牙に・・?オノレ・・オノレエエエエエェェェ!!(THIS)
くっ、天然っていうのは本当に厄介だな!(本郷 刃)
うーーーーむ。本当にモゲロ!!!!!!!としか言いようがないな。この色魔め。(Kyogo2012)
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