張?伝 |
唐突だが……。
昔の俺は、この世界の著名な武将というのは総じて「女性」であると思っていた。
『曹操』、『劉備』、『孫権』の三王を初めに、『夏侯淵』、『荀ケ』、『諸葛亮』、『関羽』、『孫策』等は当然の如く「女性」、そんな主役級から転じて後ろを振り返れば『王朗』、『黄権』、『韓遂』等のマニア心を揺さぶる「いぶし銀」な所も「女性」である、しまいには『候音』、『呂壱』という普通の人はほとんど知らない人物までちゃんと「女性」である。
だからこそ「武将=女性」は真理だとばかりに、俺は思い込んでいたのだが。
「なにいってるんだよ北郷?男なら僕がいるだろに」
とある武将の、そんな一言で真理はあっさり崩壊した。
そんな俺の真理をぶち壊してくれた、人物……「張?」という「男」は。
「よっ、相変わらず。ちっちゃいな北郷」
本人(張部)の、上役である俺の執務室に入ってきた早々に、俺より高い自身の背(手のひら一個分)を自慢するようにニヤニヤと笑い。
「顔も相変わらず冴えないままだし、ほんと、少しは僕の美しさを半分分けてあげたいぐらいだ」
自らの丹精な顔立ちを称える為に、俺の顔をこき下ろし。
「まあ、僕の美しさを半分北郷与えても。元の君の凡庸な顔と出来の差の違いが目立ちすぎて、今以上に可哀想な事になるだろうけどね。いやっ、半分与えた僕の美しさ汚す蛮行をしているんだ、北郷君は可哀想所ではない、重大な罪人だ」
自分から提案してきたくせに勝手に、人を罪人扱いし。
「いやっ、そもそも美しすぎる僕の存在自体が罪なのかも」
毎度このような感じで、自分を褒めまくる、……自意識過剰の側面が在り過ぎる「男」である。
「五月蝿いよ張?は。人の顔を云々言う前に、その不細工な性格をまず直せ」
「むっ、なにをいうか、僕は性格も美しいぞ、僕ほど素直な人間はいないと自負している」
「あっ、それは確かに。張?って、素直すぎてお馬鹿さんだよねー」
「だ、誰が! お馬鹿さんだ!」
とはいえ、自意識過剰も一週回ってしまって。
素直すぎる性格を、もっと簡単にいえばお馬鹿さんな性格をしており。
「悪い悪い、素直すぎてアホな子だよね」
「ほ、北郷、お前は友である僕を馬鹿にしているのか!」
「いやっ、だから、馬鹿じゃなくて、アホ扱いしているよ」
「お、お前という男は……、完璧に僕を馬鹿に、いやっ、アホにしているな」
「いやっ、アホにしていないよ、馬鹿にしてるだけだよ」
「そうか、アホ扱いは、うん? ……、って、馬鹿にしてるのは一緒じゃないか!」
「おっ、ノリ突っ込みが出た」
俺は、そんな張?のことを結構気に入っている。張?も俺のことをなぜか気に入ってくれている(第三者曰く、根が単純な所が「類は友を」らしい)。
また、軽い口調で会話をしているせいで忘れがちになるが。俺と張?は、長年の上司と部下の関係でもあり。これまで、戦争に不慣れな俺を張?は部下としてよく支えてくれた。実際、今も総大将の俺、軍師に風、そして副大将に張?という陣容で、北部の異民族に対し向っているところだ。
まさに、俺にとって張?は「公私」共に、全幅の信頼をおける人物である。
「とにかく、僕はアホでも馬鹿でもない!」
「じゃあ、麗羽系で」
「な、なんか……、その表現が一番嫌だ」
だからという訳でもないが、さっきからの会話のように、張?と戯言といってもいい、中身がさほどない雑談で盛り上がっている。
この罵りあいというか、罵倒合戦は俺たち二人の通過儀礼とでもいうべきものだ。この雰囲気というのは、俺の前の世界で、男の悪友と教室でなにげない話をしている時に似ている気がする。
「もういい、今日は僕は君と雑談をするために来たわけじゃないんだ」
まあ今回みたいに、罵倒合戦は大方俺の勝ちを収める場合が多くて(第三者曰く、俺のほうが、まだ意地が悪いらしい)。結局、張?が無理くり話を切り上げる場合が多い。
「……、北郷将軍」
張?は、俺を「将軍」と呼ぶ。
先ほどからの「私人」としての俺達の関係から、「公人」としての俺達の関係に切り替えた。
……さすがは、歴戦の武人といった佇まいで、俺もゾクゾクと軽い緊張が走る。だが、緊張しているだけでは、この目の前の素晴らしき武人の上司とはいえない。
「ああ……、張?将軍。話を聞くよ」
だから、俺はこの武人を真っ直ぐ見詰ながら、そう答えた。
「では、そういう事でよろしいですな」
「ああ、その点は張?将軍に一任するよ」
「はっ、では早速、騎兵を率いて本体を離れます」
数分後。
公人としての会話を俺達は終え、張?が先駆けて戦地に入りし地慣らしをする事が決まった。
「じゃあ、いってくるよ」
「ああ、よろしく頼むよ」
「・・・生きて帰ってこいよ」
「ああ、わかってるさ、親友を泣かせるようなマネはしない・・・。なにより僕が賊相手にやられるわけないだろ。僕は天下の名将の張?様だぞ」
・・・・・・、戦場では何があるか分らない。
そんな思いから出た俺の言葉に、張?は自分の胸を逸らし自身満々といった様で答える。
自信過剰なそもそもの性質を差し引いても、俺を心配させないように多少演技がかったその行動を頼もしく、そしていとおしく想い。
「ああ、そうだな。張?、お前を信頼しているよ」
その突き出した胸を軽く手の裏で叩く。
この頼もしき親友への信頼と、敬意を含んで。
『ぷに』
あれ?
え、えーと、叩いた手のひらにかすかにだが、柔らかい感触がしたんだが。
そ、そのー、擬音にすると「むにゅ」って感じがしたんだが。
なんというか、『脂肪感』そんなのが物凄くあったのだが。
いやっ、男の胸も脂肪はある、太ってる人は当然だし、痩せてる人にも多少はついてる。
それでも、ただ、張?のように歴戦の引き締まった体にしては柔らか過ぎる感触があった気が・・・。
「きゃあああああああああ!!」
「って、へっ、張?、なぜ、俺の手を急に持って!」
そんな事を考えていた俺の思考は、聞いたことも無い張?の可愛らしい悲鳴で遮断され。
その悲鳴と共に、一本背負いで宙を舞った事により無理やり止められた。
「す、すまない。投げてしまって」
「あっ、うん、それはいいんだけどね・・・」
気を取り戻した数分後、嫌な静寂が俺たちを支配する。
「じょ、女性だったんだね」
「っ!・・・・・・、あっ、ああ」
親友が女性だったなんて複雑極まりない気分だ。
「そ、それはだな……」
「あっ、いやっ……」
張?は俺とは馬鹿な言い合いはするが、根は真面目な人物である、そんな張?が隠しててきた事実である。
なにか深い理由があろう、例え、俺たちが親友であろうとも、周りからホモダチと評され、蜀の二軍師に期待に満ちた目で見られよう様とも、そこに安易に立ち入ってはいけないのではないかと思い、俺は、二の句が告げなかったのだが。
「手篭めにされるのが怖かったんだ・・・・・・」
「はっ?」
張?のほうから、なにか言い出した。
ちなみに、「手篭」=「セクハラ」である、もっとはっきり言えば強制猥褻のことである。
俺も、その意味は知るが。
なぜ、この場でそんな単語が出るのかは検討も付かない。
「そ、その、わ、僕が仕えてきた相手を思い出してみろ、麗羽に華琳様だぞ」
「えっ、うん?あっ、ああ、そうだね」
俺は、腕を組み尊大な装いで悪魔の笑みと馬鹿そのままの笑みをした二人の雄(ゆう)を頭の上に思い浮かべる。
「そ、その二人はー、好色であらせられる」
なぜか、張?は敬語だ。
顔も真赤だし。
「し、しかもだ、その牙の先は同性に向けられなっしゃる」
「あっ!ああ……なるほど」
つまり、自分が女だとばれると色々とされちゃうと。
ま、まあ、確かに張?はキリッとした美形だからな、……うん、華琳の触手100%伸びるな。
「ま、まあ、でも、華琳は美人だしいいんじゃ?」
「な、なにを! お、お前はどんなにカッコイイ男だとしても、抱かれたいか!!後ろから、「可愛いね、君。それじゃあ、……、フンフンフーンー!!」などいわれたいのか!!」
「そ、それはごめんだ」
「そうだろ、僕だって華琳様に『可愛いわよ、張?、今日は十分可愛がってあげる、ほら、お姉さまと呼んでみなさい』なんて言われたら寒気しかしないんだ、私には一切その毛はないんだ、てか、あの背の低さじゃ、華琳様が妹役だろ、なんで私がお姉さまなんてよばなくちゃ!!」
勝手に妄想した挙句、死亡フラグ(背)の事を口に出しながら。
「大体あの二人はだな、その女癖の悪さでなんど命の危機に陥ったものか! 後世の史家がどう飾り立てようとも、あの好色ぷりはどうにもならんぞ!、特に張繍の事とか」
「ちょ、ちょっと あれでも主君なんだし」
「むっ……、と、とにかく、僕は、恋愛に関しては清く正しく生きたいのだ。手を繋ぐまでに一年、接吻を交わすまでに三年、夫婦のむ、むつみごとは婚儀を挙げたその夜にと決めてるんだ」
「そ、そうなの」
「そうなんだ、周囲から麗人とかなんだかんだ女としての誇りを傷つかれる事を言われてきたが、この件に関してだけは一切譲る気はないんだ。僕の操は良人にだけ捧げるんだ!!」
……そんな事、大声で暴露されても困るんだが張?さん。
「というわけで、二人(華琳、麗羽)にばらすなよ」
「わ、わかってるよ」
「も、もしばれたら、僕があの色魔どもに、やられる前にお前に責任を取ってもらうぞ!」
「せ、責任って」
「僕をお前のお嫁さんにしてもらう!」
「ちょ、ちょっと……」
「しょうがないだろ、今のところ僕の周りには君以外仲の良い男がいないんだし。……、てか、君しか友達が居ないし」
「しょうがなくないだろ、自分を大切にしなよ。そもそもすきでもない俺となんて本末転倒じゃないか」
「そこは犬にかまれたと思って諦める」
「俺、犬扱い!」
「とにかく、お前が黙っておけば全員幸せ!僕の貞操も守られるんだ」
「わ、分かったよ」
ま、まあ……ばらさなきゃあ、いいんだし。
大丈夫だよな。
「面白そうな話ですねー宝ャ」
後日談
「北郷」
「な、なに。張?」
発せられる、雰囲気に。
北郷は若干引きつった顔をして張?と向き合っていた。
張?は全身が白い服装。
流石にこの時代にウェディングドレスはないのであろうが、その色の、その意味は同じ。
古い表現を使えば。
「純白の私を貴方色に染めてください」である。
ちなみに「断れば真っ赤に染めちゃうよ」っと云わんばかりに片手には槍がもたれていた。
「約束どおり、責任をとってもらおう!」
「なぜっばれた!」
次回予告
「お、僕を女にしてしまうのか」
「や、やめろ、やめろ、俺は接吻までには三年は待たないと!」
女の身体と、男の心に挟まれ。
悩む一人の一人の武将が居た。
「ごめん、結局、僕の「心」は男だったよ」
そして、
「・・・だから、入れられるより、入れる方が好きなんだ」
「ちょっとまて、張?なに!その棒は!!てか、朱里、雛里なにをそんなに嬉しそうな目で見てるの!!」
そんな、頭の具合(作者の)が気になる話が始まる。
・・・・・・、もちろん、嘘です続かせません。
あとがき
徐晃に続く、需要と配給シリーズです。
男の娘?それとも僕っ子?
あんまり定義がわからないので、適当にどっちかで。
※ご指摘ありがとうございます、修正しておきました。
※『カ・リン無双』付きです。
『カ・リン無双』
「これはいいものね」
「か、華琳様」
「いい音を出してね・・桂花」
「ああ・・・華琳様〜〜〜」
カ・リンは傾国の収集家(女性)である。
説明 | ||
張?を恋姫風にssです ※コメント返しませんご理解ください。 |
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コメント | ||
…なんか、逆転裁判5のあの美葉院秀一のイメージが目の前に浮いっている…;^_^Aそして張?のアレが華琳一生一番の大失態かも。話しちゃらめぇぇぇ!(fatfishwen) 張部?張?じゃ?ちなみに男の娘は女装してるしどう見ても美少女だし男だなんて嘘だよね?という人物をさしていうため間違いです。(アルヤ) |
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