超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 ルウィー編 |
「−−−はぁ!!」
横に一閃、黒曜日を振るいモンスターの腹を切り裂く。
そのまま勢いを付けながら背後で飛び掛かってきたモンスターの頭上目掛けて黒曜日を投擲して、左手にアフーム=ザーを左手にはイォマグヌットを顕現させる。
アフーム=ザーの特性は目標を永久に追尾する魔弾。攻撃力は低めで氷属性。
イォマグヌットの特性は強烈な接触した際に爆裂する魔弾。攻撃力は高めで炎属性。
襲い掛かってくるモンスターに向かってイォマグヌットの引き金を絞ると、強烈な反動と共に炎を纏った魔弾が発射され、モンスターに直撃した瞬間、轟音と共に爆発して隣にいるモンスターすら吹き飛ばす。アフーム=ザーは狙いを定めなくても、狙う対象を捉えていれば、空を翔け魔弾は狙い通りの場所を貫く。アフーム=ザーを空に投げ、頭上に突き刺さり絶命しているモンスターから黒曜日を抜き取り、モンスター共に剣先を向ける。
「……まだ、やるか?」
「グルゥゥゥゥ………ッ」
全身に毛を剣山のように立てて、威嚇をする狼型のモンスター。
屍となった仲間を見て、怖気づくモンスターの姿に地面に向かってイォマグヌットを発砲。
放たれた魔弾は、爆発音を大きく立てて白い地面を跡形もなく消し飛ばす。それに遂にモンスターは背を向け、森の奥へと逃げていく。
「さすがね」
「あまり、消費したくないからな」2時半4時
黒曜日を地面に突き刺し、ちょうど落ちてきたアフーム=ザーをキャッチする。
魔銃に向けての魔力の出力をやめ、二つの魔銃は元の|紙片《ページ》に戻り、元から存在しなかったように消えていった。俺達が倒した狼型のモンスターにはノイズは掛かり、光となって消滅していく。
「紅夜の戦いを見ていると、ずっと戦ってきたって感じがするわ。その銃だって、所持してまだ指で数えれるほどしか日が経っていないのに紅夜自身の戦闘スタイルにうまく馴染ませているわね」
「やっぱり、そういうのは忘れていても体が覚えているものなんだろう」
黒曜日の柄を握り、地面から抜き取る。
俺には大剣と双剣に切り替えることが出来る黒曜日と、それぞれ特徴を持つ魔の双銃を持っている。
黒曜日は俺がこの世界で手に入れた物でも十分に戦えるということは、オリジナルには剣類を使っていたということになるだろう、双銃は元々オリジナルが使っていた物らしいし、例え今はいなくてもここに存在するオリジナルの肉体には戦闘経験が骨の髄まで蓄積されて、それを使う俺は直感だけで十分に戦える。
「それにしても……この森は、モンスターが多いな。道は外れているけど、教会が見える距離だぞ?」
「紅夜はいなかったけど、プラネテューヌにもかなりのモンスターが生息していたわ。そしてラステイション、リーンボックス、このルウィーでも物凄い数のモンスターを見たわね」
「女神の守護の力は無意識に動くとベールから聞いたが……この大陸は、シェアが低いのか?」
「十分にありえるわね。………また厄介ごとかしら」
はぁー、と憂鬱そうに白いため息を吐くアイエフ。
「まぁ、俺達で解決できる問題なら手を貸すさ。流石にシェア関連だと女神の意向しだいだけど…」
誰かが、悪いことをしようとして女神だけでは解決できないことなら喜んで手を貸すが、女神の力の源シェアは女神の日々の努力によって人々から得られる信仰の思いは俺達が何をやっても変わるわけではない。女神自身が頑張らないと意味がない。
「躊躇なく、協力しようと思える紅夜は凄いわね。そういえば、ちょっと話があるんだけど……」
「ん?」
周囲にモンスターの気配がないことを確認して、二人の迷子を捜すことを再開するため歩き出すとアイエフが真剣な顔でこちらに向けて口を開いた。
「ネプ子のことどうする?ぶっちゃけた話、コンパも気づいているわよ」
「ネプテューヌの正体のことか?」
「えぇ、正直な所、あんなのが女神だと信じがたいけど女神化状態だと納得できるわ」
「知らないのは本人だけか……」
革新なる紫の大地プラネテューヌの((守護女神|ハード))ことパープルハート。
表舞台に立つことは、ほとんどなく教祖イストワールというこちらも実際の姿を見せないが、聞く限りかなり優秀な心材がプラネテューヌを支えているという話だ。
「ネプ子の目的って鍵の欠片を集めていーすんを助けると言っているけど、ネプ子が女神である以上、いーすんと呼ばれている者がプラネテューヌの教祖イストワールである確率が高いわ」
「だよなー………でも」
「えぇ……でも」
アイエフと俺が腕を組んで同じタイミングで口を開く。
「「記憶喪失状態である本人に伝えたところで女神としての自覚を得られるは絶望的」」
ネプテューヌはやるときはやるけど、かなり大雑把だからな。
本人の性格から考えて、自分が女神だと伝えても記憶がない以上、理解する時点で怪しいし、今までの経験も忘れてしまっているネプテューヌには女神として過ごした自覚を覚えるのは絶望的だ。
でも、普通に考えればいくら自分が特殊だと思っても、まさか自分が神だとは思いもしないだろう。それを信頼できる仲間に言われたところで、混乱すること間違いなしだ。
「プラネテューヌは、女神も教祖も不在でかなり不味いらしいわよ」
「あぁ、モンスターで一番被害に合っているのは間違いなくプラネテューヌだ」
はぁ…とお互いに白いため息が出る。
「やっぱり、とっとと鍵の欠片を入手して教祖イストワールの封印を解くしかないだろう」
「そうね。会話は念話の類だったから、不思議な力を持っていると私は考えているわ。その力でネプ子の記憶を元通りに出来ればいいんだけど…」
「そうだな。それが理想的な形だな…」
結論は、今まで通りとなってしまった。
とにかく、今は教会の関係者が探している五歳くらいの少女を見つけることが先決だ。
「モンスターがここ多いから、はやく見つけないと不味いわね」
「ああ、早く見つけないと……」
雪が積もり白色に広がる地面を小走りで移動しながら、周囲を見渡す。
極寒の環境でも逞しく地面に根を張り巡らせて並ぶ木々、それは生命の凄さを思い知らされるが、今の状況だと木々が邪魔で周囲を確認しずらい。教会の関係者が血相を変えて探す子供のことだから、大企業の社長の娘とか考えれる。
『こんなところじゃ、空中から見えても無駄だね』
「だからって、木々を切って見通しをよくしようとすることはあまりに時間の無駄だ。こういう時に役に立つ魔法とかないのか?」
『対象がどんなものであるか分かれば苦労しないけどね……げっ』
「紅夜、人がいるわ……あれは夜天 空?」
アイエフが指を差す方向に確かに空が歩いていた。元々服装が真っ白なコートなので、雪の色と同化して見にくいが、思わず見惚れ、そして畏怖を抱いてしまいそうな黄金色の髪は、色を塗っていないキャンパスに派手な色をぶちまけたように目立っていた。
デペアがあいつが俺に仕掛けたナノマシンはうまく吐きだしたとのことだし、俺の場所はあいつには分からなくなったとのことだ。
話しかけるべきか悩んでいると、こっちに視線が向いた。とりあえず、手を上げて振ると同じように返してこちらに歩いてきた。
「腕が…ある?」
「どうしたんだ。アイエフ?」
信じられないものを見た様にアイエフがポカーンと口を開いた。
空は既に、俺達の目の前まで来ていた。
「やっぱりルウィーに来ていたのね」
「やっぱりって……俺の居場所はお前に筒抜けたのか?」
「邪神レーダー、君が邪神関連の力を使えば大体の場所は掴めるよ」
はぁと空はため息をした。ダルそうに両腕を頭に回した。
「貴方……その両腕……」
「僕は所謂不死身属性なんだよ。腕ぶっ切られても、直ぐに再生するよ」
今度は眠たそうに俺達から顔を逸らして大きな欠伸をした。かなり眠たそうだ。
「腕をぶっ切られた?誰がこのチートと戦ってそんなことをやったんだよ。こいつがやられる姿なんて想像できない。絶対そいつ今頃、生きていねぇな」
「「……………」」
白い目で空とアイエフに見られた。意味が分からない。
「はぁ…、二人だけって珍しいね。駆け落ちでもしたの?」
「か、駆け落ち!?べ、別にそうのじゃないの!ネプ子とコンパはこんな寒い所だし、この環境に慣らさないと体に悪いでしょ!」
顔を真っ赤にしてアイエフが俺から探している少女の写真を取り上げて、空に見せる。
「教会から報告された迷子を探しているんだけど、覚えない?」
「………ロムちゃんにラムちゃん…?」
「お、名前を知っているのか?空、こんな広い場所だと見つけれないんだ。この二人を見なかったか?」
「見ていないけど……迷子だって?………分かった。僕も探してみる。この子達にもしものことがあったらルウィーの未来が揺らぐからね」
ダルそうな表情から一転、真剣な表情で懐から光り輝くクリスタル型の宝石を取り出した。
それを躊躇なく空は握り潰し、纏うように欠片を振りまく。その現象は幻想的で俺は、思わずその美しさに視線を逸らすことなく、見つめることしか出来ない。
「世に福音に満ちることを願い。世に禍音が満ちることを憎む。虹神の骸殻にして理を掴み、汝の名を世界に示すーーー((零神化|ゼロハート))」
聖書を読むような、安らかな声音と共に光が空を包み、光は硝子のように砕け散る。
そこから姿を現した空はネプテューヌやノワールやベールの女神化と共に装備するプロセッサユニットに似た、否プロセッサユニットを装着していた。
黄金色の髪は変わらず、銀色だった瞳は宝石の様な綺麗な紅い色となり、白と金色の二色の甲冑の間から伸びる光で構成された布の物が飛び出て、背中から伸びる機械的な四対の翼は、神話で語られる天使を連想させた。
「女神……?お前は、女神なのか?」
戦わずとも溢れるその闘気、見惚れて崇拝してしまいそうな美しさに俺は間違いなく見惚れてしまった。
圧倒的な力の塊と美しさは、疑問を浮かばせることなく結論が出て口から出た。それに空は鼻で笑う。
「女神なんて崇高なものになれるわけないでしょ?でも、これも女神の力があるから………あっちだね」
まるで同じものを見つけるような感覚で空は木々の間を見つめた。そして、俺達に視線を戻し両手を指し伸ばした。
「付いてくる?」
「あ、ああ……」
「ここまで来たんだし、よろしくお願いするわ」
アイエフと俺は空の手を握った。
それに空は「噛まないでね」と呟くと同時にバックプロセッサから光が溢れ、俺達は目線は一気に上空に昇り、あっという間に森を見下ろせる所まで昇った。
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